「マルチリンク式サスペンション」の版間の差分

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狙った1自由度運動を実現するための設計が難しい(膨大なリンク配置の組み合わせから絞り込む必要がある)が、正しく設計されていればキャンバーを常に適切に保つことでタイヤを路面に正しく接地させるとともに、コーナリングで外側の車輪をトーインとしてブレークを防ぐとともに優れた乗り心地を実現することができる。そのため、挙動が不安定になりやすいハイパワー後輪駆動車のトラクションを確保する目的でリアサスペンションに採用されることが多いが、高出力なFF車のフロントサスペンションに採用されるケースもある。
 
最近のマルチリンクは[[メルセデス・ベンツ]]が[[190シリーズ]]で導入した形式に追随したものが多くを占める。メルセデス・ベンツの特許US4,930,804の説明によれば、1.プリテンショストラット 別名トルクストラット、通称フロントアッパースストロ)2.キャンバーストラット (通称リアアッパーストラット)、3.コンッシストラット(別名スラストアーム、通称ロワトレリングロッド)、4.トラックロッド(別名タイロッド、5.スプリングリンク(通称ロワアーム)からなっている。5にはスプリングとダンパーが接続されている。形式としては1と2をアッパーアーム、5をロアアームとしたダブルウイッシュボーンに前後方向を規制する3と、コーナリング中や急速発進およびブレーキ時に車輪を常にトーイン側に規制する4を追加した形になっている。なお1と2及び3とより進し方に開いている設定とアーム類の前方が後方より15度高い支点位置の工夫設定により、ブレーキ時に車体後部を引き下げる[[アンチノーズダイブ特性]]および加速時に車体後部の沈みを防ぐ[[アンチスクオット特性]]を持たせてある<ref>[https://patentimages.storage.googleapis.com/04/ca/66/54621bd08f7f64/US4930804.pdf United States Patent Patent Number:4,930,804 INDEPENDENT WHEEL SUSPENSION FOR MOTOR VEHICLES by Tattermusch et al.]</ref>。
 
このような性能を維持するためには、ブッシュ類の点検管理を行う必要があり、またアーム類のベアリングの締め付けは車体に重量がかかった状態でブッシュに無用なプリロードがかからないように行う(通称ワンG締め付けと呼ばれる)。アームとベアリングの箇所が多いことから、分解、組み付け、その後の[[ホイールアライメント]]調整にも時間を要し、また変形によりブッシュの寿命が短かい傾向がある。このため、保守費用が他の懸架方式に比べ高額になりやすい。