「カキ (貝)」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
→養殖: 語句調整 タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集 |
m Bot作業依頼#Cite webテンプレートのdeadlink、deadlinkdate引数の移行 |
||
(24人の利用者による、間の34版が非表示) | |||
3行目:
|名称='''カキ'''
|画像=[[ファイル:Huitres Cancale.jpg|250px]]
|画像キャプション=[[ヨーロッパヒラガキ]]<br />''Ostrea edulis'' Linnaeus, 1758<br />(背景は本種の名産地
|界=[[動物界]] {{sname||Animalia}}
|門=[[軟体動物門]] {{sname||Mollusca}}
9行目:
}}
[[ファイル:Crassostrea nippona 01.JPG|thumb|イワガキの殻の例]]
[[ファイル:Rock-oyster.jpg|thumb|イワガキ([[三重県]][[志摩地方]]産
[[ファイル:Ostrea edulis Marennes p1050142.jpg|thumb|殻を開いたところ]]
'''カキ'''(牡蠣、牡蛎、牡蠇、蠣、蛎、蠇)は、[[ウグイスガイ目]][[イタボガキ科]]と[[ベッコウガキ科]]に
なお[[英語]]でカキを指す「oyster」(オイスター)は[[日本語]]の「カキ」よりも広い範囲に使われ、岩などに着生する二枚貝のうち、形がやや不定形で表面が滑らかでないものは
== 特徴 ==
主に[[炭酸塩]]鉱物の[[方解石]]からなる殻を持つ<ref name=Chinzei />。食用にされる[[マガキ]]や[[イワガキ]]などの大型種がよく知られるが、食用にされない中型から小型の種も多い。どの種類も岩や他の貝の殻など硬質の基盤に着生するのが普通であるが、付着する物質は必ずしも岩である必要は無く小さな岩片や他の貝殻も利用される。 泥底にも対応する<ref name=Chinzei />。[[船]]にとって船底に着生して抵抗となる[[
== 生物学特徴 ==
[[ファイル:Fossil-oyster.jpg|thumb|約2500万年前と推定される牡蠣の化石]]
約2億9500万年前から始まる[[ペルム紀]]には出現し<ref name=yokoyama />、[[三畳紀]]には生息範囲を広げた。浅い海に多く、[[極地]]を除き全世界に分布する<ref name=Chinzei>{{Cite journal|和書|author=鎮西清高
[[雌雄同体]]の種と雌雄異体の種があり、マガキでは雌雄異体であるが生殖時期が終了すると一度中性になり、その後の栄養状態が良いとメスになり、悪いとオスになるとされている<ref>
産卵後に親貝の[[えら#軟体動物|エラ]]の中で卵 (0.05mm) がとどまる種(例えば、
== 分類 ==
===カキ上科===
====
* オオベッコウガキ属 (''Pycnodonte'')
** オオベッコウガキ (''Pycnodonte taniguchii'')
39行目:
** ベニガキ (''Hyotissa chemnitzi'')
** ヒラガキ (''Hyotissa numisma''')
====
* [[イタボガキ属]] (''{{sname||Ostrea}}'')
** [[イタボガキ]] (''{{sname||Ostrea denselamellosa}}'')
61行目:
[[ファイル:Oyster(L).jpg|thumb|フランス産の[[緑牡蠣]](マガキ)]]
[[ファイル:Oyster culture in Belon, France 03.jpg|thumb|フランスの[[ベロン (フランス)|ベロン]]での養殖]]
{{main|{{ill2|カキ養殖|en|Oyster farming}}}}
カキの中でもマガキ属
現在の養殖の方法は、カキの
天然イワガキでは岩盤や[[コンクリート]]製
カキの餌となる[[植物プランクトン]]を増やすため、[[栄養塩]]が湾に流れ込む川の上流の[[植林]]なども行われている<ref>[http://www.hs-gyoren.jp/ryomin.html 漁民の森作り]
=== 養殖法 ===
; 石蒔式
:
[[ファイル:Oyster Baskets.JPG|thumb|杭に取り付けられたカゴにカキが入れられている]]
[[ファイル:観音 Kannon Hiroshima City - panoramio.jpg|thumb|[[広島市]]の[[天満川 (広島県)|天満川]][[河口]]に設置された杭]]
[[ファイル:Kashira island in Bizen, Okayama,Japan 岡山県備前市日生町日生,頭島 058.JPG|thumb|[[瀬戸内海]]でよく
[[ファイル:Scallops used for oyster cultivation.jpg|thumb|筏方式の養殖で使われるホタテの貝殻]]
