サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
TGS2024
cigs.canon
JAなどが出資する農林中央金庫の今期最終赤字が、1兆5000億円規模になる見通しとなったと報じられている。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「農林中金は全国の農協が集めた60兆円超の資金を預かり、毎年3000億円ほどの運用益を還元している。これらが縮小・消滅していくと、農協は倒産・崩壊の危機に直面することになる」という――。 なぜ簡単に資本増強できるのか JAバンクの中央機関、農林中金は、5月22日の記者会見で、米金利高止まりによる外債価格下落で、2025年3月の赤字が5000億円となる見込みとなり、傘下のJA農協から1兆2000億円の資本増強を受けると公表した。ところが、6月18日、報道各社がその最終赤字は1兆5000億円規模に拡大する可能性があると相次いで報じた。08年のリーマンショックの際にもサブプライムローン問題で5700億円の赤字を計上し1兆9000億円の資本増強を
ウソと矛盾の農業村 50年近く農業と農政に付き合って、つくづく嫌になることがある。それは、農林水産省、JA農協、農林族議員、農業経済学者たちの主張がウソと矛盾にまみれていることである。昨年11月のNHKスペシャル「食の“防衛線”」もそうだった。一般の国民はかれら”専門家“のウソや矛盾が見抜けない。かれらの肩書だけで”専門知識“を信じてしまう。私がウソや矛盾を指摘しても、かれらは正面から答えることはしない。暴論とか持論とかのレッテルを張ってごまかす。 減反を取り上げよう。食料安全保障と関連付けた今回の基本法見直しで、農業村が最も関心を持っているのは、 “適正な価格形成”である。肥料、農薬、飼料などのコスト上昇を価格に転嫁しようというものである。食料安全保障のために国内の農業生産を維持するには、農家の所得を補償できる価格が必要だと言うのだろう。 これは、農業村の常套文句である。コメ生産の維持の
コメが各地で品薄状態となり、価格が高騰している。ほぼ100%国産なのに、なぜこんな状況に陥っているのか。元農水官僚の山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹に「令和の米騒動」の内幕を尋ねると、消費者をないがしろにしたコメ政策の実態が見えてきた。【聞き手・宇田川恵】 凶作ではなかった ――コメの品薄や価格高騰はなぜ起きているのですか。 昨年の猛暑による不作やインバウンド(訪日外国人)の増加でコメの消費が増えたためだと言われていますが、両方とも主な原因ではありません。 そもそも2023年産米の場合、コメの出来具合を示す「作況指数」は101で平年並みでした。「平成の米騒動」を招いた1993年産米の作況指数は74。23年産は特に高品質のコメが不作で、消費者が欲しがるコメが減ったからだとの見方もありますが、凶作だったわけではありません。 一方、インバウンドの消費増もそれほど大きいとは言えません
多くの研究者は、エルニーニョによる温暖化が衰退し、ラニーニャによる寒冷化が引き継ぐ、今から年末までの間に、何が起こるかを不安げに見守っている。その不安は大きい。今年は気候モデルの信頼性についての決定的な年になるかもしれない。 現在のエルニーニョは2023年6月に始まり、太平洋に何年かに渡り蓄積された過剰な熱の放出弁となった。これは地球を未知の領域へと押しやり、気候科学者たちを動揺させた。実際のところ、なぜこれほど暑いのか、科学者たちはうまく説明できていない。 2002年から2014年までの間、地球表面の温暖化が進まなかったことの説明がつかなかったというような以前の問題に続き、これはこの分野の信頼性に対する、最新の打撃に過ぎないという人もいる。また、昨年までは気候科学者は物事を説明するのが上手だったと主張する人もいる。しかしいずれにせよ、最近の温暖化は気候科学に宗派分裂をもたらした。 昨年の
