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'''近親相姦'''(きんしんそうかん)は、近い[[親族]]関係にある者同士による性的行為である。[[日本語]]辞書や[[文学]]などの分野ではこの用語が用いられることが多い。[[英語]]では近親族の関係にある者によるセックスを'''インセスト'''(incest)と言う。近親相姦が相互に同意する2人の成人の間でされる場合のみを意味する言葉として、同意近親相姦(Consanguinamory)という表現がある<ref name=":0">Frances J. Latchford (2019) (英語). Steeped in Blood: Adoption, Identity, and the Meaning of Family. マギル=クイーンズ大学出版局. p.283-286. ISBN 9780773556805</ref>
 
近親相姦は人類の多くの文化で[[タブー|禁忌]]扱いされ、この現象のことを[[インセスト・タブー]]と呼ぶ。近親者間の性的行為は異性間、同性間を問わず発生し、また大人と子供、子供同士、大人同士のいずれも起こるが、その親族範囲や何をもって性的行為とみなすかに関しては文化的差異が大きく、法的に近親間の同意の上の性的行為を犯罪として裁くか否かに関しても国家間で対応が分かれている。日本では未成年者に手を出した場合は年上側が合意があっても処罰対象<ref group="注釈">監護者わいせつ・監護者性行等罪など</ref>となるが、成人同士の合意のある近親相姦は、同性愛と同じで処罰対象にはなっていないものの結婚は認められてはいない。しかし、同性愛の異端化・刑事罰を廃止した[[キリスト教圏]]の内、同性婚の導入がされている[[西欧]]では、成人している兄弟姉妹など親族間の近親相姦だけなく、「当人らが成人かつ相互に愛しあっている場合」は、近親婚という法的関係もかつて同じように異端として処罰対象としていたが合法化された同性愛のように認めるべきとの議論が起きている<ref name=":0" />。[[ドイツ連邦共和国]]では近親相姦を罰する禁止法があるが、相互に愛しあっている二人を処罰する制度は廃止すべきとの議論が起きている<ref>{{Cite web |title=Ethics Council: Legal incest? – DW – 09/24/2014 |url=https://www.dw.com/en/german-ethics-council-in-favor-of-lifting-ban-on-incest-with-siblings/a-17950246 |website=dw.com |access-date=2023-03-16 |language=en}}</ref><ref name=":0" />。
 
なお、近い親族関係にある者による[[結婚|婚姻]]のことは'''[[近親婚]]'''と呼び、関連して扱われることはあるが近親相姦とは異なる概念であり、近親相姦を違法化している法域においては、[[近親相姦に関する研究|近親相姦罪]]の対象となる近親の範囲が近親婚の定義する近親の範囲と異なっている場合がある。下側の年齢次第では、[[臨床心理学]]などの分野で[[児童虐待]]問題で扱われる。この場合は'''近親姦'''(きんしんかん)と呼ばれることも多い。
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{{seealso|不同意性交等罪#監護者性交等}}
日本国内において、暴行や脅迫を伴わない近親相姦に関する刑罰規定には、さまざまな例がある。
[[日本]]の[[律令]]では、[[八虐]]で尊属及び近親者に対する罪として悪逆<ref group="注釈">尊属に対する殺人や傷害。</ref>・不道・不孝を定め、これらを犯罪行為として禁止していたが、近親相姦の禁止は謳われていない。京都朝廷の[[格式]]としては927年に完成された[[延喜式]]で述べられている規定で、[[国つ罪]]として母及び子との近親相姦が禁止された。[[江戸幕府]]の規定においては、1742年の「[[公事方御定書]]」では養母、養娘、姑と[[密通]]した場合は両者ともに[[さらし首]]、姉妹、叔母、姪の場合は両者ともに遠国送りにした上で[[非人]]扱いとすると定めた(母子・父子は論外であった模様){{Sfn|原田武|2001|pp=12 - 13}}。なお、規定上は兄弟姉妹間の密通は[[非人手下]]であって[[死刑]]ではなかったが、19世紀初頭の記録として、[[仙台城]]下で[[許嫁]]がいる衣服商の娘が兄と通じたとして兄妹もろとも[[磔]]で処刑されたという事例も存在している{{Sfn|原田武|2001|p=13}}。
 
=====近代以降=====
近代日本では[[1873年]][[6月13日]]に制定された改定律例においては親族相姦の規定があったが、1881年をもって廃止された。刑法に盛り込まれなかった理由は、[[ギュスターヴ・エミール・ボアソナード]]が「近親相姦概念は道徳的観念の限りにおいて有効である」と反対したためである<ref>{{Cite journal|和書|url=httphttps://idchukyo-u.repo.nii.ac.jp/1217/00014976records/14984 |author=三枝有 |title=児童虐待における刑事法の在り方 |journal=中京法学 |publisher=中京大学法学会 |year=2003 |volume=37 |issue=3-4 |pages=265-292 |naid=110006203308 |issn=02862654 |accessdate=2021-05-10}}</ref>。現在の日本では、成人の近親者同士の合意に基づく性的関係についての刑罰規定は存在しない。1947年8月11日の第1回[[国会 (日本)|国会]]司法委員会公聴会では[[小川友三]]が日本において近親相姦を違法化していないのは問題があると主張したが、[[牧野英一]]は、外国で近親相姦罪が支持される背景には宗教上の問題がある件を挙げ反論している<ref>{{citeCite web|和書|url=https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=100114390X01119470811|title=参議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第11号|work=国会会議録検索システム|publisher=[[国立国会図書館]]|accessdate=2011-08-19}}</ref>。
 
また、廃止前の[[1873年]](明治6年)に15歳以下を理由に35円<ref>{{Cite|author=[[明治維新#明治政府|明治新政府]]|title=改正贖罪収贖例図(12コマ目)|series=改定律例|volume=首巻|date=1873|url=https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/794277/12|doi=10.11501/794278}}</ref>(現在の価値で70万円)<ref name="明治1円の価値">{{Cite web|和書||url=https://manabow.com/zatsugaku/column06/|title=明治時代の「1円」の価値ってどれぐらい?|website=man@bow(まなぼう)|publisher=野村ホールディングス|publisher2=日本経済新聞社|accessdate=2021-09-26}}</ref>の収贖(刑に服する代わりに,金銭を納めて罪過を贖<あがな>うこと<ref>{{Cite web|和書|author=法務省|authorlink=法務省|url=https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/9/nfm/n_9_2_3_1_4_0.html|title=昭和43年版犯罪白書 第三編 犯罪と犯罪者処遇の一〇〇年 第一章 刑事関係基本法令の変遷 四 少年法および更生保護法令|date=1968-11|accessdate=2022-02-12}}</ref>)に刑を換えられた娘<ref>{{Cite|author=太政官|title=東京府下植村虎次郎父子姦処決伺|publisher=国立公文書館|series=公文録・明治6年|volume=第百八十一巻・明治六年十月・司法省伺(四)|date=1873-10|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000088777&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E7%88%B6%E5%AD%90%E5%A7%A6&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005032421074303276%2BF2005032500522603282%2BF0000000000000001960&IS_ORG_ID=M0000000000000088777&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc
}}</ref>以外の5人が、近親相姦により[[終身懲役]]の判決が下された記録がある(娘の内1人は、[[日本初の一覧#犯罪と|日本で初めて1873年(明治6年)に刑罰の1つとして新設された終身懲役[無期懲役] の判決が下された女性]]であり、[[神奈川県]]が[[司法省 (日本)|司法省]](現[[法務省]])に伺いを出した時は、父娘共に梟首([[獄門]])するよう求めていた<ref>{{Cite|author=太政官|authorlink=太政官 (明治時代)|title=山下万蔵父子姦断刑伺|publisher=国立公文書館|series=公文録・明治6年|volume=第百七十一巻・明治六年七月・司法省伺(四)|date=1973-07|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000088576&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E7%88%B6%E5%AD%90%E5%A7%A6&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005032421074303276%2BF2005032500522603282%2BF0000000000000001950&IS_ORG_ID=M0000000000000088576&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc
}}</ref>。なお、1873年(明治6年)に終身懲役の判決が下された女性全員が、父との近親相姦を理由に下されている。)<ref name="M6 seihunenpyo" >{{Cite web|和書|publisher=[[正院]][[統計局|第五科]]|title=明治六年政表>司法処刑ノ部>明治六年司法省及ヒ各府県処刑人員(コマ番号14 -15)|url=https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2937948/14|date=1876|accessdate=2022-01-30}}</ref><ref>{{Cite web|和書|author=愛媛県|authorlink=愛媛県|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M2007041211541952240&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E5%9B%BD%E5%8F%B2%E7%AC%AC%E4%B8%80%E4%B8%80%E7%A8%BF%E3%80%80%E6%84%9B%E5%AA%9B%E7%9C%8C%E7%B4%805%E3%80%80%E5%88%91%E7%BD%B0%EF%BC%88%E6%98%8E%E6%B2%BB6%E3%83%BB7%E5%B9%B4%EF%BC%89&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017025600406%2BF2005022412244001427%2BF2005031812272303110%2BF2007041211533452182&IS_ORG_ID=M2007041211541952240&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc|title=愛媛県史料 国史第一一稿 愛媛県紀5 刑罰(明治6・7年)(23-24コマ目)|date=1872-1873|publisher=[[国立公文書館]]|format=JPEG,PDF|accessdate=2022-01-30}}</ref><ref>{{Cite|author =太政官|title=愛媛県下佐伯彌十郎父子断刑伺|publisher=国立公文書館|series=公文録・明治6年|volume=第百七十七巻・明治六年九月・司法省伺(三)|date=1873-09|url=https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/result?DEF_XSL=detail&IS_KIND=detail&DB_ID=G9100001EXTERNAL&GRP_ID=G9100001&IS_TAG_S16=eadid&IS_KEY_S16=M0000000000000088702&IS_LGC_S16=AND&IS_TAG_S1=all&IS_KEY_S1=%E7%88%B6%E5%AD%90%E6%96%AD%E5%88%91%E4%BC%BA&IS_MAP_S1=&IS_LGC_S1=&IS_EXTSCH=F2009121017005000405%2BF2005021820554600670%2BF2005021820554900671%2BF2005032421074303276%2BF2005032500522603282%2BF0000000000000001956&IS_ORG_ID=M0000000000000088702&IS_STYLE=default&IS_SORT_FLD=sort.tror%2Csort.refc&IS_SORT_KND=asc}}</ref>
 
