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{{出典の明記|date=2024年2月}}
[[File:Annotated edition of Wen Xuan.jpg|thumb|文選集注]]
『'''文選'''』(もんぜん)は、[[中国]][[南北朝時代 (中国)|南北朝時代]]
== 成立の背景 ==
『文選』の撰者である
== 後世における受容と注釈 ==
[[隋]]・[[唐]]代以降、官吏登用に[[科挙]]が導入され、詩文の創作が重視されると、『文選』は科挙の受験者に詩文の制作の模範とされ、代々重視されてきた。唐の詩人[[杜甫]]は『文選』を愛読し、「熟精せよ文選の理」(「宗武生日」)と息子に教戒の
『文選』の注釈として文献上最も古いものは、隋の
曹憲の弟子の一人である李善は、浩瀚な知識を生かして『文選』に詳細な注釈をつけ、[[658年]]([[顕慶]]3年)、
李善注の後の代表的な注釈としては、呂延済・劉良・張銑・[[呂向]]・李周翰の5人の学者が共同で執筆し、[[718年]]([[開元]]6年)、唐の[[玄宗 (唐)|玄宗]]に献呈された、いわゆる「'''五臣注'''」がある。五臣注の特徴は、李善注が引証に重きを置きすぎるあまり、時として語義の解釈がおろそかになる(「事を釈きて意を忘る」)ことに不満を持ち、字句の意味をほかの言葉で解釈する訓詁の方法を採用したことにある。そのため注釈として李善注とは異なる価値があるが、全体的に杜撰な解釈や誤りが多く、後世の評価では李善注に及ばないというのが一般的である。
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このほか重要なものとして、日本に写本として伝わる『文選集注』(120巻、存23巻)がある。これは李善・五臣の注釈のほか、これらの注釈が通行することによって散佚した唐代の注釈が保存されており、『文選』研究にとって不可欠の資料となっている。
== 構成 ==
{{Wikisourcelang|zh|昭明文选|文選}}
『文選』はもともと全30巻だが、前述の[[李善 (唐)|李善]]の注釈をつけた版は全60巻であり、以下のような構成になっている。下記の括弧内の数字は収録巻数で、'''太字'''は表内に複数作品のある作者である。
{| class=wikitable width=100%
|-
! width=15%| 巻号 !! width=15%| ジャンル !! width=70%| 著名な作品
|-
| 1-19 ||[[賦]]||
*'''[[宋玉]]'''「高唐賦」(19)
*
*'''[[司馬相如]]'''「子虚賦」(7)
*'''司馬相如'''「上林賦」(8)
*[[
*[[
*'''[[
*'''[[曹植]]'''「洛神賦」(19)
*'''[[潘岳]]'''「秋興賦」
*'''[[
*'''[[
*'''[[
|-
|19-31||[[漢詩|詩]]||
*無名氏「[[古詩十九首]]」(29)
*[[曹操]]「短歌行」(27)
*'''王粲'''「七哀詩」(23)
*'''[[曹丕]]'''「燕歌行」(27)
*'''曹植'''「贈白馬王彪」(24)
*[[阮籍]]「詠懐詩」(23)
*'''潘岳'''「悼亡詩」(23)
*'''陸機'''「赴洛詩」(26)
*'''左思'''「詠史詩」(21)
*'''[[謝霊運]]'''「登池上楼」(22)
*'''謝霊運'''「於南山往北山経湖中瞻眺」(22)
*'''鮑照'''「東武吟」(28)
*'''[[謝朓]]'''「遊東田」(22)
*'''謝朓'''「晩登三山還望京邑」(27)
|-
|32-33||騒||
*[[屈原]]「[[離騒]]」(32)
|-
|34-35||七||
|-
|35||詔||
|-
|35||冊||
|-
|36||令||
|-
|36||教||
|-
|36||文||
|-
|37-38||表||
*[[孔融]]「薦禰衡表」(37)
*[[諸葛亮]]「[[出師表]]」(37)<ref>いわゆる「前出師表」</ref>
*[[李密 (蜀)|李密]]「陳情事表」(37)
|-
|39||上書||
|-
|39||啓||
|-
|40||弾事||
|-
|40||牋||
|-
|40||奏記||
|-
|41-43||書||
*[[司馬遷]]「[[司馬遷#『史記』の完成とその後|報任少卿書]]」(41)
*[[嵆康]]「与山巨源絶交書」(43)
|-
|44||檄||
*[[陳琳]]「為袁紹檄豫州」(44)<ref>袁紹に依頼された作者が曹操の先祖代々の悪事を暴き立てたもの。豫州とは[[劉備]]のことで、劉備に極悪人曹操に従わずに我らとともに曹操を倒そうと勧めている。</ref>
*[[鍾会]]「檄蜀文」(44)<ref>鍾会が蜀を攻めたときの降伏勧告文。</ref>
|-
|45||対問||
|-
|45||設論||
|-
|45||[[辞 (文体)|辞]]||
*[[武帝 (漢)|漢武帝]]「秋風辞」(45)
*[[陶淵明]]「帰去来兮辞」(45)
|-
|45-46||序||
|-
|47||頌||
|-
|47||贊||
|-
|48||符命||
|-
|49-50||史論||
*[[沈約]]「宋書謝霊運伝論」(50)
|-
|50||史述贊||
|-
|51-55||論||
*'''曹丕'''「[[典論|典論論文]]」(52)
