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{{銃器2
|画像=[[ImageFile:WaltherDas PPKwalther 1847ppk.jpg|300px|ワルサーPPK]]
|説明=ワルサーPPKPPK(7.65mmモデル)
|名称=ワルサーPPK
|種類=[[警察]]用[[拳銃#自動式拳銃|自動拳銃]]
|製造国={{DEU1935}}<br />{{FRA}}<br />{{HUN}}<br/>{{USA}}
|設計・製造=[[ワルサー]]社<br/>[[:en:Manurhin|マニューリン]]社<br />[[:hu:FÉG|Fegyver- és Gázkészülékgyár(FÉG)]]社<br/>[[スミス&ウェッソン]]社
|口径=.22口径(522(5.6mm)<br/ />.25口径(625(6.35mm)<br/ />.32口径(732(7.65mm)<br/ />.38口径(9mm)38(9mm)
|銃身長=83mm
|ライフリング=
|使用弾薬=[[.22ロングライフル弾|.22LR弾]](5.6mm×15)6x15mm)<br/ />[[.25ACP弾]](6.35mm×16)35x16mm)<br/ />[[.32ACP弾]](7.65mm×17)65x17mm)<br / >[[.380ACP弾]](9mm×17)<br/>[[9x18mmマカロフ弾]](9x18mm)(9x17mm)
|装弾数=7+1発(.32ACP弾・9mmマカロフ弾)<br />6+1発(.380ACP弾)
|作動方式=[[ダブルアクション]]<br />[[ブローバック#シンプルブローバック方式|ストレートブローバック]]
|銃口初速=310m/s
|有効射程=
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|全長=155mm
}}
'''ワルサーPPK'''(Walther PPK)は、[[ドイツ]]の[[ワルサー|カール・ワルサー]]社が開発した[[拳銃#自動式拳銃|小型セミオートマチック拳銃]]である。[[警察]]用[[拳銃]]として開発された[[ワルサーPP]](Polizei Pistole)を私服刑事向けに小型化したものである

名称のK“K”もともと[[ドイツ語]]で「刑事用」を意味するクリミナール(Kriminal)の頭文字だが、一般には「短い」を意味するクルツ(Kurz)の頭文字だと解釈されることも多い<ref>学研歴史群像シリーズ「図説 世界の銃」</ref>。
 
== 概要 ==
中型[[拳銃]]として開発された[[ワルサーPP]]を小型化したもの。[[ダブルアクション]][[トリガー (銃)|トリガー]]などの内部機構はほぼ同一で、一部の部品には互換性がある。
 
使用[[弾薬]]は[[:en:.22 Long Rifleロングライフル弾|.22LR弾]]・[[.25ACP弾]]・[[.32ACP弾]]・[[.380ACP弾]](9mm Kurz)など。
 
PPKは、[[ロバジェムズケネディ暗殺事件ボンド]]小型ピストルの輸入規制対策愛銃としても知られ特に[[アメリカ合衆国|米国]]向けにはPPKの民生用拳銃市場で人気の製品となった<ref name="SAR01"/Sが開発されている>[[1968年]]に小型拳銃輸入規制では、銃の全高と全長合計4イ法制化({{仮リチ以上必要とク|1968年銃規制法|en|Gun Control Act of 1968}})されたため後にはこれに対応するべく、やや大型なPPのフレームにPPKの銃身およびスライドを組み合わせた'''PPK/S(SはSportsの頭文字)'''開発され、[[ワルサー1969年]]社製で一回り大きいものと交換から販売されている。これはPP(Polizei Pistole)のフレームという説もあるが、グリップ後部の形状が違うため、PPK/Sのオリジナルである。グリップが大きくなり、手の大きな人には扱いにくいという小型ピストルの欠点を補う効果もあった。
 
[[日本の警察]]でも[[セキュリティポリス|SP]]などで[[要人警護]]用にワルサーPPKが使われていた。現在は[[SIG SAUER P230#バリエーション|SIG SAUER P230JP]]に更新されている。
 
