早々午前中に売れてしまうことが多い、素朴な菓子パン、調理パン。 : 吉田菓子舗

若松の目抜き通りから一歩東に入った、小さな路地。
この通りにも伝統的家屋がちらほら残っているから、ご城下の時代からさぞかし賑わったのでしょうね。
そんな一角に美しい木戸が並ぶ「吉田菓子舗」さんへ。

店内には和洋生菓子、特に昔ながらの南東北の趣を感じさせるお茶請けのお菓子が、誇らしげに並んでいます。
この吉田菓子舗さん、もちろん伝統的なお菓子屋さんなのだけれど、有名なのが調理パンや菓子パン。
戦中戦後の配給制度の産物だとは、前回のレビューでご紹介しました。
正直申しあげて、技巧的にどうのというパンではないと思います。
でも、なんだかそそられるんですよね・・

引き戸の傍に置かれた小さな木製ケースには、ご自慢のパンたちがぎっしり！
これが午前中にはたいてい売れてしまう。
思うに、このお店の売り上げの半分ぐらい、このパンなのではないかな？
今回はあいにくの雨模様で、前回買い逃したものがいろいろ手に入りました。
残っているとなると、なおさらついついたくさん買ってしまう・・

まず、とんかつのパン(210円)
薄揚げにしたロースカツがとにかく美味しいです。
キャベツも挟んで、甘酸っぱいソースが染みていて、思えば、会津のソースカツ丼の味わいをパンに変えた感じです。

ハムサンド(150円)
前回はマヨネーズの効いたマカロニサラダが美味しかったから、今日はポテトサラダと思ったのだけど、あいにくこれは朝一番で全部売れてしまったそう。
ハムサンドもなかなかですね。
最近見なくなった縁取りが赤くしてあるボンレスハムが妙に美味しい。

コロッケ(180円)。
これも作り方はとんかつと同じで、キャベツとソースと、それにコロッケ。
コロッケは手作りなのでしょうね・・プチプチとコーンが入っている。
分厚くてお芋ほくほく、懐かしいコロッケで、コッペパンとの相性もバッチリです。

クリームパン(130円)
量産のパンとは違うクリーム、さりとてこだわりのベーカリーのクリームパンとももちろん違う素朴なもの。
どうやって作るんだろう？

あんこ(130円)
子供の頃、近所のパン屋にあった、何の変哲もない昔ながらのあんぱん。
こういうのにも最近あまりお目にかからないから逆に貴重ですね。

今回も楽しかった・・
若松に来たら、いつもなんとなく立ち寄ってしまうお店です。

会津若松の老舗、吉田菓子舗さんへ。
馬場町の鉤の手に近く、金融機関の支店も多い、謂わば旧市街のど真ん中にある和菓子屋さんですが、これが普通の和菓子屋さんとはちょっと違う。
此処の調理パンや菓子パンが評判で、いまや界隈ではちょっとした名物になっているのだと。
午前中に伺ったのですが、すでにいくつかのパンは売り切れているほどです。

店に入ってみると、長いショーケースに各種和菓子が並びます。
話題のパンは何処？と見渡すと、店頭に置かれた小さな什器に、菓子パン、調理パンがずらり。
もう、この木製什器からして、堪らない素朴な魅力を醸しています。
余談ながら、今どきのベーカリーは店晒しにして焼きたてパンを並べますが、衛生上は如何なものかと。
此処みたいに、外気を遮断できる什器に大切にパンを並べるやり方は、昔ながらの配慮がしっかりなされているわけです。

整然と並ぶパンたちは実に素朴な顔ぶれ。
特に人気の調理パンのなかでも、今日も10時頃に揚げたてを並べた筈の「カツサンド」が、昼前にもう売り切れなのだと。
第一志望に振られて買い求めたのは、「コロッケパン」(170円)、それに「マカロニサラダパン」(140円)。

先ず、コロッケパンに齧りつくと、ベースのコッペパン生地が、キメ細かくもしっかりしていて、噛みきるたびにもちもち。
訊けば、昔ながらの製法なのだと。
コロッケが素朴な旨さで、芋の甘みを感じます。

マカロニサラダが、これまたなんとも懐かしくて唸ってしまいました。
絶妙な茹で加減のマカロニに、まるで家庭のおかあさんの手作りグラタンのような優しいソースが絡みます。
ニンジンやグリーンピースまで入っていて、これは感涙ものですね。

今、お店を継がれているのは三代目。
創業70年を優に超えるほどのお店で、もともとのお店の起こりはもちろん屋号通りの和菓子屋さん。
何故パンをスタートしたかというと、どうやら戦時中の小麦粉やパンの配給制度が背景にあったようだと。
食糧事情が深刻になって、豊かな収穫がある会津の皆さんだって、何時もひもじい思いをしていた、そんな時代。
配給に回すためのパンを焼き、それが国民の命綱だった時代がありました。

その頃からの由来なのが、吉田菓子舗のパンなのだと。
もちろん、爾来70年以上にわたり何度も改良されている筈ですが、豊かになった今の時代にも支持され続け、それどころか開眼の旨さだとあらためて持て囃される。
何とも感慨深いものがありますね。