; 垂下方式
# 日本で最も多く行われている'''筏方式'''は、1926年から[[広島県]]で養殖試験が始まり、ひび(後述)を使用した養殖法と比べ2倍以上の生育を見せたこと<ref>「カキの増産に垂下式養殖法を試験」『大阪毎日新聞』1926年8月24日広島・山口版(大正ニュース事典編纂委員会 『大正ニュース事典第7巻 大正14年-大正15年』本編p.616 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)</ref>から、1950年代以降急速に普及拡大した技法である。
# '''篭方式'''は主に「殻付きカキ」として流通させるカキを養殖する方法として行われる。ある程度の大きさに育った稚貝を網や篭に入れ、筏から吊す方法<ref>{{PDFlink|[https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/64773.pdf 一粒かき養殖の定着化のための 技術開発研究]}} 広島県</ref>。貝の成長に伴い脱落するロスを減少させられるが、網内の貝密度が高いと成長が悪くなる。この方法による生産品のいくつかは
# 杭打式の方式は、干潟に立てた竹杭に設置した横置きの竿や棚からロープや針金を吊す技法で、1930年代から1950年代まで行われ、筏方式の普及に伴い衰退した。
; 地蒔
: 干潟の泥砂底にある程度の大きさに育った稚貝を蒔いて育てる方法。
; ひび建養殖法
: [[広葉樹]]雑木の[[枝]]や竹を干潟に差し養殖する方法。[[江戸時代]]から1940年代まで行われた。広島県における、ひび建養殖から筏方式への移行は軍艦の船体に付くカキがヒントになった。[[呉海軍工廠]]で船底塗料を研究していた青年から「停泊中より航海中、それも水面すれすれの所で大きく育つ」という話を聞き、竹ひびを筏に組んで船で引き回し、潮流の早い海域に浮かべるなどの試みが始まりである<ref>{{Cite journal|和書|author=片上広子 |date=1996-06 |url=http://hist-geo.jp/img/archive/179_058.pdf |format=PDF |title=近世から近代における広島カキ船営業の地域的展開 |journal=歴史地理学 |publisher=歴史地理学会 |volume=38 |munber=3 |pages=58-73 |quote=所蔵:広島県立図書館}}</ref>。
; 浮体養殖法<ref name=aquaculturesci.56.203>白藤徳夫、和田洋藏、西垣友和ほか
: 海底に[[鋼]]製の[[魚礁]]を設置し、魚礁と、浮体となる[[浮標|ブイ]]の間をロープでつなぎ、ロープ
; 陸上養殖
: [[食中毒]](後述)の原因となる[[寄生虫]]や[[病原体|病原]][[微生物]]が少ない[[地下水]]や[[海洋深層水]]<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC061XZ0W3A201C2000000/ 「あたらないカキ」完全陸上養殖 久米島の海洋深層水で] [[日本経済新聞]](2023年12月11日)2023年12月20日閲覧</ref>を使う[[閉鎖循環式陸上養殖|陸上養殖]]も、日本では行われている。[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]は[[大崎上島]](広島県)で育てた陸上養殖カキを「オイスターぼんぼん」の商品名で出荷している<ref>[https://www.westjr.co.jp/press/article/smt/2017/11/page_11558.html 「オイスターぼんぼん」11月30日から順次販売開始!]
JR西日本プレスリリース
== 主な食用種 ==
===
多くの種は[[東アジア]]に生息し、ヨーロッパと[[北アメリカ大陸]]に生息するのは1種である<ref name=Aranishi />。なお、ヨーロッパに生息するマガキ属は、16世紀貿易船による人為移入と考えられている<ref>{{Cite journal|和書|author=岩崎健史
; [[マガキ]](真牡蠣、真牡蛎) ''Crassostrea gigas'' ([[カール・ツンベルク|Thunberg]], 1793)
: 最も一般的な種で、潮線上にも生息し比較的大きな礁を形成する<ref name=Chinzei />。日本でカキといえば本種。本来は[[冬]]が[[旬]]であるが、大型で夏でも生殖巣が発達しない「3倍体牡蠣」も開発され、市場に出ている。[[北海道]]、[[岩手県]]、[[宮城県]]、[[兵庫県]]、[[岡山県]]、[[広島県]]産が有名。
; [[イワガキ]](岩牡蠣、岩牡蛎) ''Crassostrea nippona'' (Seki, 1934)
: 潮線下から水深20mまでに生息<ref name=aquaculturesci.56.203 />し大きな礁を作らない<ref name=Chinzei />。マガキと対照的に夏が旬であり、「夏ガキ」とも言われる。殻の色が茶色っぽく、マガキに比べて大きいものが流通する。天然物と養殖物<ref>
