削除された内容 追加された内容
m 皮膚そう痒症について
タグ: ビジュアルエディター モバイル編集 モバイルウェブ編集
m 外部リンクの修正 http:// -> https:// (kotobank.jp) (Botによる編集)
 
(14人の利用者による、間の24版が非表示)
1行目:
{{Infobox disease
| Name = 痒み
| Image = File:Itch 01.JPG
| Caption =
| Field =
14行目:
| MeshID = D011537
}}
{{Multiple image|image1=Squirrel Scratching the Armpit with its Hindlimb.jpg|direction=vertical|caption1=リスが痒みから掻爬する様子|image2=Canis lupus scratching.jpg|caption2=オオカミがかゆがる様子|image3=Lioness (Panthera leo) scratching ... (52016987141).jpg|caption3=ライオンがかゆがる様子。}}
'''痒み'''(かゆみ)とは、[[皮膚]]と[[眼瞼結膜]]、鼻粘膜に起こる、引っ掻き反射を引き起こす感覚を指す。
'''痒み'''(かゆみ、{{Lang-en|itch}})とは、[[皮膚]]と[[眼瞼結膜]]、鼻粘膜に起こる、引っ掻き反射を引き起こす感覚を指す。痒みが発生すると、むずむずとした不快な感覚(掻痒感)を感じる。[[1660年]]にドイツの神経学者[[サミュエル・ハーヘンレファー]]によって定義された。
 
痒みが発生すると、むずむずとした不快な感覚(掻痒感)を感じる。
 
== 痒みと痛み ==
痒みと[[疼痛|痛み]]は以下のような共通点を持つ
* [[局所麻酔]]薬を[[末梢神経]]近くに注射すると(C線維による)痛みと痒みが最初に消える
* 末梢神経を圧迫した場合、痛みと痒みは最後まで感じられる
25 ⟶ 24行目:
* [[先天性無痛無汗症|先天性無痛症]]の患者は痛みも痒みも感じることができない
 
一方で、以下のような違いもある
* 痒みは引っ掻き反射を引き起こすが痛みは屈曲反射を引き起こす
* 痛みは皮膚、眼瞼結膜、鼻粘膜以外でも感じられる
* お湯につけた場合など温度による影響が異なる
* [[上皮層]]を除去すると痒みは感じられなくなるが、痛みにはより敏感になる
* [[モルヒネ]]には鎮痛作用があるが、痒みには過敏になる<ref name=":0">{{Cite web|和書|title=【環境医学研究所】なぜ、かゆい?|かゆみと真剣勝負、かゆみの克服を目指して|url=https://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/kankyo_igaku/kayumi/itch.html|website=www.juntendo.ac.jp|accessdate=2020-12-22|publisher=[[順天堂大学]]|language=ja}}</ref>
 
なお、痒みと痛みは非常に複雑に関係していると考えられている(後述)。
37 ⟶ 36行目:
* [[ヒスタミン]]などの化学物質による刺激<ref name=":0" />。
** 食べ物などによる[[アレルギー]]反応はヒスタミンを遊離する。
* [[アトピー]]、[[疥癬]]などの皮膚疾患<ref name=":1">{{Cite web|和書|title=皮膚のかゆみの原因 症状・疾患ナビ|url=https://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=hifunokayumi_zenshin|website=takeda-kenko.jp|accessdate=2020-12-22|language=ja|publisher=[[武田コンシューマーヘルスケア]]}}</ref>。
* [[カ|蚊]]や[[ダニ]]などの吸血による物<ref name=":1" />。
* [[黄疸|閉塞性黄疸]]や[[糖尿病]]<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.asahih.johas.go.jp/organization/pdf/024.pdf|title=糖尿病のかゆみについて|accessdate=2020-12-22|publisher=[[旭労災病院]]|author=森誉子|date=2007-11-1|language=ja|format=PDF}}</ref>、[[肝臓]]疾病、癌など病気や[[妊娠]](末期)内臓疾患の兆候。
* [[妊娠]]の末期。
* 心理的要因、[[ストレス (生体)|ストレス]]<ref name=":0" />。
* 異物接触。ダニ等の虫や植物特定の草や花等、腕時計のバンド、着慣れない服。
47行目:
* 栄養不足
* 血行不良
* 皮膚瘙痒症<ref>{{Cite journal|author=佐藤貴浩, 横関博雄, 室田浩之, 戸倉新樹, 椛島健治, 高森建二, 塩原哲夫, 森田栄伸, 相場節也, 青山裕美, 端本宇志, 片山一朗|year=2020|title=皮膚瘙痒症診療ガイドライン 2020|url=https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/souyouGL2020.pdf|journal=日本皮膚科学会雑誌|volume=130|issue=7|pages=1589-1606}}</ref>(皮膚掻痒症、ひふそうようしょう)‐ 発疹などがなく、かゆみだけの症状<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/238-2865 |title=皮膚そう痒症 - 徳島県医師会Webサイト |access-date=2023-10-24 |website=www.tokushima.med.or.jp}}</ref>。
* {{ill2|Referred itch|en|Referred itch}} - 別の個所の痒みが現れる現象。
 
