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{{Otheruses|スポーツとしてのライフセービング|救命活動|ライフセービング}}
 
[[Image:Manly beach.jpg|thumb|right|1908年に世界で初めてライフセービング大会が開かれたシドニー近郊のマンリー・ビーチ(2005年撮影)]]
[[ライフセービング]]は一般的に水難事故の防止や[[一次救命処置]]をボランティアで行う社会活動であるが、その訓練・技術を[[スポーツ]]にまで昇華させたものがスポーツとしての'''ライフセービング'''である。選手は'''ライフセーバー'''と呼ばれる。
 
人命救助の技術向上、海のシーズン直前やオフシーズンのトレーニングを兼ねて、サーフ・ライフセービング(海における救命活動)技術を競うスポーツとして誕生した。ライフセービングは、サーフ・ライフセービングの発祥の地である[[オーストラリア]]の[[ニューサウスウェールズ州]]を中心に発展し、現在ではオーストラリアの[[国技]]となっている。そのため日本でも競技名や使用器材などは[[英語]]をそのままカタカナ化したものが多い。[[海]]で行うオーシャン競技として始まったが、後に[[プール]]における救助を想定したプール競技も行われている。
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ライフセービングと他のスポーツが異なるのは、他人を負かせて勝つことではなく、最も迅速で確実に溺者を救助することをゴールとする点である。そのため競技は海辺やプールで行われ、実際の救助をシミュレートしている。オーシャン競技は海で行い、波の高さ、潮の速さ、風の強さや向き、気温などが一定していない自然環境のため、タイムは取らない<sub><ref name=BACK>[http://www.backwash.jp/lifesaver/newindex1-14.html BACKWASH ライフセービング競技]</ref></sub>。競技ごとに自然条件を考慮して戦略を考えるだけの経験と知識が必要である。一方、プール競技ではタイムを測り0.01秒を争う。
 
[[反則行為|反則]]もライフセービング活動に即している。「溺者のサインを確認せずに飛び込む」「救助者がアシスト要請の合図を忘れる(合図をしていないのにアシスタントが来る)」という有り得ない状況は失格となる。「レスキューボードを手から離してしまう」「マネキンの鼻や口が水中にある」のも救命活動上起こってはならないことで失格とされる。ライフセービング競技では溺者を安全地点(ゴール)へ運んだ時点で終わりだが、実際の救助は安全地点に到着後直ちに[[心肺蘇生法|CPR]]など一連の救命処置を始める。そのため競技においてもライフセーバーがゴール後に倒れこむのはルール違反とされる<sub><ref name="fukushi">[http://mihama-w3.n-fukushi.ac.jp/circle/n-lsc/koramu03.html 日本福祉大学ライフセービングクラブ 『ライフセービング競技 vol.1』]</ref></sub>。
 
==ライフセービング(スポーツ)の歴史==
[[Image:SurfCarnivalMarchOfStanwellPark.jpg|thumb|right|オーストラリア ニューサウスウェールズ州 スルー(Thirroul)でのサーフ・カーニバルで行進する[[ニッパー]]{{要曖昧さ回避|date=2022年1月}}達]]
[[1908年]]に'''サーフ・カーニバル'''([[:en:Sports carnival|:en:Surf carnival]])と呼ばれる大会がオーストラリア [[シドニー]]近郊のマンリー海岸([[:en:Manly, New South Wales|:en:Manly]])で行われた。その後オーストラリア国内のみならず世界各地に広がり、サーフ・カーニバルと称するライフセービング大会があちこちで開かれている。
 
救命技術の発展や新しい救助器材の発明に伴い、[[1920年]]にはビーチ・スプリントとベルト・レースが、[[1946年]]にはロングボード([[1970年]]にパドルボードと改名)、[[1947年]]には[[ビーチ・フラッグス]]とサーフスキー・レース、[[1966年]]にアイアンマンレース、[[1974年]]にタップリン・リレーが競技種目に加えられた。ロングボード(パドルボード)は[[1986年]]に削除され、ベルト・レースも2007年現在は行われていない。
 
