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[[File:Ticket ResortOdoriko Green 19980125.jpg|thumb|MARSによる発券の一例]]
[[ファイル:MRmars.JPG|thumb|MR32型マルス端末]]
'''マルス'''({{lang-en|'''MARS''' : MultiMagnetic-electronic Access seatAutomatic Reservation System}})は、[[日本国有鉄道]](国鉄)・[[JR|JRグループ]]の[[座席指定券]]類の予約・発券のための[[コンピュータシステム]]である。
 
== 概要 ==
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名称について、元々は {{en|"'''M'''agnetic electronic '''A'''utomatic seat '''R'''eservation '''S'''ystem"}}(磁気的電気的自動座席予約装置)の略とされていたが、その後 {{en|"'''M'''ulti '''A'''ccess seat '''R'''eservation '''S'''ystem"}}(旅客販売総合システム)の略となり、現在では再び"Magnetic electronic Automatic seat Reservation System"の略となっている。[[ローマ神話]]の軍神[[マールス|マルス]]にかけたネーミングでもある。アルファベットでは"MARS"と書くが、一般には[[片仮名]]で「マルス」と表記される。
 
マルス1(マルスワン)が電子計算機技術の[[オンライン]]リアルタイムシステムへの応用の可能性を示したこと、現代でも実際に使われているシステムへの発展の基礎となったことが評価され、[[2008年]]([[平成]]20年)10月、[[電気学会]]の電気技術顕彰制度「第1回でんきの礎」モノ部門に選定された<ref>{{Cite web |和書|date=2008-10 |url=https://www.iee.jp/file/foundation/data02/ishi-01/ishi-2122.pdf |title=座席予約システム:マルス1/みどりの窓口の先がけ |publisher=一般社団法人 電気学会 |accessdate=2019-12-06}}</ref><ref>{{Cite web |和書|date=2008-10 |url=https://www.iee.jp/foundation/list01/ |title=第1回 でんきの礎 |publisher=一般社団法人 電気学会 |accessdate=2019-12-06}}</ref><ref>{{Cite news|newspaper=[[交通新聞]]|publisher=交通新聞社|date=2008-10-22|language=日本語}}</ref>。
 
また、[[2009年]](平成21年)には[[情報処理学会]]により「[[情報処理技術遺産]]」として認定された<ref>「[http://www.ipsj.or.jp/07editj/history/2009heritage2.html 情報処理技術遺産および分散コンピュータ博物館認定制度を開始]」情報処理学会、2009年2月23日</ref>。
 
=== マルスシステム ===
[[マルス (システム)#マルス500系統|マルス501]]の中央装置([[ホストコンピュータ]])は、[[2013年]]以前までは[[東京都]][[国分寺市]]にあったが現在はその後住所を明らかにしない形で別の場所に設けられたシステムセンター(非公表)に移転している<ref name=":1">{{Cite web |和書|url=https://www.jrs.co.jp/guideline/mars/ |title=旅客販売総合システム「MARS(マルス)」 |publisher=鉄道情報システム株式会社 |accessdate=2021-10-04}}</ref>。このセンターは、[[震度7]]の横揺れにも耐えうる[[免震]]構造と、[[特定非営利活動法人]][[日本データセンター協会]]([[データセンター]]の[[業界団体]])による施設基準の格付けで最高水準(ティア4<ref>{{Cite web |title=Data Center Facility Standard |url=https://www.jdcc.or.jp/english/fs.html |website=www.jdcc.or.jp |access-date=2024-01-26 |publisher=特定非営利活動法人日本データセンター協会}}</ref>)の信頼性を確保した[[コンピュータセキュリティ|セキュリティ]]設備を備えている<ref name=":1" />。大規模地震などの災害が発生してもサービスを継続的に提供できるようになり、[[安全性]]と[[信頼性]]が高まった<ref name=":1" />。[[国鉄分割民営化]]以後は[[鉄道情報システム|鉄道情報システム株式会社]](JRシステム)が保有・運営している。中央装置で一括管理する[[集中型]]を採用しており、中央装置は歴代[[日立製作所]]の大型コンピュータ・超大型コンピュータが採用されている。[[2020年]](令和2年)時点で使用しているマルスは「マルス505」である。
 
中央装置で一括管理する[[集中型]]を採用しており、中央装置は歴代[[日立製作所]]の大型コンピュータ・超大型コンピュータが採用されている。[[2020年]](令和2年)時点で使用しているマルスは「マルス505」である。
 
