「両院制」の版間の差分
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[[ファイル:Unibicameral Map.svg|400px|thumb|{{legend|#38b4d8|両院制を採用している国}}{{legend|#f09c30|一院制を採用している国}}{{legend|#b0e947|一院制及び諮問機関を採用する国}}{{legend|#333333|議会がない国}}]]
'''両院制'''(りょういんせい、{{lang-en-short|Bicameral system}})とは、二つの「[[議院]]」によって構成される[[議会]]がそれぞれ独立して活動する制度である。'''二院制'''(にいんせい)とも呼ばれる。対照的な制度に[[一院制]]がある。
==
=== 二院制と両院制 ===
; 両院制
: 「1つの[[議会]]」が、独立した2つの[[議会|議院]]によって構成されているもの。
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=== 上院と下院 ===
「[[上院]] ({{lang|en|upper house}})」「[[下院]] ({{lang|en|lower house}})」という言葉は、アメリカの首都が[[フィラデルフィア]]にあった頃
=== 第一院と第二院 ===
[[議会|議会制度]]の発祥地である[[イギリス]]をはじめ、欧米の多くの国では[[上院]]に相当する議院(貴族院、[[元老院]]など)を「'''第二院'''」、[[下院]]に相当する議院([[庶民院]]、[[代議院]]など)を「'''第一院'''」としている。
日本 [[オランダ]]においては正反対であり、上院を[[第一院 (オランダ)|第一院]]、下院を[[第二院 (オランダ)|第二院]]としている。
== 両院制の特徴 ==
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「両院制」の意義は「多角的な民意の反映」というのが本来の趣旨である{{Sfn|前田|1997|p=14}}。これは双方異なった方法で選出されて構成される議院が存在することによって、様々な角度からの意見が反映されていくことでより深い議論が出来るというものである{{Sfn|前田|1997|p=14-15}}。加えて、下院のみでは代表され得ない国民の意思を国政に反映させ、国民の意思を問う回数を増やすという意義もあるとされる{{Sfn|前田|1997|p=14-15}}。
しかしながら、「下院の決定に過誤があった際に改めること」も「多角的な民意の反映」も、その達成のために「両院制」というシステムを採用する必然はなく、その目的達成のために他に合理的な手法がいくらでも考えられる。むしろ「両院制」の目的は、日本国憲法の制定時の政府の見解にあるように、一院制では必ず院内の多数党が形成され、その多数党の横暴が懸念されるため<ref name="kenpoQ&A"/>、両院制として多数党の形成および維持を難しくする(両院の選挙で勝たなければ、両院で多数党になれない)ことにあると言うべきである。
下院に相当する議院は基本的には、社会の多勢を占める[[中流階級|中産階級]]の利害を代表している。政治が異なる利害の調節を行なう作業である以上、中産階級で代表されるものとは別の視点からの利害を何らかの形で反映するメカニズムが存在しなければならない。それは[[少数民族]]であったり、各地方の利害であったりする。社会が複数の民族から構成される場合や、異なる[[言語]]集団から構成される場合は特に重要となる。
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== 両院制の採用 ==
国名の表記および順序は[[国の一覧]]に準拠した。
<!-- サウジアラビアに議会は存在するため、この画像は不正確
[[File:Unibicameral Map.svg|400px|thumb|{{legend|#38b4d8|両院制を採用している国}}{{legend|#f09c30|一院制を採用している国}}{{legend|#333333|議会がない国}}]] -->
=== 両院制を採用している国 ===
{{div col}}
*[[ヨーロッパ]]
**{{flag|アイルランド}}
**{{flag|イギリス}}
**{{flag|イタリア}}
**{{flag|オーストリア}}
**{{flag|オランダ}}
**{{flag|スイス}}
**{{flag|スペイン}}
**{{flag|スロベニア}}
**{{flag|チェコ}}
**{{flag|ドイツ}}
**{{flag|フランス}}
**{{flag|ベラルーシ}}
**{{flag|ベルギー}}
**{{flag|ポーランド}}
**{{flag|ボスニア・ヘルツェゴビナ}}
**{{flag|ルーマニア}}
**{{flag|ロシア}}
*[[アジア]]
**{{flag|アフガニスタン}}
**{{flag|インド}}
**{{flag|インドネシア}}
**{{flag|ウズベキスタン}}
**{{flag|オマーン}}
**{{flag|カザフスタン}}
**{{flag|カンボジア}}
**{{flag|タイ王国|タイ}}
**{{flag|タジキスタン}}
**{{flag|日本}}
**{{flag|ネパール}}
**{{flag|バーレーン}}
**{{flag|パキスタン}}
**{{flag|ブータン}}
**{{flag|フィリピン}}
**{{flag|マレーシア}}
**{{flag|ミャンマー}}
**{{flag|ヨルダン}}
*[[北アメリカ]]
