「顕性」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
→パネットの方形: 説明の追加と2遺伝子雑種の例の追加 |
編集の要約なし タグ: 手動差し戻し |
||
(6人の利用者による、間の10版が非表示) | |||
1行目:
{{混同|redirect=優性'''」「'''劣性|優生学|劣生学}}
[[ファイル:Journal_of_Agricultural_Research_(1917)_(14582377398).jpg|thumb|200px|right|[[トウモロコシ]]の草丈の遺伝の研究(1917年)]]
'''
優性は優れた形質を受け継ぐ、という意味ではなく、次世代でより表現されやすいという意味である。劣性は「劣った性質」という意味ではなく、[[表現型]]として表れにくい事を意味する(例えば後述のABO式血液型の対立遺伝子には、A・B・Oと三種類あり、Oが劣性であるが、Oの対立遺伝子が一般的な意味でAやBより劣っているわけではない)。一方で、「優性」「劣性」という表現は、優れた遺伝子、劣った遺伝子、といった誤解を招きやすいことから、[[2017年]]9月より、[[日本遺伝学会]]は優性を「
一般的な[[植物]]や[[動物]]においては、遺伝子は[[両親]]からそれぞれ与えられ、ある表現型について一対を持っている。この時、両親から同じ遺伝子が与えられた場合、その子はその遺伝子を[[ホモ接合]]で持つから、その遺伝形質を[[発現]]する。しかし、両親から異なる遺伝子を与えられた場合には、子は[[ヘテロ接合]]となり異なる遺伝子を持つが、必ずどちらか一方の形質が発現するとき、その形質を'''
[[2倍体]]の生物において、[[性染色体]]以外の[[常染色体]]は[[雄]]親と[[雌]]親から受け継いだ対の[[遺伝子]]を有する。[[対立遺伝子]]をAとaの二種とした場合、子の[[遺伝型]]はAA・Aa・aaの3通りがある。Aとaの影響が等しければ子の[[表現型]]がAaであったときにAAとaaの中間等になるはずだが、多くの場合そうはならず、一方に偏った[[表現型]]となる。この時にAaの表現型がAAと同様の場合、aaの表現型を'''
雌雄で性染色体の数が異なるために生じる[[伴性遺伝]]の場合、雌雄で形質の発現に差が出る。例えば多くの[[哺乳類]]では、[[雄]]には[[X染色体]]が1つしか存在しないため、
▲優性は[[優生学]]と混同されやすいが、まったく別の言葉である。
▲雌雄で性染色体の数が異なるために生じる[[伴性遺伝]]の場合、雌雄で形質の発現に差が出る。例えば多くの[[哺乳類]]では、[[雄]]には[[X染色体]]が1つしか存在しないため、劣性遺伝子があれば必ず形質が発現する。その一方で[[雌]]はX染色体を2つ持つため、その両方に劣性遺伝子が存在しなければ発現しない。例えばヒトの[[色覚異常]]がある。
▲優性という言葉は、広い意味では、[[対立遺伝子]]の組み合わせで表現型が変わる現象全般に対して用いられる(例えば、不完全優性、半優性、超優性、[[量的遺伝学]]における優性など)。
== 歴史的経緯 ==
その後、この[[雑種第一代|雑種第一世代]]を[[自家受粉]]させると、第二世代では祖先の形質が再び現れ、その比率は3:1となった。これに関して、メンデルは遺伝因子が2つに分かれて粒子的に遺伝するためと考えた。
メンデルは
メンデルの研究は後に再評価されて、[[メンデルの法則]]と名付けられた。メンデルがエンドウで報告した
==
[[File:09 11aIncompleteDominance-L.jpg|thumb|300px|不完全
[[File:ABO blood type.svg|thumb|right|400px|ABO血液型。赤血球の表面にある抗原のタイプによってA型、B型、AB型、O型に分かれる。]]
=== 完全
一つの遺伝子座で[[対立遺伝子]]が[[ヘテロ接合]]になっているとき、一方の形質のみが現れる現象が完全
=== 不完全
=== 共
対立遺伝子がヘテロ接合になったとき、どちらか一方ではなく両方の形質が現れる現象を'''共
== メカニズム ==
大抵の場合、
この説では、遺伝子は[[酵素]]の設計図であると見る。その酵素が作れることでその生物はある形質を発現できる。
ただしヘテロ接合となって酵素の量が減少したため、
上記は最もよくある機能喪失型の変異である。一方で、変異によりタンパク質の活性が上がったり、通常とは異なる機能を得るような、機能獲得型の変異が起きた場合は、その新しい機能が
この他に、
