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{{出典の明記|date=2020年5月}}
{{告知|議論|侵食盆地は堆積盆地ではないか?|date=2020年5月}}
{{告知|意見|盆地に適している産業の加筆|date=2020年5月}}
[[画像:Ryuousanjo06.jpg|サムネイル|320px|奈良盆地(奈良県)]]
[[画像:Kofu_Basin_Peach_blossom_and_the_Minami_Alps.JPG|サムネイル|280px|甲府盆地(山梨県)]]
[[画像:Zitong-sichuan-chinaView_of_Taipei.jpg|サムネイル|280px|四川台湾台北盆地(中華共和国)]]
[[画像:Amazonriverbasin_basemap.png|サムネイル|アマゾン川流域に広がるアマゾン盆地(南アメリカ)]]
'''盆地'''(ぼんち、{{lang-en-short|basin|links=no}})とは、周囲を[[山地]]や[[丘陵]]に囲まれた、周辺よりも低く平らな[[地形]]である{{Sfn|浮田ほか|2004|p=256}}
 
== 概要 ==
盆地の規模は大小様々だが、盆地の大部分は地盤の相対的沈下によって生じる{{sfn|岡山|2014|pp=229-243}}。周囲の土地が隆起し、静止していた部分が結果的に盆地となる場合もある。
盆地はその成因によって'''侵食盆地'''と'''[[構造盆地]]'''に分類され、構造盆地はさらに、'''撓曲盆地'''と'''断層盆地'''に分類される。[[火山活動]]によりできる[[カルデラ]]も盆地の一種である。
 
盆地はその成因によって'''侵食盆地'''と'''[[構造盆地]]'''に分類され、構造盆地はさらに、'''撓曲盆地'''と'''断層盆地'''に分類される<ref name="Nisikawa">西川有司『地形の科学』 <おもしろサイエンス> 日刊工業新聞社 2019年 ISBN 978-4-526-07965-8 p.85.</ref>。[[火山活動]]によりできる[[カルデラ]]も盆地の一種である<ref name="Nisikawa"/>
 
; 侵食盆地
: [[地層]]や[[岩石]]の軟らかい所が選択的に[[侵食]]されて、周囲よりも低くなったもの{{sfn|岡山|2014|pp=229-243}}盆状の海湾が隆起し、湾内だった部分の堆積層が流出するケースや、平坦面[[石灰岩]]新しい堆積物が層を作った後、その一部が盆発達す曲降し、侵食によって盆地床の中の堆積物が残ケースなど、そ生成過程[[溶様々である{{sfn|岡山|2014|pp=229-243}}。侵食盆地]](ポリエ)の底が平坦地になるこよばれは稀で[[カルスト丘陵形]]の一種であになことのほうが多い{{sfn|岡山|2014|pp=229-243}}
 
特に[[石灰岩]]地域に発達するものは[[溶食盆地]](ポリエ)とよばれ、[[カルスト地形]]の一種である。
 
; 構造盆地
: [[地殻変動]]によって形成されたもる盆地総称。盆地内は周囲の山地から供給される岩屑によって平坦となる傾向がある{{sfn|岡山|2014|pp=229-243}}
:; 撓曲(とうきょく)盆地
:: [[撓曲]](断層上の地層がたわむ現象)の作用によってできたもの。世界的に珍しい種類の盆地。
:; 断層盆地
:: [[断層]]を伴う地盤作用によってできたもの。両側が断層になっているものを[[地溝]]盆地、片側のみのものを断層角盆地という{{sfn|岡山|2014|pp=229-243}}
:; 曲降(きょくこう)盆地
:: 中央部の地盤が湾曲し、下降することによってできたもの。[[自噴井]]ができやすい。平坦地が曲降した場合、円形の盆地になりやすいが、山地が曲降した場合は不規則な谷を形成しやすく、底部にかつての山頂が島のように残る場合も珍しくない{{sfn|岡山|2014|pp=229-243}}
; カルデラ盆地
: [[火山活動]]の[[外輪山]]により生成されたもの。
 
