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{{韓国の事物
|title=ミヨックク
|picture=[[File:Miyeok-guk.jpg|centerフレームなし]]
|alphabet-type=[[文化観光部2000年式|ローマ字]]転写
|alphabet=Miyeok-guk
|hangeul=미역국
|hanja=-
|katakana=ミヨック
}}
 
'''ミヨック'''({{lang-ko-short|미역국}})は、[[朝鮮半島]]の[[鍋料理|料理]]スープひとつ一種。[[韓国朝鮮料理]]の[[スープ]]である[[グク|グㇰ]]に[[ワカメ]]を入れたものである{{Refn|朝鮮語でワカメはミヨク{{Sfn|李|2005|p=20}} }}<ref>{{Cite book|和書|title=世界の食文化|volume=第1巻|author=朝倉敏夫|publisher=農山漁村文化協会|year=2005|isbn=978-4-540-05009-1|page=30}}</ref>。日本語表記として'''わかめスープ'''、'''ワカメスープ'''が用いられることもある<ref>{{RCite web|和書|url=https://archive.is/q56xQ|title=韓国の大センター試験目前!受験生を勇気づける面白プレゼントには、こんな意味が|RCdate=2015-11-11|website=recordchina.co.jp|accessdate=2024-06-21}}</ref><ref>{{Cite web|和書|author=佐藤わか子|title=韓国わかめスープレシピ!特別な日に欠かせない本場のスープの作り方|url=https://archive.is/0mAbB|website=allabout.co.jp|date=2024-04-23|accessdate=2024-06-21}}</ref>
 
== 概要 ==
=== 歴史 ===
ワカメがメインの[[韓国料理]]。ワカメを具材と共に[[ゴマ油]]、[[ニンニク]]、[[塩]]、[[醤油]]で炒め、水を加えて煮込んで作る{{R|学研|八田}}。[[出汁]]には[[牛肉]]が使われることが多いが、牛肉に代えて[[アサリ]]や[[ムール貝]]といった魚介類が使われることも多い{{R|八田}}。ムール貝を用いたものは'''ホンハプミヨックク'''、[[アマダイ]]を用いたものは'''オットムミヨックク'''、[[ウニ]]を用いたものは'''ソンゲミヨックク'''といったように呼び名が変わることもある。
ミヨックがいつ頃から食べられるようになったのかは定かではないが、ワカメそのものは古くから食べられていたと考えられている。ワカメが文献資料に現れるのは11世紀頃である[[1123年]]に宋の徐兢が編纂した『[[宣和奉使高麗図経]]』に、身分の貴賤に関わらずワカメを多く消費しているという趣旨の記述がある。また、[[1451年]]に完成した『[[高麗史]]』には王が王子にワカメの漁場を賜ったとある{{Sfn|李|2005|p=20}}。『[[朝鮮王朝実録]]の中の[[世宗 (朝鮮王)|世宗]]実録{{efn|在位:1418年 - 1450年}}には王家に男子が誕生するとワカメやノリなどの海藻類をとるための道具が下賜された記述があり、[[1600年]]頃に[[許イン|許筠]]が記した『屠門大嚼』にも早取りのワカメについての記述があることから、ワカメそのものは古くから食べられていたものと考えられている。ワカメは養殖技術が確立されるまでは高級食材であった{{RSfn|李|2005|学研p=19}}。
 
[[李氏朝鮮]](1392年 - 1897年)[[宮廷料理]]には'''藿湯'''(クァクタン)としてミヨック同様の料理が存在してたことが知られている<ref>{{RCite book|学研和書|title=韓国の食|author1=慧性|author2=石毛直道|publisher=平凡社|year=1988|isbn=4-582-82362-9|page=163}}</ref>
== 民俗の中のミヨックク ==
朝鮮半島では「乳の出が良くなる」として、産後の女性にミヨッククを勧める習慣がある{{R|学研|八田|朴|桃井}}。ここから転じて、母への感謝を込めて誕生日に食べるスープとされている{{R|学研|八田|桃井|IISE}}。
 
