言葉は詰まり「無頼」の面影なく文芸評論家で慶応大名誉教授の福田和也さんが亡くなってしまった。63歳。いくらなんでも早すぎる。 福田さんと最後に会ったのはおよそ6年前のことだった。産経新聞社の取締役から「江藤淳さんの全集を産経で出せないだろうか」との相談を受け、「ならば江藤さんの弟子だった福田さんに相談してみるのがいいと思います。まず会いませんか」と答えた。すぐさま福田さんに連絡を取り、上野のうなぎ屋で顔を合わせた。 衝撃的だった。頰はげっそりとこけ、手はブルブル震え、言葉もなかなか出てこない。そこには毎月100冊読み、文学、歴史、政治、社会など多岐にわたるテーマで毎月300枚もの原稿を書き、夜な夜な乃木坂(東京都港区)あたりでたっぷり飲み食いしていたころの「無頼」とでもいうべき福田さんの面影はまったくなかった。全盛期のめちゃくちゃな暮らしぶりで痛めつけられた肉体が、主である福田さんに復讐(