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{{独自研究|date=2010年3月}}
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'''スーパークルーズ'''(supercruise、[[超音速]][[巡航]])とは、[[航空機]]が[[超音速]]で長時間の飛行、すなわち[[巡航]]を行うことである。20002010年代現在以降の新型[[戦闘機]]に要求されることも多くあり、[[F-22 (戦闘機)|F-22]]や[[ラファール (航空機)|ラファール]]と[[ユーロファイター タイフーン]]などがこの能力を備えている。これらの機体は燃料を浪費する[[アフターバーナー]](以下、A/Bと記す)を使用せずとも超[[音速]]飛行が可能であり、結果として長時間にわたった[[超音速]]飛行が可能になっている。
 
== スーパークルーズ可能な航空機 ==
[[軍用機]] - 特に注記がなければ[[戦闘機]]
* [[F-15 (戦闘機)|F-15]] - 格闘戦闘基準重量時
* [[F-22 (戦闘機)|F-22]]
* [[YF-23 (航空機)|YF-23]]
* [[MiG-25 (航空機)|MiG-25]]
* [[MiG-31 (航空機)|MiG-31]]
* [[MiG-35 (航空機)|MiG-35]]
* [[PAK FA (航空機)|PAK FA]]
* [[1.44 (航空機)|1.44]]
* [[Su-35 (航空機)|Su-35]]
* [[ユーロファイター タイフーン]]
* [[ラファール_(航空機)|ラファール]]
* [[サーブ 39 グリペン]](グリペンDemoにて)
*([[爆撃機]])[[B-58 (航空機)|B-58]]- 超音速域でアフターバーナーを使用する
*(爆撃機)[[BAC TSR-2|TSR-2]]
* (爆撃機) [[ミラージュIV (航空機)|ミラージュIV (航空機)]]
*(爆撃機)[[XB-70_(航空機)|XB-70]]
*([[偵察機]])[[SR-71_(航空機)|SR-71]] - 吸入した空気の一部を圧縮機中段から排出することにより、高マッハ数飛行時の圧縮機後段の失速を抑止し効率を改善する機構を持つ
 
[[旅客機]] - [[超音速輸送機]]も参照
* [[コンコルド]] - 超音速への加速時にアフターバーナーを使用
* [[Tu-144 (航空機)|Tu-144]] - 超音速域でアフターバーナーを使用する
 
== 歴史 ==
=== 黎明の超音速巡航機 ===
超音速機が登場した当初において、アフターバーナー(リヒート)A/Bを使うことなく[[超音速]]飛行を行え機体は、[[イングリッシュ・エレクトリック ライトニング|ライトニング]]の原型機 であるP.1 、あるいはや[[センチュリーシリーズ]]の[[F-107 (戦闘機)|F-107]]戦闘機などである。また[[超音速]]爆撃機の[[B-58 (航空機)|B-58]]や、[[コンコルド]]・[[Tu-144 (航空機)|Tu-144]]のような(A/Bを使用して)マッハ2で[[超音速]]巡航可能な旅客機が登場するが、当時はその高速性自体が話題になってたために、スーパークルーズ能力にいて注目されることはあまりなく、さらには[[SR-71 (航空機)|SR-71]]のような[[マッハ]]3で[[超音速]][[巡航]]可能な[[偵察機]]も登場するが、本機はその最高速度によって名を知られており、同じく特筆される事は無存在した。
 
=== 停滞 ===
また、超音速爆撃機の[[B-58 (航空機)|B-58]]や、[[コンコルド]]・[[Tu-144]]のようなマッハ2で超音速巡航可能な旅客機(アフターバーナーは使用する)が登場するが、当時はその高速性自体が話題になっていた。さらに[[SR-71_(航空機)|SR-71]]のような[[マッハ]]3で超音速巡航可能な[[偵察機]](超音速でもエンジンのタービンセクションを使用するが、実効圧縮比を下げて巡航速度での効率を向上させる特殊なターボジェットエンジンを持つ)も登場するが、本機はその最高速度によって名を知られており、超音速巡航については特筆される事は無かった。
1970年代以降になると以下の理由で超音速戦闘機に[[ターボファンエンジン]]が採用されるようになった。
 