== 集団遺伝学における
[[File:Fitness1.png|thumb|300px|集団遺伝学における適応度。①Aはaに対して
[[File:Dominance.png|thumb|250px|(図L)単一座位モデルにおける遺伝子型値。相加的な場合(オレンジ)と、
[[集団遺伝学]]では、[[適応度]]の違いで
{| class="wikitable"
70 ⟶ 67行目:
|}
hは
{| class="wikitable"
|-
| h=0
| A
|-
| h=1
| A
|-
| 0<h<1
| 部分
|-
| h=1/2
| 半
|-
| h<0
| 超
|-
| h>1
| 負の超
|}
h=1/2のときは遺伝子の効果が相加的な場合であり'''半
=== 量的遺伝学における
[[量的遺伝学]]では、遺伝子の効果が相加的な場合を基準とし、そこからのずれを
== 異なる遺伝子座の上下関係 ==
{{main|エピスタシス}}
例えば、[[ペポカボチャ]]の色には2つの遺伝子座が関与している。1組目の対立遺伝子では黄色(A-)が
== パネットの方形 ==
'''パネットの方形'''(パネットスクエア、{{Lang-en-short|Punnett square}})は、[[遺伝子型]]の明らかな個体間の交雑で([[突然変異]]を除いて)生じうる子の遺伝子型を以下のような図式で表現したものである{{Sfn|Urry|Cain|Wasserman|Minorsky|2018|pp=313–316, 1593}}。
1遺伝子雑種の例として、
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-style:monospace; float:left; width:15em; margin-right:0.5em"
143 ⟶ 140行目:
{{clear|left}} <!-- 上の表2つが float:left されているため、ここでクリア -->
2代目は全て、遺伝型はヘテロ'''Aa'''で表現型は
また、(異なる[[染色体]]上の)2遺伝子雑種についても同様の図で表すことができる。形質'''α'''を決定する
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-style:monospace; width:25em"
164 ⟶ 161行目:
|}
このときの表現型 ('''α''','''β''') の比は (
== ヒトの例 ==
単一遺伝子の
外見で判断できるヒトの一般的な形質のほとんどは、1つの遺伝子座の
ヒトの形質が単純な遺伝で決まるという神話が多数流布している<ref name="McDonald_intro" />。例えば親指が反る・反らない<ref name="McDonald_thumb" />、舌を巻ける・巻けない<ref name="McDonald_tongueroll" />、[[旋毛|つむじ]]が右巻き・左巻き<ref name="McDonald_hairwhorl" />、といった形質が単一遺伝子の
== 脚注 ==
178 ⟶ 175行目:
<references group="注">
<ref name="法則の記述" group="注">
例えば、以下の教科書には全てメンデルの法則として「分離の法則」「独立の法則」と記されているが、
*[[#Campbell_2007|「キャンベル生物学」(2007年)]]
*[[#Crow_1991|「遺伝学概説」(1991年)]]
186 ⟶ 183行目:
</ref>
<ref name="呼称問題点" group="注">
「
</ref>
</references>
=== 出典 ===
{{Reflist|30em
|refs=
<ref name="日経_2017">
{{Cite news|和書
270 ⟶ 268行目:
<ref name="新川_基盤研究B">
{{Cite report
|和書
|author1=新川詔夫
|author2=太田亨
279 ⟶ 278行目:
|url=https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-22390066/22390066seika.pdf
|format=PDF
}}</ref>
}}
== 参考文献 ==
440 ⟶ 438行目:
* [[近親交配]]
* [[雑種第一代]]
▲{{DEFAULTSORT:ゆうせい}}
[[Category:遺伝学]]
[[Category:自然科学の法則]]
|