[[アトピーなど性皮膚炎]]は痒み過敏の状態を引き起こし、衣服の接触といった通常では痒みにならないような刺激を痒いと感じるようになる。
 
== 治療 ==
* [[蕁麻疹]]
: [[抗ヒスタミン薬]]や内服・注射・外用[[ステロイド]]、[[グリチルリチン]]などが用いられる。
* [[慢性瘙痒]](CPUO、chronic pruritus of unknown origin)<ref>Yosipovitch G, et al. Chronic Pruritus. N Engl J Med 2013; 368:1625-1634.</ref><ref>{{citeCite web |和書|url=http://www.nanbyou.or.jp/kenkyuhan_pdf/2191.pdf |title=慢性痒疹、皮膚瘙痒症 |publisher=難病情報センター |accessdate=2015-10-27}}</ref><ref>{{Cite journal |last=陽三 |first=石氏 |date=2022 |title=CPUO (chronic pruritus of unknown origin) |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/71/2/71_140/_article/-char/ja/ |journal=アレルギー |volume=71 |issue=2 |pages=140–141 |doi=10.15036/arerugi.71.140}}</ref>
: 皮膚柔軟剤(emollients)を第 1 選択薬とする。[[ワセリン]]・[[プラスチベース]]といった皮膚柔軟剤は特に[[アトピー性皮膚炎]]、[[乾皮症]]、皮膚バリア障害に適している。
: [[神経伝達物質]]を遮断することにより症状が改善することがある。[[抗てんかん薬]]の[[ガバペン]]、鎮痛剤の[[プレガバリン|リリカ]]や、[[SSRI]] の[[レクサプロ]]、[[パキシル]]、[[ジェイゾロフト]]、[[デプロメール]]、[[NaSSA]]の[[リフレックス]]などが有効なことがある。
*夜間掻痒症
皮膚そう痒症と呼ばれる目立った原因のない痒みについては、治療法が見つからない場合もある。乾燥や服の締付けなど色々理由は考えられており、高齢による老人性の乾皮症の場合は保湿剤を使用する。若者の場合は、抗ヒスタミン剤の効果が見られず、治療が長期化する場合もある。
: 柔らかい綿のパジャマや寝具、厚手の保湿剤、お風呂、加湿器など<ref>{{Cite web |title=Why do I itch more at night? |url=https://www.health.harvard.edu/diseases-and-conditions/why-do-i-itch-more-at-night |website=Harvard Health |date=2022-06-01 |access-date=2022-06-05 |language=en |first=Toni Golen |last=MD}}</ref>。
皮膚そう痒症と呼ばれる目立った原因のない痒みについては、治療法が見つからない場合もある。乾燥や服の締付けなど色々理由は考えられており、高齢による老人性の乾皮症の場合は保湿剤を使用する。若者の場合は、抗ヒスタミン剤の効果が見られず、治療が長期化する場合もある。
 
== その他語法 ==
65 ⟶ 69行目:
 
== 痒みの意義 ==
痛みの意義については、外からの危害を避けるための無意識的な反射活動<ref>{{Cite web|和書|url=httphttps://kotobank.jp/word/%E7%97%9B%E3%81%BF-31147|title=痛み|publisher=世界大百科事典 第二版|accessdate=2014-02-10}}</ref>と捉えられている。痒みも、従来は[[痛覚]]神経が反応して起きると考えられており、痛みと同様にその防衛反射をさらに補強するものと思われていた。言わば痛覚の軽微なものが痒みであり<ref name=":0" />、掻く事で痒みが抑えられるのは明確な痛覚を与えるためと考えられていた。しかし[[2009年]]、痒みが痛みとは独立した神経経路をもった感覚であり、痛みには反応しない[[脳]]の[[頭頂葉]]内側部の[[楔前部]]で反応が起きていることが発見された<ref>{{Cite web|url=http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2009/09/post-29.html|title="痒み"を感じる脳―"痛み"とは異なる"痒み"を感じる脳の部位を特定―|publisher=自然科学研究機構 生理学研究所|accessdate=2014-02-10}}</ref>。痒みに対して掻くことで症状を一層悪化させることがある<ref name=":0" /><ref name=":1" />。身体に危機を発する痛みと異なって、痒みの意義については不明であり、{{要出典範囲|現代医学の限界点である|date=2020年12月}}
 