*'''陸機'''「弁亡論上下二首」(53)<ref>呉の発展を褒め称え、[[孫晧]]の暴政による滅亡を悲しむ文。</ref>
|-
|55||連珠||
|-
|56||箴||
|-
|56||銘||
*{{仮リンク|崔瑗|en|Cui Yuan (Han dynasty)}}「座右銘」(56)
|-
|56-57||誄||
|-
|57-58||哀||
|-
|58-59||碑文||
|-
|59||墓誌||
|-
|60||行状||
|-
|60||弔文||
|-
|60||祭文||
|-
|}
[[賦]]と[[漢詩|詩]]で過半を占める。
蕭統の書いた『文選』の序文には、作品の収録基準を「事は沈思より出で、義は翰藻に帰す」とし、深い思考から出てきた内容を、すぐれた修辞で表現したと見なされた作品を収録したとある。また収録する分野についても、[[四部分類]]でいうところの経部・子部・史部<ref>ただし歴史評論の類(論・讃・序・述)は例外とする。</ref>を除く、集部に相当する文学作品をもっぱら選録の対象としている点で、文学の価値を明確に意識した総集となっている。
[[三国志演義]]に引用されている作品も「為袁紹檄豫州」「短歌行」「出師表」などがある。
なぜか[[王羲之]]の「蘭亭集序」は収録されておらず、古来論議を呼んでいる。これについては、以下の説がある。
*文章が下手なうえ、思想性が低くて不採用だと言う説。
**『文選』収録の名文と比べると、とっさに書いたものなので描写に重複が多く、語句も春の宴会の描写で秋の風景描写の「天朗らかに気清む」(天が高く空気が澄んでいる)を使うなどおかしなところがある。
**また、文章の内容も悲観的で、生死を超越すべきと説く老荘思想や仏教思想に通じた蕭統からすれば貧相だと思われたのではないか。
*『文選』は君主と臣下の関係を扱った政治的な文学が多いので、自然描写が多い「蘭亭集序」は編者の好みに合わなかったために不採用だったという説
*そもそも後世の偽作なのでこの当時存在しなかったという説
<ref>祁小春『「蘭亭序」はなぜ『文選』に採録されなかったか』、 「東アジア研究」32、大阪経済法科大学アジア研究所、2001参照</ref>
== 日本における『文選』 ==
『文選』は上代の日本に伝わり、日本文学の進展にも重大な影響を与えた。[[奈良時代]]は、貴族の教養として必読の対象となっており、『[[日本書紀]]』や『[[万葉集]]』などに『文選』からの影響を指摘する見解もある([[小島憲之]]など<ref>[https://mainichi.jp/articles/20190401/k00/00m/040/256000c 令和の出典、漢籍の影響か 1~2世紀の「文選」にも表現] - [[毎日新聞]]</ref>)。後の[[平安時代]]から[[室町時代]]でも、「書は[[白氏文集|文集]]・文選」(『[[枕草子]]』)、「文は文選のあはれなる巻々」(『[[徒然草]]』)とあるように、貴紳の読むべき書物としての地位を保ち続けた。現在でも『文選』の用語は、[[日本語]]の[[語彙]]で活かされ、[[故事]]教訓として使用されている。
== 『文選』出典の熟語 ==
[[ヒーロー|英雄]]、栄華、[[wikt:炎上|炎上]]、[[解散]]、禍福、[[家門]]、岩石、器械、奇怪、行事、凶器、金銀、[[経営]]、[[傾城]]、軽重、形骸、権威、[[賢人]]、光陰、後悔、
== 訳注書 ==
*[[岡田正之]]『文選 國訳漢文大成』(全3巻、國民文庫刊行会、1939 - 1941年)
::現代語訳はなく、書き下しと文語体の訳文を収載
*[[小尾郊一]]・[[花房英樹 (漢文学者)|花房英樹]] 『文選 [[全釈漢文大系]]』(全7巻、[[集英社]]、1974 - 1976年)
*
*:内田泉之助・網祐次・中島千秋・[[原田種成 (漢文学者)|原田種成]]・[[竹田晃]]・高橋忠彦
;抄訳版
*
*
*高橋忠彦・[[戸川芳郎]]・[[神塚淑子]] 『文選 中国の古典』(上下、[[学研ホールディングス|学習研究社]]、1985年)- 賦・文章の選集
*[[興膳宏]]・[[川合康三]] 『文選 鑑賞 中国の古典12』([[角川書店]]、1988年)- 賦・詩・文章の選集
**『精選訳注 文選』([[講談社学術文庫]]、2023年)- 改訂版([[電子書籍]]も刊)
*『文選 [[新書漢文大系]]』(全4巻、明治書院、2003 - 2007年)- 上記『新釈漢文大系』の選集普及版(原文は未録)
*『文選 詩篇』(全6巻、[[岩波文庫]]、2018 - 2019年)
::編者代表:川合康三、富永一登・釜谷武志・和田英信・浅見洋二・緑川英樹
== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
*[http://home.hiroshima-u.ac.jp/cbn/wenxuan.htm 『文選』]
*[
{{中国詩}}
{{DEFAULTSORT:もんせん}}
[[Category:6世紀の中国語書籍]]
[[Category:6世紀の中国語文学]]
[[Category:中国の詩集]]
[[Category:中国の文学作品]]
[[Category:中国の南北朝時代]]
[[Category:前近代の日本の中国系文化]]
[[Category:梁 (南朝)]]
[[Category:日本遺産]]
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