「ミリオンダラー・ベイビー」の版間の差分

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| 監督 = [[クリント・イーストウッド]]
| 脚本 = [[ポール・ハギス]]
| 原案 = [[F・X・トゥール]]
| 製作 = ポール・ハギス<br />[[トム・ローゼンバーグ]]<br />[[アルバート・S・ラディ]]
| 製作総指揮 = [[ロバート・ロレンツ]]<br />[[ゲイリー・ルチェッシ]]
| 出演者 = クリント・イーストウッド<br />[[ヒラリー・スワンク]]<br />[[モーガン・フリーマン]]
| 音楽 = クリント・イーストウッド
| 撮影 = [[トム・スターン]]
| 編集 = [[ジョエル・コックス]]
| 製作会社 = [[レイクショア・エンターテインメント]]
| 配給 = {{flagicon|USA}} [[ワーナー・ブラザース]]<br />{{flagicon|JPN}} [[ムービーアイ・エンタテインメント|ムービーアイ]] / [[松竹]]
| 公開 = {{flagicon|USA}} 2004年12月15日<br />{{flagicon|JPN}} 2005年5月28日
| 上映時間 = 133分
| 製作国 = {{USA}}
| 言語 = [[英語]]<br />[[アイルランド語]]
| 製作費 = $30,000,000
| 興行収入 = $216,763,646<ref name="boxofficeboxofficemojo">{{citeCite webBox Office Mojo |url=http://www.boxofficemojo.com/movies/?id=milliondollarbaby.htm0405159 |title=Million Dollar Baby |accessdate=20122024-1101-2811 |publisherpublisher_hide=[[Amazon.com]]1 |worklanguage=[[Boxen-US}}</ref><br Office/>{{Flagicon|JPN}} Mojo]]13.4億円<ref>{{映連興行収入|2005}}. {{accessdate|2024-01-11}}</ref>
| 前作 =
| 次作 =
| 原作 = {{Based on|『テン・カウント』|F・X・トゥール}}
}}
『'''ミリオンダラー・ベイビー'''』(''Million Dollar Baby'')は、[[2004年の日本公開映画|2004年]]の[[アメリカ合衆国の映画|アメリカ合衆国]]の[[スポーツ映画]]。 [[クリント・イーストウッド]]が監督・共同製作・音楽を務め、[[ポール・ハギス]]が脚本を務める。主演はイーストウッド、[[ヒラリー・スワンク]]、[[モーガン・フリーマン]]。{{仮リンク|F.X.トゥール|en|F.X. Toole}}著作の同名小説(短編集『テン・カウント』に収録)が原作。家族からすらも愛情を受けた事のない孤独な女性と、家族にすら愛情を見せた事のない不器用な老年の男性の間に芽生えながらも、非情な結末を迎える愛の物語である。[[PG-12指定の映画一覧|PG-12指定]]。
『'''ミリオンダラー・ベイビー'''』(''Million Dollar Baby'')は、[[2004年]]の[[アメリカ合衆国の映画]]。
 
[[第77回アカデミー賞]]では7部門にノミネートされ、[[アカデミー作品賞|作品賞]]、[[アカデミー監督賞|監督賞]]、[[アカデミー主演女優賞|主演女優賞]](スワンク)、[[アカデミー助演男優賞|助演男優賞]](フリーマン)の4部門を受賞した。
製作・配給会社は[[ワーナー・ブラザース]]で、監督・製作・主演は[[クリント・イーストウッド]]。[[2000年]]に発表された[[F・X・トゥール]]([[:en:F.X. Toole|F.X. Toole]]:本名:'''ジェリー・ボイド''')の短編集『Rope Burns:Stories From the Corner』を元に[[ポール・ハギス]]が脚本を担当。[[第77回アカデミー賞]][[アカデミー作品賞|作品賞]]受賞作品。[[PG-12]]指定作品。
 