=== レシピとバリエーション ===
ただし、ワカメはつるつるしていて滑りやすいことから、[[受験]]などの大切な試験の前にはミヨッククを食べることは縁起が悪いとされている{{R|学研|RC|IISE|川越}}。なお、韓国語においても「受験に失敗する」ことを日本語同様に「滑る」と言う{{R|IISE|川越}}。受験に失敗することを「ミヨッククを食べた」と表現することもある{{R|川越}}。
ワカメがメインの[[朝鮮料理]]。発祥の地は韓国。『Koreana』誌に掲載されたレシピの一例について述べる。鍋にごま油を引き、戻して水気を切った乾燥ワカメと牛肉をいためる。ワカメと牛肉から出汁が出たら水{{efn|より濃厚な味を出すため、煮干しの出し汁または米のとぎ汁、あるいはサゴルクッムル(牛骨を長時間煮込んだ濃厚な味のスープ)を使用してもよい}}を加え、朝鮮醤油と塩で味を付ける。30分以上煮込むと完成。出来立てを食べるよりも、うま味が溶け出している二回目・三回目の方が美味だとされる{{Sfn|ファン|2024|p=65-66}}。
 
牛肉に代えて[[アサリ]]や[[ムール貝]]、シオフキといった魚介類が使われることも多い<ref>{{Cite book|和書|title=新大久保コリアンタウンガイド: 電車で行けるソウル!韓食と韓流のすべて|author=八田靖史|publisher=晩聲社|year=2008|isbn=978-4-89188-343-0|page=86}}</ref>。ムール貝を用いたものは'''ホンハプミヨックㇰ'''、[[アマダイ]]を用いたものは'''オットムミヨックㇰ'''、[[ウニ]]を用いたものは'''ソンゲアルミヨックㇰ'''、カレイを用いたものは'''カジャミミヨックㇰ'''{{Sfn|桃井|2018}}、[[マガレイ]]を用いたものは'''チャムガジャミミヨックㇰ'''{{efn|チャムガジャミは「マガレイ」}}といったように呼び名が変わることもある{{Sfn|韓国農水産食品流通公社|2016}}。[[タチウオ]]を入れた'''カルチミヨックㇰ'''、干しだらを入れた'''プゴミヨックㇰ'''、[[アワビ]]を入れた'''チョンボクミヨックㇰ'''もある{{Sfn|ファン|2024|p=66-67}}。
== 歴史 ==
ミヨッククがいつ頃から食べられるようになったのかは定かではない。[[朝鮮王朝実録]]の中の[[世宗 (朝鮮王)|世宗]]実録には王家に男子が誕生するとワカメやノリなどの海藻類をとるための道具が下賜された記述があり、[[1600年]]頃に[[許イン|許筠]]が記した『屠門大嚼』にも早取りのワカメについての記述があることから、ワカメそのものは古くから食べられていたものと考えられている。ワカメは養殖技術が確立されるまでは高級食材であった{{R|学研}}。
 
== 民俗の中のミヨック ==
[[李氏朝鮮]]の[[宮廷料理]]には'''藿湯'''(クァクタン)としてミヨックク同様の料理が存在してたことが知られている{{R|学研|黄}}。
朝鮮半島では「乳の出が良くなる」として、産後の女性にミヨックㇰを勧める習慣がある{{Sfn|桃井|2018}}<ref>{{Cite book|和書|title=にっぽん村のヨプチョン|author=朴重鎬|publisher=御茶の水書房|year=2003|isbn=978-4-275-00295-2|page=57}}</ref>。現在でも出産の準備にはワカメは欠かせないものとされており、妊婦が食べる干しワカメは広くて長いものを選び、値切らずに買う。買ったワカメを折ると難産になるというので折ることはない{{Sfn|李|2005|p=21}}。ここから転じて、自分を産んでくれた母への感謝を込めて誕生日に食べるスープとされている{{Sfn|桃井|2018}}{{Sfn|韓国農水産食品流通公社|2016}}。
 
