Yamad853さんが投稿したオマージュ(東京/浅草)の口コミ詳細

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オマージュ浅草(つくばEXP)、浅草(東武・都営・メトロ)/フレンチ

1

  • 夜の点数:4.2

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 4.5
      • |サービス 4.3
      • |雰囲気 3.8
      • |CP 4.2
      • |酒・ドリンク 4.3
1回目

2020/02 訪問

  • 夜の点数:4.2

    • [ 料理・味4.5
    • | サービス4.3
    • | 雰囲気3.8
    • | CP4.2
    • | 酒・ドリンク4.3
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

時を経ても、味を思い出せる店が、いいに決まってる。

家ごもりが長くなると、美味しいもの食べたいなぁ、とかあー、あの店の味また味わいたいなぁ、と牛が反芻するように思い出を反芻してしまう意地汚い私。少し時間が経っても、味が思い出せる店ってあるでしょう。他方、全然味の記憶が浮かび上がってこない店もある。一万個の舌の上の味蕾(みらい)。塩味、甘味、酸味、うま味、苦味を感じ取るヒトの味覚器官である。この舌の上の記憶。そして、鼻腔を通り抜ける香りや、熱さの記憶。勿論一緒に食事した人との調味料のような会話の記憶も。
「オマージュ」の味は鮮明に思い出せる。それだけ他と違う、喜びと驚きがある、図抜けて旨かったのである。