また、盆地または盆地内の状態によって、次の4つに分類される{{sfn|岡山|2014|pp=229-243}}。
また、中央部に[[湖]]を伴うこともあり、盆地を[[水]]が覆って(湖が形成されて)いるものを湖盆、そうでないものを堆積盆地と呼称する。
;湖沼盆地:[[湖沼]]を伴う盆地。岩屑の供給が地盤の変化に追いつかなかった場合に湖沼が生じる{{sfn|岡山|2014|pp=229-243}}。
;海湾(内海)盆地:盆地の形成運動が海岸地域で起きて生じた地形。
;埋積盆地:岩屑によって埋め立てられ、平坦になった状態の盆地。
;開析盆地:埋積盆地が河川の下方侵食によって[[開析]]され、段丘状に変化した状態。
 
== 特徴 ==
=== 気候 ===
盆地の[[気候]]的な特徴としては、[[大陸]]と[[海洋]]の[[比熱]]の[[差]]の[[影響]]で[[沿岸]]部よりも[[気温]]の[[日較差]]や[[年較差]]が大きいこと、海洋とは[[山]]によって[[隔離]]されているために[[空気]]が比較的[[乾燥]]しており[[降水量]]が少ないこと、そして[[フェーン現象]]などが挙げられる。また、盆地内では[[風]]が弱く空気が同じ場所にとどまるため、[[大気汚染]]の[[原因]]となるような[[物質]]が[[放出]]されてもただちに[[拡散]]されず、[[実際]]に[[メキシコシティー]]などで[[問題]]となっている。盆地は[[防御]]の[[面]]に優れていることや、平坦な[[土地]]であることから、[[内陸都市]]が[[立地]]することもある。
山に囲まれた盆地の[[気候]]的な特徴はいくつか挙げられる。まず、[[沿岸]]部よりも[[気温]]の[[日較差]]や[[年較差]]が大きいことが挙げられる{{Sfn|日本気候百科|2018|p=468|ps=(著者:木村富士男、日下博幸、藤部文昭)}}。これは、陸と海洋の[[比熱]]の差の影響、さらに[[山谷風]]による熱の輸送{{Sfn|日本気候百科|2018|p=468|ps=(著者:木村富士男、日下博幸、藤部文昭)}}の効果もある。最低気温が低い要因には[[冷気湖]]が挙げられる{{Sfn|日本気候百科|2018|p=468|ps=(著者:木村富士男、日下博幸、藤部文昭)}}。
 
盆地における山谷風は、昼は暖められた空気が盆地の底から山へ、夜は冷やされた空気が山から盆地の底へと移動し、風向が変化する循環{{Sfn|木村|2005|pp=222-227}}。夜間はこれにより冷気が盆地の底に溜まり冷気湖が形成される{{Sfn|日本気候百科|2018|p=468|ps=(著者:木村富士男、日下博幸、藤部文昭)}}。冷え込みのため、夜間から早朝、かつ日本の場合は特に秋から春、[[霧]]が発生しやすい{{Sfn|日本気候百科|2018|p=468|ps=(著者:木村富士男、日下博幸、藤部文昭)}}。
 
盆地を囲む山が風を遮り、風速は弱まる傾向がある<ref name="近藤 (1999)">{{Cite journal|和書|author=近藤純正 |title=大気境界層の気象(II)気温と地温の変化 |url=https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1999/1999_10_0677.pdf |format=pdf |publisher=日本気象学会 |journal=天気 |volume=46 |issue=10 |year=1999 |month=10 |pages=677 |crid= }}</ref>。風の減速は、日中はより気温を上げやすく、夜間は逆に気温を下げやすくする効果がある{{R|近藤 (1999)}}。また風の弱い日中は山谷風の循環の効果{{Efn|日中の山谷風循環により、盆地内には弱い下降流、周辺の山地には上昇流ができる{{Sfn|木村|2005|pp=222-227}}{{Sfn|日本気候百科|2018|p=468|ps=(著者:木村富士男、日下博幸、藤部文昭)}}。}}で、盆地内は周辺の山地より雲が少なく日照時間が長い傾向もみられる{{Sfn|木村|2005|pp=222-227}}{{Sfn|日本気候百科|2018|p=468|ps=(著者:木村富士男、日下博幸、藤部文昭)}}。気温の上がり方の差によって、[[平野]]と盆地の間にも山谷風や海陸風に類似した循環構造が認められることもある{{R|近藤 (1999)}}。
 