== 解説 ==
公開当時74歳であったイーストウッドによる25番目の監督作品である本作品は、3000万ドルの中規模予算と37日という短い撮影期間で製作されながら、[[2003年]]公開の『[[ミスティック・リバー]]』に続き作品の完成度の高さと従来の[[アメリカ合衆国|アメリカ]]映画との異質性を高く評価され全米だけでも1億ドルの興行収入を記録した。さらに、第77回[[アカデミー賞]]において、[[マーティン・スコセッシ]]監督の『[[アビエイター]]』との「巨匠対決」を制し[[アカデミー作品賞|作品賞]]、[[アカデミー監督賞|監督賞]]、[[アカデミー主演女優賞|主演女優賞]]、[[アカデミー助演男優賞|助演男優賞]]の主要4部門を独占したのを始め、多数の映画賞を受賞した。
 
しかし、これほどの成功を収めた作品でありながら、[[尊厳死]]という、極めて慎重に議論が重ねられている題材を映画の結末部分に用い、加えて前半部分が、『[[ロッキー (映画)|ロッキー]]』を連想させる<ref group="注">[[内田樹]]は『[[うほほいシネクラブ―街場の映画論]]』([[文春新書]]、[[2011年]])p.17で、『[[あしたのジョー]]』との類似性を指摘した。</ref>サクセスストーリーであったため、必ずしも万人が賞賛を送ったわけではなく、[[宗教]]や[[政治思想]]によっては強い反発を招き、各方面で抗議行動や論争が起こったという点でも大きな話題や賛否両論を提供した。
 
== ストーリー ==
アメリカ中西部で[[トレーラーハウス]]に住むほど貧しい上に家族が崩壊状態にあり、死んだ父親以外から優しい扱いを受けてこなかったマーガレット(マギー)・フィッツジェラルドは、プロボクサーとして成功して自分の価値を証明しようと、ロサンゼルスにあるフランキー・ダンのうらぶれたボクシング・ジムの戸を叩いた。
家族からすらも愛情を受けた事のない孤独な女性と、家族にすら愛情を見せた事のない不器用な老年の男性の間に芽生えながらも、非情な結末を迎える愛の物語である。
 
アメリカ中西部で[[トレイラー・ハウス]]に住むほど貧しい上に家族が崩壊状態にあり、死んだ父親以外から優しい扱いを受けてこなかったマーガレット(マギー)・フィッツジェラルドは、プロボクサーとして成功して自分の価値を証明しようと、ロサンゼルスにあるフランキー・ダンのうらぶれたボクシング・ジムの戸を叩いた。
 
フランキーはかつて止血係([[カットマン]])として活躍した後、トレーナーとなってジムを経営し、多くの優秀なボクサーを育ててきた。しかし、彼らの身の安全を深慮するあまりに慎重な試合しか組まない上に不器用で説明が不足していたことからビッグチャンスを欲するボクサーたちに逃げられ続け、その不器用さは家族にも波及し、実の娘ケイティとは音信不通になっている。
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== キャスト ==
* フランキー・ダン: [[クリント・イーストウッド]] - 老トレーナーでジムの経営者。「止血の名人」ともいわれるカットマン(傷の手当てを請け負う専門職)でもある。
* マギー・フィッツジェラルド: [[ヒラリー・スワンク]] - 女性ボクサー
* エディ・デュプリス(“スクラップ・アイアン”): [[モーガン・フリーマン]] - ダンのジムの管理人。ダンの親友でもある。
* デンジャー・バーチ: [[ジェイ・バルチェル]] - ダンのジムに所属するボクサー
* ビッグ・ウィリー: [[マイク・コルター]] - ダンのジムに所属するボクサー
* 青い熊ビリー: [[ルシア・ライカ]] - チャンピオンの女性ボクサー
* ホーヴァク: {{仮リンク|ブリアン・F・オバーン|en|Brían F. O'Byrne}} - 神父
* シャウレル・ベリー: [[アンソニー・マッキー]] - ダンのジムに所属するボクサー
* アーリーン・フィッツジェラルド: [[マーゴ・マーティンデイル]] - マギーの母
* マーデル・フィッツジェラルド: [[リキ・リンドホーム]] - マギーの妹
* オマー: [[マイケル・ペーニャ]] - シャウレルの親友のボクサー
* ビリーのマネージャー: [[ベニート・マルティネス]]
* ミッキー・マック: ブルース・マックヴィッティ
 