; [[スミノエガキ]](住之江牡蠣、住之江牡蛎) ''Crassostrea ariakesis'' (Fujita, 1913)
: [[有明海]]沿岸に生息<ref name=suisan.19.1161>{{Cite journal|和書|author=田中彌太郎
; [[シカメガキ]] ''Crassostrea sikamea'' (Amemiya,1928)
: [[八代海]]や有明海、[[福井県]][[三方五湖|久々子湖]]に分布するカキ<ref>飯塚祐輔
:[[八代海]]周辺で食用にされたが、1946年頃に[[熊本県]][[八代市]][[鏡町]]から[[アメリカ合衆国]]に種ガキが輸出され、現地で養殖が進むと八代海では生産されなくなった。
===
; [[イタボガキ]](板甫牡蠣、板甫牡蛎) ''Ostrea denselamellosa'' ([[カール・エミル・リシュケ|Lischke]], 1869)
: かつては多く食用にされ、[[能登半島]]や[[淡路島]]周辺が有名な産地であったが、現在は[[瀬戸内海]]地方で僅かに市場に出回る程度で、[[絶滅危惧種]]状態<ref>{{Cite journal|和書|author=飯塚祐輔
; [[ヨーロッパヒラガキ]] ''Ostrea edulis'' ([[カール・フォン・リンネ|Linnaeus]], 1758)
: ヨーロッパ原産で、イタボガキに似た外観で輪郭が丸く平たい貝。別名:'''ヨーロッパガキ'''。市場では'''フランス牡蠣'''、'''ブロン'''、'''フラット'''などとも呼ばれる。日本では宮城県[[気仙沼市]]の舞根(もうね)などで僅かに養殖され、高級食材として[[フランス料理]]店などに卸される。
: かつてのヨーロッパ、特に[[フランス]]でカキと言えば本種のことであったが、1970年代以降、寄生虫などにより激減。需要を
: 2011年、[[東日本大震災]]の[[津波]]により[[宮城県]]のカキ養殖施設が壊滅状態に陥った時には、フランスのカキ養殖業者達がかつて日本に助けてもらった恩返しとして、養殖施設の復旧を支援した<ref>{{Twitter status2|ambafrancejp_jp|1238390361334009856|4=在日フランス大使館の2020年3月13日のツイート|5=2020年3月14日}}</ref>。
== 利用 ==
=== 食材 ===
食用としての歴史は非常に長く、世界中で食され、人類が親しんできた貝の一つである。[[グリコーゲン]]のほか、[[必須アミノ酸]]
{{hidden begin|border = #aaa solid 1px|titlestyle=text-align: center; |title=牡蠣栄養価の代表値|bg=#F0F2F5}}
120行目:
{{栄養価 | name=牡蠣(太平洋、生)| water =82.06 g| kJ =339| protein =9.45 g| fat =2.3 g| carbs =4.95 g| fiber =0 g| calcium_mg =8| iron_mg =5.11| magnesium_mg =22| phosphorus_mg =162| potassium_mg =168| sodium_mg =106| zinc_mg =16.62| copper_mg = 1.576|manganese_mg =0.643| selenium_μg =77| vitC_mg =8| thiamin_mg =0.067| riboflavin_mg =0.233| niacin_mg =2.01| pantothenic_mg =0.5| vitB6_mg=0.05| folate_ug =10| vitB12_ug =16| vitA_ug =81| satfat =0.51 g| monofat =0.358 g| polyfat =0.894 g| tryptophan =0.106 g| threonine =0.407 g| isoleucine =0.411 g| leucine =0.665 g| lysine =0.706 g| methionine =0.213 g| cystine =0.124 g| phenylalanine =0.339 g| tyrosine =0.302 g| valine =0.413 g| arginine =0.689 g| histidine =0.181 g| alanine =0.572 g| aspartic acid =0.912 g| glutamic acid =1.285 g| glycine =0.591 g| proline =0.386 g| serine =0.423 g| right=1 | source_usda=1 }}
{{hidden end}}
=== カキの食べられない月 ===
[[ファイル:Landingoftheoyster2008.jpg|thumb|the Whitstable Oyster Festival 2007 の初日のカキの水揚げ]]
