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'''MADムービー'''(マッドムービー)とは、既存の[[音声]]・[[ゲーム]]・[[画像]]・[[動画]]・[[アニメーション]]などを、権利者に無断で映像や静止画を個人が[[編集]]・合成し、再構成した[[著作権侵害]]物<ref>{{Cite web|title=他人が作成したアニメを使った動画(mad)は、アニメ制作会社著作権を侵害しているのではないでしょうか?|あなたの弁護士|url=https://yourbengo.jp/internet/qas/11862/|website=あなたの弁護士|accessdate=2021-12-22}}</ref>。単に「MAD」と呼ばれることも多く、ネットコミュニティにおいてはもっぱらこの呼称が主流となっている。ただし[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]や[[コンピュータグラフィックス|CG]]ソフトが普及した21世紀初頭には「手書き(描き)MAD」(後述)という用語が出現するなど意味の拡散がみられる。主にファン活動の一環として行われる。近年では、音楽をベースとして編集される「[[音MAD]]」と呼ばれるものも増加している。「MAD」とは「狂っている、ばかげている」の英訳である「mad」の意。<!--
{{複数の問題
50年代から発行され続けているアメリカの[[パロディ]]・マンガ雑誌『MAD』に由来する。{{要出典}}-->ちなみに、このような映像技法を[[サンプリング]]と呼ばれている{{R|テクネ 映像の教室}}。
|出典の明記=2008年7月
|独自研究=2009年2月
}}
'''MADムービー'''(マッドムービー)とは、既存の[[音声]]・[[ゲーム]]・[[画像]]・[[動画]]・[[アニメーション]]などを、権利者に無断で映像や静止画を個人が[[編集]]・合成し、再構成した[[著作権侵害]]物<ref>{{Cite web|title=他人が作成したアニメを使った動画(mad)は、アニメ制作会社の著作権を侵害しているのではないでしょうか?|あなたの弁護士|url=https://yourbengo.jp/internet/qas/11862/|website=あなたの弁護士|accessdate=2021-12-22}}</ref>。単に「MAD」と呼ばれることも多く、ネットコミュニティにおいてはもっぱらこの呼称が主流となっている。ただし[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]や[[コンピュータグラフィックス|CG]]ソフトが普及した21世紀初頭には「手書き(描き)MAD」(後述)という用語が出現するなど意味の拡散がみられる。近年では、音楽をベースとして編集される「[[音MAD]]」と呼ばれるものも増加している。「MAD」とは「狂っている、ばかげている」の英訳である「mad」の意。<!--
50年代から発行され続けているアメリカの[[パロディ]]・マンガ雑誌『MAD』に由来する。{{要出典}}-->
 
== 流通と社会の対応 ==
MADムービーの前身は、19701978代末ごろから[[阪芸大]]のサークルなど「CAS」で制作されていた'''MADテープ'''(初期は'''キチガイテープ'''とも呼ばれていた)である。これらは音声MADを[[カセットテープ]]に収録し、[[同人誌]]と同様関西大学漫画研究会連合経路サークル間流布してい話題になっ<ref>[http://home.v07.itscom.net/maieijcc/MAD01.htm MAD館 ~MADとは?~]</ref>
 
優良な作品の登場などによりMADテープは人気を呼び急速に全国に広まったが、法律や流通経路の問題から漫研・アニ研・自主上映会など、特定コミュニティとの関わりがない層にはそれほど認知されていなかった。そんな折『[[タモリのオールナイトニッポン]]』において、1980年11月から[[NHKニュース]]のアナウンサーの声を合成したものを流す「つぎはぎニュース」のコーナーが放送され、ニュース特有の抑揚が少ない(加工しやすい)無機質な口調で脈絡のないことを話し続けるというギャップが生む面白さで話題になった。ニュース番組を使ったMADは後に'''マッドニュース'''と呼ばれるようになった。これらの作品の一部は、現在動画投稿サイトで視聴することができ、新作も製作されている。その後[[日本放送協会|NHK]]からクレームがついたため2か月ほどでこのコーナーは終了したが、この番組により[[コラージュ]]作品そのものの認知度が上がり、制作者層や流通の幅が広がった。
 