== 日本語吹替 ==
{| class="wikitable" style="text-align: center;"
|-
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| ビッグ・ウィリー || [[マイク・コルター]] || [[三宅健太]] || [[楠大典]]
|-
| ホーヴァク神父 || {{仮リンク|ブリアン・F・オバーン|en|Brían F. O'Byrne}} || [[根本泰彦]] || [[宮本充]]
| ビリー || [[ルシア・ライカ]] || ||
|-
| ホーヴァク神父 || [[ブリアン・F・オバーン]] || [[根本泰彦]] || [[宮本充]]
|-
| ショーレル・ベリー || [[アンソニー・マッキー]] || [[加瀬康之]] || [[桐本拓哉|桐本琢也]]
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| マーデル・フィッツジェラルド || [[リキ・リンドホーム]] || [[園崎未恵]] || [[佐藤あかり]]
|-
| その他||{{N/A}}||[[根津貴行]]<br />[[辻親八]]<br />[[村上あかね]]<br />[[相沢正輝]]<br />[[石波義人]]<br />[[小形満]]<br />[[加瀬康之]]<br />[[伊丸岡篤]]<br />[[藤井啓輔]]<br />[[船木真人]]<br />[[森谷恵利]]<br />[[根本圭子]]||[[稲葉実]]<br />[[嶋崎伸夫]]<br />加瀬康之<br />辻親八<br />[[一木美名子]]<br />[[田中正彦]]<br />[[浦山迅]]<br />[[小高三良]]<br />[[坂東尚樹]]<br />[[渡辺英雄]]<br />[[西崎果音]]<br />[[新田万紀子]]<br />[[白川周作]]
| オマー || [[マイケル・ペーニャ]] || [[伊丸岡篤]] ||
|-
| ビリーのマネージャー || [[ベニート・マルティネス]] || ||
|-
| ミッキー・マック || ブルース・マックヴィッティ || ||
|-
|
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| 翻訳 || || [[平田勝茂]] || 松崎広幸
|-
| 調整 || || 黒崎裕樹 || 金谷和美<br />高久孝雄
|-
| 効果 || || || [[リレーション]]
|-
| 担当 || || || 河村常平<br />(東北新社)
|-
| プロデューサー || || || 渡邉一仁<br />遠藤幸子<br />五十嵐智之<br />(テレビ東京)
|-
| 配給 || || || [[松竹|松竹株式会社]]
|-
| 制作 || || [[グロービジョン]] || テレビ東京<br />[[東北新社]]
|-
| 初回放送 || || || 2006年12月7日<br />『[[木曜洋画劇場]]』<br />(21:00-23:24)
|-
| 初回放送 || || || 2006年12月7日<br>『[[木曜洋画劇場]]』<br>(21:00-23:24)
|}
 