[[改正刑法草案]]で「被保護者の姦淫」についての規定を新設する動きもあったが<ref>『法律学講座双書 刑法各論 第四版補正版<!--旧版-->』([[西田典之]]、弘文堂、2009年、1999年初版発行) 85頁 ISBN 978-4-335-30249-7</ref>、[[日本弁護士連合会]]は1989年にまとめた「親権をめぐる法的諸問題と提言」で、家庭内のことに警察が介入することで余計な問題が引き起こされるのではということを理由の一つに挙げ、基本的にこの動きに反対する姿勢をとったりもした{{Sfn|斎藤|1992|pp=120 - 121}}。1995年4月27日の第132回国会[[法務委員会]]では1973年の判例である[[尊属殺重罰規定違憲判決]]の話で近親相姦の違法化について議題となったが、[[法務省刑事局]]長であった[[則定衛]]は[[強姦罪]]は[[親告罪]]であるため未成年の子供が[[親権者]]を訴えにくい環境があるとはいえ、現行法でも他の親族の訴えで[[告訴]]は可能だとこれに反論した<ref name="kokkai132">{{citeCite web|和書|url=https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=113215206X00919950427|title=参議院会議録情報 第132回国会 法務委員会 第9号|work=国会会議録検索システム|publisher=[[国立国会図書館]]|accessdate=2011-06-12}}</ref>。この事件は長年にわたり性的虐待を実の父親から受けていた女性が、別の男性と結婚したいと言ったところ激怒、脅迫した父親を絞殺したという事件であるが、[[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]]による史上初の[[違憲立法審査権]]行使という側面は注目されたが、当時は社会問題として性的虐待が扱われていなかった{{Sfn|榊原|池田|2017|p=180}}。
 
なお、保護者と18歳未満(17歳以下)の子供の性的関係に関しては[[児童虐待の防止等に関する法律]]の対象となりうる。2000年の成立当初は罰則はなかったが、2007年の改正で[[都道府県知事]]による接近禁止命令(12条の4)及びそれに違反した場合の罰則(旧17条、[[児童福祉法]]での措置を20歳になるまで延長できるようになったため、2017年4月1日より延長者虐待に関する規定が施行されることに伴い、その旨を明記の上で18条に繰下)が制定された。[[家庭裁判所]]も、児童福祉法28条に基づく審判中は、[[家事事件手続法]]239条に基づき保全処分として接近禁止命令を出すことが可能である{{Sfn|榊原|池田|2017|p=228}}。
 
暴行や脅迫に属する行為があった場合は強姦罪などの法律で対処することになっていたが、明白な身体的暴力がなくとも心理的強制が認められれば準強姦罪などの法律が適用された事例もある。一例としては、[[青森県]]在住の男性が孫娘2人に対して性的暴行を加えていたとして準強姦罪及び準強制わいせつ罪で訴えられ、2008年9月2日に[[青森地方裁判所]]が懲役12年の実刑判決を下した事件が挙げられる<ref name="dailytohoku">{{citeCite web|和書|url=http://www.daily-tohoku.co.jp/news/2008/09/03/new0809030802.htm|title=孫娘に性的暴行 73歳被告、懲役12年判決|date=2008-09-03|accessdate=2011-07-20|publisher=[[デイリー東北新聞社]]|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080906190443/http://www.daily-tohoku.co.jp/news/2008/09/03/new0809030802.htm|archivedate=2008-09-06}}</ref><ref name="mainichi2008">{{citeCite web|和書|url=http://mainichi.jp/area/aomori/news/20080903ddlk02040065000c.html|title=わいせつ:孫に4年以上行為、73歳男に懲役12年--地裁判決 /青森|work=毎日jp|publisher=[[毎日新聞社]]|date=2008-09-03|accessdate=2011-07-21|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080912202037/http://mainichi.jp/area/aomori/news/20080903ddlk02040065000c.html|archivedate=2008-09-12}}</ref>。この事件では孫娘に対する心理的強要があったとされるが<ref name="dailytohoku" />、判決当時73歳だった祖父を孫娘は拒絶などしていなかったと裁判で主張していた<ref name="mainichi2008" />。
 
2014年より有識者を集め「性犯罪の罰則に関する検討会」が[[法務省]]で開かれ、この中では親子などといった関係性を乱用した性的行為について犯罪類型を新設するかどうかも議題の一つとして扱われることになった{{Sfn|小林|2016|p=213}}。「性犯罪の罰則に関する検討会」では、親子が同意した上で行う場合もありうるという意見もあったため、危機感を抱いた[[山本潤 (看護師)|山本潤]]は有志一同で「性暴力と刑法を考える当事者の会」を結成し、[[法制審議会]]に対して要望書を提出した{{Sfn|山本潤|2017|pp=245 - 246}}。2016年5月25日に行われた法制審議会のヒアリングに出席した山本潤は、自らも父親に性被害を受けたことがあると述べた上で、性加害という問題を被害者の観点から考察してほしいと訴えた{{Sfn|山本潤|2017|pp=240, 248 - 250}}。結果として、2016年9月に法制審議会は、親に代表されるような「監護者」が、18歳未満の者に対しわいせつな行為に及んだ場合の刑罰を新設するよう、[[金田勝年]]法務大臣に答申した{{Sfn|小林|2016|p=216}}。そして2017年6月16日に、参議院本会議で改正刑法は可決され「監護者わいせつ罪」(刑法第179条第1項)及び「監護者性交等罪」(同条第2項)の新設が実現した。この改正案はそれまで暴行や脅迫を必要とせずに強姦罪や強制わいせつ罪で罰することができる年齢は13歳未満とされていたのを、監護者による行為の場合は18歳未満に引き上げることを目的とした{{Sfn|榊原|池田|2017|pp=179 - 180}}。なお、この改正の際、性犯罪の親告罪規定は全面撤廃され、強姦罪の名称もなくなった。監護者の範囲であるが、藤井恭子は兄や姉などであっても世話をしている同居人であれば監護者にあたるという見方をしている{{Sfn|SACHICO|2017|p=127}}。
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====中国====
中華人民共和国では近親相姦自体が罪として定められていないが、[[尊属殺人]]事件の裁判で情状酌量の理由として扱われる場合もある。1980年以降母親と性関係を持ち続けながら、結婚と離婚を2回繰り返した後、3回目の結婚生活を妻と送っていた最中、息子が母親のせいでこれ以上離婚したくないことを動機として、2006年5月に母親を殺害したのだが、死体に精液斑が残っていたため逮捕ののち裁判にかけられ、2007年2月に[[永州市]]中級人民法院で下された判決では故意殺人罪が適用されたものの、情状酌量が認められ、死緩判決すなわち2年の[[執行猶予]]付の死刑判決が宣告されることになった<ref>{{citeCite web|url=http://big5.chinabroadcast.cn/gate/big5/gb.cri.cn/14753/2007/02/13/[email protected]|title=兒子與母親亂倫26年 為掩蓋醜行兒弒母被判死緩|language=中国語|work=CRI Online|publisher=[[中国国際放送]]|date=2007-02-13|accessdate=2011-07-02|deadlinkdateurl-status=dead|url-status-date=2015-12-11}}</ref>。
 
かつては[[イギリス]]の領土であり中国に返還後も[[特別行政区]]として独自の制度が維持されている香港では、刑事罪行条例の第200章47条及び48条に乱倫罪についての規定があり、近親相姦は違法となっている。ただし、その範囲は[[近親婚]]の定義とは異なり、おじおば甥姪に関しては婚姻条例第181章27条で結婚できないとされているが、乱倫罪の定める処罰対象にはなっていない。香港では、両親が離婚し母方の祖父の家に預けられるなどし、学校生活に馴染めずに姉のことを最も敬愛する人だと言い、家にこもってインターネットばかり行っていた当時16歳の弟が、2009年4月のある日に一緒に姉と寝ていたところ、寝ている姉を突然抱きしめ性交し、10月にも無理矢理に迫って性交した後、姉が[[ソーシャルワーカー]]に相談したことから、弟が乱倫罪を問われ有罪となったが、許しており情を求めると姉と母は郵便で伝え、2010年7月発表の処分では年齢からしても弟は更生施設に送致するのが妥当ということになった<ref>{{citeCite web|url=http://news.sina.com.hk/cgi-bin/nw/show.cgi/3/1/1/1794814/1.html|title=會考生與姊亂倫判更新|work=[[明報]]|publisher=[[新浪]]|language=中国語|date=2010-07-22|accessdate=2011-06-01|deadlinkdateurl-status=dead|url-status-date=2015-12-11}}</ref>。
 