監訳 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 杉山大志 訳 木村史子 本稿はロジャー・ピールキー・ジュニア 「The Energy Transition Has Not Yet Started – Global fossil fuel consumption is still increasing」を許可を得て邦訳したものである。 Energy Institute Statistical Review of World Energy(EI統計:旧BP統計)として発表された世界のエネルギーに関する最新データは、その動向について深刻な状況を示している。データによれば、化石燃料からの脱却を謳う「エネルギー転換」はまだ始まっていない。 パリ協定が締結された2015年以降、世界のエネルギー消費量は61.2エクサジュール(EJ)増加した。これは、EUの2022年のエネルギー消費量を少し上回る。この増加は
本連載はキヤノングローバル戦略研究所が2022年7月に立ち上げた「ポスト・ウクライナ戦争後の東アジア国際秩序」と名付けた研究会の議論をもとに、台湾有事を具体的にシミュレーションしたうえで、わが国の防衛力を真に高めるためにはどうすればよいか、どのような障害があるのか、その障害を乗り越えるうえでどのような課題があるのか、浮き彫りになった問題点を提起することを目的としている。「机上の空論」とならないように、「中国軍が台湾併合をめざして軍事侵攻に乗り出した」というシナリオをもとに、日本や自衛隊が抱える課題を洗い出して検証していく。 シナリオ――202X年5月、中国人民解放軍は台湾にミサイル攻撃を開始。台湾軍の主要施設やインフラなどが破壊された。中国軍は艦艇を派遣して台湾を事実上封鎖し、上陸作戦を始める。これに対し、台湾陸軍は応戦し、米軍も東アジアに展開を始めた。日本周辺でも情勢が緊迫する。 前回は
日本と自衛隊が抱える課題 日本政府は今年(2023年)1月、防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に増額することを決めた。特定の官庁の予算が、これほど短期間のうちに二倍近くになった例は戦後初めてのことだろう。昨年12月には、防衛力強化に向けた「国家安全保障戦略」など三つの文書が改定され、反撃能力を含む防衛力の抜本的強化を実施していくこととなった。 いずれも、戦後日本の防衛政策における大転換といえる決断といっていいだろう。政府だけでなく、危機感をもっていた国民のあいだにも安全保障に対するある種の安心感が生まれつつあるように見える。だが、はたしてこれだけでよいのだろうか。 今回の防衛費増額においては、「総合的な防衛体制の強化に資する経費」という新たな概念が打ち出されたのが特徴といえよう。防衛費以外の予算――たとえば、海上保安庁予算(国交省)、防衛に役立つ研究開発費・公共インフラ整備費
2022年にノーベル物理学賞を受賞したジョン・F・クラウザー博士が、「気候危機」を否定したことで話題になっている。 騒ぎの発端となったのは韓国で行われた短い講演だが、あまりビュー数は多くない。改めて見てみると、とても良い講演で、クラウザーの真意がよく分かる。 講演は、Quantum Korea 2023という、量子技術における学術的な大会におけるもので、氏は若い人向けにメッセージを発してほしい、との要望に応えたものだ。 講演では、厳密な実験を行うこと、それで確認されない限りは、ただの空想的な理論に過ぎない、ということが強調された。 氏がこれを言うことには重みがある。ノーベル賞受賞理由になった「量子もつれ」の研究は、これこそ「実験」の神髄、といったところだからだ。 遠く離れた場所にある2つの粒子でも、「量子もつれ」状態にあれば、一方の観測がもう一方の状態を瞬時に決めてしまう。量子力学というの
自動車メーカーのボルボが電気自動車C40のライフサイクルCO2排出量を報告した。(ニュース記事) ライフサイクルCO2排出量とは、自動車の製造時から運転・廃棄時までを含めて計算したCO2の量のこと。 図1がその結果で、縦軸が20万キロ走行時のCO2排出量。一番左が同等な内燃機関車(ICE)。残り3つがEVであるC40で、発電の構成によって結果が変わる。左から順に、世界平均(Global electricity mix)、EU平均(EU electricity mix)、そして全て風力で賄った(wind electricity)場合、としている。 EVは製造時(Matrials..およびLi-ion battery..)のCO2排出量がICEの倍近くになっていることが注目される。 図2 はCO2排出量が走行距離と共にどう変わるかを示したもの。EVは走行時のCO2は少ないが製造時のCO2が多い