もともとは鉄道切符([[乗車券]]・[[特別急行券]]・[[急行券]]・[[座席指定券]]・[[グリーン券|特別車両券]]・[[寝台券]]など)の発売のために開発されたシステムだが、現在では乗車券類だけでなく、[[宿泊施設|宿泊]]券、[[遊園地]]や[[展覧会]]など[[イベント]]の[[入場券]]等の販売も行えるようになっており、かつては[[航空券]]を取り扱ったこともあった。
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#* レンタカー券:駅[[レンタカー]]の在庫照会、レンタカー券の発売・変更・払戻・控除
#* 航空券:全日空(系列航空会社も含む)や日本航空(系列航空会社も含む)の航空券新規発売・払戻し・変更(払戻しについては、旅客会社発行かつ発行した旅客会社の駅に限る)
#** 旅館券・航空券の発売に関しては[[旅行業務取扱管理者]]資格を持った社員が在籍しないと発売できないため、JR西日本は2008年(平成20年3)3月31日をもって駅での旅行業取り扱いを終了し、グループ会社の[[日本旅行]]での取り扱いに一元化したことから、同社管内の駅に配置されている端末では初期メニューからも旅館券・航空券の項目が削除されている。また旅行会社では航空券は自社の総合端末の発券機能か、別途航空会社からレンタルされた端末を使用し、旅館券やイベント券も自社のシステムで発券することが多いため、マルスでの旅行業務機能は使う用途が限られている。
# 個別業務(旅客会社によってメニューが異なる)
#* ICカード:ICカード新規発売・チャージ・払戻、IC定期券の新規(継続)発売・払戻([[四国旅客鉄道]](JR四国)を除く旅客各社。JR西日本は諸事情によりチャージの取扱を現金・クレジットとも中止)
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指定席管理センターでの予約処理はおおよそ以下のとおりであった。
# 予約処理を行なう職員は、方面別の指定席管理台帳が収納されている、<!--中華テーブルをヒントに考案された-->回転テーブルの前に着席している。
# 駅係員などからの指定席要求に対し、かなりの速度で回転しているテーブル(直径約2m2 m、約8秒前後で1回転)から該当する台帳を取り出す。
# 台帳に席の割り当てを行なう。
# 問い合せ元への回答を行なう。
# 書き込んだ台帳を、回転テーブルの所定の位置が自分の前に戻ってきたタイミングで正確に投げ戻す。
 
これらの作業にはかなりの技を駆使する必要があった。ベテランになると、1メートルぐらい離れたところからでも所定位置に戻せるという、まさに[[職人]]技をもって対処していた。この様子は[[国立科学博物館]]のマルス101の展示の前で流されている解説ビデオなどで見ることができる。
 
しかしこの方式では発券までに最短でも2分程度かかり、普段はさらに電話の順番待ちや台帳の使用待ちなどの時間がかさんで、数十分かかることも少なくなかった<ref name="rj79-45-46">『みどりの窓口のマルス・システム』45-46頁</ref>。その上、指定席を連結する特急・急行列車が増加するにつれて申込みの量も膨大な量となり、その膨大な量の申込みを遂には捌ききれなくなってしまった。実際に、指定席(券)を必要とする旅客がいるにもかかわらず、発券が間に合わないため、空席を残したまま列車が発車してしまう事態も発生していた。さらに、主たる作業を人手で行っていたために、聞き間違いによる予約指定ミス、書き間違い、回答の言い間違い、転記ミスなど、[[ヒューマンエラー]]による発券ミスを引き起こす要因が数多くあった。
 
これを改善するため、[[1956年]](昭和31年)ごろから国鉄の営業局・電気局・[[鉄道総合技術研究所|鉄道技術研究所]]で基本構想が練られ<ref name="rj79-49">『みどりの窓口のマルス・システム』49頁</ref>、翌[[1957年]](昭和32年)には当時の鉄道技術研究所の[[穂坂衛]]、[[大野豊 (工学者)|大野豊]]らが、日本が最初に輸入したコンピュータである[[Bendix G-15]]のアーキテクチャや、[[アメリカン航空]]が当時研究中の[[CRS (航空)|座席予約システム]]「[[SABRE]]」などを参考にしつつ、世界初となる列車座席予約システム機械化する研究を開始した。さらに翌年の[[1958年]](昭和33年)、日立製作所とともにマルスの開発が開始された。また、相前後して、小田達太郎による、[[サイバネティックス]]の考え方などの導入といった改革の機運が、国鉄内にあったことも背景にあることが指摘されている<ref>{{PDFlink|[http://sts.kahaku.go.jp/tokutei/pdfs/03_22.pdf 模倣から創造へ:国鉄座席予約システムMARS-1における技術革新]}}</ref>。
 
設計にあたっては、旅客が発券を要求してから実際に旅客に指定席券が渡されるまで30秒で済むこととされ、これによって繁忙期でも発券待ちの列が3人ほどに抑えられると考えられた。
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一方で最初のシステムということで不具合も多く、設置工事中には機器のダイオードが不良となりほぼ全て交換したり、記憶装置の磁気ドラムの破損が発生するなどした。稼働開始後も、記憶されたデータが係員のミスで全面的に破損し、すべての控えを手作業で集計しなければならなくなるなど、様々な失敗や不具合が相次いだ<ref name="rj79-50"/>。
 