====台湾====
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また、[[オハイオ州]]では22歳の義理の娘との近親相姦で2004年に120日の投獄を宣告された義父が訴訟を起こしたが、州の最高裁はこの訴えを退けた<ref name="timeincest" />。なお、対象が一定年齢以下の児童の場合は、すべての州で違法である。ミシガン州でも、養子に出していた当時14歳の息子の写真を送ることを2008年にされなかった際、[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|ソーシャル・ネットワーキング・サイト]]を用いて息子を探し関係をもったとして母親が罪を問われ、2010年7月13日に9 - 30年の投獄を宣告されたという事例もあるが、弁護士は彼らの関係は母と息子間のそれではなく、通常の男女関係に過ぎないと主張していた<ref>{{cite web|url=http://www.heraldsun.com.au/news/breaking-news/michigan-woman-sentenced-to-nine-years-jail-for-sex-with-son/story-e6frf7jx-1225891239081|title=Michigan woman sentenced to nine years' jail for sex with son|language=英語|publisher=[[ヘラルドサン]]|date=2010-07-13|accessdate=2011-06-25}}</ref>。また、[[バージニア州]]で近親相姦者は性犯罪者として[[インターネット]]上に情報公開しなくてはならないことになった際、かつて18歳の時に当時14歳の妹との近親相姦の罪を問われ1994年に有罪となり、90日の投獄刑に保護観察の場合の執行猶予が付けられる形で処分を宣告されたことがある男性が訴訟を起こし、妹も裁判で兄の訴えを支持したのだが、2006年9月に[[プリンスウィリアム郡 (バージニア州)|プリンスウィリアム郡]]巡回裁判所はこの訴えを棄却した<ref>{{cite web|url=http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/09/11/AR2006091101142.html|title=Man Loses Suit to Keep Identity off Sex Offender Registry|first=Jerry|last=Markon|publisher=[[ワシントン・ポスト]]|language=英語|date=2006-09-12|accessdate=2011-07-30}}</ref>。
 
====イギリス・スコットランド====
 
イギリスでは近親相姦は全面的に違法である。
 
[[スコットランド]]では、夫との娘を出産したものの産後うつに陥り不妊にさせられた異父妹と恋愛関係になった異父兄がおり、彼らの母親は息子と娘が裸でいるところを目撃したため警察に通報し、近親相姦で兄妹は有罪判決を受けていが、これに対し兄妹は2008年5月に[[アメリカ合衆国]]のテレビ番組『[[グッド・モーニング・アメリカ]]』に出演し、自分たちの関係について理解を求めた<ref>{{cite web|url=http://www.timesonline.co.uk/tol/news/article3883261.ece|title=Incest couple defy Scots court ruling|language=英語|publisher=[[タイムズ]]|date=2008-05-06|accessdate=2011-06-26}}</ref>。2011年8月4日には、以前にも近親相姦で有罪になっていた[[バーミンガム]]の47歳の父親と26歳の娘が再び近親相姦で有罪を宣告された問題で、[[BBC]]は離婚が原因で別々に暮らしていた父娘であり、父親の弁護士が個人の自由を阻害している事件ではない旨を語った話を取り上げた<ref>{{cite web|url=http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-birmingham-14403980|title=Birmingham father and daughter sentenced for incest|language=英語|work=BBC News|publisher=BBC|date=2011-08-04|accessdate=2011-08-06}}</ref>。
 
====アイルランド====
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[[ドイツ]]では直系血族、兄弟姉妹間の性交を[[刑法典 (ドイツ)|刑法典]]第173条で処罰すると定めている。1913年 - 1924年のドイツにおける近親相姦罪の年間違反者数の最大値は862人で最小値は227人であった{{Sfn|原田|2001|p=33}}。
 
父親の[[アルコール依存症]]が原因で[[家庭崩壊]]となり、他の家に養子に出されていた[[ドイツ民主共和国]]出まれの[[パトリック・ステュービング]]が、2000年の母親の死去をきっかけに孤独さから血縁上の妹と性関係を持ち、子供を4人もうけ、このことで兄が近親相姦罪を問われ、裁判にかけられ服役することになったが、釈放後、兄が再び妹との近親相姦罪で裁判を行うのに合わせ、合意に基づく関係であっても犯罪とする当該の規定の撤廃を求める裁判が行われた<ref name="germany">{{citeCite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/-/2364637?pid=2738103|title=ドイツ、実の妹を愛した男性による近親相姦合法化の訴え実らず|work=AFPBB News|date=2008-03-15|accessdate=2011-06-15}}</ref>。なお、妹も近親相姦罪を問われたものの1年の[[保護観察]]処分だった<ref>{{cite web|url=http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/7294022.stm|title=German court upholds incest law|work=BBC News|publisher=BBC|language=英語|date=2008-03-13|accessdate=2011-07-09}}</ref>。
 
[[弁護士]]は被害者が存在するわけではないと主張し、子供の遺伝的リスクに関しても、障害を持つ親や40歳を超えて[[高齢出産]]をする女性などが犯罪者扱いされないのにもかかわらず、近親者間で子供をもうける親を犯罪者扱いするのは差別だと主張し、妹は取材に対して「私は家族と一緒に暮らすことと、政府と裁判所が放っておいてくれることを望んでいるだけ」と語った<ref>{{cite web|url=http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6424937.stm|title=Couple stand by forbidden love|first=Tristana|last=Moore|work=BBC News|publisher=BBC|language=英語|date=2007-03-07|accessdate=2011-05-20}}</ref>。
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1996年以降、モデル刑事法典役員会 (MCCOC) は近親相姦を違法とする法律について検討を行い、当初は犯罪となる近親相姦は児童への性犯罪法の範疇だとしていたが、成年で同意しているように見えても特に若い場合は児童期から虐待が行われていた可能性があり、その場合はどう対処するのかという問題が浮上し、1999年提出の報告書では結局撤廃を断念した<ref>{{cite web|url=http://www.scoop.co.nz/stories/AU9907/S00056/model-criminal-code-proposals-for-sexual-offences.htm|title=Model Criminal Code Proposals For Sexual Offences|language=英語|publisher=Scoop|date=1999-07-16|accessdate=2011-06-19}}</ref>。
 
夫婦の離婚で長いこと離れ離れになっていた父親と娘が再会後に子供をもうけ、父娘が有罪を宣告され裁判所から性交渉を禁止する命令を出された問題で、2008年4月6日に[[ナイン・ネットワーク]]が提供する番組(『60 Minutes』)で、39歳の娘が父親との間にもうけた自分の娘とともに出演し、テレビを通じて「今少しの理解と尊重を求めたいだけ」と訴えた<ref>{{citeCite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/-/2375134?pid=2806620|title=子供もうけ有罪の父娘、関係承認をTVで懇願 豪州|work=AFPBB News|date=2008-04-07|accessdate=2011-06-25}}</ref>。
 
なお、事件が起こったとされる時から数十年後になってからでも、過去に起こったとされる事件について裁判所が刑罰を宣告する可能性も存在する。1976年から1977年に当時14歳の娘が夫である義理の父親に虐待されるのを見逃した妻が、1980年に夫の命令で当時16歳の息子とセックスしたとして、2011年6月9日に2年3ヶ月の[[仮釈放]]なしの5年3ヶ月の投獄を宣告された[[ビクトリア州]]の女性の裁判例もある<ref>{{cite web|url=http://www.heraldsun.com.au/news/more-news/mother-jailed-for-having-sex-with-son-in-1970s/story-fn7x8me2-1226072457077|title=Mother jailed for having sex with son in 1970s|language=英語|first=Daniel|last=Fogarty|publisher=ヘラルドサン|date=2011-06-09|accessdate=2011-06-29}}</ref>。この父親も義理の子供3人と実の子供1人に対する性犯罪疑惑で近親相姦等の罪に問われ、15年の仮釈放なしの18年の投獄が2011年8月9日に宣告された<ref>{{cite news|url=http://www.dailytelegraph.com.au/news/breaking-news/paedophile-incest-dad-jailed-for-18-years-for-molesting-four-of-his-children/story-e6freuyi-1226111630009|title=Paedophile incest dad jailed for 18 years for molesting four of his children|language=英語|agency=Australian Associated Press|publisher=デイリー・テレグラフ|date=2011-08-09|accessdate=2011-08-09}}</ref>。
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====スウェーデン====
[[スウェーデン]]では婚姻法第2部第2章第3条の規定により、直系血族と同父かつ同母の兄弟姉妹の結婚は認められないが、異父または異母の兄弟姉妹ならば政府当局の許可を得た上であれば結婚は認められる。これは異父兄妹が近親相姦罪で犯罪者扱いされながらも別れろという命令を無視し、子供を2人もうけた事件をきっかけにして、1973年に異父または異母ならば特例で[[兄弟姉妹婚]]も可能なよう法改正が行われたためである<ref>{{Citecite journal|和書|author=棚村政行 |date=2005-08 |url=https://hdlwaseda.handlerepo.netnii.ac.jp/2065records/294899006 |title=遺族厚生年金受給権と近親婚的内縁の効力 |author=棚村政行 |year=2005 |journal=早稲田法学 |ISSN=0389-0546 |publisher=早稲田大学法学会 |month=aug |volume=80 |issue=4 |pages=21-67 |naidhdl=1200019416282065/29489 |issnCRID=0389-05461050282677457379968 |naid=120001941628 |accessdate=20212024-0506-1027}}</ref>。
 