**{{flag|アメリカ合衆国}}
**{{flag|カナダ}} **{{flag|メキシコ}} *[[南アメリカ]]
**{{flag|アルゼンチン}}
**{{flag|アンティグア・バーブーダ}}
**{{flag|ウルグアイ}}
**{{flag|グレナダ}}
**{{flag|コロンビア}}
**{{flag|ジャマイカ}}
**{{flag|セントルシア}}
**{{flag|チリ}}
**{{flag|ドミニカ共和国}}
**{{flag|トリニダード・トバゴ}}
**{{flag|ハイチ}}
**{{flag|バハマ}}
**{{flag|パラグアイ}}
**{{flag|バルバドス}}
**{{flag|ブラジル}}
**{{flag|ベリーズ}}
**{{flag|ボリビア}}
*[[アフリカ]]
**{{flag|アルジェリア}}
**{{flag|エチオピア}}
**{{flag|ガボン}}
**{{flag|カメルーン}}
**{{flag|ケニア}}
**{{flag|コンゴ共和国}}
**{{flag|コンゴ民主共和国}}
**{{flag|ジンバブエ}}
**{{flag|スーダン}}
**{{flag|スワジランド}}
**{{flag|赤道ギニア}}
**{{flag|ソマリア}}
**{{flag|ナイジェリア}}
**{{flag|ナミビア}}
**{{flag|ブルキナファソ}}
**{{flag|ブルンジ}}
**{{flag|マダガスカル}}
**{{flag|南アフリカ}}
**{{flag|南スーダン}}
**{{flag|モーリタニア}}
**{{flag|モロッコ}}
**{{flag|リベリア}}
**{{flag|ルワンダ}}
**{{flag|レソト}}
*[[オセアニア]]
**{{flag|オーストラリア}}
**{{flagicon|パラオ}} [[パラオ|パラオ共和国]] *[[海外領土]]
**{{flag|アメリカ領サモア}}
**{{flag|北マリアナ諸島}} **{{flag|バミューダ諸島}} **{{flag|プエルトリコ}} **{{flag|マン島}} *その他
**{{flag|ソマリランド}}
{{div col end}}
*{{flag|ニュージーランド}} - 1951年に一院制となった。
*{{flag|大韓民国}} - [[第二共和国 (大韓民国)|第二共和国]]以後一院制転換。
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*{{flagicon|中華民国}} [[台湾]]([[中華民国]]) - 2005年に国民大会の機能が凍結されることによって、現在では完全に立法院の一院制となった。
*{{flag|トルコ}} - 1982年憲法改正により一院制となった。
*{{flag|ノルウェー}} - 2009年に一院制となった。
*{{flag|トルクメニスタン}} - 2023年憲法改正により一院制となった。
===
;{{flag|アメリカ合衆国}}(米国)
:米国の州議会は、[[ネブラスカ州]]を除く49の州議会がすべて両院制である。また、[[アメリカ領サモア]]・[[北マリアナ諸島]]・[[プエルトリコ]]の3つの未編入領域も両院制を採用している。ただし、首都[[ワシントンD.C.]]とその他3つの未編入領域は一院制である。
=== 国際機関での採用 ===
;{{flag|欧州連合}}(EU)
:欧州連合では、加盟国の市民が直接投票で選んだ議員からなる[[欧州議会]]と、加盟国の政府の閣僚で構成される[[欧州連合理事会]]が、法令の制定を行う立法機関となっており、法令の制定のためには両機関の採択を受けることなどが求められている。この点から、欧州連合においても両院制を採っているとみなすことができる(詳細は[[欧州連合の立法手続]]も参照のこと)。
== 両院制の類型 ==
両院制の代表的な分類では、次のように類型化される。
; 連邦型(連邦代表型)
: [[アメリカ合衆国|アメリカ]]、[[スイス]]、[[ドイツ]]、[[オーストラリア]]など。
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; 民選議院型(民主的第2次院型)
: [[イタリア]]、[[日本]]など。
; 間接民主型(選挙人団選出型)
: [[フランス]]など<ref name=":0">[
この類型は立法府のみに着目した形式的なものであり、行政府との関係も視野に入れると
[[貴族院 (イギリス)|貴族院]]型の代表例は[[イギリス]]である。[[イギリスの議会]]には「選挙の洗礼を受けた上で[[庶民院 (イギリス)|庶民院]](下院)を通過させた法案を、[[貴族院 (イギリス)|貴族院]](上院)は修正はできるが阻止することはできない」とする不文律([[ソールズベリー・ドクトリン]])がある。この貴族院も今日ではもとからの世襲の貴族である議員は92人に削減され、現在の貴族院議員のほとんどは“[[一代貴族]]”(有識者や功労者を貴族院議員にするために一代限りの貴族として認定した者)である。このため、特権階級の代表としての意義は殆どない。[[戦前#日本|戦前]]日本の[[帝国議会]]の[[貴族院 (日本)|貴族院]]にも、学識経験者などからなる勅選議員がいた。なお、[[貴族院 (イギリス)|イギリスの貴族院]]は2009年まで[[イギリス最高裁判所|最高裁判所]]を兼ねており、[[違憲立法審査権]]に相当する機能を果たしてきた。類似の制度としては、議会とはみなされていないものの、[[イラン]]の[[監督者評議会]]が挙げられる。
民選議院型のうち[[国会 (日本)|日本の国会]]([[参議院]])や[[イタリア議会|イタリアの議会]]([[元老院 (イタリア)|元老院]])では、上院議員も直接選挙で選んでいる。両国とも議院内閣制であるが、イタリアでは[[内閣不信任決議]]・[[解散 (議会)|解散]]を含め上院と下院が完全に対等である点が異なる。上下院の分裂を避けるためイタリアでは両院同日選挙が慣例となっており、そういった意味では一院制に近いとも言える。
