まじで現代転生if夢小説書いて職場に提出してやろうかと思ったけど、構想してたら文庫本1冊くらいになりそうだったので、転生前の話を平成のノリで書きました。
明日退職するって言ってくる。円満に行くといいな。
※必読!要注意!!※
・作者は初めて夢小説を書きました。至らない点や設定甘い点も多いと思いますが、お見逃し下さい(^_^;)
・「乱菊さん」の名前が出ます。苦手な方は回れ右。
・ちなみに主人公の名前は、私に電王の存在を教えてくれた遊/佐/さ/んヲタの同級生の名前を拝借しました(*´ー`*)
・以上を承諾できる方だけ以下に進んでください。
『また会ってください』
「アカリちゃん、この書類お願いできるかな…?」
吉良副隊長がいつもの自信のなさそうな顔で、私の顔色を伺っている。
「分かってますよ、吉良副隊長が執務室に私を呼び出すときはいつも書類仕事じゃないですか」
「いつもごめんね、じゃあ僕は会議があるから…」
そそくさと逃げるように吉良副隊長は部屋を出ていってしまった。
残されたのは、書類の山。さぁ、今日も高速で片付けますか。
私は護廷十三隊 三番隊 今年の新入隊員だ。
三番隊を希望したのは、霊術院に通ってたころ、講師で来てくださった市丸隊長の強さに憧れたから。
なんとか希望の隊には配属されたものの、平隊員でまだまだ修行中、でも書類仕事が得意なので皆にありがたられている。
隊の中に同じ苗字の人がいるので、私のことは皆「アカリちゃん」と名前で呼んでくれるーーー市丸隊長以外は。
市丸隊長は、女性隊員のことを「君」と呼ぶ。女性蔑視をしているわけではなく、男女平等に接してくれるが、呼称は「君」だ。
市丸隊長が名前で呼ぶ女性は唯一、乱菊さんだ。
市丸隊長と乱菊さんが「幼馴染」ということしか確定情報は知らないけど、市丸隊長が乱菊さんを目で追ってるのは何度も見た。決して私たちには向けない優しい眼差しで。
いいなぁ、いつか私も市丸隊長に見つめてもらいたいけど、平隊員の私なんて、市丸隊長は名前すら覚えていないんだろうな。
最近は朽木隊長の妹さんの処刑が近づいてる上に侵入者がいて、尸魂界は混乱していた。
市丸隊長はじめ他の隊員たちも出払っている日が多くて、私はひたすら自部屋と執務室を往復して事務作業をこなす日々だった。
吉良副隊長も前は少しは手伝ってくれていたのに、最近はまったく姿を見せない。
仕事がひと段落して時計を見ると、夜の9時だった。
ああ、今日も夕飯を忘れて仕事に没頭してしまった。
今から食べると太るから、もう帰って寝ようかな、とソファーから立ち上がって伸びをしたところで、執務室のドアが開く音がした。
「もう吉良副隊長いいかげんに…え?」
吉良副隊長が入ってきたと思って文句を言いかけてしまったが、部屋に入ってきたのは市丸隊長だった。
「ん?イヅルがどないしたん?」
口元に笑みを浮かべて市丸隊長がゆっくり尋ねる。
「た、隊長!失礼しました!!吉良副隊長がいらっしゃったのかと勘違いしてしまいました!!」
「そんなに謝らんでええよ」
ゆっくりとした所作で執務室内に入ってきた市丸隊長は、机上に山になった書類を下から上までゆっくり眺める。
「これ、君一人でやったん?」
「はい、吉良副隊長に頼まれました」
「それはあかんな。新人にこんなにさせたらあかん」
「私、事務作業が好きなので大丈夫ですよ。昨日の分までは終わらせましたので、今日は失礼します」
と一礼して、ドアに向かって歩き出した途端、後ろから冷たいもので身体を包まれて、耳元で
「アカリちゃん」
と呼ばれた。
「ふぁっ!?」
びっくりして思わず変な声が出た。冷たいものの正体は市丸隊長の腕で、私は市丸隊長に後ろから抱きしめられていた。
「嫌やった?」
腕が少し緩むが
「いえ、好きです」
と無意識に私の口が動いてしまうと、ぎゅっと抱きしめられる手に力が入った。うわ私なに告白してるんだ。
「いつも書類ありがとう」
「いえいえ、あ、仕事なんで、あの大丈夫です、はい」
動揺して上手く喋れない。市丸隊長の細身の身体は冷たい、私はどんどん身体が熱くなる。
市丸隊長、私のこと知っててくれたんだ。
「…」
市丸隊長は何も喋らない。ハグしたまま動かない。
「…あの、もうちょっと残業した方が良いですか?」
沈黙が怖くて伺ってみると、ふふっ、と市丸隊長が私の耳元で笑った。
「ちゃうよ。ずっと前からアカリちゃんとこうしたかったんや」
「またまたご冗談を」
「ほんまや。君を三番隊に配属させたのも僕のわがままや」
「はぁぁ!?」
また変な声が出てしまった。私の希望が運良く叶っただけだと思っていたのに。本当に?
「アカリちゃんはからかいがいがあるなあ」
ふふふ、という市丸隊長が笑い声が耳心地よい。
「僕もアカリちゃんのことが好きや。霊術院で実戦指導したときから気になってた」
さらに強い力で市丸隊長に引き寄せられる。
「からかわないでください、だって隊長には乱菊さんが…」
「単なる幼馴染や」
「…」
上手く頭が働かない。心臓がどきどきしすぎてつらいけど、このつらい時間がずっと続いて欲しい気持ちもある。
市丸隊長は腕を離すと、私の両肩を掴んで私の身体を180度反転させた。私と市丸隊長は向かい合う。
市丸隊長は優しく微笑んでいた。こんな顔を見るのは初めてだ。乱菊さんを見つめるよりも優しい目。
市丸隊長の唇が私の唇に重なった。
「僕がほんまにアカリちゃんのこと好きなの、分かってくれた?」
生まれて初めてのキス。頭がくらくらする。
「続きは次会うたときにしよか」
市丸隊長はにっこりと微笑んだ。私を本当に好きなのか、からかってるのか分からない、いつもの笑みで。
気がつくと私は執務室のソファーに横になっていた。
…ああそうだ、昨日市丸隊長にキスをされて、気を失ってしまったんだ。恥ずかしい。
キスされたのは夢だったのでは?でも私の身体にかけられたタオルケットから、市丸隊長の匂いがする。フローラルな香水の匂い。
今日は処刑の日だ。きっと市丸隊長も吉良副隊長もしばらく戻らないだろうから、二度寝してしまおう。
タオルケットを頭から被って、幸せな気分で眠りについた。次に目覚めたときは、また市丸隊長に会えますように。