== 論争製作 ==
=== 企画 ===
本作品の主テーマが[[尊厳死]]や[[安楽死]]にあるわけではないが、この問題は'''キリスト教右派'''が無視できない勢力を持つアメリカでは極めてデリケートな問題であり、保守派コメンテーター、障害者団体、キリスト教団体によるこの映画のボイコット運動などが起こり話題になった。
テレビシリーズ『{{仮リンク|ファミリー・ロー|en|Family Law (American TV series)}}』をクビになったハギスが売り込み用脚本を書き、それを売り込むのに4年を要した<ref>{{Cite web2 |df=ja |date=2008-02-01 |last=Leibowitz |first=Ed |title=The Fabulist: Paul Haggis Reflects on His Career Los Angeles Magazine |url=https://lamag.com/film/the-fabulist-paul-haggis-reflects-on-his-career |website=Los Angeles Magazine |access-date=2024-01-11 |language=en}}</ref><ref>{{Cite web2 |df=ja |date=2011-01-06 |first=Cath |last=Clarke |title=Paul Haggis: 'You have to question your beliefs' |url=https://www.theguardian.com/film/2011/jan/06/paul-haggis-interview |website=The Guardian |access-date=2024-01-11 |language=en}}</ref>。映画は撮影されるまでに何年も[[開発地獄]]に陥った。イーストウッドが俳優と監督として契約するに至ってもなお、本プロジェクトはいくつかのスタジオに断られた。イーストウッドの長年の本拠地である[[ワーナー・ブラザーズ]]でさえも、3,000万ドルの予算には同意しなかったため、イーストウッドは、レイクショア・エンターテイメントのトム・ローゼンバーグに、予算の半分を出し(海外配給も担当)、残りをワーナー・ブラザーズが負担するように説得した{{sfn|Eliot|2009|p=309}}{{sfn|Hughes|2009|p=156}}。
 
「ミリオンダラー・ベイビー」という言葉は、第二次世界大戦の連結[[B-24 (航空機)|B-24リベレーター重爆撃機]]の[[ノーズアート]]からのものである<ref>{{Cite web2 |df=ja |url=https://www.imdb.com/title/tt0405159/trivia/?item=tr2617891 |title=Million Dollar Baby (2004) - Trivia |website=IMDb |accessdate=2024-01-11 |language=en-US}}{{信頼性要検証|date=2024年1月}}</ref>。また、ソニー・リストンがモハメド・アリに試合前の宣伝で侮辱的に使用したものでもある。
イーストウッドはこの件に関して、映画の中におけるフィクションの登場人物による行動と、イーストウッド自身の思想や言動は全く無関係であり、この作品はあくまで彼の'''[[アメリカン・ドリーム]]'''観を表現したものであると述べている。
 
=== キャスティング ===
その他、この映画に関しては様々な反応があった。
イーストウッドはスワンクの演技には自信があったが、スワンクの小柄な体格を見て、「ああ、このギャルはすごいと思ったんだ。もし、彼女を鍛え上げることができれば。もう少し体格を良くして、ファイターのように見せることができれば…。その時の彼女は羽毛のようだった。」と感じたという<ref name="cbsnews20050302">{{Cite web2 |df=ja |date=2005-03-02 |first=Rebecca |last=Leung |url=http://www.cbsnews.com/stories/2005/03/02/60II/main677647.shtml |title=Hilary Swank: Oscar Gold – 60 Minutes |publisher=CBS News |access-date=2010-09-09 |archive-date=2013-01-20 |archive-url=https://web.archive.org/web/20130120130114/http://www.cbsnews.com/stories/2005/03/02/60ii/main677647.shtml |url-status=dead |language=en}}</ref>。
=== 障害者団体 ===
[[2005年]]初頭、幾人かの[[障害者]]権利活動家が映画後半の、マギーが四肢麻痺患者となったあとで死にたいと漏らしフランキーがその願いを実現させた部分に対して論争を起こした<ref>http://www.milliondollarbigot.org/loser.html</ref><ref>http://www.lifenews.com/bio674.html</ref><ref>http://www.chicagoreader.com/hottype/2005/050128_1.html</ref>。
 
=== 撮影 ===
またウィークリー・スタンダードもこの映画の結末に対し、生きる機会を軽視したと批判している<ref>http://www.weeklystandard.com/Content/Public/Articles/000/000/005/307qsmui.asp</ref>。
撮影は[[ロサンゼルス]]で2004年6月から7月にかけて40日足らずで行われ、撮影セットはワーナーブラザーズスタジオが使われた{{sfn|Hughes|2009|p=156}}。
<!-- ===実際の事例との関連===フロリダ州のテリー・シャイボ氏に関する記述を予定 -->
 