産卵期にはカキは[[精巣]]と[[卵巣]]が非常に増大し、食用とはならない。一般にカキとして認識されている'''マガキ'''の場合は、グリコーゲン含量が増える秋から冬にかけてが旬とされており、英名に「R」のつかない月、すなわち
=== 料理 ===
[[ファイル:Oyster knife DSC09237.jpg|thumb|剥き身に加工するための殻を開ける道具]]
カキの殻の表面は[[剃刀]]の刃のように薄いものが重なっており、生食の際には[[軍手]]などの手袋を用いないと手のひらに無数の傷がつく。網焼きや生食では身だけでなく汁もともに吸う。多くの人はカキの身にのみ栄養があると考えているが、身が浸されている殻の中の海水を含む汁にも多くの栄養素が含まれていることが知られている。カキの独特の風味は貝類の内臓の味であるということを[[日本テレビ放送網|日本テレビ]]の科学番組『[[所さんの目がテン!]]』で検証しており、ここでは[[ハマグリ]]の内臓を寄せ集めて作った[[カキフライ]]もどきが本物と区別が付かないことを、20人中18人が騙されたという結果で示した<ref>{{Cite web
冷めたカキの調理品を[[電子レンジ]]で温める際は、温めている途中で破裂するおそれがあるため、あらかじめラップでくるんだり、カキに切れ込みを入れたりした方が良い。
[[ファイル:Raw rock oyster.jpg|thumb|生食用として提供されたイワガキ]]
; 生食{{Anchors|生ガキ}}
: 一般的に魚介の生食を嫌う[[欧米]]食文化圏において、カキは例外的に生食文化が発達した食材であり、[[古代ローマ]]時代から珍重され、養殖も行われていた。生ガキは[[フランス料理]]における[[オードブル]]となっている。[[ナポレオン・ボナパルト|ナポレオン]]、[[オノレ・ド・バルザック|バルザック]]、[[オットー・フォン・ビスマルク|ビスマルク]]などがカキの愛好家であったことが知られている<ref name="kampoiyaku"/>。また、[[北アメリカ]]の[[フランス系カナダ人]]や[[ケイジャン]]の食文化でも生食される。[[ニューオーリンズ]]などのケイジャン文化圏の観光地では生ガキが名物料理のひとつであり、生ガキをメニューの中心に据える「[[オイスターバー]]」と呼ばれるレストランもそれらの土地では珍しくない。▼
: '''生ガキ'''('''生牡蠣'''、なまがき)とも呼ぶ。
: 日本では[[縄文時代]]ごろから食用されていたとされ、多くの[[貝塚]]から殻が発見されており、[[ハマグリ]]に次いで多く食べられていたと考えられている<ref name="kampoiyaku"/>。[[室町時代]]ごろには[[養殖]]も行われるようになったという。大坂では[[明治|明治時代]]まで広島から来る[[かき船]]が土佐堀、堂島、道頓堀などで船上での行商を行い、晩秋の風物詩となっていた。▼
▲: 一般的に魚介の生食を嫌う[[欧米]]食文化圏において、カキは例外的に生食文化が発達した食材であり、
: かつては広島や東北などの産地から消費地まで輸送するのに時間がかかったため、日本ではカキの生食は産地以外では一般化せず、もっぱら酢締めや加熱調理で食された。日本人では[[武田信玄]]や[[頼山陽]]などがカキの愛好家であったことが知られている<ref name="kampoiyaku"/>。▼
▲: 日本では[[縄文時代]]
: [[ファイル:フランスボルドー生ガキ.jpg|サムネイル|フランスボルドーにおける生ガキの提供。日本のようにぷっくりしたミルキーなものではない。シャブリやグラーブなどの辛口白ワインと味わうのが一般的とされている。]]日本人がカキを生で食べるようになったのは、欧米の食文化が流入した明治時代以降<ref>一例として [http://www.city.yokohama.lg.jp/naka/archive/reference/kaitai.html 中区解体新書] - 横浜市[[中区 (横浜市)|中区]](1994年3月)p.27 に記載あり</ref>であり、生食文化▼
▲: かつては広島や[[東北地方]]などの産地から消費地まで輸送するのに時間がかかったため、日本ではカキの生食は産地以外では一般化せず、もっぱら[[酢締め]]や加熱調理で食された。日本人では[[武田信玄]]や[[頼山陽]]などがカキの愛好家であったことが知られている<ref name="kampoiyaku"/>。
▲: [[ファイル:フランスボルドー生ガキ.jpg|サムネイル|フランスボルドーにおける生ガキの提供。日本のようにぷっくりしたミルキーなものではない。シャブリやグラーブなどの辛口[[白ワイン]]と味わうのが一般的とされている。]]