1月23日のNHKクローズアップ現代は、「牛乳ショック、値上げの舞台裏で何が」と題して、北海道の酪農家の現状を説明した。NHKのウェブサイトでは、「朝一杯の牛乳が消える!? 酪農危機の知られざる実態」という取材ノートが掲載されていた。 番組は冒頭、キャスターの「牛乳、将来当たり前に飲めなくなるかもしれません」という発言で始まった。「牛乳が消える」というウェブサイトのタイトルと同様、消費者を脅すような印象を受けた。 「舞台裏」とか「知られざる実態」という表現を使っているが、伝えているのは主に酪農家の主張で、根本にある問題に触れていない。それは、北海道酪農にとって不都合な真実だからだ。 番組は何をどう伝えたか 輸入トウモロコシの国際価格が上昇し、また乳価も十分に上げられないので、トウモロコシを主体とする配合飼料をエサとする酪農家の経営は苦しくなっている。副収入のオス子牛の価格も一昨年の13~1
台風等の災害のたびに温暖化のせいで激甚化と騒ぐ記事が溢れるが、悉くフェイクである。温暖化云々以前に、そもそも激甚化自体がなかったことは公開の統計で確認できる。これは前回述べた。 ではなぜフェイクが蔓延したか。政府機関、国際機関、NGO、メディアが不都合なデータを無視し、プロパガンダを繰り返し、利権を伸長した結果だ。 CO2をゼロにするという急進的な環境運動は今や宗教となり、リベラルのアジェンダ(議題)に加わった。人種差別撤廃、貧困撲滅、LGBT・マイノリティーの擁護等に伍(ご)して、新たなポリティカル・コレクトネスになった。 CO2ゼロに少しでも疑義を挟むと、温暖化「否定論者」というレッテルを貼られ、激しく攻撃される。この否定論者(デナイアー)という単語は、ホロコースト否定論者を想起させるため、英語圏では極悪人の響きがある。 日本のNHK、英国のBBC、ドイツの公共放送、米国のCNN等の世
安西理事長(開会挨拶) 皆さまこんにちは。暑くなりまして、北海道のほうでは大雨ということも聞こえてまいりますが、特に東京圏はとても暑くて、暑いときには地球温暖化のテーマだということかも知れませんが、この暑さは本当に地球温暖化が原因なのか、という話を伺えるのではないかと思っております。 きょうは、杉山大志先生に大変お忙しい中いらしていただいております。脱炭素あるいは地球温暖化、気候変動の問題。今ウクライナ情勢のもとでサハリン2がロシアに行ってしまうという話もあって、エネルギー供給の問題についても、国の戦略的な部分もかなりあって政治的なことが絡んできている。そう思います。 そのような中できょうの演題です。交詢社の午餐会は、文化委員の方々がいつもきわめてタイムリーにいいテーマを取りあげていただいています。特に、杉山先生は地球温暖化あるいは脱炭素といったことについて、大変ストレートに発言しておられ
国民に経済的負担をかける 東京都は太陽光発電の新築住宅への義務付けを進める方針だ。 9月20日、小池知事は所信表明にて、「『環境確保条例』の見直しを図ります」としたうえで、以下のように述べた。 「住宅などの新築中小建物に対する太陽光発電の整備などを大手住宅供給事業者などに義務づける全国初の制度を掲げました」 しかしいま、太陽光発電には問題が山積している。 筆者はこれまで一介の研究者としてエネルギー環境問題に従事してきたが、東京都議会の上田令子議員(江戸川区選出)に励まされ、一人の都民として請願を出すことにした。 これまでも本コラムで述べてきたように、太陽光パネルの義務付けは、中国政府によるジェノサイドへの加担となり、国民に経済的負担で迷惑をかけることを都民に強制するものだ。のみならず、水害時には感電により人命に関わる懸念がある。 筆者は9月20日付で、小池知事宛に義務付けを中止・撤回するよ
下の二つの散布図を見ていただきたい。対象国は、OECD加盟国(1973年時点、トルコを除く)とAsian Tigers(韓国、台湾、香港、シンガポール)と中国とインド。横軸の「老人比率」とは、生産年齢を20歳から69歳として、 の期中平均。去る7月に発表された国連の人口推計から計算した。縦軸の一人当たりGDP成長率は、PWT(Penn World Table, 成長率の国際比較の定番データ)による。 図1からわかるように、1960年から1990年までの30年間は、Asian Tigersや日本の人口構成は若く成長率も高かった。図の左上に位置するこれらの国々から右下のイギリスにかけて、多数の国が右下がりの傾向線の近傍に並んでいる。すなわち、老人比率と一人当たりGDP成長率の間には負の関係がある。これを「老害」と呼ぼう。(アメリカやカナダなど、第2次大戦非戦場国はこの線の下にあるが、それは19