スワンクは元来運動神経に秀でており、[[水泳]]でジュニア・オリンピックの選考会に参加するほどであったが、撮影に際し数多くの世界チャンピオンを輩出したヘクター・ロカの元で3か月間トレーニングを重ねた。スワンクはプロのトレーナーであるグラント・L・ロバーツの指導のもと、リングとウェイトルームで大規模なトレーニングを行い、{{convert|19|lbs|kg}}の筋肉を増やした。毎日5時間近くトレーニングした結果、命にかかわるブドウ球菌に感染してしまったが、それはマギーらしくないと考え、イーストウッドには感染症のことを話さなかった<ref name="cbsnews20050302" />。「青い熊」役で本作への出演も果たした[[オランダ]]出身の女子ボクサー、[[ルシア・ライカ]]らと実戦さながらのスパーリングを重ねた。
=== 生命維持装置を外すことの神話 ===
{{独自研究|section=1|date=2019年8月}}
この映画の結末は、'''「意識がはっきりしている患者は延命措置を終わらせてもらえない」という事実誤認に基づいている。'''現実のアメリカでは、患者が別の者に「治療を打ち切ってほしい」と指示できるほど意識がはっきりしている場合、患者は病院に対し治療の停止を指示することができ、病院は必要な法的形式が保証されていることが確認できればその指示に従わなければならない。意識のはっきりした患者に対し、意思に反して治療を強行した場合は暴行ともみなされる。患者はあらかじめ[[リビング・ウィル]](生前意思)という形で治療に関する意思をはっきりさせておくこともできるが、もし患者が負傷後にも意思疎通ができ意識が明確な場合、病院に治療停止を指示することは単純なことにすぎない。
 
イーストウッドは、ガソリンスタンドでスワンクのキャラクターに手を振る少女として、彼の娘モーガン・コレットを出演させた{{sfn|Hughes|2009|p=157}}{{efn2|第二次世界大戦時の乗組員の写真を3枚折りたたむシーン。}}。
患者が負傷後、「蘇生不要([[:en:Do not resuscitate|Do not resuscitate]]、DNR)」の指示を行使することを禁じる規則はアメリカには一切存在しないが、一般的に正しく認識されていないのが現状である。また、身体が麻痺している患者を「意思能力がない」と推定することもない。脊髄損傷の患者の多くは法的権利を引き続き行使しており、もし意識不明になった場合のために第三者に代理権を与えるよう手配することもできる。また、鎮痛剤を打たれている状態や抑鬱状態にある場合でも患者から法的意思を表す能力が失われたとはみなされない。
 
== 封切り ==
アメリカにおいて、治療拒否は司法制度において自殺とみなされたことはなく、蘇生不要(DNR)指示に基づいて担当医が治療を中止することは自殺幇助とみなされたことはない。法的に有効な蘇生不要(DNR)指示を医師などが拒否することは違法であり民法や刑法の処罰の対象となりうる。
=== DVDリリース・派生作品 ===
2000年代にアカデミー作品賞を受賞した作品では、日本では[[ブルーレイ]]化されていない唯一の作品であったが、2019年3月8日にブルーレイ、及びHDマスター版のDVDが発売された。
 