====インド====
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[[アメリカ合衆国]]の州の中には[[テキサス州]]などのように、いとこ同士の性関係自体に対し刑罰規定を設け、犯罪と定めている州もある。結婚に関しては、[[いとこ婚]]が無条件に可能なのは19の州及び[[ワシントンD.C.|コロンビア特別区]]のみであり、双方の配偶者が年齢65歳以上または不能に関する証拠を持つ年齢55歳以上の場合に限って許可している[[ユタ州]]など、制限付きで可能なのが6州で、残る25の州ではいとことの結婚は禁止されている(2011年現在)。
 
[[中華人民共和国]]や[[朝鮮半島]]などの国家・地域では、いとことの結婚が認められない場合がある。1981年1月1日施行の中華人民共和国の修正婚姻法第7条1号では、傍系では3代即ち4親等までの血族の婚姻を認めていないため、いとこ婚は不可となっている。ただし、推奨はされないが民族性などを省みた上で、傍系血族婚規定について弾力的運用をすることは可能であるとしている<ref>{{Cite journal|和書|author=西村幸次郎 |title=中国民族法制の問題状況 : 動向と課題 |journal=山梨学院ロー・ジャーナル |issn=18804411 |publisher=山梨学院大学 |year=2007 |month=jul |issue=2 |pages=23-54 |naid=110006375147 |url=httphttps://idygu.repo.nii.ac.jp/1188/00000162records/163 |accessdate=20212024-0506-1027}}</ref>。一方、大韓民国では8親等以内の血族との結婚は認められないため、いとこやはとこはおろか、みいとことも結婚が認められないことになっている。
 
ヨーロッパではいとことの結婚は一応は可能であり、[[進化論]]を唱えた[[チャールズ・ダーウィン]]などがいとこと結婚している。ただカトリックの場合、[[教会法]]では原則禁止で、あくまで赦免を与えて特別に許可しているというに過ぎないので、個人の信仰上問題視されることならばありうる。[[アガサ・クリスティ]]原作のテレビドラマシリーズ『[[名探偵ポワロ]]』の一編「[[葬儀を終えて]]」では、葬儀のために集まったいとこが性的関係をもってしまい、深刻に悩む描写がある。
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イギリスのように、おじおば甥姪との性関係に対して刑罰規定が適用されうるとする法域も存在するが、ロシアでは家族法典第14条で近親婚扱いされておらず、婚姻が許可されている。ドイツでも婚姻法第4条第1項第21条で近親婚扱いされていないため、婚姻が可能である。フランスでは民法典第163条で一応は禁止されているものの、民法典第164条の規定で重大な理由がある場合は[[フランス大統領]]は婚姻を許可することができることになっている。日本でも国家としては婚姻の許可はしないものの、性関係に対する罰則は存在しない上、地域社会で結婚が実質的に受け入れられている場合もある。倉本政雄が1942年(昭和17年)の年度に調査し、1943年(昭和18年)に豐田文一と共同で発表した研究報告では、富山県の産婦人科で取り扱った1197人の調査において、叔姪婚が2組(全ての結婚のうちの約0.17%)存在していたという報告がある<ref name="toyamakenka">{{Cite journal|和書 |url=https://hdl.handle.net/2297/21539 |title=富山縣下ニ於ケル血族結婚ノ頻度ニ就テ : 農村衞生ニ關スル調査報告 第5報<!--旧字体は金沢大学リポジトリより--> |author=豐田文一, 倉本政雄 |journal=金澤醫科大學十全會雜誌 |publisher=金澤醫科大學十全會 |year=1943 |month=oct |volume=48 |issue=10 |pages=2270-2273 |naid=120001939254 |accessdate=2021-05-10}}</ref>。だが、たとえ地域社会で受け入れられていても民法で許可された婚姻と同等に扱うことはできないのでは、という論争が日本ではあった。
 
[[茨城県]]で父方の叔父と1958年以降内縁関係にあった姪が、叔父の死亡後に近親婚を理由として[[社会保険庁]]から[[遺族年金]]の支給を断られたため裁判となった。2004年6月22日、[[東京地方裁判所]]は地域社会で公認されている以上は法的な妻と同等の権利はあると判断した<ref>{{cite news|url=https://web.archive.org/web/20110624134938/http://www.47news.jp/CN/200406/CN2004062201001881.html|title=近親婚でも遺族年金支給 「事実上公認」と東京地裁|agency=共同通信|work=47 News|publisher=Press Net Japan Co., Ltd.|date=2004-06-22|accessdate=2011-06-24}}{{リンク切れ|date=2015年12月}}</ref>。しかし、控訴審の[[東京高等裁判所]]では2005年5月31日、近親婚的内縁関係に権利を認めると民法で守られている秩序が破壊されてしまうとして、社会的に保護される権利はないと逆転判決を出した<ref>{{cite news|url=https://web.archive.org/web/20110924202347/http://www.47news.jp/CN/200505/CN2005053101002805.html|title=“近親婚”は支給対象外 年金訴訟、女性が逆転敗訴|agency=共同通信|work=47 News|publisher=Press Net Japan Co., Ltd.|date=2005-05-31|accessdate=2011-06-26}}{{リンク切れ|date=2015年12月}}</ref>。これを受け最高裁判所への上告が行われ、2007年3月8日、最高裁判所はこの場合は地域社会に受け入れられているため、倫理性や公益性を省みた上で権利は認められる、と原告の訴えを認める判断を示した<ref>{{cite news|url=https://web.archive.org/web/20080104223245/http://www.47news.jp/CN/200703/CN2007030801000461.html|title=近親婚でも受給可 遺族年金、最高裁が初判断|agency=共同通信|work=47 News|publisher=Press Net Japan Co., Ltd.|date=2007-03-08|accessdate=2011-06-24}}{{リンク切れ|date=2015年12月}}</ref>。
 
=== 堕胎について ===
近親相姦で妊娠した場合に出産するか否かについての問題もある。堕胎(または[[人工妊娠中絶]])が完全に違法になるかなど各国の司法権によって対応が異なる。アメリカ合衆国では女性の権利して堕胎が認められており、近親相姦で妊娠した場合も産む産まないの選択が可能である。しかしながら、[[胎児の人権]]を重視する立場の[[プロライフ|プロライフ派]]はこの対応を批判しており、激しい論争が発生している。
 
2006年3月6日に[[サウスダコタ州]]で、母体に危険がない場合は近親姦や強姦によるものを含む全ての妊娠における堕胎を犯罪とする法律に、州知事が署名した<ref>{{cite web|url=http://www.nytimes.com/2006/03/06/politics/06cnd-abort.html|title=South Dakota Governor Signs Abortion Ban|language=英語|publisher=[[ニューヨーク・タイムズ]]|first=John|last=Holusha|date=2006-03-06|accessdate=2011-06-18}}</ref>。しかしこの州法に対し、2006年11月7日に[[住民投票]]が行われ、反対56%賛成44%の反対多数で廃止が決定された<ref>{{cite web|url=http://www.bismarcktribune.com/news/local/article_49101146-c76a-56b6-a981-c995cd737e01.html|title=South Dakota abortion ban rejected|language=英語|first=Kevin|last=Woster|work=Rapid City Journal|publisher=The Bismarck Tribune|date=2006-11-07|accessdate=2011-06-18}}</ref>。だがこの話はその後もアメリカ合衆国で問題となり続け、2019年にも[[アラバマ州]]で同様の法律が成立した。このアラバマ州の件を受けて大統領の[[ドナルド・トランプ]]は、近親姦や強姦の場合は堕胎禁止の例外だという自らの見解を2019年5月19日に示した<ref>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/us-news/2019/may/19/trump-backs-abortion-in-cases-of-or-incest-contradicting-alabama-law|title=Trump backs abortion in cases of rape or incest, contradicting Alabama law|language=英語|first=Pádraig|last=Collins|publisher=[[ガーディアン]]|date=2019-05-19|accessdate=2019-06-26}}</ref>。一方、[[スティーブ・キング]]は2019年8月14日に、我々だって近親相姦で生まれた子供の子孫じゃないかと指摘し、人工妊娠中絶に徹底して反対する姿勢を正当化した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3239958|title=人類はレイプ、近親相姦なしでは存続しなかった? 米議員の発言が物議|publisher=[[フランス通信社]]|date=2019-08-15|accessdate=2019-08-27}}</ref>。
 
