自然派ワインのパイオニアですね。 : ル シェーヌ

日本一時帰国のため、再訪しました。

壁を見ると、何人か生産者がこのお店にやってきたらしく、その方々のサインが入っていました。よく見ると直近の日付で、ナチュールワインの巨匠のフィリップ・パカレ氏のサインがありました。そこで店主の方とお話ししたところ、びっくりするほど充実したラインナップのパカレさんのワインを所有しておられました。あの瞬間のライナップの豊富さは、世界屈指だったと思います。パカレのワインこそ、nomaの成功ののち、世界に広まり、そのワインの素晴らしさから自然派ワインが世の中に広がるきっかけを作ったものだと思います。nomaを真似、様々な世界の有名店がパカレのワインをワインとカップリングの際に出すようになっています。結果、彼のワインは、自然派が好きという人にとどまらず、ブルゴーニュの愛好家に好まれており、現在価格が急上昇中です。先日ブルゴーニュのボーヌのワイン屋さんで見かけた時は、村名グレードのワインが一本１００ユーロを越えていました。5年前の数倍の値段で世界中で取引されています。最終的にルロワクラスまで行くこともありえるかもしれないと最近感じます。

お話させていただいてわかったのは、かつて店主の方はパカレと一緒にワインを作っていたのですね。圧倒的なワインの知識も納得です。ワインスクールの講師もされているとのことです。充実のラインナップのうちから、オススメのパカレのものをボトルでいただきました。流石にそれなりのお会計になりましたが、現在のパカレのボトルの相場から考えられると考えられないほどのお得なお値段でした。
ちなみに、1本目に開けたボトルは、店主の方がテイスティングをし、まだ飲み頃ではないという判断で、別のを開けてお出ししましょうとなりました。こういうサービスを受けることはあまりなく、大変ありがたい経験でした。ナチュールの場合、プショネがよくありますが、明らかにプショネとわかりボトルを変えてもらったことが過去数回ありました。ただ、プショネでなくてもひらいておらず数日待った方がいいボトルというのもよくあります。そういうボトルは今まで普通にいただいていたんで、大変ありがたいサービスでした。

今回滞在中に数回お邪魔しましたが、結局開けたのは2017年のGevery Chianvertin、2015年のニュイサンジョルジュ、2016のAloxe Corton 1er Creでした。それからもう一つガメイを開けたでしょうか。Gevery ChainvertinとAloxe Cortonは今後10年が楽しみなワイン、2015年のニュイサンジョルジュは今飲んでもパーフェクトなワインでした。ガメイはガメイでもパカレが作るとパカレのワインになるんですね。流石にこれだけ開けると結構なお値段になりましたが、どうでしょうか、いくところ行くと、私が払いましたお金の数倍要求されるでしょうか？しかし、生産者以外のところ以外で、これだけそうそうたるワインをパカパカ開けた経験ってあんまりないんですよね。お金の問題ではない得がたい経験となりました。

あれだけのワインの知識と経験がある方が選んだワインの数々、納得です。どの予算のレンジでもすごいワインを出してきますし、グラスワイン用に開いているボトルも常に複数本あるようでしたから、しっかり好みと予算を伝えて食事をされたら良いのではないかと思いましした。

世界中の名だたる有名レストランにたくさん行きました。それこそNomaとか。分子ガストロノミーとかどうやって作っているのかわからないけど、とにかく味が複雑で美味しいレストラン。意外性がすごく食事をしていて、全く飽きないのではと思えるレストランは素晴らしいですが、何回か行けば、なぜか飽きてしまい、別にいいかと思えます。

ルシェーヌで出される料理は良くも悪くも普通の美味しい料理です。素晴らしい食材をシンプルな味付けで。和食ではそういうお店よくありますよね。素晴らしい素材とその良さを生かすシンプルな料理と美味しいお酒。ただ、フレンチとなるとあまりありません。料理そのものは良くても、ワインのレベルが極端に落ちる店が多いように思いますし、ワインのレベルが高いお店ですと、味付けもそれなりですが、極端に値段が高くなります。

また、このお店の特色は提供されるワインのコストパフォーマンスの良さでしょう。いわゆる自然派と言われるワインは前述のNomaでの成功以来世界中に広がりましたが、中には癖が強かったり、匂いがけしていいと思えないもの、酸化が進みすぎて極端に酸っぱいものがあります。Nomaのように組み合わせの目新しさで勝負するなら、そういったワインでなければ合わない料理もあるかと思いますが、普通の美味しい食事にはどうでしょうか？このお店で出されるワインは全て自然派ワインでした。いずれも丁寧に綺麗に作られているワインばかり。値段の設定がボトルのクオリティに比べると極端に安いです。おそらくソムリエの方がそういうワインを厳選して仕入れておられるのでしょう。優しい料理に合間って、体に染み渡るように思えます。

劇場型のレストランや分子ガストロノミーのレストランはテーマパークに行くように楽しめ、それはそれでいいですし、星付きレストランの心地よい中にも緊張感のある接客は素晴らしいですが、時に疲れます。肩肘張らず本当に好きな人と楽しく食事をするならこういうレストランがいいなと思いました。