「宮氏」の版間の差分

出自については諸説あるが、[[藤原北家]][[小野宮流]]の[[親族#尊属と卑属|末裔]]が土着して備後の[[吉備津神社 (福山市)|吉備津神社]]の[[社家]]を務めたとする説が[[通説]]となっている<ref name=miyake342>『室町幕府守護職家事典〔下〕』P342</ref><ref>『室町幕府と地方支配と地域権力』P258</ref>。異説としては[[吉備氏]]・[[村上源氏]]・[[清和源氏]]説もある<ref name=miyake342/>。

[[南北朝時代 (日本)|南北朝時代]]に[[宮兼信]]が[[足利尊氏]]に従って転戦し、[[備後国|備後]]に進出した[[足利直冬]]を撃退した功労によって[[貞治]]3年（[[1364年]]）6月（以前）に隣の備中国の守護に任ぜられ、少なくても翌貞治4年（[[1365年]]）閏9月まで在任している<ref>『室町幕府守護職家事典〔下〕』P343</ref><ref name=ichikawa266>『室町幕府と地方支配と地域権力』P266</ref>。市川裕士はこの任命は[[吉備津彦神社]]（備前）・[[吉備津神社 (岡山市)|吉備津神社（備中）]]・[[吉備津神社 (福山市)|吉備津神社]]（備後）がその[[歴史|歴史的経緯]]から社家も含めて密接につながっており、宮氏もその[[社会的ネットワーク|ネットワーク]]の一員として備中国内への影響力が期待されたからだと推測している<ref>『室町幕府と地方支配と地域権力』P266 - 267</ref>。一方、同族の[[宮盛重]]は足利直冬方について[[室町幕府]]が任じた備後守護であった[[岩松頼宥]]と戦っており、兼信とは別行動を取ったとみられている<ref name=ichikawa266/><ref>『室町幕府守護職家事典〔下〕』P344</ref>。

[[宮兼信]]の[[息子]]である[[宮氏信|氏信]]は守護には[[任官|任ぜられなかった]]ものの、幕府側の一員として活動して[[奉公衆]]の一員に加えられて、その[[親族|子孫]]は「上野介家」と称されて[[安那郡]]西中条を本拠地とした<ref>『室町幕府と地方支配と地域権力』P262</ref>。一方、[[宮盛重]]の子孫も後に奉公衆に加えられてこちらは「下野守家」と称されて[[品治郡]]柏を[[住所|本拠地]]とした（宮氏の根拠地を品治郡[[亀寿山城]]とする説は[[近世]]の地誌によるもので[[中世]][[史料]]による裏付けはない<ref>[[谷重豊季]]「品治郡下安井村所在の柏城について」『芸備地方史研究』233号（[[2002年]]（[[平成]]14年））</ref>）<ref name=ichikawa259>『室町幕府と地方支配と地域権力』P259</ref>。現存する様々な[[古文書]]から、本来は'''下野守家が宮氏の[[宗家]]にあたる'''と考えられ<ref name=ichikawa259/>、上野介家とは「両宮」と称されて協調することで一族の団結を維持してきた<ref>『室町幕府と地方支配と地域権力』P264</ref>。[[応仁の乱]]後の[[長享]]年間には庶流の若狭守家が[[宗家]]の地位を巡って室町幕府に訴訟を起こすが、長年近隣諸国への出兵などで幕府に尽くしてきた下野守家がその地位を保っている<ref>『室町幕府と地方支配と地域権力』P264・269 - 270</ref>。

[[戦国時代 (日本)|戦国時代]]の[[行方不明|動向は不明]]であるが、[[出雲国]]の[[尼子氏]]に従った後、'''[[天文 (日本)|天文]]10年（[[1541年]]）に下野守家が断絶家'''して、その後の惣領問題が発生したことが確認<ref>『大舘常興日記』天文10年（[[1541年]]）8月4日条</ref>でき、天文17年（[[1548年]]）頃に[[大内氏]]に攻められて没落したとみられている。なお、[[庶家|庶流]]である[[有地氏]]・[[久代氏]]などは後に[[毛利氏]]に従って[[長州藩]]に仕えた<ref>『室町幕府守護職家事典〔下〕』P345</ref>。