現在マルス1の本体は、[[埼玉県]][[さいたま市]][[大宮区]]の[[鉄道博物館 (さいたま市)|鉄道博物館]]に、[[電気学会]]から表彰された「電気の礎」プレートとともに展示されている<ref>{{citeCite web|和書|url= https://www.iee.jp/foundation/list01/photo06/|title=展示状況 座席予約システム:マルス1/みどりの窓口の先がけ|publisher=電気学会|accessdate=2020-5-27}}</ref>。
 
=== マルス100・200系統 ===
[[ファイル:JNR-TicketMARS Ozora101 Green-carCentral Unit Room.jpg|thumbサムネイル|200px|初期の秋葉原駅中央装置室にてマルス端末機で発券された指定席券101の制御卓]]
[[ファイル:MARS 101 architecture.jpg|サムネイル|マルス101のアーキテクチャ]]
; マルス101
: マルス1でコンピュータによる予約システムの実証ができたため、全座席予約・全国展開・乗車券の印刷を盛り込んだマルス101が、次のマルスシステムとして開発された。日立側の形式の付かないマルス1とは異なり、本機の日立側の形式は[[HITAC]] 3030である。HITAC 3030はマルス101用に設計されたものであるが、航空の座席予約や銀行のオンラインシステムなどにも使われた<ref>{{cite web|url=http://museum.ipsj.or.jp/computer/dawn/0065.html|title=HITAC3030|publisher=コンピュータ博物館|accessdate=2020-5-27}}</ref>。通信時のデータロスト対策やデータ構造の最適化による記憶容量の削減、準備完了ランプ、データエラー発生時再考ランプなどの[[ユーザインタフェース]]の改良など、大規模なシステムに対応する数々の工夫が講じられた。
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: マルス100系、マルス150系、マルス200系の統合システム。[[1983年]]1月から開発が始まり、[[1985年]]3月1日に稼働開始<ref>{{Cite news |title=「マルス301」3月に稼働 |newspaper=[[交通新聞]] |publisher=交通協力会 |date=1985-01-08 |page=1 }}</ref>。同時に登場したM型端末には、マルス向け端末で初めて[[ディスプレイ (コンピュータ)|モニター]]と[[キーボード (コンピュータ)|キーボード]]が付いた。また目的地にピンを差し込んで入力するページ面(通称・パタパタ)を採用している。
: 駅コード([[電報略号 (鉄道)|電略]])の入力が可能なため、国鉄全線全駅を対象とした発券が可能となった。また[[周遊券]]などの図形を用いた券面印字や定期券にも対応した最初のシステムでもある。
: 乗車券原紙についても、本来は[[武蔵野線]]・[[片町線]]などで実用実験が開始された自動改札機に対応させるべく、連続用紙から裏面に磁性体を塗布したロール紙に変更されたが、[[定期券]]以外は[[日本鉄道技術協会#日本鉄道サイバネティクス協議会|サイバネ規格]]に準拠しておらず、定期券以外が実際に自動改札機での使用が可能になるのはマルス305以降となった。[[1987年]][[4月1日]]、[[国鉄分割民営化]]によりマルスは鉄道情報システム(JRシステム)が承継した。
; マルス305
: 国鉄分割民営化後、初めて鉄道情報システム(JRシステム)が稼働させたシステム<ref name="kotsu19930312">{{Cite news |title=JRシステム 「301」から「305」へ マルスの名称変更 |newspaper=[[交通新聞]] |publisher=交通新聞社 |date=1993-03-12 |page=1 }}</ref>。
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{|class="toccolours plainlinks" style="text-align:center; width:100%;" cellspacing="1"
|style="text-align:center;" colspan="80"|'''
|-
|style="text-align:center; width:10%; back-ground-color:#F0F0F0;" colspan="10"| 1960年代
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== マルス端末発行の乗車券類に記載される発行旅行会社記号 ==
{{出典の明記|section=1|date=2024年5月}}
{{更新|section=1|date=2013年4月}}
[[ファイル:West MV.jpg|thumb|200px|発行箇所によって異なる印字(上:JR西日本MV端末 下:JR東海ツアーズ窓口)]]
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** 伊…[[伊豆箱根鉄道]]・伊豆箱根トラベル
** 相…[[近畿日本ツーリスト神奈川|相鉄観光]](2005年以降委託から外れている)
** 静…静鉄観光サービス(廃業)
** 南…南海国際旅行
** 広…[[広島電鉄|広電観光]]→ひろでん中国新聞旅行
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** KT…[[北近畿タンゴ鉄道]]
** JT…[[ジェイアール東海ツアーズ]]
** V…V…[[びゅうトラベルサービス]]
** 貨…[[日本貨物鉄道]](JR貨物、エフ・ツーリスト)
** HB…[[ジェイアールバス東北]]
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** 中…ニューワールドツーリスト中国観光
** SD…[[サンデン交通]]
** 通…[[日本通運]](日通旅行・2020年度をって旅行業撤退)
** J…ジャパンツアーシステム→JALセールス
*** Jホ…JALセールス北海道