* [[ターボファンエンジン]]は[[ターボジェットエンジン]]に比べて燃費効率が良く、経済的である。
=== 停滞 ===
* [[ベトナム戦争]]・[[フォークランド紛争]]<ref>[[BAe シーハリアー|ハリアー]]が[[ミラージュIII (戦闘機)|ミラージュ]]・[[ネシェル (航空機)|ダガー]]に対して勝利したのはミサイルの性能差や、アルゼンチン本土から飛来するミラージュ・ダガーは[[空中給油]]を受けることができない(両機種とも製造当時は空中給油プローブを標準装備しておらず、プローブを後日装備する改修も行われていなかった)ので戦闘空域に留まる時間が限られたハンディによる所が大きい。特に後者は、速度性能を発揮するために[[アフターバーナー]]を使うことが燃料消費量増大に直結するため、最悪の場合基地へ帰還する分の燃料まで浪費して不時着水を余儀なくされる恐れがあった。</ref> の経験から、[[超音速]]で長時間飛ぶ事に意味は無い(必要な時のみ[[超音速]]飛行できればよい)と考えられた。
1970年代以降になると超音速戦闘機に[[ターボファンエンジン]]が採用されるようになった。ターボファンエンジンは[[ターボジェットエンジン]]に比べて燃費効率が良い反面、特性がより低速向きであり、超音速飛行には向かない。音速を突破するにはアフターバーナーの使用が不可欠になった。またターボファンエンジンとアフターバーナーの組み合わせは、出力増大効果はターボジェットとアフターバーナーを組み合わせた場合よりも高い反面、その際の燃費効率は逆に悪化した。結果として超音速飛行にはアフターバーナーが必要不可欠になり、燃料を短時間で消費するため、小さな機体では超音速巡航に不向きになってしまった。
 
しかし、ターボファンエンジンはより低速向きな特性であり[[超音速]]飛行には向かず、[[音速]]を突破するには大量の燃料を短時間で消費するA/Bの使用が不可欠になり、結果として燃料を多く積むことができない小型の機体では[[超音速]][[巡航]]に不向きになってしまった。
また、[[ベトナム戦争]] の経験から、戦闘機にそもそも超音速域での性能は求められなくなった。超音速領域ではほとんどまっすぐに飛ぶ事しかできず、格闘戦など不可能であり、偵察機や旅客機ならともかく、戦闘機においては超音速で長時間飛ぶ事に意味は無い(必要な時のみ超音速飛行できればよし)と考えられたのである。[[F-15 (戦闘機)|F-15]]は推力重量比が極めて高く、条件次第では超音速巡航可能であるが、その事が特徴として特筆される事は無かった。また、[[フォークランド紛争]]においては、亜音速機である[[ホーカー・シドレー ハリアー]]は、超音速戦闘機である[[ミラージュIII (戦闘機)|ミラージュIII]]・[[ネシェル (航空機)|ダガー]]に対して完全勝利しており、速度性能の差は空戦の勝敗に寄与しなかった<ref>ハリアーがミラージュ・ダガーに対して勝利したのはミサイルの性能差、アルゼンチン本土から飛来するミラージュ・ダガーが戦闘空域に留まる時間が限られる事によるハンディによる所が大きいが、その不利を速度性能で補う事ができなかったのは事実である。</ref>。
 
爆撃機においても、高空からの[[超音速]]での侵入という戦術が注目された時期があったが、[[レーダー]]や[[地対空ミサイル]]の発達によってその有効性を失い、その後は[[亜音速]]での低空侵攻によって[[レーダー]]をかわす戦術が一般的になり、速度性能は顧みられなくなった<ref>これについては、空気の密度が濃く空気抵抗が大きな低空では、それほど速度が出せなかったのも大きい。</ref>
 