やがて[[磁気テープ|ビデオテープ]]を用いた'''MADビデオ'''が作られるようになる。初期の頃は特撮やロボットアニメのセリフを強引に改変する、曲を差し替えるなどといった作品が主流であった。現在でも、アニメのキャラクターのセリフを差し替えるなどといったMADムービーはメジャーな改変として作られ続けている。
 
21世紀初頭には[[インターネット]]環境の整備や、各種編集ツールが[[フリーウェア]]で普及したこと、[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]の性能向上により、インターネットを通じて爆発的に流通、作成されるようになり、政治家の[[鈴木宗男]]の音声を加工した「[[日本人とロシア人の友好の家#ムネオハウスムーヴメント|ムネオハウス]]」、[[奈良騒音傷害事件]]の加害者の音声を加工したもの、アナウンサーの[[小倉智昭]]の[[かつら (装身具)|カツラ]]が落ちたかのようなフェイク映像などが流通するようになった。これには[[あめぞう2ちゃんねる]]などのいわゆる[[アンダーグラウンド (文化)#インターネット|アンダーグラウンド]]サイト文化登場拡大や、[[Winny]][[WinMX]]といった[[ピア・ツー・ピア|P2P]]技術の発展が大きく貢献している。特に[[ピア・ツー・ピア|P2P]]はMADムービーの製作に欠かせない「素材」の流通を加速させた。それそのものが「裏」であったとも言える、黎明期のインターネットと本来秘匿されるべきであるMADムービーの性質、そして担い手たちであった当時の「[[オタク]]」が持っていた気質が噛みあった結果である。そしてこの時期には、動画を簡単に制作が出来る[[Adobe Flash|Flash]]を利用したムービーやゲーム形式のMAD作品が多数普及し始め、「[[Flash職人]]」と呼ばれる制作者が増加し、一時代を築いた。この時代はFlashを使用していたものがほとんどだったため、MAD動画などと言われる事はほとんどなく、「フラッシュ動画」「面白フラッシュ」等という言い方が一般的だった
 
またこの時期には、動画を簡単に制作が出来る[[Adobe Flash|Flash]]を利用したムービーやゲーム形式のMAD作品が多数普及し始め、「[[Flash職人]]」と呼ばれる制作者が増加し、一時代を築いた。この時代はFlashを使用していたものがほとんどだったため、MAD動画などと言われる事はほとんどなく、「フラッシュ動画」「面白フラッシュ」等という言い方が一般的だった。しかし、当然ながら著作権の侵害である事には変わりがなく、[[日本音楽著作権協会|JASRAC]]から削除要請による削除が相次いだことや、[[のまネコ問題]]など商業化による批判、そして、後述するYouTubeなどの登場により、徐々にFLASHブームは衰退して行く事となる。
 
そして入れ替わるかのように、2005年に登場した[[YouTube]]、[[2007年]]に登場した[[ニコニコ動画]]に代表される動画共有サイトの登場により状況は一変する<ref name="nikkei">{{cite news|url=http://www.nikkei.com/tech/business/article/g=96958A90889DE6E3E3E2E5E6E6E2E2E5E2E7E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;df=2;p=9694E2EBE3E3E0E2E3E2E1E7E2E4|author=井上理|title=「ニコ動」で進行するコンテンツ革命、熱狂の舞台裏 ネット上の才能を現実世界に解放~ドワンゴの挑戦(1)|newspaper=日本経済新聞|date=2012-05-07|page=2}}</ref>。先述のように「裏」としての側面が強かったMADムービーは、YouTubeなどメジャーなサイトにアップロードされることで、さらなる盛り上がりを呼ぶと同時に、メディアでも取り上げられていくうちにその違法性が大きくクローズアップされることとなった。
 
