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「お家キャンプ」やってみた 人気のベランピング、非日常が魅力

 新型コロナウイルスの封じ込めに向けた外出自粛で、ストレスが募りそうな今年の大型連休。自宅で楽しむキャンプ「ベランピング」が注目を集めている。気軽に“非日常”を味わえるのが人気で、インターネット通販ではアウトドア用品の売り上げも伸びている。在宅勤務が続く記者が、魅力を探った。

 ベランダで青空を見上げながら、炊き込みご飯をほおばった。飯ごうで炊いたからか、タケノコの風味がたまらない。ひとしきり味わったら、コーヒーと文庫本を手に室内に張ったテントへ。薄暗さが秘密基地のようで高揚感が広がる。寝転びながら小説を読み、外から聞こえる鳥のさえずりに耳を澄ます。そよ風も心地よい。実にぜいたくな時間だ。

 ベランピングとは、「ベランダ」と、魅力的なキャンプを意味する「グランピング」を合わせた造語。自宅ベランダや庭などにアウトドア空間をつくり、ゆっくりとした時間を楽しむ。2016年ごろから女性誌などで注目を集め、近年のキャンプ人気とともに親しむ人が増えているという。

 簡単な調理をしたり、テントを張ったり、椅子でくつろいでコーヒーや菓子を味わったり。「天気や時間を気にしなくてよく、風呂や電気の心配も不要。自分だけの空間を満喫できる」。キャンプ専門サイト「CAMPTANK」を運営する福岡市博多区の丸山航さん(28)はこう語る。

 記者も早速、ネット通販でテントと飯ごうを購入。テントを組み立てるのは初めてだったが、説明書を見ながら約10分で完成した。

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 キャンプは今、若者からシニア層までが親しむ。市場調査会社の矢野経済研究所によると、18年の国内アウトドア関連市場は前年比7・5%増の5007億円。19年も5230億円(推計)と伸びている。

 アウトドア用品メーカー「モンベル」(大阪市)は、全国の約120店舗を臨時休業している。その反動もあってか「通販サイトでの売り上げは前年を上回る好調」という。

 担当者は「お湯を使わない食品、ランタンやテントは(16年の)熊本地震以降、防災グッズとしても見直されてきた」と説明する。コロナ禍という“災害”であらためて注目され「今は自宅で楽しみ、落ち着いたら山で本来のキャンプを楽しむのも良いですね」。

 ただ、注意点もある。賃貸住宅やマンションのベランダは、エレベーターや階段と同じ「共用部分」に当たる一方、各戸の住民が使用権を持つ「専用使用部分」でもある。物件によっては、喫煙などを禁じているケースもある。

 総務省消防庁は「ベランピングの際は、避難経路の確保と火気の取り扱いに注意してほしい」と訴える。通路をふさぐような大きな物を置くのは厳禁。火気にも注意が必要だが「一般的には、カセットこんろや固形燃料は室内でも使うことができ、ベランダで全く駄目というわけではない。ただし引火や爆発の危険がある物は禁止の場合が多い」。物件によって細かなルールは異なるため、管理規約の確認が必要だ。

 丸山さんによると、煙は近隣に迷惑を掛ける恐れがあるため、煙の出ないガスのシングルバーナーや固形燃料がお薦めという。食べ物のにおい、話し声や音も配慮が大切だ。

 会員制交流サイト(SNS)で「#ベランピング」を検索すると、おしゃれな道具にこだわる人、シートを敷くだけの人、段ボールで簡易テントを作る人などさまざま。近所への配慮を忘れずに、非日常の世界に足を踏み入れてみてはいかが。

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