== 作品の評価 ==
=== 映画批評家によるレビュー ===
[[Rotten Tomatoes]]では、本作は269のレビューに基づき90%の支持を得ており、平均評価は8.40/10である。「クリント・イーストウッドの確かな演出と、ヒラリー・スワンクやモーガン・フリーマンの見事な演技が相まって、『ミリオンダラー・ベイビー』は陳腐な表現を超越し、深い感動を与えてくれる」というのが同サイトの批評家の共通見解である<ref>{{Cite rt |id=million_dollar_baby |type=movie |title=Million Dollar Baby |accessdate=2024-01-11 |language=en}}</ref>。[[Metacritic]]では、39人の批評家によるレビューをもとにした加重平均スコアが100点満点中86点となり、「全世界で高い評価を受けている」ことが示された<ref>{{Cite mc |id=million-dollar-baby |type=movie |title=Million Dollar Baby |accessdate=2024-01-11 |language=en}}</ref>。[[CinemaScore]]による観客の投票では、A+からFの評価で「A」を獲得した<ref>{{Cite web2 |df=ja |url=https://www.cinemascore.com/publicsearch/index/title/ |title=MILLION DOLLAR BABY (2005) A |work=[[CinemaScore]] |access-date=2018-12-20 |archive-url=https://web.archive.org/web/20181220122629/https://www.cinemascore.com/publicsearch/index/title/ |archive-date=2018-12-20 |url-status=dead |language=en}}</ref>。
 
=== 興行収入 ===
本作は米国公開時の2004年12月には、8館で限定公開された{{sfn|Hughes|2009|p=160}}。後に本格的に公開されると、北米で12,265,482ドルを稼ぎ出し、瞬く間に国内外での興行的ヒットとなった。劇場興行収入は216,763,646ドル、米国で100,492,203ドル、その他の地域で116,271,443ドルであった。この映画は6か月半の間、劇場で上映された<ref name="boxofficemojo" />。
 
=== 受賞歴 ===
第77回[[アカデミー賞]]において、[[マーティン・スコセッシ]]監督の『[[アビエイター]]』との「巨匠対決」を制し[[アカデミー作品賞|作品賞]]、[[アカデミー監督賞|監督賞]]、[[アカデミー主演女優賞|主演女優賞]]、[[アカデミー助演男優賞|助演男優賞]]の主要4部門を独占したのを始め、多数の映画賞を受賞した。
 
* 第77回アカデミー賞
** '''受賞 - 作品賞/監督賞/主演女優賞/助演男優賞'''
** ノミネート - 主演男優賞/脚色賞/編集賞
* 第62回ゴールデン・グローブ賞
** '''受賞 - 監督賞/女優賞(ドラマ部門)'''
** ノミネート - 作品賞(ドラマ部門)/助演男優賞/音楽賞
* 第10回放送批評家協会賞
** '''受賞 - 主演女優賞'''
** ノミネート - 監督賞/助演男優賞
 
== 論争 ==
本作品の主テーマが[[尊厳死]]や[[安楽死]]にあるわけではないが、この問題はキリスト教右派が無視できない勢力を持つアメリカでは極めてデリケートな問題であり、保守派コメンテーター、障害者団体、キリスト教団体によるこの映画のボイコット運動などが起こり話題になった。
 
イーストウッドはこの件に関して、映画の中におけるフィクションの登場人物による行動と、イーストウッド自身の思想や言動は全く無関係であり、この作品はあくまで彼の[[アメリカン・ドリーム]]観を表現したものであると述べている。
 