素材となる作品との関係上、[[著作権者]]に無断で制作・配布されることがほとんどで、無断改編による[[著作者人格権]]の一種である[[同一性保持権]]の侵害ともいえるMADムービーの違法性が取り沙汰される中、著作権侵害に対する権利者の対応は様々であった。商業コンテンツを題材とした多くのMADムービーは、権利者の申し立てを受けて削除されたが、一部の権利者は半ば黙認した<ref name="nikkei"/>。
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中にはMADムービーの制作におけるガイドラインを規定した権利者も現れた。
* また[[KADOKAWA|角川グループ]]は、2008年1月25日に同社の著作物を使用した作品に対して公開を許可する含みを持たせたコメント<ref>[httphttps://wwwav.watch.impress.co.jp/av/docs/20080125/kadotube.htm AV Watch 2008年1月25日]</ref>を発表した。
* その後、同グループの[[角川デジックス]]により、YouTubeに[[アップロード]]されたMADムービーの一部に、正式に許諾を与える対応方針が発表<ref name="kadokawa">{{citeCite web |和書|url=http://www.k-digix.co.jp/youtube/faq.html |author=Kadokawa Digix |title=YouTube上の角川グループコンテンツを含むMAD動画への対応について |accessdate=2008-09-12}}</ref>され、実際に幾つかの動画に公認マークが付与されている([[Sham.Studio.]]の例<ref>[http://www.sham.jp/studio/faq.shtml Sham.Studio. FAQ]</ref>など)。
 
いくつかの権利者の中ではMADムービーを参考にしたり強く意識した作品を制作するなど、MADムービー制作者と権利者間でのビジネスが行われるケースも見られるようになった<ref>{{cite news |title=吉幾三、ドワンゴ(ニコニコ動画)のコラボ企画スタート|newspaper=リッスンジャパン |date=2008-07-31 |url=http://listen.jp/store/musicnews_24531_all.htm |accessdate=2011-02-09}}</ref>。また、公式によるMADムービーも存在しており、例えば[[コナミ]]のビデオゲーム「[[メタルギアソリッド3]]」では開発者がゲーム内のシーンを改変したショートフィルムの公開などを行った(ただしこれは本来の意味の「MADムービー」とは多少異なり、いわゆる「公式MAD」と呼ばれている映像作品は「[[サンプリング]]」という映像技法名であったり<ref name="テクネ 映像の教室">{{Cite web|和書|url=https://www.nhk.or.jp/techne/works/content.html#sampling |title=テクネ・ワークス|テクネ 映像の教室 |accessdate=2022-11-21 |website= NHK {{!}} 日本放送協会}}</ref>、「[[セルフパロディ]]」である)。
 
さらに、関連事象として[[スクラップインセンティブ (自動車)|エコカー補助金]]終了直後に放映された[[ダイハツ工業]]のキャンペーンCMに関して、ダイハツ公式サイト内に「権利者自らが製作したMADムービー」であるような事を匂わせるコメントが掲載されている<ref>[https://archive.is/EEd8u テレビCM、ムーヴコンテ「減税は続く」篇(ダイハツ公式 archive.todayキャッシュ)]</ref>。
 
== 制作方法 ==
素材となる音声や画像・動画を[[リッピング]]や[[ディスプレイ (コンピュータ)|キャプチャ]]や[[リッピング]]、[[ソフトウェア]]からの場合は[[susie]]などのツールを用いて準備し、各種編集機材や[[アプリケーションソフト]]で編集する。静止画MADやアニメMADでは[[Adobe PremiereAviUtl]][[Adobe After Effects|After EffectsNiVE]]、[[VirtualDub]]、[[REAPER]]、近年は[[Windows ムービーメーカー]]、[[NiVEAdobe Premiere]]、[[VirtualDub]]、[[AviUtl]]、[[REAPERAdobe After Effects|After Effects]]などが作成に利用されることが多い。また、[[Blender]]などの3DCGソフトウェアを用いる例も見られる。
 
== 時代の変化に伴う多様化 ==
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2015年には[[環太平洋戦略的経済連携協定|TPP]]の政府間大筋合意によって著作権の非親告罪化が懸念され、その乱用を防ぐため同人誌等の二次創作作品に関しては対象外とする方針で法改正の議論が行われている。しかしMADが「二次創作」に含まれるかは不明なままである。
 
1次創作者が苦言をインターネット上で発信したとしても、逆に心理的攻撃書き込みや投稿者を支持しようとする行為、また苦言を発信した1次創作者が批判される等の[[倫理欠如|倫理の欠如]]が横行しているのが現状である。
 