山により海洋と隔てられているために空気が比較的[[乾燥]]しており、[[降水量]]が少ない傾向もある。[[フェーン現象]]も起きやすい。
 
また、盆地内の空気が滞留しやすいため[[大気汚染]]物質も滞留して屋外空気質の悪化が長引くことがあり、実際に[[メキシコシティ]]などで問題となっている。
 
=== 人文地理学 ===
[[内陸都市]]の立地要因には、盆地が防御の面で優れていることや、平坦な土地であることも挙げられる。
 
== 日本における盆地 ==
日本の辞書や教科書に「盆地」が現れたのは大正時代に入ってのことであり、その定義は国内の盆地内にある平野や都市に視座を置いた[[人文地理学|人文地理]]的なものとなっていた<ref name="Yonechi1">[[米地文夫]]「自然地域名「北上盆地」と「北上平野」 : 地理教育における自然地理用語と自然地域名の問題(1)」『岩手大学教育学部研究年報』51(1) 岩手大学教育学部 {{doi|10.15113/00011679}} 2008-03-07 pp.105-118 .</ref>。戦後に[[文部省]]地理調査所によって定められた上記の定義も、それを継承したものとなっている。山に囲まれた低い平坦地という日本の風土を想定して定められた「盆地」は、[[地形学]]の学術用語である[[:w:Basin|Basin]]や[[:w:Valley|Valley]]の訳語に当てられたが、Basinは山地に属する盆状地質構造、海盆、流域などを指す、外縁や地質などを含めた窪んだ地形全体を捉えた用語であり、盆地床の地形について規定していない<ref name="Yonechi1"/><ref name="Yonechi2">米地文夫「広々とした渓谷と山々に囲まれない盆地:地形景観用語における日本と世界のずれ」『季刊地理学』53(4) 東北地理学会 {{doi|10.5190/tga.53.257}} 2001 pp.257-261.</ref>。このため、周囲に山がない[[パリ盆地]]や、海に面した流域である[[アマゾン盆地]]など、日本の定義では盆地とは言えない場所を「盆地」と呼んでいる例は多く、国際的な自然地域名称と乖離する場合もある<ref name="Yonechi2"/>。
 