日本では刑法第2編第29章に「堕胎の罪」という章があり堕胎は犯罪とされているが、[[母体保護法]]([[法令番号]]は昭和23年7月13日法律第156号)2条2項に定義される「人工妊娠中絶」が、同法14条1項に掲げられる適応事由に当てはまる場合に可能とされているため、事実上は非犯罪化されている。昭和23年7月13日法律156号のかつての名称は[[優生保護法]]であり、障害のある胎児が生まれてこないようにすることが目的で、差別的だということで女性の権利を重視する内容にして1996年に改名された経緯がある。だが、適応事由に当てはまるか否かは指定医師の判断に委ねられていることから、実際には安易な運用がなされていないかという問題はある。橘ジュンの『最下層女子校生 無関心社会の罪』(2016年)には、父親との間にできた子供であっても本当は産みたかったのに中絶することになってしまい、自分のことを殺人犯だと感じたという女性の話が載せられている{{Sfn|橘|2016|p=70}}。
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特に近親姦に限ってはいないが、近親姦を含む[[児童性的虐待]]を受けた女性全般について斎藤学 (2001) は、自らの調査では、自殺願望が高く[[対人恐怖]]の傾向があり、[[解離性障害]]や[[心的外傷後ストレス障害]] (PTSD) を抱えている場合が多くみられるとしている{{Sfn|斎藤|2001|pp=175, 178 - 179}}。
 
日本では、因果関係を巡り[[民事訴訟]]となった事例がある。両親が離婚し小学生であった1992年以降祖父の家で暮らしていた女性が、祖父が[[添い寝]]をして猥褻行為をするようになり2000年まで性的関係が続き、それが原因でPTSDになったとして損害賠償を祖父に求めた裁判で<ref>{{cite news|url=https://web.archive.org/web/20110924202930/http://www.47news.jp/CN/200510/CN2005101401004037.html|title=祖父の性的虐待でPTSD 約5900万の賠償命じる|agency=共同通信|work=47 News|publisher=Press Net Japan Co., Ltd.|date=2005-10-14|accessdate=2011-07-20}}{{リンク切れ|date=2015年12月}}</ref>、2005年10月14日に東京地方裁判所は性的虐待との因果関係を認めて祖父に約6000万円の支払いを命じた<ref>{{citeCite web|和書|url=http://www.asahi.com/national/update/1014/TKY200510140236.html|title=祖父から性的虐待、被害女性のPTSD認める 東京地裁|work=asahi.com|publisher=[[朝日新聞社]]|date=2005-10-14|accessdate=2011-07-20|archiveurl=https://web.archive.org/web/20051016025428/http://www.asahi.com/national/update/1014/TKY200510140236.html|archivedate=2005-10-16}}</ref>。
 
宮地尚子は、近親姦のごとき社会的にタブーとされる行為をさせられた場合、社会とのずれを自覚すると自分は社会に存在すべきではないと思ってしまうものだと論ずる{{Sfn|宮地|2013|p=135}}。[[トラウマ]]に関する思考の改善法として[[EMDR]]というものがあるが、この治療法は例えば父親に性的虐待を受けたことに対して自責の念を持っているような女性に関しては、その認識を改めさせることに用いることはできるとされている{{Sfn|黒川|2015|p=273}}。ベッセル・ヴァン・デア・コークは父親に犯されたことがあるということで自分のセラピーグループに来た心理療法家の女性が、専門家を対象にしたEMDRの研修でトラウマを解決してしまったとして去っていき、自分もEMDRの研修を受けることにした経験があるという{{Sfn|ヴァン・デア・コーク|2016|pp=411 - 413}}。
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人間のインセスト・タブーに関しては、[[今西錦司]]のようにサルのインセスト回避との連続体として捉える考えもある{{Sfn|原田武|2001|p=76 - 77}}。現在のバース・コントロールの多様さや密室が多く用意されている文明社会ではインセスト・タブーは不要であるとの指摘もあり、今西錦司はインセスト・タブーは大昔の村落共同体が社会単位であった頃にできたもので、今の文明社会では役に立つものではなく、フリー・セックスの時代になったら母息子、父娘、兄弟姉妹のインセストがどこかで行われていたところで咎めようがないとしている<ref>『今西錦司座談録』[[河出書房新社]] 今西錦司 1973年3月 309-310頁</ref>。今西錦司は社会構造を伝統や文化として考える立場だったのだが、[[伊谷純一郎]]はまずインセスト回避があって社会構造は後付けだと主張したことから、今西錦司が伊谷純一郎を批判する事態になった{{Sfn|中村|2015|p=117}}。ちなみに[[西田利貞]]は、当初は近親交配回避の話について今西錦司の立場に同調するような姿勢を見せていたと中村美知夫は述べる{{Sfn|中村|2015|p=128}}。
 
[[山極寿一]]は[[三浦雅士]]との対談において、かつて伊谷純一郎が「霊長類の社会構造」(1972年)で示した仮説としてインセスト回避が[[霊長類]]の社会構造の基礎であるという仮説があったが、その後この仮説は[[哺乳類]]一般まで普遍化が可能な代物であることがわかってきたとしている{{Sfn|山極|2015|pp=240 - 241}}。なお、山極寿一によれば、霊長類は普通オスが群れから出て行くインセスト回避の形式だが、人間により近い[[類人猿]]の場合メスが親元から出ていくためこの規則は当てはまらず、[[テナガザル]]や[[オランウータン]]ではメスもオスも親元から離れるのだが、[[ゴリラ]]では群れに残るオスがぼちぼちと出始め、[[チンパンジー]]や[[ボノボ]]に至っては群れから出て行くのはメスだけでオスはもっぱら群れに残るといったように父系重視の傾向が鮮明化するという{{Sfn|山極|2015|pp=54 - 56}}。また、ゴリラは親元に息子が留まり続けようとすると、父親と息子で交尾する相手が競合しかねないため、通常は息子は親元を離れるのだが、まれに父親が娘と交尾しないのを利用して、その父親の娘たちを交尾相手にして息子が親元に残る場合もあるとも山極寿一は述べる{{Sfn|山極|2015|pp=217 - 218}}。2015年、近親交配がアフリカ中部のマウンテンゴリラの生存に役立っているとする研究をクリス・タイラースミスらが発表した<ref>{{Cite web |和書|url=https://www.afpbb.com/articles/3045089|title=近親交配がマウンテンゴリラの生存に一役、研究 |work=[[フランス通信社|AFP]] |date=2015-04-10|accessdate=2015-04-17}}</ref>。
 
[[平山朝治]] (2003) は、人間は[[ネオテニー]][[進化]]を経た存在であるという見解について触れ、ボノボやチンパンジーでは性的に成熟した息子が母親と性交することはまず見られないものの、性的に成熟していなければ母親と性交する現象が確認できることから、ネオテニーの子供の場合では母親が息子のことをまだ子供だと錯覚しているため、より母と息子の近親交配が起こりやすいという仮説を立てている<ref>{{Cite journal|和書|url=https://www.tsukuba-g.ac.jp/library/kiyou/2003/12.HIRAYAMA.pdf |format=PDF |author=平山朝治 |title=人間社会と精神の起源 |journal=[https://www.tsukuba-g.ac.jp/library/kiyou/2003/index-j.html 東京家政学院筑波女子大学紀要] |issn=13426451 |publisher=筑波学院大学 |year=2003 |volume=7 |pages=159-177 |naid=110000074567 |accessdate=2021-05-10}}</ref>。実際にボノボの母と息子の交尾類似行為を観察した橋本千絵と[[古市剛史]]は、この行為は母親に性的興味があってやっているというよりも、母親にかまって欲しくてやっている行為のようだと論じている<ref>『霊長類学を学ぶ人のために』(西田利貞・上原重男編、1999年) 240頁 ISBN 4-7907-0743-1</ref>。
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[[尾本恵市]] (2017) は、一般論としては身近な相手に性的魅力を感じないといっても、娘を犯す異常な父親は実際に存在すると山極寿一に指摘する<ref>『日本の人類学』(山極寿一・尾本恵市著、筑摩書房、2017年) 205頁 ISBN 978-4-480-07100-2</ref>。核家族間の交配を含む近親交配の事例は人以外の動物でも、[[ウタスズメ]]、[[ガラパゴスフィンチ]]、[[プレーリードッグ|オグロプレーリードッグ]]、その他類人猿などでも確認されており、一定数存在するこれらの近親交配がその種にとって有利な選択になる可能性が指摘されている。まず、血縁者同士で儲けた子供の方が非血縁者同士で儲けた子供よりも自分の遺伝子のコピーを多く受け継ぐというものである。その結果、生存する子が両方同じ数である場合、個体が後代に残せる遺伝子が血縁者同士で子供を儲けた場合の方が多く残すことが出来る。また、血縁者同士の交配は、非血縁者同士の交配よりも比較的若い年齢で始まることが指摘されている。その結果、その個体の生涯における繁殖成功度が非血縁者同士の交配よりも、血縁者同士の交配の方が高まる。現代社会における結婚年齢は、夫婦が非血縁者同士である場合よりも、いとこ同士である場合の方が低いという。そのためか、いとこ婚の夫婦の子供の出生率は相対的に高い傾向がある。ローマ期エジプトの兄妹婚においても、若い夫婦が多く、非血縁者同士の男女よりも兄妹の方が早く結婚していた可能性が指摘されている。血縁者同士の交配の方が若くで始まる傾向があるということは人以外の動物でも観察され、ウタスズメは、繁殖開始年齢を下げるために近親交配をしているという。[[東京大学大学院理学系研究科・理学部|東京大学大学院理学系研究科]]教授の青木健一は、これらの理論をもとに集団生物学的にその種の集団間に存在する一定数の兄妹交配がその種にとって利益をもたらすものであり、その利益に与るために集団間に一定数兄妹交配の夫婦が存在するように適応進化したかどうかを解析するモデルを構築した結果、兄妹交配を行う性向が進化するための条件が満たされている可能性があると言及している{{Sfn|川田|2001|pp=37 - 45}}。
 