: 日本人がカキを生で食べるようになったのは、欧米の[[食文化]]が流入した明治時代以降<ref>一例として{{Cite web |和書|url=http://www.city.yokohama.lg.jp/naka/archive/reference/kaitai.html |title=中区解体新書|accessdate=2017-07-19 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20121019083840/http://www.city.yokohama.lg.jp/naka/archive/reference/kaitai.html |archivedate=2012-10-19 |deadlinkdate=2023-12}}[[横浜市役所]][[中区 (横浜市)|中区]](1994年3月)p.27 に記載あり。</ref>であり、生食文化が欧米から輸入された珍しい食材である。
: カキの殻を合わせ目からナイフ状のヘラを差し込み、[[閉殻筋|貝柱]]を切断してこじ開け、身をつまみ出して食べる
; 焼きガキ
: [[ファイル:Oyster Ushimado03s.jpg|thumb|イワガキの焼きガキ]]
148 ⟶ 145行目:
; [[カキフライ]]
: [[ファイル:Oyster Ushimado01s.jpg|thumb|カキフライ]]
: [[カツレツ]]の手法によって、生のカキに[[小麦粉]]をまぶし、溶き卵をくぐらせてから[[パン粉]]をつけて、油で揚げる。
; カキの[[天ぷら]]
: [[中華人民共和国|中国]][[広東省]]などでは、厚めの[[衣]]をつけた天ぷらが好まれている。
; [[牡蠣の土手鍋]]
: [[土鍋]]の内側の周囲全体に[[味噌]]を厚く塗った中に、カキ、[[ネギ]]やその他の具材を入れて加熱し、味噌が溶け出したら食べる。
; [[かきめし]]
: カキの煮汁で
; カキ鍋
: 季節の具材とともに煮る[[鍋料理]]の一つ。土手鍋とは異なる。
; カキカレー
: [[カレーライス]]の具にカキを使ったもので、広島などで供されたり、[[レトルト食品]]として売られたりしている。
; [[牡蠣シチュー]]
: カキを使った[[シチュー]]で、アメリカ合衆国や[[ガンビア]]で食される。
; [[お好み焼き]]
: 広島風お好み焼きの具材としてポピュラーである。また、お好み焼きの具にカキを使ったものでは[[岡山県]]
; カキの[[燻製]]
: [[缶詰]]や[[真空パック]]で流通している。
; カキ入り[[卵焼き]]([[蚵仔煎]]、オーアチエン)
: [[台湾]]や中国[[福建省]]、広東省の一部で一般的な料理で、お好み焼きのように平たく焼いてから、甘い味のタレをかけて食べる。[[タイ王国|タイ]]では(オースワン、{{lang|th|ออส่วน}})と呼ばれスイートチリソースをつけて食べる。
; カキ粥(台湾語:{{lang|zh-hant|蚵仔粥}}、オーアティオッ)
: 台湾、
; カキスープ(台湾語:{{lang|zh-hant|蚵仔湯}}、オーアトゥン)
: 台湾などでは[[ショウガ]]の味を利かせたカキのすまし汁にも人気がある。
; [[蚵仔麺線]](オーアミースァ)
: 台湾の麺料理の一種で、カキをのせた[[麺線]](素麵状の麺類)料理。
; オイスター・カークパトリック([[:w:Oysters Kirkpatrick|Oysters Kirkpatrick]])
: [[チーズ]]などを使った[[イギリス
=== 調味料 ===
; カキ醤油
:
; カキ油
: カキ油([[オイスターソース]])は[[中華料理]]の重要な[[調味料]]。中国[[マカオ]]のものが著名。
; 干しガキ
: 干しガキ({{lang|zh-hant|蠔豉}}、{{lang|zh-hans|蚝豉}}、ハオチー)は中国
=== 薬用 ===
貝殻はボレイといい、焼成してから粉砕した粉は『[[日本薬局方]]』に「ボレイ」および「ボレイ末」として記載の[[生薬]]である<ref>{{Cite book|和書|author=[[厚生労働省]]|title=第十五改正日本薬局方|url=https://jpdb.nihs.go.jp/jp15/YAKKYOKUHOU15.pdf|format=PDF|accessdate=2009-12-16|date=2006-03-31|publisher=厚生労働省|pages=p.p.1271-1272}}
</ref>。ボレイの歴史は古く[[梁 (南朝)|梁]]の[[陶弘景]]が『[[神農本草経]]』を修訂した『神農本草経集注』に収載されている。現在市販されているものはマガキの左殻が普通である。
「ボレイ末」は[[炭酸カルシウム]]
=== 餌 ===
192 ⟶ 191行目:
=== その他 ===
: [[海苔]]の養殖などにおいて、海苔の[[糸状体]]が蛎殻に付着することを利用し、採苗に貝殻が利用される場合もある。
; 海水の浄化
: 二枚貝は水中の[[懸濁態物質]]やプランクトンを取り込むため、カキを収穫することで、水中の[[栄養塩]]の回収につながる。特にカキは濾過量が他の2枚貝に比べて多い。[[アメリカ合衆国東海岸]]の[[チェサピーク湾]]では、オイスターガーデニングと呼ばれる水質浄化活動も行われている。カキの{{ill2|擬糞|en|Pseudofeces}}は[[ゴカイ]]などの[[底生生物]]の餌となり、底生生物は魚類の餌となる。しかし、過剰なカキ養殖などにより底生生物による分解能力を超えて擬糞が発生すると、低層が[[貧酸素水塊]]化し、底泥も[[ヘドロ]]化することがある。