民間航空機でも、低燃費な[[ターボファンエンジン]]を搭載した[[亜音速]][[旅客機]]と比べると[[超音速輸送機|超音速旅客機]]は極度に狭い座席や運賃面によって大きな差が開き、また、[[超音速]]時の[[ソニックブーム]]が地上に与える影響が高高度飛行時でも大きいことによる環境騒音問題、高速度域に特化した機体形状による離着陸時の不安定性、さとい滑走路大な着陸距離などにより、[[超音速旅客機]]の本格的な導入はなされずに終わった。
 
=== 再評価 ===
前述の通り、[[戦闘機]][[攻撃機]][[爆撃機]][[レーダー]][[地対空ミサイル]]によって守られた敵の勢力下にある空域に侵入するには、[[亜音速]]での低空侵入という方法が一般的であった。しかし[[レーダー]]を避ける事ができても[[対空砲火]]による被害は大き小さくなった。[[フォークランド紛争]]においても、[[亜音速]]機であり速度性能に劣るハリアーは、対空砲火により多大な損害を出している。
 
その後、[[フレア]]や[[電子妨害装置]]が一般化し、さらに1980年代に[[ステルス性]]を備えた機体が現れ、その後の[[ステルス]]技術開発の結果、充分に敵の[[レーダー]]探知域を小さくできるようになると、今度は対空砲火を避けて高空を高速で飛行する方が危険性が低いと考えられるようになり、戦闘攻撃機に超音速巡航性能を持たせる事が求められた。21世紀になって新たに登場したF-22戦闘機では、搭載する<!--エンジン([[プラット・アンド・ホイットニーF119|P&W製 F119]]エンジンは、[[ターボファンエンジン#低)のバイパス比エンジン|バイパス比が低い]]ターボジェットに近い[[ターボファンエンジン]]を下げることあり、-->エンジンに高速向きの特性を持たせることでアフターバーナー、A/Bを使わなくとも音速突破が可能となった。また[[推力偏向]]ノズルも備えることで超音速領域においても高い運動性を維持している。
 
タイ[[ランとル (航空機)|ラファール]]と[[タイフーン]]はスーパークルーズ能力を備えるとされているが、[[F-22]]程の[[ステルス性]]は備えず[[推力偏向ノズル]]も持たない。前述の通り[[F-15]]も格闘戦闘基準重量時にはスーパークルーズが可能と言及される場合があるが、この能力が実戦に寄与した例は報告されていない。
 
また、2000年代以降、[[ソニックブーム]]の低減策についても研究が進められている<ref>http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/972/972-06.pdf</ref>。
 
== その他 ==
「アフターバーナーA/Bを使わなくとも音速を突破できる事は、厳密に言うと「スーパークルーズ(超音速巡航)と同義ではない。スーパークルーズという単語には超音速で長時間安定して飛行する事という以上の意味はなく[要出典]「アフターバーナーA/Bの不使用ターボジェットあるいはターボファン機で」長時間飛行を達成するためのよくある条件の1つでしかない。アフターバーナーA/Bを使用する間は燃料消費が格段に増え、結果その分だけ飛行可能な時間や距離が短くなるためである。
 
例えばコンコルドは離陸と音速の突破には[[アフターバーナー]]を要し、[[B-58 (航空機)|B-58]]やツポレフ[[Tu-144 (航空機)|Tu-144]]、[[SR-71]]は巡航時にも[[アフターバーナー]]を必要としている。前3者は大量の燃料を搭載することで、後者は超音速域で[[ラムジェット]]に近い働きをするエンジン採用することで、実効的なスーパークルーズを達成していた。特にB-58の場合は、採用しているエンジンは[[F-4 (戦闘機)|F-4]]など他の多くの戦闘機のものと同一であり、超音速巡航を実現したのは大量の燃料を搭載したことによるものである<ref>B-58の項目においては「J79は(中略)連続2時間の[[アフターバーナー]]使用が可能となっており、このエンジンなくして[[B-58]]の超音速巡航は実現不可能だった。」と記述されるが、そもそも戦闘機において長時間[[アフターバーナー]]を使用できるだけの燃料搭載は不可能である。</ref>。
 