マンリー海岸のサーフ・カーニバルから7年後の[[1915年]]、ニューサウスウェールズ州で初めての州規模大会(ニューサウスウェールズ・サーフ・ライフセービング大会)が開催される。[[1947年]]には[[クィーンズランド州]]で州大会、[[1951年]]には[[ウェスタンオーストラリア州]]大会、と徐々にオーストラリア全土へと広がっていく。そして[[1956年]]にはオーストラリアのライフセーバー達が[[アメリカ合衆国|アメリカ]]、[[イギリス]]、[[南アフリカ]]、[[スリランカ|セイロン]](現スリランカ)、[[ニュージーランド]]の選手を招聘し、ライフセービング技術を競う国際招待試合が行われた<sub><ref>[http://www.usla.org/about/history.asp United States Lifesaving Association: USLA History] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20050828181732/http://www.usla.org/about/history.asp |date=2005年8月28日 }}(英文)</ref></sub>。[[1985年]]からオーストラリアでプロ競技会が開催され始める。[[1993年]]に国際ライフセービング連盟([[:en: International Life Saving Federation]] 略称ILS)が発足し、[[1994年]]より2年ごとに'''ライフセービング世界選手権'''(通称 '''RESCUE''')を開催している。
 
日本では[[1975年]]に[[鎌倉]]の[[材木座海岸]]で湘南指導員協会主催による第1回ライフガード大会が開かれた。現在は'''全日本ライフセービング選手権'''と名称を変え、[[2007年]]に第33回目を迎えている。
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====サーフ種目====
;アイアンマン(アイアンウーマン)レース
:水中からスタートし、沖合いにあるブイまでスイム(水泳)・パドルボード・サーフスキー3種類での往復を一人でこなす[[トライアスロン]]。種目間を移動するときは走らなければならない<sub><ref>[http://www.backwash.jp/sea_gengo/ ライフセービング用語辞典 SEA言語]</ref></sub>。「鉄人レース」の名のとおり、スタート直後の心拍数が180近くまで上がる<sub><ref name="BACK">[http://www.backwash.jp/lifesaver/newindex1-14.html BACKWASH ライフセービング競技]</ref></sub>という最も過酷な競技であるとともに、最も盛り上がる花形競技である。勝者には「ミスター(ミス)・ライフセーバー」の称号が与えられる<sub><ref name=spopara>[http://www.spopara.com/magazine/jiten/061025/index.html スポパラ.com 『ライフセービング』]</ref></sub>。3種目の順番はくじ引きで決められる。
 
;サーフスキー・レース
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====ビーチ種目====
;1✖3ビーチ駅伝リレー
:全日本学生選手権大会でのみ行われる。63名が1チームとなって2km1kmずつをリレーで走る[[駅伝競走]]<sub><ref>[http://k-hokota.com/miru/summer/life_saver.htm 鉾田市観光協会 『ライフセーバー競技会』]</ref></sub>
 
;ビーチ・スプリント
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;2kmビーチ・ラン
:海岸に建てられた500m1km間隔の旗を42往復する長距離種目。
 
;CPR(心肺蘇生法)コンテスト
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===SERC===
;シミュレーションテッド・エマージェンシー・レスキュー(SER―緊急対応演習)ポンス競技(SERC)
:4人で1チームを構成し、競技前にロックアップエリア(Lock-up area)と呼ばれる場所に隔離されプールで何が起こっているのかは見えず聞こえない。プールには泳力がある者ない者、意識がある者ない者といった様々な溺者、負傷者、病気になった者などを演じる人間やマネキンが配置される。競技者はスタートの合図でプールに誘導され、発見順にあらかじめ備えられた器材のみを使って、それぞれの状況に応じた救助や応急手当てのシミュレーションを行う。競技時間は1分30秒から2分<sub><ref name=fukushi /></sub>。正確さと速さが審査される。
 
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|}
 
===日本国外のその他の大会===
;ILSアジア太平洋地区ライフセービング大会
:国際ライフセービング連盟に加盟する国のうち、アジア太平洋地区に所属する国を対象にしたプール競技の大会。参加国は[[日本]]、[[中華人民共和国|中国]]、[[台湾]]、[[シンガポール]]、[[マレーシア]]、オーストラリア、[[イラン]]など。8月5日にシンガポールで行われた2007年大会では日本はオーストラリアに次いで二位となった<sub><ref>[http://www.jla.gr.jp/ils-asia07/result.pdf 日本ライフセービング協会 Asia Pacific ILS Lifesaving Championship 2007 Result Report](pdf)</ref></sub>。
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===全日本学生ライフセービング選手権大会===
19歳以上の大学・専門学校に在籍する者で、なおかつ過去1年間にライフセービング活動を行った者によるオーシャン競技の公式大会。通称'''インカレ'''。2007第28回大会2013年9月22・23男子優勝本体育大学・国際武道大学(同点優勝)女子優勝早稲田大学2012年9月千葉県御宿中央海岸で行われた第2027回大会における総合優勝は、男子が[[日本体育大学]]ライフセービングクラブ([[東京都]][[世田谷区]])、女子が[[東海も同じく日本体育大学]]湘南校舎ライフセービングクラブアベック優勝(通称CREST [[神奈川県]][[平塚市]]算7回<sub><ref>[http://www.jla.gr.jp/competition/j_s_ls.htm を成し遂げた。全日本学生ライフセービング選手権大会]</ref></sub>。(競技)おいて大学ライフセービング界の草分け日体大(2007(2013年度男子2028回大会中1519回優勝「6連覇含む」)が強豪で「打倒NITTAI」を掲げる[[東海大学]]湘南校舎ライフセービングクラブ(優勝4回)[[国際武道大学]](2回)[[順天堂大学]](1回)[[国士大学]](1回)[[日本大学]](1回)などそれを追う。女子は日本体育大学・東海大学湘南校舎ライフセービングクラブが通算優勝9回最多で、続いて[[東京女子が8学]]ライフセービングクラブ(2)[[早稲田大学]]ライフセービングクラブ(1回)でそれを追う。2010年2月には静岡県の[[古橋広之進記念浜松市総合水泳場]]にて記念すべき初の第1回全日本学生ライフセービングプール競技選手権大会(室内プールで行うライフ競技、略称プールインカレ)が実施され男女とも日本体育大学がアベック優勝を果たしている。男子の準優勝は東海大学湘南校舎ライフセービングクラブ女子の準優勝は[[日本女子体育大学]]ライフセービングクラブ。
 