何が環境に良いのかはコロコロ変わる。 1995年のIPCC報告はバイオエネルギーをずいぶん持ち上げていて、世界のエネルギーの半分をバイオエネルギーが占めるようになる、と書いていた。その後、世界諸国でバイオ燃料を自動車燃料に混ぜる規制が導入された。 だがいまではバイオエネルギー生産のための土地造成で自然が破壊されるなどの理由で、特に植物油燃料に対して反対運動が強くなっている。 ディーゼル車はクリーンだということになっていたが、排気ガス規制において不正が発覚したのを契機に、一気に悪者になった。それでディーゼル車は禁止され(ついでにガソリン車もとばっちりを受けて禁止され)、電気自動車にシフトする動きが欧州から始まった。 太陽光発電は今迄は良い事になっていたが、何時まで持つことやら。メガソーラーともなると景観や自然生態系を破壊し、日本では土砂災害を引き起こしかねないことも問題視されはじめた。 風力
タイトルを読んで、「貧乏人は麦を食え」というセリフを連想された人は、かなりの年配の方だろう。所得倍増論で有名な故池田勇人は、大蔵(現在の財務)大臣だった1950年、「所得の少ない方は麦、所得の多い方はコメを食うというような経済原則に沿ったほうへ持っていきたい」と国会で答弁した。これが「貧乏人は麦を食え」と報道され、批判を浴びた。 このセリフを思い出したのは、小麦の国際価格の高騰によって、パンなどの小麦製品の価格が上昇しているため、10月に予定されている小麦の政府売り渡し価格の改定では、政府はこれまでのルールに沿った引き上げを行うべきではないという主張が強くなっているからだ。現在、池田勇人がいたなら、別の主張をしただろうと思ったからである。 なお、小麦の政府売り渡し価格と聞いて、どうして政府が輸入された小麦を製粉メーカーに売り渡すのだろうかと意外に思われた人も多かったはずだ。実は、制度的には
財務省の資料「国債等の保有者別内訳」(令和3年9月末<速報>)によると、国の借金(国債残高=約1067兆円)のうち、日銀は約5割の約513兆円を保有している。いまや国債の最大保有者は日本銀行だ。 このように、日銀が大量の国債を保有するに至ったのは、インフレ率2%の実現を目指して、異次元の金融政策を実行したためである。資金供給の調整といった金融政策の目的遂行のため、市場から日銀が国債などを購入することを「買いオペ」、逆に日銀が保有する国債などを市場で売却することを「売りオペ」と呼び、「買いオペ」「売りオペ」などを一般的に公開市場操作という。 公開市場操作により、日銀が「買いオペ」で市場から大量に国債を購入した結果、日銀は500兆円超もの国債を保有するに至っているわけだ。こうした現状のなか、「日銀は政府の子会社のような組織のため、日銀が保有する国債はもはや国の借金ではない」という意見がテレビや
高齢化が進むなかで医療費は膨張を続けているが、中長期的に本当に医療費は増え続けるのか。筆者の興味深い一つの試算を示しておこう。 まず、医療費の予測は政府も行っている。例えば、過去の予測で有名なのは厚生労働省の試算だ。平成6年3月に公表した「社会保障に係る給付と負担の将来見通し(試算)」(21世紀福祉ビジョン)では、2025年度の国民医療費が141兆円に到達すると予測していた。しかしながら、2019年度の国民医療費が44.3兆円なので、これから6年後の2025年度に141兆円になるとは思えず、過大推計であったことは明らかである。 また、厚労省が平成12年10月に公表した「社会保障の給付と負担の見通し」では、2025年度の国民医療費が81兆円、厚労省の「医療費の将来見通しに関する検討会」資料(平成18年12月27日)では、平成18年1月の試算で、2025年度の国民医療費(改革実施前)が65兆円
1. 米中対立深刻化の背景 5月下旬から6月上旬にかけて、2年2か月ぶりに米国に出張した。新型コロナウイルス感染症の拡大以前は毎年数回定期的に会っていた中国専門家などの友人たちと再会を喜び合い、最近の米中関係を中心に意見交換した。 出張の都度訪れていたレストランが2年余りの間にいくつも閉店してしまい、寂しい想いをしたが、それ以上に心が痛んだのは、米中関係が一段と悪化していたことだった。 以前は比較的中立的だった経済分野の友人らも中国に対する批判的な姿勢に傾いていた。 発足から1年4か月以上経過したジョー・バイデン政権は、依然として対中政策のビジョンがないと多くの中国専門家が指摘する。 中国側の問題点は指摘しても、それに対して米国としてどのような方針で対処しようと考えているのか、中長期的な対中戦略が示されていない。 米中対立深刻化の根本的な原因は、両国とも国内政治における世論の支持確保を重視
