第2回親を頼れないのに…奨学金の厳しい手続き 21歳大学生の葛藤と疑問
一人暮らしのアパートに、見覚えのない封筒が届いたのは、昨年のことだった。
「高校のときの奨学金の返済が引き落としできません。いますぐ振り込んでください」
封筒のなかには、そう書かれた紙が入っていて、愛知県の大学生の女性(21)は驚いた。
封筒の送り主である、市の教育委員会に駆け込んだ。よく聞き調べると、高校の入学時に、母が市の入学準備金と、県の奨学金を申し込んでいた。このとき、女性は初めて自分の名義で返済義務のあるお金を借りていたことを知った。
女性の両親は結婚しておらず、生後数カ月で父がいなくなった。中学2年で祖母が亡くなり、母と2人暮らしになった。
母からは暴力を振るわれ、食事が出るのも気分次第だった。心配した中学の教員が児童相談所に通報し、高校受験の1週間前に一時保護された。
私立高校に合格したが、パートタイムで働く母に生活の余裕はない。
お金がないのが不安でたまらず、1年生のころから、飲食店でアルバイトに励んだ。授業料の一部をバイト代から支払うこともあった。自宅では、たびたび電気やガスが止まった。昼食の弁当をつくる元気もなかった。
「友だちはみんなお弁当を持ってきて、一緒に食べている。うらやましいな、という気持ちはありました」
高校を卒業するまでに計10回、児相に一時保護された。
まさか、母が奨学金を申請し、支給されていたなんて――。仕方なく自分で払い続けることにした。
誰もが希望の学びをかなえるためにある奨学金制度。しかし、利用できるはずの制度をよく知らない、制度が難しい、という学生は少なくない。正しく必要な情報を届けるには、何が必要なのか。
親の署名、手数料…制度あっても不安
「封筒に気づいて自分で相談…
- 川野由起
- くらし報道部
- 専門・関心分野
- こどもの虐待、社会的養育、ケア、依存症、生活保護
- 【視点】
「親がかり」「家族主義」が当然の前提のようにされている社会の中で、親が子を支えるどころか、マイナス方向に足を引っ張るようなケースも決して珍しくない。そのような状態にある子ども側を対象とする支援制度も無くはないが、そこに該当することの証明をぐ
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