一説に[[丹波国]]・[[但馬国]]は盆地を意味する「谷」に由来するといわれている。
 
=== 日本の主な盆地 ===
{{col|
; 北海道地方
37 ⟶ 66行目:
* [[鷹巣盆地]]([[秋田県]])
* [[大館盆地]](秋田県)
* [[仙北盆地]](秋田県)
* [[横手盆地]](秋田県)
** [[仙北盆地]](秋田県)
* [[新庄盆地]]([[山形県]])
* [[小国盆地]]([[山形県]])
50 ⟶ 79行目:
* [[猪苗代盆地]](福島県)
* [[郡山盆地]](福島県)
* [[白河盆地]](福島県)
; 関東地方
* [[笠間盆地]]([[茨城県]])
* [[八郷盆地]](茨城県)
* [[沼田盆地]]([[群馬県]])
* [[八郷中之条盆地]]([[茨城群馬]]
* [[中山盆地]](群馬県)
* [[富岡盆地]](群馬県)
* [[秩父盆地]]([[埼玉県]])
* [[秦野小川盆地]]([[神奈川埼玉]]
* [[八王子盆地]]([[東京都]])
* [[秦野盆地]]([[神奈川県]])
; 中部地方
* [[魚沼盆地]]([[新潟県]])
* [[十日町盆地]](新潟県)
* [[栃尾盆地]](新潟県)
* [[大野盆地]]([[福井県]])
* [[勝山盆地]](福井県)
72 ⟶ 108行目:
* [[高山盆地]]([[岐阜県]])
* [[古川国府盆地]](岐阜県)
* [[丹那盆地]]([[静岡県]])
|
; 近畿地方
81 ⟶ 118行目:
* [[福知山盆地]](京都府)
* [[奈良盆地]]([[奈良県]])
* [[篠山三田盆地]]([[兵庫県]])
* [[篠山盆地]](兵庫県)
* [[豊岡盆地]](兵庫県)
; 中国・四国地方
88 ⟶ 126行目:
* [[三次盆地]]([[広島県]])
* [[山口盆地]]([[山口県]])
* [[勝浦盆地]] ([[徳島県]])
* [[大洲盆地]]([[愛媛県]])
* [[宇和盆地]](愛媛県)
94 ⟶ 132行目:
; 九州地方
* [[筑豊盆地]]
** [[飯塚嘉穂盆地]]([[福岡県]]) - 「飯塚盆地」とも呼ばれる。
** [[田川盆地]](福岡県)
** [[若宮盆地]](福岡県)
* [[黒木盆地]](福岡県)
* [[多久盆地]]([[佐賀県]])
* [[武雄盆地]](佐賀県)
* [[嬉野盆地]](佐賀県)
* [[山内盆地]] ([[長崎県]])
* [[由布院盆地]]([[大分県]])
103 ⟶ 146行目:
* [[竹田盆地]](大分県)
* [[三重盆地]](大分県)
* [[緒方盆地]](大分県) - 「緒方平野」とも呼ばれる。
* [[玖珠盆地]] ( 大分県)
* [[阿蘇菊鹿盆地]]([[熊本県]])
* [[阿蘇盆地]]([[阿蘇谷]]、[[南郷谷]])(熊本県)
* [[人吉盆地]](熊本県)
* [[加久藤田野盆地]]([[宮崎県]])
* [[飫肥盆地]](宮崎県)
* [[加久藤盆地]](宮崎県)
* [[小林盆地]](宮崎県)
* [[都城盆地]](宮崎県・鹿児島県)
* [[高千穂盆地]](宮崎県)
* [[鹿川盆地]](宮崎県)
* [[大口盆地]]([[鹿児島県]])
* [[栗野盆地]](鹿児島県)
* [[伊集院盆地]](鹿児島県)
* [[川内平野|川内盆地]](鹿児島県) - 「川内平野」とも呼ばれる。
* [[喜瀬武原盆地]]([[沖縄県]])
}}
 
== 世界日本国外の主な盆地 ==
{{col|
; アジア
* [[四川盆地|四川(スーチョワン)盆地]]([[中華人民共和国]])
* [[ジュンガル盆地|准噶準噶爾(ジュンガル)盆地]](中華人民共和国)
* [[タリム盆地|塔里木(タリム)盆地]](中華人民共和国)
* [[ツァイダム盆地|柴達木(ツァイダム)盆地]](中華人民共和国)
142 ⟶ 194行目:
* [[マレー・ダーリング盆地]](オーストラリア)
}}
 
== 地球外の主な盆地 ==
* [[カロリス盆地]]([[水星]])
* [[南極エイトケン盆地]]([[月]])
 
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
 
<!-- == 参考文献 == -->
* {{Cite book|和書|editor=浮田典良|editor-link=浮田典良|year=2004|title=最新地理学用語辞典|edition=改訂版|publisher=原書房|isbn=4-562-09054-5|ref={{SfnRef|浮田|2004}}}}
* {{Cite book |和書 |author = 岡山俊雄 |title = 自然地理学(地形) |edition = 第11刷 |year= 2014 |publisher = 法政大学 通信教育部 |isbn = |ref = harv }}
* {{Cite book|和書|editor=新田尚、住明正、伊藤朋之、野瀬純一 |title=気象ハンドブック |edition=3 |publisher=朝倉書店 |date=2005-09 |isbn=978-4-254-16116-8 }}
** {{Cite book|和書|author=木村富士男 |title=§16.2 山谷風循環 |ref={{SfnRef|木村|2005}}}}
* {{Cite book|和書|editor=日下博幸、藤部文昭ほか |title=日本気候百科 |publisher=丸善出版 |year=2018 |month=01 |isbn=978-4-621-30243-9 |ref={{SfnRef|日本気候百科|2018}} }}
 
== 関連項目 ==
147 ⟶ 216行目:
* [[山地]]
* [[平野]]
* [[ぼんち|ぼんち (曖昧さ回避)]]
<!-- == 参考文献 == -->
 
== 外部リンク ==
* {{Kotobank}}
* [http://uub.jp/nam/bonchi.html 盆地コレクション](日本の盆地)
 
{{地形}}
{{日本の盆地}}
{{河川関連}}
{{Geo-stub}}