[[アダクチリディウム]]などの[[ダニ]]の複数の種類、[[ギョウチュウ]]、様々な種類の昆虫は日常的に近親交配を行うことが知られている。ガイマイゴミムシダマシに寄生するダニは、親から雄と雌が1体50の割合で生まれるが、行動範囲が狭く他の家族と接触する機会がないため、同じ親から生まれた兄妹で近親交配を行う{{Sfn|ジャドソン|2004|p=239}}。[[トコジラミ]]も近親交配を日常的に行っており、一匹の妊娠した雌がいれば、その子供達同士で交尾し大規模に繁殖をすることができる<ref>{{Cite web |和書|url=https://www.afpbb.com/articles/-/2845329|title=トコジラミ大繁殖の秘密は「近親交配」、米研究 |work=[[フランス通信社|AFP]] |date=2011-12-12|accessdate=2017-02-26}}</ref>。哺乳類においても、[[シママングース]]は近親交配を日常的に行っており、父親と娘が近親交配していることも観察されている。これは、一つの血縁関係のあるグループ内で近親交配をした方が、家族から離れ、他のグループの成員を探しに行くことで死亡するリスクを支払うことより利益が大きいからだという<ref>{{Cite web |url=http://www.techtimes.com/articles/22981/20141226/scientists-find-a-mammal-species-that-practices-incest-frequently.htm|title=Scientists Find Mammal Species that Practices Incest Frequently |work=TECH TIMES |date=2014-12-26|accessdate=2017-02-26}}</ref>。明治時代の日本の[[トキ]]のように人為的な理由から近親交配に追いやられた動物もいるが、結局最後の日本のトキだった[[キン (トキ)|キン]]が2003年に死に、全滅してしまった{{Sfn|酒井|2015|p=251}}。酒井仙吉は、[[ニワトリ]]では近親交配によって受精率の低下などがみられ、ヒトでも同様の現象が起こると述べている{{Sfn|酒井|2015|p=250}}。
 
== 遺伝学と生理的反応 ==
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自然界でも[[ボトルネック効果]]が発生した際に、選択的な[[遺伝的浮動]]が起こった場合には、有害な劣性遺伝子が除去され近親交配の負の効果が顕在化しない可能性はある。だが、通常は人間以外の動物の場合、近親交配の有害な影響を避けるために人為的な選択管理が必要となる。[[エルヴィン・シュレーディンガー]] (1944) は、人間の場合は自然淘汰の機能が損なわれているどころか、優れた人間のほうが殺害されることが多いため、近親交配の弊害にはより一層の注意が必要となると主張している<ref>『生命とは何か 物理的にみた生細胞』(シュレーディンガー、[[岡小天]]・[[鎮目恭夫]]訳、岩波書店、2008年、原書の初版は1944年発行で1948年版を日本語訳した1951年版を1975年に修正したものを文庫化したもの) 82頁 ISBN 978-4-00-339461-8</ref>。
 
実際には人間を含む有性生殖を行う動物の多くは近親交配を避けることが多く、人間の場合は[[ウェスターマーク効果]]といって近親相姦の嫌悪は一般的にありうるという研究結果も示されている。生物学的なインセスト・タブーの理論では、人間やその他の動物の近親交配回避機能が人間の意識に影響を与えていると捉えるのだが、この学説は遺伝学との相性が良いとされる{{Sfn|ハーマン|2000|pp=60 - 61}}。一方で、この親族認識の手段に関してはなお議論があり、[[ジェネティック・セクシュアル・アトラクション]]といって、近親者であっても生き別れの親族などでは普通に恋愛感情が湧くことが多いという指摘もある。また、[[:en:University of Pécs|ハンガリー国立ペーチ大学]]が行った研究では、男性は母親に似た女性、女性は父親に似た男性に惹かれる傾向があるという研究結果が存在する<ref>{{citeCite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/2513893|title=女性は父親似、男性は母親似を選ぶ傾向 科学調査で実証|publisher=AFPBB News|date=2008-09-04|accessdate=2014-03-15}}</ref>。
 
これに対して、NHKの教養バラエティ番組「[[ためしてガッテン!]]」では、20歳前後の女性に男性の使用済下着の臭いをランダムに嗅がせて、従兄弟まで(4親等以内)の男性血族の体臭は不快と感じるも血縁関係のない(と認識される)男性の体臭はむしろ香しいと感じるという実験を示し、これが近親交配を防ぎ遺伝子の多様性を維持するための遺伝上のメカニズムであるとしたが、この実験は非常に少ない被験者が対象であり、真偽は不明である。
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日本では男女の双子は心中者の生まれ変わりと考える文化があり、夫婦にしてやらなければならないと考えた<ref>『間引きと水子 子育てのフォークロア』([[千葉徳爾]]、大津忠男 著、農山漁村文化協会、1983年) 136頁 ISBN 978-4-540-83018-1</ref>。そのため、片方を養子に出して成人してから他人として結婚させるということが行われた。この場合は双子であっても近親相姦とは考えない傾向があった{{要出典|date=2012年8月|}}。
 
[[バリ島]]や[[サモア]]では、男女の双子は母親の胎内で近親相姦をしていると考えられている<ref>『文学と禁断の愛』(原田武、2004年) 130頁 ISBN 978-4-88179-135-6</ref><ref>{{citeCite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/%E7%95%9C%E7%94%9F%E8%85%B9-565580#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89|title=畜生腹 とは - コトバンク|work=世界大百科事典|publisher=[[日立ソリューションズ|株式会社日立ソリューションズ・ビジネス]]|accessdate=2014-03-18}}</ref>。バリ島では、この双子が母の胎内にいる時から既に親密であったとして、兄弟姉妹間での性交が許されていた{{Sfn|平野|1994|p=53}}。また、サモアの貴族階級では姉と弟が結婚するという事例が見られる<ref>『世界の女性史 2 未開社会の女 母権制の謎』([[大林太良]] 編、[[評論社]]、1975年)158頁</ref>。
 
13世紀の後半から15世紀の初頭にドイツを中心として興ったキリスト教の一派自由心霊派は、自由心霊を得た人間と神との同一性を説き、母親や姉妹と性交をすることができるとした。他人よりも姉妹と関係することが自然であり、姉妹はこの交接によってかえって貞節を増すものであると考えた<ref>『異端運動の研究 自由心霊派異端について』([[樺山紘一]]、[[京都大学人文科学研究所]]、1974年) 122頁</ref>。輪廻転生を信じる[[カタリ派]]においても、信仰者の中には男女を問わず自分の夫や妻よりも、兄弟や姉妹、息子や娘、甥や姪を相手に関係を持つものが多いという<ref>『異端カタリ派の研究 中世南フランスの歴史と信仰』([[渡邊昌美]]、岩波書店、1989年) 441頁 ISBN 978-4-00-000129-8</ref>。一人一人が[[キリスト]]であり[[聖霊]]であると説くアモリ派や、古代キリスト教の一小分派アダム派においても近親相姦が認められている<ref>『異端カタリ派と転生』(原田武、人文書院、1991年) 34頁 ISBN 978-4-409-42010-2</ref>。
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[[アナイス・ニン]]は30歳の時、音楽家であった実の父親[[ホアキン・ニン]]との近親相姦を体験し、そのことを自身の日記に肉体的な性交の描写に留まらず、自身のあらゆる感情について克明に記録し、出版した。[[エリカ・ジョング]]は父娘間の性交を扱った自著『ファニー』が映画や舞台になる際、それらを担当した脚本家がその部分をどうしても変えるといって聞かなかったという出来事に触れ、当時の近親相姦のタブーの強さを指摘し、アナイス・ニンはこのタブーを自分の人生によって破り、しかもそのことを書くという今まで誰もやったことがない大胆さを持っていたと述べた。エリカは20世紀が終わるにあたって、アナイス・ニンの革新性は文学の一部となり、女性文学の中で近親相姦を描写することのタブーは破られ、現代の女性作家はニンの世代が夢想したこともない驚くほどの作劇上の自由を手にしていると評価している<ref>Erica Jong『セックスとパンと薔薇―21世紀の女たちへ 』[[道下匡子]]訳,[[祥伝社]],2001年,113頁 ISBN 978-4-396-65020-9</ref>。アナイス・ニンの愛人だった[[オットー・ランク]]はアナイスから彼女と父親との性行為の話を聞いた際、「あなたは人生を神話のように生きようとしている」と評した<ref>Anaïs Nin『インセスト―アナイス・ニンの愛の日記 無削除版 1932〜1934』,[[彩流社]],2008年,486頁 ISBN 978-4-7791-1317-8</ref>。ジュディス・ハーマンは、[[ウラジーミル・ナボコフ]]の『[[ロリータ]]』においては義理の父親が義理の娘に誘惑されるという話が扱われていることを指摘した上で、男性誌で扱われている実話ということにされている話について話の流れが似ていることから『ロリータ』を芸術的に劣化させた話のように感じられてならないと感想を述べている{{Sfn|ハーマン|2000|pp=43 - 45}}。アメリカにおいては、性的自由の風潮が育ってきたことによるものかどうかは判定するのは難しいが、近親相姦を扱った漫画や映画、書物は増加しているとされ、1921年から1930年の間に封切られた長編映画で近親相姦を含むものは全6606本のうち6本だったのに対し、1961年から1970年の間では全5775本の内79本あった。近親相姦を扱った物語の内容としても、『オイディプス王』に見られるような悲劇のテーマとは異にしてきており、暗い結末を持っておらず、性的束縛に対する全体的な挑戦の一つとして映画や書物の中で気軽に扱われるのが流行してきている{{Sfn|ジャスティス|1980|pp=50 - 51}}。リチャード・ガートナーは、映画においては少年と関係する年上の女性が経験豊富で魅力的な女性として描かれることが多く、『[[好奇心 (映画)|好奇心]]』のようにこの考えをそのまま母親と息子の関係に当てはめた作品もあると指摘する{{Sfn|ガートナー|2005|pp=72 - 73}}。
 