「150万円でも元が取れる」は本当か 東京都は、5月24日に新築住宅への太陽光義務付けの条例案をまとめ、いま意見公募をしている。大手住宅メーカー約50社に対して、販売戸数の85%以上に太陽光パネルの設置を義務付けるというものだ。都内の新築住宅の半数強が対象になるとみられる。 国土交通省の資料を見ると、150万円の太陽光発電システムを設置しても、15年で元が取れることになっている。どうしてそうなるのか、調べてみよう。 資料自体は下図のようになっていて、計算は一応出ているが分かりにくい。 国土交通省資料より https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001402197.pdf そこでエクセルを使って次の表のAとしてまとめてみた。 説明しよう。 まず、太陽光発電の年間発電量が6132kWh(kWhはキロワット・アワーと読む。1キロワット
数年前にバター不足が大きな問題となった。このときは、農業の専門家たちから酪農家が離農したので生乳生産が減少したのだと主張された。今回は、新型コロナの影響で需要が減少し、この年末年始に余った生乳5000トンが廃棄される懸念が出たため、岸田総理が、「廃棄を防ぐために牛乳をいつもより1杯多く飲んで」と異例の呼びかけを行った。数年のうちに生乳は不足から過剰になった。生乳は過剰や不足を繰り返してきた。需給調整が難しい産品で、その都度行き当たりばったりの対策が講じられてきた。 知恵がない農水省の提案 生乳廃棄に対して、牛乳が余るならバターに加工すればよいという意見や牛乳のカゼインという成分からミルク繊維を作るという新規用途を利用すべきだなどの意見も出されている。 このような酪農問題についての素人的な意見に対して、玄人であるはずの農林水産省が提案したのが、総理の呼びかけにあるように、家庭などで牛乳を「い
日本にとって大事なのは温暖化の脅威よりも中国の脅威。「CO2ゼロ」のために経済や技術がダメになっては元も子もない。 地球温暖化の危機が叫ばれ、日本でも台風やゲリラ豪雨、猛暑などが温暖化による悪影響だと報道されている。その温暖化の原因は、石炭や石油など化石燃料によって発生した二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスによるものだとされ、世界各国が地球温暖化防止のための条約(国連気候温暖化枠組条約)を締結し、最近は世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑え、1.5℃におさえる努力をすること、21世紀後半にはCO2など温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としている。日本政府も2050年までにCO2排出量の実質ゼロを目指すと世界に約束し、政府だけでなく自治体、企業、学校までこぞってその取組を進めている。 とは言え、石油、天然ガスや石炭は日本の工場、家庭、商店、病院などありとあらゆると
日本経済にインフレのダメージが蓄積されて行く中で、ガソリン価格高騰に応じた「トリガー条項」の凍結解除や消費税率引き下げなど「減税」を求める声が上がっている。7月の参院選に向け政治問題化の気配が漂うものの、実はインフレ対策としての減税は格差を拡大しかねない。低所得の家計にターゲットを絞った施策が必要だが、そこに立ちはだかるのが「アナログ政府・日本」という問題だ。 「悪い円安」をもたらす「日米金利差」 4月に刊行した『2050 日本再生への25のTODOリスト』(講談社+α新書)でも取り上げたが、目下インフレの懸念が高まっている。原油など資源価格の高騰、円安が進み、食料品や電気料金などの値上げも拡大しつつある。 アベノミクスの一環として行われた異次元金融緩和により、政府・日銀は物価2%の目標を目指していた。だが、現在のところ、金融政策だけではその目標を実現できずにいる。 しかし、コロナ危機の収
地方財政難を背景に減速したが、先行きは安定的に回復の見通し|中国経済情勢/ヒアリング ~不動産市場停滞、経済の先行き不透明等を背景に景況感は低調のまま~