その他、この映画に関しては様々な反応があった。
 
=== 障害者団体 ===
[[2005年]]初頭、幾人かの[[障害者]]権利活動家が映画後半の、マギーが四肢麻痺患者となったあとで死にたいと漏らしフランキーがその願いを実現させた部分に対して論争を起こした<ref>{{Cite web2 |df=ja |first=John |last=Hockenberry |url=http://www.milliondollarbigot.org/loser.html |title=And theLoser Is, a critique of million dollar baby |website=milliondollarbigot |accessdate=2005-02-19 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20050219105427/http://www.milliondollarbigot.org/loser.html |archivedate=2005-02-19 |language=en}}</ref><ref>{{Cite web2 |df=ja |first=Steven |last=Ertelt |url=http://www.lifenews.com/bio674.html |title=Clint Eastwood's "Million Dollar Baby" Euthanasia Plot Offends Disabled |website=LIFENEWS.COM |date=2005-02-03 |accessdate=2005-02-07 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20050207125148/http://www.lifenews.com/bio674.html |archivedate=2005-02-07 |language=en}}</ref><ref>{{Cite web2 |df=ja |first=Michael |last=Miner |url=http://www.chicagoreader.com/hottype/2005/050128_1.html |title=Dubious Conclusions - Hot Type |website=Chicago Reader |date=2005-01-28 |accessdate=2005-02-06 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20050206113331/http://www.chicagoreader.com/hottype/2005/050128_1.html |archivedate=2005-02-06 |language=en}}</ref>。
 
またウィークリー・スタンダードもこの映画の結末に対し、生きる機会を軽視したと批判している<ref>{{Cite web2 |df=ja |first=Wesley J. |last=Smith |url=http://www.weeklystandard.com/Content/Public/Articles/000/000/005/307qsmui.asp |title=Million Dollar Missed Opportunity : What Clint Eastwood's Oscar-winning movie could have done. |website=the Daily Standard |date=2005-03-01 |accessdate=2005-03-03 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20050303040918/http://www.weeklystandard.com/Content/Public/Articles/000/000/005/307qsmui.asp |archivedate=2005-03-03 |language=en}}</ref>。
ハリウッドなどでは同様の『生命維持装置を外すか否か』という筋書きを何十年も使ってきた。この筋書きは、個人的な忠義、法律の遵守、宗教的判断の衝突というドラマチックな状態をつくるので多用されている。重態患者に対し、治療を受けいれる義務を負わせるような法律はアメリカには全くなかったにもかかわらず、このモチーフは不滅である。
 
=== アイルランド語の話者 ===
[[アイルランド語]]の使用者の中には、マギーのガウンの背中に刺繍された言葉である「モ・クシュラ」(''Mo Chúisle'')が、映画の中では ''Mo Cuishle'' とスペルを間違われているという指摘がある。さらに映画の中では「モ・クシュラ」を「おまえは私の親愛なる者、おまえは私の血(My darling, my blood)と訳している。(「モ・クシュラ」は「おまえは私の鼓動だ(My pulse)」を意味する[[ゲール語]]の親愛表現であり<ref>{{Cite web2 |df=ja |url=http://www.irishgaelictranslator.com/lessons/article-89-10.html |title=Million Dollar Baby movie - Lessons > Frequently Requsted Translations |website=Irish Gaelic Lessons |accessdate=2005-10-21 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20051021001036/http://www.irishgaelictranslator.com/lessons/article-89-10.html |archivedate=2005-10-21 |language=en}}</ref>を意味する[[ゲール語]]の親愛表現であり''A chúisle mo chroí''(ああ、私の心臓の鼓動よ)の短縮形である。) ともあれ、「モ・クシュラ」はこの年のハリウッド映画の中でももっとも影響力のあったフレーズであったとも言われており、この映画はアメリカにおけるアイルランド語への関心を高めたとして賞賛する声もある<ref>[http{{Cite web2 |df=ja |first=Wes |last=Davis |url=https://www.nytimes.com/2005/02/26/opinion/26davisfighting-words.html?ex |title=1267160400&en=63b9bdbd40e19929&ei=5090&partner=rssuserland Wes Davis "Fighting Words". |website=New York Times. February |date=2005-02-26, 2005]|accessdate=2024-01-11 |language=en}}</ref>。
 
主人公はアイルランドの古い言語であるゲール語を独学していて出身に誇りを持っている。ハングリーな女性を一流のボクサーに育てて、やがてイングランドのチャンピオンと戦う時は、民族の象徴たる「グリーン」のガウンをまとって挑ませる。宗教は[[カトリック]]である。
 