; [[胡粉]]
: [[日本画]]によく使われる白色の顔料。[[岩絵具]]の一つにも分類される。
; [[肥料]]
: 粉砕された殻が「かき殻石灰」などの名前で有機石灰の一種として供給される。[[消石灰]]と異なり、作物に有効な微量元素を多く含んでいる<ref>{{Cite journal|和書|author=森本正則
; 屋根材
: 江戸時代の日本では、牡蠣殻で[[屋根]]を葺く牡蠣殻葺<ref name="Kotobank1">{{Kotobank|牡蠣殻葺|2=精選版 日本国語大辞典}}</ref>(牡蠣殻屋根<ref name="Kotobank2">{{Kotobank|牡蠣殻屋根|2=精選版 日本国語大辞典}}</ref>)が行われていた。飛び火による延焼を防ぐ効果があり<ref name="Kotobank1"/>、[[瓦葺き]]の代用として[[江戸幕府]]も板葺きに牡蠣殻を葺くよう奨励していた<ref>{{Cite|news|url=https://www.fujiclean.co.jp/fujiclean/story/vol50/part202.html|title=牡蠣|水の話|work=フジクリーン工業株式会社|date=|accessdate=2022-2-18}}</ref>。
== カキと食中毒 ==
古くから食べられてきたカキであるが、その一方で「あたる」食品(食材)としても知られている。カキの[[食中毒]]が注目されるのは非加熱状態で食べられる機会が多いことと関係している。英語やフランス語では、月の名前にRがない5-8月の暑い時期のカキは危険であるとされていた<ref>{{cite web |url=http://www.nefsc.noaa.gov/faq/fishfaq5b.html |title=Nefsc Fish Faq |publisher=Nefsc.noaa.gov |date=2011-06-16 |access-date=2011-08-16 |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20111004080442/http://www.nefsc.noaa.gov/faq/fishfaq5b.html |archive-date=2011-10-04 }}</ref>。
貝の身を食べることに関して、[[アサリ]]やハマグリ、[[シジミ]]、[[サザエ]]などは加熱してから丸のまま、
現代の日本国内で流通している生食用のカキは、食中毒を極力回避するために生産・流通段階でいくつかの対策がとられている<ref>{{PDFlink|[http://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/69088.pdf 生かき生産管理における各作業工程の注意点] 宮城県}}</ref>。例えば、生食用
* 定期的な[[貝毒]]検査の実施<ref name="kaidoku"/>
* 大腸菌群最確数が一定以下の海域で採取されたもの
* それ以外の海域で採取されたものであって、[[大腸菌]]群最確数が一定以下の海水、または塩分濃度3%の人工塩水を用い、かつ、当該海水若しくは人工塩水を随時換え、浄化したもの
のどちらかであることが規定されている<ref>[
現代において、食中毒症状を引き起こす原因としては貝毒、[[細菌]]([[腸炎ビブリオ]]
貝毒以外の食中毒の予防のために留意すべきことは、
222 ⟶ 221行目:
=== 貝毒 ===
{{main|貝毒}}
貝毒は貝が捕食する海水中の有毒プランクトン中の毒性物質を蓄積したものである。対策として、生育海水中の植物プランクトンの種類および貝に含まれる毒が定期的に検査されている<ref name="kaidoku">[
=== 細菌 ===
細菌は海水中に常時一定数存在するものであり、ごく少量であれば食中毒症状を引き起こすことはない。しかし、気候や水質、保存方法などによっては細菌が大量に増殖することもあり、生食する際には注意が必要である。なお、現代の日本国内の生食用カキの場合は上述のように流通段階では十分な対策が取られているが、実際には、食中毒原因菌である腸炎ビブリオ
;
: 20℃付近でおよそ10分間に1回と活発に分裂・増殖するが、15℃以下では増殖は抑制される。また、経口摂取によって感染症状を引き起こす際には生菌100万個程度が必要であるとされる。
: これらのことから、20℃以上の環境に数時間置いておくだけで食中毒を引き起こす可能性があると言えるので、家庭で調理する際には十分に注意されたい。夏期に海水温が20℃を超えるような時期はやはり[[食中毒]]の原因となりやすい。70度以上1分間の加熱でほぼ死滅するとされている。
;
: 一般的には37℃付近でおよそ30分に1回と活発に分裂・増殖する。紫外線照射海水や清浄海水などの循環によって同菌への対策がなされている。75度以上1分間の加熱でほぼ死滅するとされている。
; [[赤痢菌]]