ワーナー・ソラーズは近親相姦と[[混血]]が正反対の位置にあるにもかかわらず、[[奴隷制]]を持つ社会を舞台としたフィクションでの表象においてはしばしば密接な関係を持って描かれると指摘している<ref>[[ハルオ・シラネ]](編),松井健児(編),[[藤井貞和]](編)『日本文学からの批評理論―アンチエディプス・物語社会・ジャンル横断』イヴ・ジマーマン(著)「兄妹愛とインセストー中上健次『秋幸三部作』をめぐって」([[笠間書院]] 2009年8月)141頁 ISBN 978-4-305-70485-6</ref>。[[ナサニエル・ホーソーン]]の母方の4代前の祖先のニコラス・マニングは、自身の二人の妹と性的関係を結んでおり、またホーソン自身も姉のエリザベスと固着的な姉弟関係を持っていた。[[岩田強]]はホーソンにとって聡明な姉のエリザベスが常に発達同一化の対象であったと指摘している。また、エリザベスが生涯独身であったことについて触れ、彼女が弟を愛し崇拝していたということ、また弟の結婚相手を憎悪していたということを慮ると、近親相姦的感情の存在は否定しきれないと分析している<ref>岩田強『文豪ホーソンと近親相姦』,[[愛育社]],2012年,101頁 ISBN 978-4-7500-0419-8</ref>。[[テネシー・ウィリアムズ]]は少年時代より唯一の遊び相手だった姉のローズと仲が良かったが、精神を病んだ姉が自身の知らない間に[[ロボトミー]]手術を受けて廃人となってしまったことで、結婚もせず、生涯償いであるかのように姉の面倒を見ることになった。姉ローズへの思いは、『浄化』『ガラスの動物園』『欲望という名の電車』『二人だけの芝居』といったテネシーの作品の中で登場人物の中に投影されていて、それは時に痛みを伴うものであり、時には近親相姦を思わせるものでもあるという<ref>{{Cite journal|和書|author=吉川和子 |title=テネシー・ウィリアムズ作品におけるCONFINEMENT IMAGERYについて : 『ガラスの動物園』と『欲望という名の電車』及び『二人だけの芝居』の考察 |journal=大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 |issn=1882-5966 |publisher=大阪産業大学 |year=2011 |issue=13 |pages=35-54(p.37) |naid=110008767920 |url=httphttps://idosu.repo.nii.ac.jp/1338/00001090records/1098}}</ref>。
 
[[トーマス・マン]]は『[[選ばれし人]]』、『[[ヨセフとその兄弟|エジプトのヨセフ]]』など近親相姦を扱った作品を執筆しているが、トーマス・マンが育った一家には性的色彩を濃厚に帯びた兄妹愛が存在していたことが長男[[ハインリヒ・マン]]の著作などから指摘されている。長男ハインリヒと次女カルラ、次男トーマスと長女ルーラのそれぞれの組み合わせには恋愛感情ないしはそれに近いものが存在していた{{Sfn|高山|2011|pp=112 - 113}}。また、トーマス・マンが妹カルラに宛てた短編『衣装戸棚』の内容から、トーマス・マンはもう一人の妹である次女カルラにも性的な愛情を向けていた可能性があるという<ref>マリアンネ・クリュル著、[[山下公子]]・三浦國泰訳『トーマス・マンと魔術師たち マン家のもう一つの物語』、[[新曜社]]、1993年の書物の日本語訳、1997年、489頁 ISBN 978-4-7885-0596-4</ref>。トーマス・マンは双子の兄妹の近親相姦を扱った『ヴェルズンゲンの血』を書く数か月前に[[カタリーナ・マン|カーチャ・プリングスハイム]]を妻にしているが、彼女は双子の兄に[[クラウス・プリングスハイム]]がおり、トーマス・マンは『ヴェルズンゲンの血』が何らかの出来事の焼き直しであるということを示唆する手紙を書いていた。そのため、『ヴェルズンゲンの血』はプリングスハイム家の双子の兄妹をモデルにしていると話題になった<ref>早崎えりな『ベルリン・東京物語』、[[音楽之友社]]、1998年、8-9頁 ISBN 978-4-276-21134-6</ref>。高山秀三は近親愛は他人よりも自分に近い者への愛としてナルシシズムを原点に持つと述べ、近親愛に関心があったトーマス・マンと三島由紀夫をナルシシズムの観点から共通性が見い出されると論じている{{Sfn|高山|2011|p=10}}。[[パーシー・ビッシュ・シェリー]]は、自身の著作『チェンチ家』『レイオンとシスナ』『ロザリンドとヘレン』で近親相姦を扱っているが、「近親相姦は、非常に詩的な題材である。それは、愛情の過度か憎悪の過度かのいずれかである。それは、最高の英雄的な行為の栄光に身を包むもののために、他の総てを無視するものであるか、或いは、利己主義と嫌悪に耽る目的のために、思想の内にある善と悪の観念を混同し、これらを無視する冷笑的な憤怒であるかのいずれかである」と述べている<ref>『シェリー研究』([[高橋規矩]]著、[[桐原書店]]、1981年)224頁</ref>。[[マルグリット・ユルスナール]]は文学における近親相姦の歴史を『姉アンナ…』の自作解説で振り返り、父娘や母息子の場合は双方の意志に基づかないものが多く、兄弟姉妹だけには意志的なものが成り立つと主張した{{Sfn|原田武|2001|pp=170}}。マルグリット・ユルスナールは近親相姦が可能性の状態で人間の感受性の中に偏在していることは神話や伝説、夢想、統計、新聞記事などが充分に証明していると述べた<ref>マルグリット・ユルスナール『姉アンナ…』,[[白水社]],1987年,137頁 ISBN 978-4-560-04255-7</ref>。
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{{seealso|血統の崩壊}}
=== 先史時代 ===
[[2010年]]に[[ロシア]]の[[シベリア]]で出土した5万年前の[[ネアンデルタール人]]女性の骨から採取した[[DNA]]を解析した結果、両親は近親者同士であることが判明した。半血兄弟または叔父と姪などの関係であると見られ、当時の人類は集団が小さいため近親での交配が一般的であったことが指摘された<ref>{{Cite web |和書|url=httphttps://www.nikkei.com/article/DGXNZO64295120Z11C13A2CR8000/|title=ロシアで出土のネアンデルタール人、両親は近縁か |work=日本経済新聞 |date=2013-12-19|accessdate=2013-12-28}}</ref>。ネアンデルタール人はアフリカにいた人類と混血し、ヨーロッパ人や東アジア人などの先祖になったとされるが、彼らのネアンデルタール人由来と見られるDNAは弱い負の自然淘汰を受け続けているとされる。アダム・ラザフォードは、ネアンデルタール人の繁殖集団が小規模だったのが、自然淘汰上今でも不利に働いているのではないかと指摘している{{Sfn|ラザフォード|2017|p=71}}。
 
[[ルイス・ヘンリー・モルガン]]は、[[アメリカ州の先住民族|北米先住民]]の[[イロコイ族|イロコイ]]族や[[オジブワ]]族が、[[父親|父]]と父の兄弟、[[母親|母]]と母の姉妹、兄弟姉妹の子供は全て自分の子供と同じ親族名称で呼んでいることから、本人が兄弟たちの妻や自分の姉妹たちとの間に子をつくっても自分の子供と区別がつかない、として、原始乱婚制、つまり兄妹姉弟間に近親相姦があった、という仮説を立てたが、批判も浴びた。
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[[江戸時代]]中期の[[医師]]・[[思想家]]の[[安藤昌益]]は、同じ両親から産まれた兄妹が性的に結ばれ夫婦になることは、普通のことであり、人道であると述べている<ref>安藤昌益『稿本自然真営道』(1981年) 343頁 ISBN 978-4-582-80402-7</ref>。
 