ほうぉ、こんなところに、と思わせる浅草・浅草寺の裏手に、この店はある。こんなところとは、かつては浅草の中心地で粋筋の通う場所だったのだ。
今さびれているというわけではないが、雷門側の観光客で賑わう場所とは違い、お店の電飾看板などもあまり出ていないからか、やや薄暗くひっそりとしてみえる界隈なのだ。しかしその中にうずくまるように、名店たちが隠れているのもここいら辺の魅力といえる。
寒い、といっても零下にまでは至らない2月の夜、僕らはミシュラン2つ星のフレンチ、「オマージュ」を訪れた。2階に通されると、こじんまりとした空間に、さほど特徴的でないテーブルや椅子。お店のウェブサイトには、シンプルで気取らないくつろぎ空間、と紹介されているが、悪くいえば特徴のない、普通の部屋である。ただ、各テーブルのクロス上にセッティングされた飾り皿は、青磁の碧さが美しい焼き物だ。これがアクセントとしての華やかさかを演出している。
コートを預けて席に着きほっと一息付くと、まずはシャンパーニュのお出迎えだ。ビレカール・サルモンという芳醇で少し複雑な味わいの落ち着いた飲み心地だ。このシャンパーニュをはじめ、白・赤ともグラス飲みで、お料理とマリアージュして戴くことにした。
箸が箸箱に入って出てきた。柘植で出来ているような、シンプルで上品な箸だ。
そしてアミューズブーシュ登場!いざ頂かん。
炭のタルトにフレッシュチーズのムースとオリジナルのカラスミを入れて大根で蓋をしたもの。人参のチップに人参のムースを敷いて上に人参のフリットを載せ、人参の葉をあしらったもの。ジャスミンの香りが添えられている。
マッシュルームのベシャメルと子牛の煮込みを包んだサイコロ型のコロッケ。いやー確かにこういうのが記憶に残るのだ。ベシャメルと煮込みのコクがいい。マリネの鯵を大葉とフォアグラの塩漬けで巻いたものも出た。どれも二人前づつ、小ぶりの白と黒の皿に盛りつけられて出てくる。最初の皿はとても重要だ。全体の印象がここで決まるから。
チーズを絡めた棒状のワッフル(結構長くてでかい)とともに、丸い立体的なお皿に入れられたビーツのスープが出てきた。ワッフルも旨いが、スープはまた滑らかな口当たりで秀逸。ぺろりっと戴いてしまう。
ここでブルゴーニュのムルソー2012の白が出た。金の一滴、ブルゴーニュの果実味を味わう。
続く皿は、牡蠣だ。
あれれ、牡蠣の殻の中に、雲丹があしらわれているぞ。贅沢ですねー。一番下に牡蠣のババロアと昆布出汁で火を入れた牡蠣が載って、さらにその上に北海道厚岸産のバフン雲丹と、それを包むシャンパーニュのジュレ。上にオリーブの実と、牡蠣の香りがするという不思議な葉オイスターリーフと、食用のボリジという青紫の小さな花があしらわれている。凝りまくっているが、奇をてらっているわけではない。まさしく凝縮された洗練、海からのご褒美だ。
次のマリアージュは、ムルソー村のご近所さんのサン・ロマから。縦に細長いブルゴーニュ地域の、コート・ドールから西に出っ張ったところにある村だ。このワインはミネラル感たっぷり。
真鯖。
冷製仕立ての前菜は、真鯖。塩と砂糖で水分を出して、京都の千鳥酢という酢で締めたという鯖。この日は千葉産とか。しっかり厚切りで、真鯖の皮の文様がくっきりしている。そこに、ういきょう(フェンネル)のサラダ仕立てと西洋山葵(ホースラディッシュ)のアイスクリームが添えられている。鯖はそのまま食べてもいいが、いくらとフレッシュチーズのソースに浸して食すと、和の風情が消えて瞬く間にフレンチになる。アイスは相当鼻にツンとくるほど辛みがある。
甘鯛。
松カサ焼きという、鱗をカリカリにする調理法だ。鱗を落とさずぱりぱりの揚げ焼きにして、京菜花と鰹節の御出汁を添える。オリーブオイルとスダチが効いた一皿。こちらのお店のスペシャリティだそうで、適当な大きさの鱗の鯛を選ぶのが大事だとか。魚の大きさが鱗に関係するので、700グラムくらいのが最適らしい。これは和食店では出せない和のご馳走です。
村越シャムロック。
青森の村越さんという方が育てている、味がしっかりして旨味が強い軍鶏のブイヨンのシャンパーニュスープだ。自家製のラビオリで包んだ軍鶏とフォアグラも仕立ててある。スープに濃厚なコクがある。
ここからはグラスは赤に替わる。2008年のニュイ・サン・ジョルジュのプレミアムクリュ。ボディがしっかりしていて深い。どうして家で飲むよりこんなに旨いのだろう。
鴨のフォアグラ冷製仕立て。
ダニエルキャスタンのフォアグラが、帽子のように頭にどっさりと野菜を載せて運ばれてきた。フォアグラが隠れて見えない。体に優しい野菜、本当は嫌いだけれど体に必要だから戴きます。葉物野菜にお花も入っている。野菜の種類が近頃増えてきたので、パッと見て小松菜、とか春菊、とかもう言えない。ロマネスコを最初に見たときは、仏陀の頭かと思って腰を抜かしたものだ。でも野菜って実は美味しいかもな~。
この後の赤ワインは、ジュブレ・シャンベルタン プルミエールクリュ2017年。当然イケルに決まっている。つまりこのお店では、ペアリングワインは終始一貫してブルゴーニュ・コートドールで揃えられているというわけか。料理同様一貫性があるんですね。
マダムビュルゴーのシャラン鴨。
シャラン鴨の胸肉がレアにグリエされて、黄金色のソースを纏って登場する。滋味深くてじんわりジューシーで感動を呼ぶお肉だが、この頃にもなるとワインの酒精が体内に回って、もう細かいところの記憶がない。ただ、美味しい!だけが強烈に残っている。
私の遠い親戚筋に、ワイン輸入業を先代から営んでいる人がいる。彼は一滴も酒を飲めない。試飲というのは、ゴクンと飲まないでペッと(勿体ないことに)吐き出すのだから、原理として酔わないわけであるし、そもそも彼は酔いたくもなければ、酔うと気分が悪くなるわけである。こういう人がワインの輸入に関わっているというのはワインへの冒涜じゃないか、と思っていたのだが、考えるに酔っぱらってしまうと何事も大雑把になってきてしまうし、だんだん味の違いも分からなくなってくるので、下戸のほうがワインを吟味したりする仕事には向いているということなのか。でも矢張り許せないんだけど…。
無論、へべれけになっているわけではない。こうした店でそういう状態になるのは禁物であるが、とはいえ大層いい気分になってきたので、浅草寺のライトアップを見て、酔い覚ましと多少の腹ごなしの運動を兼ねつつ散歩しながら帰還するか、と考えていると、ここから(フランスのお店ほどではないが)結構沢山のデザートが供された。最後には、わざわざ店主が料理道具屋で求めたという焼き型鉄板に載せられて、うやうやしく人形焼きが出てきた。これぞ浅草風のウィットというべきか。
荒井昇オーナーシェフは、浅草生まれの浅草育ち。渡仏して修行ののち26歳の若さでオマージュを開店したとのこと。奥様と二人三脚でやってこられたのだろうが、既に2020年時点で20年の歴史を誇る。でもまだ46歳でいらっしゃるので、この先が本当に楽しみな料理人だ。シンプル、ある意味普通の部屋と申し上げたが、バラエティに富んだ姿をした料理の数々を引き立てるために、店は敢えてシンプルにしているのだと理解した。
美味しい記憶を辿りつつ、オマージュをオマージュし、再訪を誓う。

2020/12/12 更新

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