メディアのアイドルである環境運動家のグレタ・トゥンベリ。今年ももてはやされたが、なぜかCOP26の国際会議場には呼ばれなかった(開催地:グラスゴーでのデモに参加)。一体なぜだろうか?彼女のスピーチをよく聞くと、その理由が分かってくる。 目次 メディアの寵児だったが 環境問題と共産主義の親和性 メディアの寵児だったが 今回のCOPでもスウェーデンの環境運動家のグレタ・トゥンベリがメディアでずいぶんと報道された。例えば産経新聞の記事では以下の通り。 via THE SANKEI NEWSよりキャプチャー メディアの記事の論調は殆どどれも判で押したように「環境危機を訴えた」「大人は口先だけで行動が伴っていない」「グリーンウオッシュのPR合戦に過ぎない(注:グリーンウオッシュとは、グリーンとホワイトウオッシュを組み合わせた造語である。ホワイトウオッシュとは白い色を塗ることで、転じてうわべだけを飾る
1.前回に引き続きウクライナ問題を取り上げるが、今回はソ連邦が崩壊した1991年以来、ウクライナの経済がどのようなことになってきたのかを検討してみることとしたい。 2.ウクライナは1992年6月3日に独立し、IMFに加盟し、IMFのコンディショナリティーの下に、IMFから資金の借入を行った。IMFの主要な要求は、規制緩和、民営化、そしてマクロ経済の安定であった。 3.規制緩和という観点から行われたのは、変動為替制度への移行であり、為替の価値が大幅に下落した。民営化の掛け声の下に、国営企業が入札にかけられて低価格で民間企業に売却された。そして、低い労賃を売りにする経済モデルの下、社会福祉の水準の引き下げ、住宅や公共料金に対する補助金の廃止がおこなわれた。2008年にウクライナはWTOに加盟したが、加盟の結果はIMF加盟の際とあまり変わらないものとなった。 4.結果として、この約20年の間に、
米中貿易摩擦が注目を集めていますが、米国の独立後、中国(当時の清)が米国の最大の貿易相手国であったことは知られていません。 独立当時の英国は世界の覇権を制していた国であり、大西洋を支配する英国を避けて、米国の海外発展は太平洋のかなたにある清に目を向けることになりました。ボストン郊外の港町セーラムを中心に、ニューヨーク、ボルティモア、フィラデルフィアなどの米国東海岸の港町は清との交易により隆盛を築いていきました。清は外国貿易を広東に限定して行っていたので、この貿易は広東貿易と呼ばれていました。清は米国の最大の貿易相手国であり、1777年から1840年までは米国の輸入物資の2割は清から来ていたのです。貿易支払いに銀を要求した清に対し、銀を産出していた米国は、産業革命による銀の不足から支払いに窮した英国と異なり、清に対する支払いに困りませんでした。この状況が変わったのが1840年からのアヘン戦争
1.5月8日のニュース 8日朝のニュースによれば、プーチン大統領は7日、欧州安保協力機構(OSCE)議長国スイスのプルカルテール大統領とウクライナ情勢について意見交換を行い、その後の会見で「最も重要なことは、ウクライナの現政権と東部南部の住民の率直な対話を始め、彼らの法的権利を保障することだ」と強調し、対話の条件を整えるために、「11日の住民投票を延期するよう要請する」と親ロシア派に求めた。 これを受けて今朝のBBCのニュースでは「プーチンが経済制裁の脅しにひるんだ」との見方を示していたが、これは全くの誤りである。 2.対ロシア制裁が効かない理由については、5月4日のアナトール・カレツキー氏のロイターでの論文が極めて明快に述べているが、4月27日から5月4日まで訪ロした筆者もカレツキー氏の考え方に全く賛成である。 (1)西側のメディアは、我が国を含め、ルーブル安に伴う物価上昇やロシアからの
1.筆者は2009年に、ウクライナの経済危機、それに伴う欧州への天然ガス供給停止の可能性、IMFによるウクライナ支援に、IMFの理事会メンバーとして関与することになり、これを契機にウクライナ問題について勉強する機会を得た。今回は、現在進行中のウクライナの問題を、何回かに分けて掲載する予定である。概略は以下のものを予定している。 ① 現在進行中のウクライナの状況について事実の確認 ② 直近のウクライナ問題の経緯に関する事実の確認 ③ 東西冷戦終了後のウクライナ問題の経緯 上記の3つの通信の中で、関係する歴史上の経緯についても触れる予定である。 2.第1回として、現在進行中のウクライナの状況についての事実の確認を行うこととしたい。 特に、我が国のマスコミが伝えてない重要事項や、伝えられていてもその内容の掘り下げが不十分と思われるものを取り上げてみたい。その前に、昨年以来のウクライナ問題の進展に
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『キヤノングローバル戦略研究所』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く