: 日本国内産についてはまず問題になることはないが、[[韓国]]では2001年にカキが原因で1,000人規模の罹患者を出した。この際、韓国産のカキが日本国内において、国内産として[[産地偽装]]され流通されていることが発覚した。
;
: 食品中で増殖し加熱しても分解されない耐熱性の毒素(エンテロトキシン)を産生する。
=== ウイルス ===
; [[ノロウイルス]]
: 2000年頃より特に注目されている。ノロウイルス感染力は85℃以上で1分間以上加熱されることにより不活化するとされており、中心部まで十分に加熱することが重要とされる
: 2001年-2003年の調査では、生食用カキの12.9%、加熱加工用カキの24.4%がノロウイルスで汚染されていた<ref>[
: [[厚生労働省]]や[[保健所]]は二枚貝を内臓も含めて、食す際には内部まで十分に加熱調理するように、また調理の際に使用した器具の十分な洗浄を呼びかけている。<!-- 出典、カキのノロウイルス汚染経路に関する検討 感染症学雑誌第80巻第4 号など多数-->下水処理場では感染者の排泄物に含まれるウイルスを十分に除去できないため、排水が流入する養殖海域で養殖される貝類などから検出されることが多い。免疫のない者(1年以内に感染していない者や、先天的に免疫ができない者)、抵抗力が弱い老人や子供などはウイルス感染を起こし、激しい感染性胃腸炎を引き起こす。通常1-2日で治癒するが、乳児・高齢者は重症となることがある<ref>[
: なお、ノロウイルスに関する情報として厚生労働省の公式サイト内にノロウイルスに関するQ&A<ref>{{Cite web|和書
|date=2007-12-20 |url=http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html |title=ノロウイルスに関するQ&A
|work=食中毒に関する情報 |publisher=厚生労働省 |accessdate=2008-12-30 }}</ref>が用意されているので、こちらも参照されたい。
248 ⟶ 247行目:
== 日本における漁獲量 ==
{| class="wikitable floatright" style="text-align:center; margin-right:5em"
|+ 2015年([[平成]]27年)道県別かき産量<ref>[http://www.maff.go.jp/j/tokei/seiryu/kamimen_gaisuu27/kaimen27.html 平成27年漁業・養殖業生産統計(概数値)]
! !! 道県 !! 生産量 (単位=1万
|-
| || 全国 || 16.41
|-
| 1 || 広島県 || 10.68
|-
| 2 || 宮城県 || 1.87
|-
| 3 || 岡山県 || 1.07
|-
| 4 || 兵庫県 || .62
|-
| 5 || 岩手県 || .58
|-
| 6 || 北海道 || .41
|-
| 7 || 三重県 || .32
|-
| 8 || 福岡県 || .17
|-
| 9 || 石川県 || .14
|-
| 10 || 長崎県 || .12
|}
{{clear}}
; 生産量年次推移 (1956-2012年) 単位 1万トン
{{ #invoke:Chart | bar chart
| group 1 = 11.4:14.4:15.1:15:18.3:17.3:20.4:24:24.1:21.1:22.1:23.2:26.7:24.6:19.1:19.4:21.7:23:21.1:20.1:22.6:21.3:23.2:20.6:26.1:23.5:25:25.3:25.7:25.1:25.2:25.9:27.1:25.6:24.9:23.9:24.5:23.6:22.4:22.7:22.3:21.8:20:20.5:22.1:23.2:22.1:22.5:23.4:21.9:20.8:20.5:19:21:20:16.6:16.1
283 ⟶ 282行目:
| x legends = 1956:57:58:59:60:61:62:63:64:65:66:67:68:69:70:71:72:73:74:75:76:77:78:79:80:81:82:83:84:85:86:87:88:89:90:91:92:93:94:95:96:97:98:99:2000:01:02:03:04:05:06:07:08:09:10:11:12
}}
年次推移出典:[[総務省]]統計局 海面漁業生産統計調査 長期累年(昭和31年〜平成24年)<ref>[https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001024930&cycle=0&layout=datalist 海面漁業生産統計調査 長期累年] 総務省統計局</ref>
* 1988年に記録した最大量
=== 流通に係わる法制度 ===
[[東京都庁]]では、食品として安全に流通させるために、生食用かきを取り扱う場合、保健所長への届出を必要とさせている。届け出を行うと