逆の例として、エンジンをF110-GE-400に換装した[[F-14 (戦闘機)|F-14]]は、[[アフターバーナー]]無しで[[音速]]を突破可能であるが、極めて短時間であり、長時間持続しての超音速飛行は不可能であるため、スーパークルーズとは見なされない(付け加えて、武装し増槽を装備した状態では達成不可能なため実用上の意味がない
 
== スーパークルーズ可能な航空機 ==
=== [[戦闘機]] ===
 
* [[F-1522 (戦闘機)|F-1522]] - 格闘戦闘基準重量時
* [[YF-23 (航空機)|YF-23]]
* [[F-2235 (戦闘機)|F-2235]]
* [[MiG-25 (航空機)|MiG-25]]
* [[MiG-31 (航空機)|MiG-31]]
* [[MiG-35 (航空機)|MiG-35]]
* [[PAK FASu-57 (航空機)|PAK FASu-57]]
* [[1.44 (航空機)|1.44]]
* [[Su-35 (航空機)|Su-35]]
* [[ユーロファイター タイフーン]]
* [[ラファール_ (航空機)|ラファール]]
* [[サーブ 39 グリペン]](グリペンDemoにて)、グリペンNG)
* [[J-20 (戦闘機)|J-20]]
 
=== [[爆撃機]] ===
 
*([[爆撃機]]) [[B-58 (航空機)|B-58]] - 超音速域で[[アフターバーナー]]を使用する
*(爆撃機) [[BAC TSR-2|TSR-2]]
* (爆撃機) [[ミラージュIV (航空機)|ミラージュIV (航空機)]]
*(爆撃機) [[XB-70_70 (航空機)|XB-70]]
* [[Tu-160 (航空機)|Tu-160]]
 
=== [[偵察機]] ===
 
*([[偵察機]]) [[SR-71_71 (航空機)|SR-71]] - 吸入した空気の一部を圧縮機中段から排出することにより、高マッハ数飛行時の圧縮機後段の失速を抑止し効率を改善する機構を持つ
 
=== [[旅客機]] ===
例えばコンコルドは離陸と音速の突破にはアフターバーナーを要し、[[B-58 (航空機)|B-58]]やツポレフ[[Tu-144]]、[[SR-71]]は巡航時にもアフターバーナーを必要としている。前3者は大量の燃料を搭載することで、後者は超音速域で[[ラムジェット]]に近い働きをするエンジンの採用することで、実効的なスーパークルーズを達成していた。特にB-58の場合は、採用しているエンジンは[[F-4 (戦闘機)|F-4]]など他の多くの戦闘機のものと同一であり、超音速巡航を実現したのは大量の燃料を搭載したことによるものである<ref>B-58の項目においては「J79は(中略)連続2時間のアフターバーナー使用が可能となっており、このエンジンなくしてB-58の超音速巡航は実現不可能だった。」と記述されるが、そもそも戦闘機において長時間アフターバーナーを使用できるだけの燃料搭載は不可能である。</ref>。
[[旅客機]] <blockquote>- [[超音速輸送機]]も参照</blockquote>
 
* [[コンコルド]] - 超音速への加速時に[[アフターバーナー]]を使用
逆の例として、エンジンをF110-GE-400に換装した[[F-14]]は、アフターバーナー無しで音速を突破可能であるが、極めて短時間であり、長時間持続しての超音速飛行は不可能であるため、スーパークルーズとは見なされない(付け加えて、武装し増槽を装備した状態では達成不可能なため、実用上の意味がない)。
* [[Tu-144 (航空機)|Tu-144]] - 超音速域で[[アフターバーナー]]を使用する
 
== 関連項目 ==
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<references />
 
[[Category{{デフォルトソート:航空工学|くる]]}}
[[Category:航空工学]]
[[Category:航空機の運航]]
[[Category:超音速航空機]]