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他方で[[フランス]]は[[中央集権]]的色彩の特に強い[[単一国家]]であるが、[[国会 (フランス)|国会]]の[[元老院 (フランス)|フランス元老院]]の位置付けはドイツやアメリカのような連邦型に近い。下院と地方議会の議員約15万人が上院議員を選挙する間接選挙であり、主権民たる国民による直接選挙は行われない<ref name=":0" />。
ノルウェーの議会・立法府(「[[ストーティング]]」)は2007年の憲法改正までは国政選挙を一括して行い、選挙後に'''議員を二院に分ける'''変則型であ
== 日本国憲法における両院制 ==
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=== 両院制の採用 ===
[[第二次世界大戦]]の終戦後に[[日本国憲法]]が制定<!--(手続上は[[大日本帝国憲法]]の全文改訂)--><!--薮蛇/混乱回避-->された際、当初[[連合国軍最高司令官総司令部|GHQ]]から提示されたいわゆる[[マッカーサー草案]]では、国会は一院制になっていた。この草案は、1946年(昭和21年)2月13日に[[東京都庭園美術館|外務大臣公邸]]でGHQ[[民政局]]局長の[[コートニー・ホイットニー|ホイットニー]]准将が会談した[[外務大臣 (日本)|外務大臣]]の[[吉田茂]]と憲法改正を担当する[[国務大臣]]の[[松本烝治]]に対して手交したものだが、これを見た松本はその場で、一院制では選挙で多数党が変わる度に前政権が作った法律をすべて変更して政情が安定しなくなることを指摘し、二院制の検討をホイットニーに迫って約束させている<ref>{{quotation|...Dr. Matsumoto then said that most other countries have a two House system to give stability to the operation of the legislature. If, however, only one House existed, said Dr. Matsumoto, one party will get a majority and go to an extreme and then another party will come in and go the opposite extreme so that, having a second House would provide stability and continuity to the policies of the government. General Whitney then said that the Supreme Commander would give thoughtful consideration to any point such as that made by Dr. Matsumoto which would lend support to a bicameral legislature and that, so long as the basic principles set forth in the draft Constitution were not impaired, his views would be fully discussed...|{{small|[
{{quotation|(和訳)…松本氏はそして「他の多くの国は、立法府の活動の安定化のために二院制を取る」と言った。「もし一院しかなければ、ある政党が多数を取れば一方の極に振れ、その後に別の政党が多数を取れば逆の極に振れるので、第二院が存在することにより政府の政策に安定性と連続性が与えられる」と彼は言った。ホイットニー将軍は「最高司令官は、松本氏が出した二院制を支持する主張を熟慮するであろうし、憲法案にある基本原則が阻害されない限り、松本氏の考えは十分に議論されるであろう」と言った。…|{{small|1946年2月13日に新憲法案が最高司令官に代理し吉田首相<br />(実際は当時は外相)に手交された際の記録}}}}<!--[[チャールズ・L・ケーディス|ケーディス]]大佐ほか作成--></ref><ref>{{quotation|…二院制ノ存在理由ニ付一應說明ヲ爲シタル所先方側ニ於テハ初メテ二院制ノ由來ト作用ヲ聽キタルカノ如キ觀アリタリ…|{{small|[
その後、[[帝国議会|議会]]と[[枢密院 (日本)|枢密院]]での議論のために[[法制局]]が作成した想定問答集では、「問 一院制を採らず兩院制を採る事由如何」「答 一院制を採るときは、いはゆる政黨政治の弊害、即ち多數黨の横暴、腐敗、黨利黨畧の貫徹等が絶無であるとは保し難いのであつて…」<ref name="kenpoQ&A">[
=== 両院の比較 ===
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|-
! 定数
| 465議席 ||
|-
! 任期
140 ⟶ 224行目:
|}
なお、2015年(平成27年)6月に公職選挙法等の一部を改正する法律が成立・公布され、2016年(平成28年)6月19日の施行により年齢満18歳以上満20歳未満の者も選挙に参加することができることとなった<ref>{{Cite web
=== 参議院改革論 ===
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== 脚注 ==
{{Reflist|40em}}
== 参考文献 ==
165 ⟶ 249行目:
}}
== 関連項目 ==
* [[
* [[
* [[一院制]]
* [[参議院不要論]]
{{両院制の立法府}}
{{権力分立}}
{{authority control}}
{{デフォルトソート:りよういんせい}}
[[Category:両院制議会|*]]
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