|url=http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/itiba/suisan/oyster/oyster1.html
|title=生かきの取扱いと届出制度
295 ⟶ 294行目:
}}</ref>。
同時に、大腸菌、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌
=== 日本の産地 ===
[[File:UR15A-1 【JOT日本石油輸送】Containers of Japan Rail.jpg|thumb|広島県産カキを[[鉄道輸送]]していた[[日本のコンテナ輸送#鮮魚専用重冷蔵タイプ|鮮魚用重冷蔵コンテナ]]
日本の2014年におけるカキの水揚げ量は183,685トン。内訳は[[広島県]]が116,672トンでシェア約64%、[[宮城県]]が20,865トンでシェア約11%、[[岡山県]]が16,825トンでシェア約9%、以下[[兵庫県]]、[[岩手県]]、[[三重県]]、[[北海道]]、[[石川県]]、[[福岡県]]、[[長崎県]]、[[香川県]]、[[新潟県]]、[[愛媛県]]、[[京都府]]…と広島産
日本全国の主な産地は次の通り。これらの産地ではシーズンを迎えると、観光客向けの大規模なツアーやイベントを企画したりして、観光振興に一役買っている。
310 ⟶ 309行目:
* 三重県([[鳥羽市]]、[[志摩市]])
* 京都府([[久美浜湾]])
* 兵庫県([[播磨灘
* 岡山県(瀬戸内海、[[備前市]][[日生諸島]]、[[瀬戸内市]][[虫明湾]]、[[浅口市]][[寄島町]])
* 広島県([[瀬戸内海]]、[[広島湾]]一帯)
* 香川県(瀬戸内海、[[高松市]][[牟礼町]]、[[さぬき市]])
* 愛媛県(瀬戸内海、[[宇和島市]])
* 福岡県([[糸島半島]]、[[豊前海]])
* 佐賀県([[太良町]])
* 長崎県([[九十九島 (西海国立公園)|九十九島]]、[[有明海]]、[[大村湾]])
北海道
海外では[[香港]]郊外の流浮山はカキの焼き物などの料理が有名な養殖地であったが、近くの[[深圳市|深圳]]の工業化によって
日本でも、[[大正|大正時代]]まで[[東京湾]]は牡蠣の一大養殖地として著名だったが、水質の悪化によって姿を消した。[[東京都]][[中央区 (東京都)|中央区]]の[[日本橋蛎殻町]]に地名として残っている。
2012年に「かき日本一決定戦」が開催され、長崎県諫早市[[小長井町]]の小長井牡蠣([[有明海]]産)「華蓮」が初代チャンピオンに輝いた。
== 言語 ==
=== 語源 ===
古来
=== 派生義 ===
* [[広東語]]で「{{lang|zh-hant|蠔豉}} / {{lang|zh-hans|蚝豉}}」(干しガキ)は「ホウシー({{ピン音|háoshì}})」といい、「好市」({{ピン音|hǎoshì}}、良い市況)と似た発音なので、[[春節|旧正月]]に好んで食べられる。
* [[英語]]のoysterは孤独を好む性質や寡黙さの代名詞<ref name="kampoiyaku"/>。成句としては、「カキのように口が堅い
=== 日本語のアクセント ===
339 ⟶ 340行目:
=== 漢字 ===
{{Wiktionary|蠣}}
「蠣」「蛎」だけでカキの意味を表し、「牡」の文字を用いて「牡蠣」「牡蛎」の表記が一般的である。これは一般に貝は雌雄で色の異なる部分
しかし「蛎」「蠣」ともに[[常用漢字]]ではないため、商品名および[[地名]]など表記の指定がない限りは、漢字が使われることは少ない。
360 ⟶ 361行目:
ファイル:Kaki 20080703aomori.JPG|海辺のコンクリートに付着したカキ(夏)
ファイル:Ostreidae ja 20090114.JPG|海辺のコンクリートに付着したカキ(冬)
File:Messe Slow Food 2012 by-RaBoe-221.jpg|かき打ち(牡蠣を貝から剥がす作業)
</gallery>
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist2}}
=== 出典 ===
371 ⟶ 375行目:
{{commons|Oyster}}
{{Commonscat|Oyster dishes|カキ料理}}
▲* [[メルテンシア・マリティマ]] - オイスターリーフとも呼ばれる牡蠣の味がする野菜。
* [[w:Whitstable Oyster Festival|Whitstable Oyster Festival]]
* [[グリコ (菓子)]]
* {{ill2|掻剥漁|en|Fishing dredge}}
* {{ill2|多倍数性|en|Polyploidy}}:三倍体かき、二倍体かき。
== 外部リンク ==
* {{hfnet|106|カキ肉}}
* [https://www.
* 小長井牡蠣「華蓮」:初代かき日本一決定戦チャンピオンに輝いた牡蠣の紹介ページ([https://konagaido.yutaka-design.com/ こなガイド]内)
{{食肉}}
{{Normdaten}}
|