===全日本ライフセービング種目別選手権大会===
別名は、2006年までジャパン・サーフ・カーニバル、2007年よりDHLサーフ・カーニバル。略称は'''サーフ・カーニバル'''。海水浴シーズン前に技術や団結を更に確固とするため、毎年6月頃に開催される<sub><ref>[http://www.backwash.jp/lifesaver/2001taikai.htm BACKWASH 主な大会日程]</ref></sub>。2007年度は6月2・3日に開催された。種目ごとに上位8名個人を表彰するため、総合優勝はない。
 
===日本国内のその他の大会===
;ジュニア競技会
:日本ライフセービング協会主催の[[小学生|小]]・[[中学生]]を対象にしたライフセービング大会。2007年8月26日に第4回大会が開催された。[[ビーチフラッグス]]、ラン・スイム・ラン、ニッパーボード(子ども用レスキューボード)を用いたパドルボードレースのオーシャン競技を行う。小学3年以下、小学4年から6年、中学1年から3年に分けて表彰する。
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日本では大学のライフセービング部へ入部後にライフセービング活動を開始するのが典型的なパターンであるため、ライフセーバーには大卒者が多い。小・中・高校で水泳部に属していた者が多いが、日本代表レベルの選手やプロライフセーバーには高校まで泳げなかった者、他のスポーツからの転向組もいる<sub><ref>[http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/00009/contents/005.htm 日本財団図書館 『海と安全』No.513 対談:ライフセービングと私]</ref><ref name=yusa>[http://www.backwash.jp/yusa/profile.html 遊佐雅美 公式サイト]</ref><ref>[http://www5a.biglobe.ne.jp/~m_tamura/bura/arakisan/arakisan.htm 荒木汰久治さんの講演]</ref></sub>。
 
{{出典の明記|date=2013年7月}}
===プロ・ライフセーバー===
'''プロライフセーバー'''とは救命活動のプロではなく、ライフセービング(スポーツ)における[[プロフェッショナルスポーツ|プロ]]選手を指す。現時点では日本にライフセービングのプロを育成する企業やクラブ、プロスポーツ・シリーズ、賞金の出る大会などはない。{{要出典範囲|そのため日本人プロライフセーバーという時には、海外のライフセービング・プロスポーツ・シリーズに所属したことがある者、大会で賞金を得たことがある者など'''選手として報酬を得た者'''を指す|date=2013年7月}}
 
[[2007年]]現在、日本人プロライフセーバーとしてメディアに紹介されるのは以下の4名。
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* '''[[飯沼誠司]]''':[[1974年]]生まれ。小学校から高校までは競泳選手。[[東海大学]]体育学部へ入学後にライフセービング部に入部。日本人初のプロとして、オーストラリアのワールド・シリーズとシーズン契約を結ぶ。アイアンマンレースを得意とし、全日本選手権5連覇、全米選手権5位。現在はタレントとしてバラエティ番組や映画、ドラマに出演する一方、2007年度の全日本でも準優勝を果たした<sub><ref>[http://www.iinuma-seiji.com/ 飯沼誠司 Official Site]</ref></sub>。
 