=== スポーツライター ===
[[スポーツライター]]の中には、この映画はボクシング関係者から見れば非常に不正確で混乱させられるものだという批評もある。ボクシング・シーンは非現実的で、マギーを後ろから殴ったボクサーは本来ならプロの権利を剥奪され法廷送りになるのは明白だ、というものである。原作では試合中に起きた事故という設定になっている。しかし、医療機器の描き方が的確でないことを考慮すれば、こうした脚色はイーストウッドの「映画的演出」の一環である、との捉え方もある<ref>http{{Cite web2 |df=ja |first=Skip |last=Bayless |url=https://sportswww.espn.go.com/espn/page2/story?page=bayless/050225 |title=Let's KO 'Million Problem Baby' |page=2 |website=ESPN.com |date= |accessdate=2024-01-11 |language=en}}</ref>。
 
== ボクシング・シーン ==
ヒラリー・スワンクは元来運動神経に秀でており、[[水泳]]でジュニア・オリンピックの選考会に参加するほどであったが、撮影に際し3ヶ月間数多くの世界チャンピオンを輩出した[[ヘクター・ロカ]]の元でトレーニングを重ねた。また、[[重量挙げ]]の選手である[[グラント・ロバーツ]]と共に筋力トレーニングに励み、「青い熊」役で本作への出演も果たした[[オランダ]]出身の女子ボクサー、[[ルシア・ライカ]]らと実戦さながらのスパーリングを重ねた。
 
==受賞/ノミネート==
===第77回アカデミー賞===
*'''受賞・・・作品賞/監督賞/主演女優賞/助演男優賞'''
*ノミネート・・・主演男優賞/脚色賞/編集賞
===第62回ゴールデン・グローブ賞===
*'''受賞・・・監督賞/女優賞(ドラマ部門)'''
*ノミネート・・・作品賞(ドラマ部門)/助演男優賞/音楽賞
===第10回放送批評家協会賞===
*'''受賞・・・主演女優賞
*ノミネート・・・監督賞/助演男優賞
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist2}}
{{Reflist|group="注"}}
=== 出典 ===
{{reflistReflist|30em}}
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book |last=Hughes |first=Howard |title=Aim for the Heart: The Films of Clint Eastwood |publisher=I.B. Tauris |year=2009 |month=September |edition=Hardcover |isbn=978-1-84511-902-7 |location=London |language=en |ref=harv}}
* {{Cite book |last=Eliot |first=Marc |title=American Rebel: The Life of Clint Eastwood |publisher=Crown |date=October 6, 2009 |edition=Hardcover |isbn=978-0-307-33688-0 |url-access=registration |url=https://archive.org/details/americanrebellif00elio |accessdate=2024-01-11 |language=en |ref={{sfnref|Eliot|2009}} }}
 
== 関連項目 ==
* [[愛、アムール]]
* [[ハッピーエンドの選び方]]
 
== 外部リンク ==
* {{Allcinema title|321698|ミリオンダラー・ベイビー}}
* {{Kinejun title|36306|ミリオンダラー・ベイビー}}
* {{Amg movie|305809|Million Dollar Baby}}
* {{IMDb title|0405159|Million Dollar Baby}}
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{{日本アカデミー賞最優秀外国作品賞}}
{{キネマ旬報ベスト・テン外国映画ベスト・ワン}}
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:みりおんたらあへいひい}}
[[Category:2004年の映画]]
[[Category:アメリカ合衆国のドラマ映画]]
[[Category:アメリカ合衆国のスポーツボクシング映画]]
[[Category:ボクシング映画]]
[[Category:女子ボクシングを題材とした作品]]
[[Category:クリント・イーストウッドの監督映画]]
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[[Category:ワーナー・ブラザースの作品]]
[[Category:アカデミー賞作品賞受賞作]]
[[Category:日本アカデミー賞最優秀外国作品賞]]
[[Category:松竹配給の映画]]
[[Category:死の幇助]]