しかし、1997年にドイツの医師によってかゆみのみを伝達する[[神経繊維]]が発見され、[[2009年]]に痒みが痛みとは独立した神経経路をもった感覚であり、痛みには反応しない[[大脳]]の[[頭頂葉]]内側部の[[楔前部]]で反応が起きていることが発見された<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2009/09/post-29.html|title="痒み"を感じる脳―"痛み"とは異なる"痒み"を感じる脳の部位を特定―|publisher=自然科学研究機構 生理学研究所|accessdate=2014-02-10}}</ref>。痒みに対して掻くことで、症状を一層悪化させる<ref name=":0" /><ref name=":1" />。身体に危機を発する痛みと異なって、痒みの意義については不明であり、{{要出典範囲|現代医学の限界点である|date=2020年12月}}。上述した痛み(痛覚)に関連したものと思われていたため神経回路の発見までかゆみの原理について研究が進められておらず、発見された2009年以降、世界各国でかゆみに関する研究機関が設立された。2011年にアメリカ合衆国のワシントンで最初の研究拠点が設立され、2019年8月にアジア初の研究拠点([[順天堂]]かゆみ研究センター)が設立された時点では7つ存在する<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.rikelab.jp/post/3128.html|title=日本初かゆみに特化した研究所で「かゆみ」の解明に挑む~遥かな夢を追いかけ、栄養学から皮膚科学の研究者へ リケラボ|publisher=パーソル テンプスタッフ|date=2020-07-31|accessdate=2024-03-20}}</ref>
痒みを引き起こす代表的な原因物質であるヒスタミンが痛みの神経を活動させたり、[[ブラジキニン]]や[[カプサイシン]]などの痛みの原因物質が痒みの神経を活動させることがわかっており、痒みと痛みは非常に複雑に関係していると考えられているが、これらがどのような経路(内側毛帯路、[[脊髄視床路]]、[[皮質脊髄路]]など)で伝えられるか、同じく頭頂葉にある[[一次体性感覚野]]を含む[[中心後回]]との関連性は未だ解明されていない。特に掻く事で痒みが抑えられる理由については、かつては上述の通り痛覚との関連で説明されていたが、現在ではそれが否定されてしまったために、不明になってしまった。痒みに過剰に反応してしまい痛いと自覚するまでに自身を自傷してしまうことがある、痒みが引っ掻き反射行動を自律的に起こすことができる体の部位に限定されている、などの理由の説明はついていない。
 
痒みを引き起こす代表的な原因物質であるヒスタミンが痛みの神経を活動させたり、[[ブラジキニン]]や[[カプサイシン]]などの痛みの原因物質が痒みの神経を活動させることがわかっており、痒みと痛みは非常に複雑に関係していると考えられているが、これらがどのような経路(内側毛帯路、[[脊髄視床路]]、[[皮質脊髄路]]など)で伝えられるか、同じく頭頂葉にある[[一次体性感覚野]]を含む[[中心後回]]との関連性は未だ解明されていない。特に掻く事で痒みが抑えられる理由については、かつては上述の通り痛覚との関連で説明されていたが、現在ではそれが否定されてしまったために、不明になってしまった。痒みに過剰に反応してしまい痛いと自覚するまでに自身を自傷してしまうことがある、痒みが引っ掻き反射行動を自律的に起こすことができる体の部位に限定されている、などの理由の説明はついていない。
 
特に、掻く事で痒みが抑えられる理由については、かつては上述の通り痛覚との関連で説明されていたが、2009年に否定されてしまったため、不明になってしまった。痒みに過剰に反応してしまい、痛いと自覚するまでに自身を自傷してしまうことがある、痒みが引っ掻き反射行動を自律的に起こすことができる体の部位に限定されている、などの理由の説明はついていない。
 
痒みを掻く反応は、進化の過程で備わったとも考えられており<ref>{{Cite web|和書|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7995/|title=痒みのメカニズム、意外な正体が判明|publisher=ナショナル ジオグラフィック|accessdate=2023-12-11}}</ref>、食い込んだ、もしくは毛穴中の[[ダニ]]など、異物を排除する目的などがある。ただし皮膚を掻きむしると、掻爬、瘙痒、瘙疹、掻き壊しとなる。
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
 
== 参考文献 ==
{{節スタブ}}<!-- {{Cite book}} --><!-- {{Cite journal}} -->
 
== 関連項目 ==
{{Wiktionary|かゆい|痒}}
<!-- {{Commonscat|}} -->
* [[孫の手]]
* [[耳掻き]]
* [[垢]]
* [[頭垢]]
* [[痒疹]] - 痒みがある皮膚の盛り上がりの総称。
* {{ill2|掻爬反射|en|Scratch reflex}}
* {{ill2|イッチング・パウダー|en|Itching powder}}(かゆみ粉) ‐ ジョークグッズ。かけると痒みを引き起こす植物の粉。
* [[幻肢]] - 失った手足にも痒みが出る場合があり、脳の失った四肢と近い感覚野の個所の肌を掻爬すると落ち着く場合がある。
* {{ill2|蟻走感|en|Formication}} - 蟻がいないのに、肌の上を蟻などの虫が動いてるように感じる感覚。
* {{ill2|鎮痒薬|en|Antipruritic|label=鎮痒薬(ちんようやく)}} ‐ 痒みを止める薬剤(かゆみ止め)。
 
{{Normdaten}}
== 外部リンク ==
{{節スタブ}}
 
{{Medical-stub}}
 
{{デフォルトソートDEFAULTSORT:かゆみ}}
[[Category:症候]]
[[Category:人体]]