ただし、ワカメはつるつるしていて滑りやすいことから、[[受験]]などの大切な試験の前にはミヨックを食べることは縁起が悪いとされている{{R|学研|RC|IISE|川越}}。なお、韓国朝鮮において日本語と同様、「受験に失敗する」ことを日本語同様に「滑る」と動詞で表現する<ref>{{RCite book|IISE和書|title=こだわり中級韓国語|author1=川越菜穂子|author2=崔官|author3=金敬鎬|author4=古田富建|publisher=三修社|year=2012|isbn=978-4-384-04471-3|page=198}}</ref>。受験や面接にに失敗する「ミヨックを食べた」と表現することもある{{REfn|川越韓国の国語辞典にも記載されている{{Sfn|ファン|2024|p=65}} }}。
== 出典 ==
{{Reflist|refs=
<ref name="朝倉">{{cite book|和書|title=世界の食文化|volume=第1巻|author=[[朝倉敏夫 (人類学者)|朝倉敏夫]]|publisher=[[農山漁村文化協会]]|year=2005|isbn=9784540050091|page=30}}</ref>
<ref name="朴">{{cite book|和書|title=にっぽん村のヨプチョン|author=朴重鎬|publisher=[[御茶の水書房]]|year=2003|isbn=9784275002952|page=57}}</ref>
<ref name="八田">{{cite book|和書|title=新大久保コリアンタウンガイド: 電車で行けるソウル!韓食と韓流のすべて|author=八田靖史|publisher=[[晩聲社]]|year=2008|isbn=9784891883430|page=86}}</ref>
<ref name="黄">{{cite book|和書|title=韓国の食|author=黄慧性、[[石毛直道]]|publisher=[[平凡社]]|year=1988|isbn=9784582823622|page=163}}</ref>
<ref name="桃井">{{cite web|url=http://tabi.chunichi.co.jp/blog/busan/2018/10/004897.html|title=誕生日にはミヨックク|date=2018-10-27|publisher=[[中日新聞]]|author=桃井のりこ|accessdate=2019-01-10}}</ref>
<ref name="学研">{{cite web|url=https://kids.gakken.co.jp/asia/korea/culture/wakamesoup.html|title=わかめスープ|publisher=[[学研キッズネット]]|accessdate=2019-01-10}}</ref>
<ref name="川越">{{cite book|和書|title=こだわり中級韓国語|author=川越菜穂子、崔官、金敬鎬、古田富建|publisher=[[三修社]]|year=2012|isbn=9784384044713|page=198}}</ref>
<ref name="RC">{{cite web|url=https://www.recordchina.co.jp/b123073-s0-c30-d0065.html|title=韓国の大学センター試験目前!受験生を勇気づける面白プレゼントには、こんな意味が―韓国メディア|date=2015-11-11|publisher=[[Record China]]|accessdate=2019-01-10}}</ref>
<ref name="IISE">{{cite web|url=https://www.i-ise.com/jp/column/kyuukonu/2015/05.html|title=ワカメの誤解|publisher=[[国際社会経済研究所]]|author=加藤竹彦|accessdate=2019-01-10}}</ref>
 
== 脚注 ==
}}
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist|refs=}}
=== 参考文献 ===
* {{Cite journal|和書|title=漁場の所有・利用形態―韓国のワカメ漁場を事例に―|author=李 善愛|ref={{SfnRef|李|2005}}|journal=宮崎公立大学人文学部紀要
|volume=12|issue=1|pages=17-31|date=2005-03-22|issn=1340-3613|naid=120005496354}}
* {{Cite web|和書|ref={{SfnRef|韓国農水産食品流通公社|2016}}|title=韓国人が高級なワカメを買う理由|url=https://web.archive.org/web/20160711024430/https://www.atcenter.or.jp/food/column/detail.php?rid=22
|publisher=韓国農水産食品流通公社|accessdate=2016-07-11}}
* {{Cite web|和書|url=https://web.archive.org/web/20190110183505/http://tabi.chunichi.co.jp/blog/busan/2018/10/004897.html
<ref name="桃井">{{cite web|url=http://tabi.chunichi.co.jp/blog/busan/2018/10/004897.html|title=誕生日にはミヨックク|date=2018-10-27|publisherwebsite=[[中日新聞]]tabi.chunichi.co.jp|author=桃井のりこ|ref={{SfnRef|桃井|2018}}|accessdate=2019-01-10}}</ref>
* {{Cite journal|和書|author=ファン・ヘウォン|title=ちょっぴり塩辛く香ばしい海の味|ref={{SfnRef|ファン|2024}}|journal=Koreana|volume=31|issue=1|pages=64-67|publisher=The Korea Foundation|location=済州特別自治道西帰浦市|issn=1225-4592|year=2024}}
 
{{スープ}}
== 外部リンク ==
* (英文)[https://www.maangchi.com/recipe/honghap-miyeokguk ミヨッククレシピ]
 
{{Food-stub}}
{{Korea-stub}}
{{DEFAULTSORT:みよつくく}}
[[Category:韓国朝鮮のスープ・鍋料理]]
[[Category:朝鮮の食文化]]
[[Category:誕生日]]
[[Category:行事食]]
[[Category:食用海藻]]