== MADとAMV ==
しばしば日本のMADムービー文化は欧米発祥のAMV ([[アニメ・ミュージック・ビデオ|Anime Music Video]]) と比較されるが、発端は完全に別である。
 
== MADムービーに関する問題点 ==
== 違法性==
特にMADムービー自体には問題点は無いが、一般的な動画と同様に引用元の許可なしに公開すると以下の問題が発生する。
インターネットユーザーの独自解釈でグレーゾーンとされがちであるが、1次創作者の映像や作品の[[複製権|複製権侵害]]、[[同一性保持権|同一性保持権侵害]]の時点で[[違法性|違法行為]]である。
* 既存の[[映像作品]]や動画から制作されたMADムービーほとんどが元動画の[[著作権]]、[[同一性保持権]]を侵している。
 
* 制作者や本人に使用許可を取っていない映像や有名人の映像などを使用した動画の場合は、制作者の著作権に加えモデルの[[肖像権]]・[[人格権]]を侵しており[[違法性|違法]]でいる場合がある。
一般的な動画と同様に引用元の許可なしに公開すると以下の問題が発生する。
* 実在の個人をモデルにした動画はその内容によっては[[侮辱罪]]や[[名誉毀損罪]]などの罪に問われる場合がある。
* 既存の[[映像作品]]や動画から制作されたMADムービーのほとんどが元動画の[[著作権]]、[[同一性保持権]]を侵している。
* 制作者や本人に使用許可を取っていない映像や有名人の映像などを使用した動画の場合は、制作者の著作権に加えモデルの[[肖像権]]・[[人格権]]を侵しており[[違法性|違法]]である。
* 実在の個人をモデルにした動画はその内容によっては[[侮辱罪]]や[[名誉毀損罪]]などの罪に問われる。
*これらによる[[損害賠償|損害賠償請求]]、また著作権[[刑事手続|刑事裁判]]も行われる。
 
== 裁判 ==
[[2013年]]、タレントの[[久本雅美]]さんが出演するビデオでのMAD映像を無断で「[[ニコニコ動画]]」にアップロードされ著作権を侵害されたとして、ビデオの著作権を持つ[[創価学会]][[プロバイダ責任制限法]]に基づいて発信者情報の開示を請求し、東京地裁がISPに対し情報開示を命じた。判決は10月22日付け。アップロードユーザーが利用したISPを運営する[[GMOインターネット]]に対し、動画をアップロードしたユーザーの氏名・住所、電子メールアドレスの開示を命じている<ref name="itmedia">{{Cite web|和書|title=ニコ動「頭がパーン」MADアップロード主の情報、地裁が開示命令 創価学会の請求認める|url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1310/24/news094.html|website=ITmedia NEWS|accessdate=2021-12-22|language=ja}}</ref>。
 
判決文(PDF)の「対応一覧表」によると、[[創価学会]]が著作権を持つ「すばらしきわが人生 part2」のうち、「久本が創価学会の池田名誉会長から漫才を褒められて、頭がパーンとなったと話している」部分などが含まれていた。創価学会側は、この動画が著作権(複製権、公衆送信権)を侵害しており、損害賠償などを請求するために発信者情報の開示を受けるべき理由があると主張。東京地裁(長谷川浩二裁判長)は主張を認め、[[GMOインターネット]]に対し情報開示を命じた<ref>{{Cite webR|title=ニコ動「頭がパーン」MADアップロード主の情報、地裁が開示命令 創価学会の請求認める|url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1310/24/news094.html|website=ITmedia NEWS|accessdate=2021-12-22|language=ja}}</ref>
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references/>
{{Reflist}}
 
== 参考文献 ==
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== 関連項目 ==
* [[アニメ・ミュージック・ビデオ]]
* [[Vidding]]
* [[コラージュ]]
* [[TikTok]]
* [[YouTube Poop]]
* [[パロディー音楽]]
* [[リミックス]]
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* [[インターネット・ミーム]]
 
{{芸術における流用}}
{{Anime-stub}}
{{DEFAULTSORT:まつとむうひい}}
[[Category:アニメ]]