作家[[武林無想庵]]は実妹を犯したことがあるとされる<ref>[[今東光]]『十二階崩壊』(中央公論社、1978年)</ref>。その後、無想庵の妹は[[カトリック教会|カトリック]]の修道女となった。[[明治]]の初めごろ、[[大阪府]]の[[河内市|河内]]や[[和泉]]で伯父と姪の結婚がおりおりあって、それをサシアタリと呼んでいた。[[岩手県]]などの東北地方でも伯父と姪の夫婦の実例が見られ、[[盛岡市]]付近では、実の父と娘の性関係をイモノコと呼んでいる<ref>[[大間知篤三]]『婚姻の民俗学』(1967年)70頁 ISBN 978-4-753-40018-8</ref>。
 
====ヨーロッパ====
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フランスの画家の[[ピエール・モリニエ]]は妹のジュリエンヌを深く愛し神が磔になっている所を模して妹を壁に貼り付かせ、脚にキスをした。1918年、ジュリエンヌは[[スペイン風邪]]により若くしてこの世を去る。モリニエはその身体を撮影し、妹の遺体と性的接触を行って射精した。モリニエは娘のフランソワーズにも魅力を感じ、[[ボルドー]]の人々はフランソワーズは父親の愛人だと噂をしていたが、フランソワーズは「父親は自分を恋愛的な目で見ていたのは今では知っているし、結婚の6か月前には嫉妬に狂ってはいたが、自分に対しては実行したことは最後までなかった」と述べた<ref>ピエール・プチ『モリニエ、地獄の一生涯』,[[人文書院]],2000年,13、20、53頁 ISBN 978-4-409-10013-4</ref>。
 
[[日中戦争]]で[[日本軍]]は[[南京]]を攻略するが混乱が発生([[南京事件 (代表的なトピック)|南京事件]])。信憑性に疑問の声もあるが、当時南京にあったドイツ大使館において書記官を勤めていたゲオルグ・ローゼンによって編纂された『南京ドイツ大使館公文書綴「日支紛争」』によれば、棲霞山で日本軍が母親を持つ息子に対してその母親と交わるよう命令したとされる<ref>『『ザ・レイプ・オブ・南京』の研究 中国における「情報戦」の手口と戦略』([[藤岡信勝]]・[[東中野修道]]著、祥伝社、1999年) 163、164頁 ISBN 4-396-61090-4</ref>。日本に勝利した中国は[[南京軍事法廷|国民政府国防部審判戦犯軍事法廷]]を開き、郭岐の『陥都血涙録』が証拠として採用される。郭岐は日本軍の兵士は息子が母を犯すのを見て楽しんでいたと述べたが、[[黒鉄ヒロシ]]はこんなのは恐らく日本兵の反倫理性を強調するために創作された話であって、日本人がこんなことを絶対にやるわけがないと主張している<ref>『もののふ日本論 明治のココロが日本を救う』(黒鉄ヒロシ、幻冬舎、2017年) 129頁 ISBN 978-4-344-98450-9</ref>。
 
1939年、[[ペルー]]で[[リナ・メディナ]]が史上最低年齢の5歳7カ月21日で出産。父親が逮捕されたが証拠不十分で釈放。現在もこれより低年齢での出産は確認されていないが、その息子は40歳で死去した。
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1995年1月1日、多くの女性たちを解体し殺害した罪及び娘に対する性的虐待行為の容疑で刑務所に入れられていたイギリスの[[フレデリック・ウェスト]]が刑務所で首を吊り自殺した。彼に関しては、母親にセックスされたり、父親に[[獣姦]]の教育をされたなど、さまざまな話が流れていた。[[シリアルキラー|連続殺人者]]であったと考えられているが、裁判前に自殺したため本人は有罪になっていない。
 
2000年3月26日、[[俳優|女優]]の[[アンジェリーナ・ジョリー]]は[[アカデミー助演女優賞|助演女優賞]]を受賞した[[第72回アカデミー賞]]授賞式で、実兄のジェイムズ・ヘイヴンとマスメディアの前でディープキスを披露し、「兄を心から愛しています」と述べた。これによって、マスメディアからは近親相姦の疑惑についての記事が掲載された。尚、アンジェリーナは実子に元々兄に付けられる予定だった名前を付けている<ref>{{citeCite web|和書|url=https://www.cinematoday.jp/page/A0001572|title=【今週のクローズアップ】『マイティ・ハート/愛と絆』アンジェリーナ・ジョリー|publisher=シネマトゥデイ|accessdate=2015-02-03}}</ref>。
 
2006年、[[テリー・ハッチャー]]はかつて叔父から近親姦の被害を受けていたことを語った。その叔父は少女を虐待した、その少女が自殺。叔父は実刑判決を受けていた。
 
2009年9月、[[マッケンジー・フィリップス]]は回想録『High on Arrival』を公刊。この中で彼女は、19歳の時に自身の[[結婚式]]の直前に実父[[ジョン・フィリップス (音楽家)|ジョン・フィリップス]]([[ママス&パパス]]の元メンバー)に犯されたと述べた。娘の結婚式の妨害目的とし、無理矢理だったのは最初だけでそれ以後は自らその行為に合意していたという<ref>{{citeCite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/-/2645116?pid=4659145|title=『アメリカン・グラフィティ』のM・フィリップス、実父との近親相姦を告白|work=AFPBB News|date=2009-09-24|accessdate=2011-07-02}}</ref>。彼女が父にかつての強姦について尋ねたところ、父は愛し合った時のことかと返答したという<ref>{{citeCite web|url=http://www.eonline.com/uberblog/b145567_mackenzie_phillips_i_was_raped_by_papa.html|title=Mackenzie Phillips: I Was Raped by Papa John|language=英語|first=Natalie|last=Finn|work=E! Online|publisher=[[E!]]|date=2009-09-22|accessdate=2011-06-16|deadlinkdateurl-status=dead|url-status-date=2015-12-11}}</ref>。
 
2012年7月、オーストラリアの[[コルト一家の近親相姦|コルト一家]]が4世代にわたって数十人規模で叔父姪・叔母甥や兄妹・姉弟間で近親相姦を行っていたことが発覚した<ref>{{citeCite web|和書|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3004996|title=豪で「近親相姦農場」見つかる、先天異常の子ら12人保護|publisher=[[フランス通信社|AFP]]|date=2013-12-13|accessdate=2018-04-15}}</ref>。
 
== 神話 ==
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** [[塞の神]]([[道祖神]])<ref>[[倉石忠彦]](著)『道祖神信仰論』名著出版,1990年, p.86 ISBN 978-4-626-01383-5</ref> - 栃木県では道祖神はドウロクジンと呼ばれ、ドウロクジンは兄妹である。兄妹が二人とも性器が大きすぎて誰のとも合わず、相手を探して諸国を旅したが結局相手は見つからなかった。結局、兄妹同士で合わせたらうまく合ったので夫婦になった。今でも兄妹・姉弟で手を繋いで仲良くしていると「ドウロクジンのようだ」と言われる<ref>[[大島建彦]](著)『道祖神と地蔵』三弥井書店,1992年, p.69 ISBN 978-4-838-28023-0</ref>。
* [[ヤオ族]]の兄妹始祖・洪水神話([[中国神話]])
**[[伏羲]]と[[女カ|女媧]]<ref>[[聞一多]](著)[[中島みどり]](訳注)『中国神話』[[平凡社]],1989年, p.14 ISBN 978-4-582-80497-3</ref> - ヤオ族には[[大洪水]]で伏羲と女媧の兄妹が生き残り、兄は妹に対し結婚を申し込むも妹は渋り、大木の周りを回ってみて捕まったら結婚すると妹が条件を出し、兄は足の速い妹になかなか追いつけなかったものの、兄が途中で逆に回ってみたところ妹は鉢合わせする形で兄に捕まってしまい、二人は結婚し夫婦となったという伝承がある<ref>{{citeCite web|和書|url=http://wwwdigioka.townlibnet.nagipref.okayama.jp/libraryeol/text_2.pdfdetail-jp/kyo|format=PDF|title=大いなる巨人の伝説 さんぶたろう成立の謎 第二部:伝承の背後に隠されたもの|work=奈義町立図書館 電子図書館|publisher=[[奈義町]]|date=2009|accessdate=2011-08-24|deadlinkdate=20152024-1206-1127}}</ref>。兄弟姉妹の通婚という神話伝説は、かつて原始人の間に血縁結婚が存在したことの名残りであるともいう<ref>劉達臨(著)松尾康憲、氷上正、于付訓(訳)『性愛の中国史』[[徳間書店]],2000年, p.25 ISBN 978-4-198-61200-9</ref>。
* [[琉球諸島|琉球]]神話と琉球文化(奄美から沖縄にかけて島々の創世神話を「島建て」といい、例えば波照間の創世神話は[[イザナギ]]・[[イザナミ]]に洪水神話を合わせたような形である)(兄妹始祖・洪水/参照:[http://www.kt.rim.or.jp/~yami/hateruma/seichi.html 波照間島の聖地]・[http://www.kt.rim.or.jp/~yami/hateruma/fuka.html 波照間島の兄妹始祖創世神話])
[[ファイル:Anonymous-Fuxi and Nüwa.jpg|thumb|left|200px|女媧(左)と伏羲(右)]]