*'''[[佐藤文机子]]''':1974年生まれ。3歳から水泳を始め、中学・高校と競泳選手。[[日本大学]]文理学部体育学科へ入学後にライフセービング部へ。全日本選手権、ラン・スイム・ラン10連覇、アイアンウーマンレース8連覇。全米選手権アイアンウーマンレース優勝2回。世界選手権サーフスキー・レース7位。日本人女性として初めてプロ契約(ワールド・シリーズ)を結ぶ。現在はU22日本代表監督として国際競技会に参加している。<sub><ref>[httphttps://profile.ameba.jp/ameba/fukikosato/ 佐藤文机子のアメーバルーム]</ref></sub>
 
*'''[[遊佐雅美]]''':[[1973年]]生まれ。小学校は器械体操、中学・高校は陸上選手。[[東京健康科学専門学校]]へ入学後ライフセービングを始める。ビーチ・フラッグスにおいて日本選手権15連覇(2007年現在も更新中)、全豪選手権 優勝1回、全米選手権 優勝2回、世界選手権 優勝2回の世界チャンピオン。グリコ『カフェオーレ』の[[コマーシャルメッセージ|コマーシャル]]、[[SASUKE]]などのテレビ番組にも出演している。西浜ライフセービングクラブ、[[フルキャスト]]・スポーツ所属。<sub><ref name=yusa /></sub>
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=== 著名なライフセーバー ===
<!--ライフセービング活動やライフセーバー競技で有名な人物のリスト。ライフセービングをやったことのある有名人の項目ではありません。-->
*'''[[鯨井保年]]''':[[1968年]]生まれ。東海大学時代にトライアスロン・水泳を通じてライフセービングに出逢う。東海大学ライフセービング部出身。ビーチフラッグスの第一人者でライフセービング世界チャンピオン。卒業後湘南ひらつかライフセービンククラブ所属。現在は[[カートプロモーション]]<ref>[http://www.kart-promotion.co.jp/m/kujirai.html 鯨井保年 - Kart Promotion Co.,Ltd.]</ref>に所属してタレント活動を行う。ドキュメンタリー「[[情熱大陸]]」(1998年6月28日)、「[[彼らの海]]」(1999年の第1回「ウォーターマンに憧れて」)に出演。書籍「遊YOUキッズ海あそび」(ベースボール・マガジン社)を著したこともある。2001年10月、[[覚醒剤]]と[[大麻]]の所持で逮捕。
 
*'''中曽根麻世''':[[1982年]]生まれ。高校までは水泳部に所属し、[[専修大学]]でサーフライフセービングに入部。佐藤文机子に続いて全日本選手権にてアイアンウーマン3連覇(2007年現在も更新中)。[[資生堂]][[TSUBAKI]]のCMに出演。[[九十九里ライフセービングクラブ]]所属<sub><ref>[http://www.ikuyuu.com/newsletter/110/p47.html 専修大学育友会 会報110号 2007年7月『ライフセーバー中曽根 麻世』]</ref></sub>。
 
*'''[[三浦貴大]]''':[[1985年]]生まれ。[[順天堂大学]]ライフセービング部出身 現俳優として活躍、父は[[三浦友和]]、母は[[山口百恵]](現姓・三浦)。順天堂大学ライフセービング部は2000年全日本学生ライフセービング選手権大会において団体総合優勝している強豪チームである。
 
*'''[[寺門嘉之]]''':[[1970年]]生まれ。全日本学生ライフセービング大会(インカレ)・世界大会などで活躍。[[日本体育大学]]ライフセービングクラブ出身 [[海猿]]を育てる [[日本放送協会|NHK]][[プロフェッショナル仕事の流儀]] 第31回冷静に、心を燃やす出演  [[海上保安官]][[羽田特殊救難基地]]特殊救難隊隊長(指導教官)
 
== 記念切手 ==
[[ワールドゲームズ2001]]では[[記念切手]]が発行されている[https://www.post.japanpost.jp/kitte_hagaki/stamp/tokusyu/2001/0816/index.html]。
 
==脚注==
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== 関連項目 ==
*[[ライフセービング世界選手権大会]]
*[[ライフセービング]]
*[[ウォータースポーツ]]、[[ビーチスポーツ]]、[[ビーチ・フラッグス]]
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*[http://www.backwash.jp/sea_gengo/ ライフセービング用語辞典 SEA言語]
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORTデフォルトソート:らいふせひんくすほつ}}
[[Category:ウォータースポーツ]]
[[Category:ライフセービング (スポーツ)|*]]
[[Category:ウォーターマリンスポーツ]]
[[Category:ビーチスポーツ]]
[[Category:救命処置]]
[[Category:オーストラリアのスポーツ]]
[[Category:ライフセービング|すほおつ]]
 
[[en:Surf lifesaving]]
[[fr:Surf lifesaving]]