== 歴史 ==
[[1931年]]に発売開始。プロイセン州警察からの要請に基づき、ショルダーホルスターを用いて拳銃を携行する私服警官向けのコンパクトなモデルとして設計された<ref name="SAM_03">{{Cite web |author= |date= |url=http://ww2.rediscov.com/springar/VFPCGI.exe?IDCFile=/spring/DETAILS.IDC,SPECIFIC=9538,DATABASE=2861971, |title=PISTOL, SEMI-AUTOMATIC - GERMAN PISTOL WALTHER PPK 7.65MM SN# 198578k |website= |publisher= Springfield Armory Museum |accessdate=2018-04-26}}</ref>。
[[1931年]]に発売開始。[[アドルフ・ヒトラー]]も愛銃として使用しており、[[ドイツの警察|ドイツ警察]]([[ゲシュタポ]])や[[ドイツ国防軍|ドイツ軍]]・[[国家社会主義ドイツ労働者党]](ナチス)で制式[[拳銃]]とされる。
 
[[ナチス・ドイツ]]時代(1933年 - 1945年)には、警察組織のほかに[[ドイツ国防軍]]、[[国家社会主義ドイツ労働者党]](NSDAP, ナチ党)指揮下の準軍事組織([[突撃隊|SA]]、[[親衛隊 (ナチス)|SS]]など)によって制式拳銃として採用されていた。[[ゲシュタポ]]のエージェントらには[[.32ACP弾]](7.65mm)仕様のモデルが好まれた。また、総統[[アドルフ・ヒトラー]]も7.65mm(32ACP弾)仕様のPPKを所持しており、彼が1945年の[[アドルフ・ヒトラーの死|自殺]]に用いたのもPPKだった<ref name="SAR01">{{Cite web |author= |date= |url= https://www.smallarmsreview.com/display.article.cfm?idarticles=1103 |title= James Bond’s Bantam Banger: The Walther PPK|website= |publisher= SmallArmsReview.com |accessdate=2018-04-26}}</ref>。
[[第二次世界大戦]]後、[[ワルサー]]社の[[工場]]は[[ソビエト連邦|ソ連]]占領地域になる。ワルサー社は[[フランス]]の[[:en:Manurhin|マニューリン]]社と[[ライセンス]]契約を結び、PPKは[[1980年代]]まで生産された。[[1961年]]からは新生ワルサー社でも生産が始められ、現在でも販売されている。
 
[[第二次世界大戦]]中から戦後にかけて、PPおよびPPKは各国の小型拳銃の設計に影響を与えた。例えば[[ソビエト連邦]]の[[マカロフ PM|マカロフ拳銃]]、[[ハンガリー]]の{{仮リンク|FEG PA-63|en|FEG PA-63}}、[[チェコ]]の{{仮リンク|vz. 50|en|vz. 50}}などはPPおよびPPKの影響を受けて開発された<ref name="SAR01"/>。大戦中の生産数は150,000丁を上回った<ref name="SAR01"/>。
[[1963年]]に[[ケネディ大統領暗殺事件]]が起きる。この事件をきっかけに[[アメリカ合衆国|米国]]内で小型拳銃を規制する気運が高まり、[[1968年]]に起きた[[ロバート・ケネディ暗殺事件]]が決定打となり、小型拳銃の輸入規制が法制化される。[[1969年]]に輸入規制対策を施したモデル、PPK/Sが発売される。
 
敗戦後、[[赤軍]]が進駐したドイツ東部から西部へと脱出した[[フリッツ・ワルサー]]は、[[ウルム]]にてワルサー社の再建に着手した。1952年、ワルサーは再建資金を確保するべく[[フランス]]の{{仮リンク|マニューリン|en|Manurhin}}(Manurhin<ref group="注">Manufacture de machines du Haut-Rhinすなわち「[[オー=ラン県|オー=ラン]]機械製造社」の通称。</ref>)に接触し、PPシリーズの製造許可を与えた。マニューリンとの契約は1986年に失効した<ref name="AR_01">{{Cite web |author= |date= |url= https://www.americanrifleman.org/articles/2018/4/6/a-look-back-at-the-walther-pp/ |title= A Look Back at the Walther PP |website= |publisher= American Rifleman |accessdate=2018-04-26}}</ref>。[[1961年]]からは新生ワルサー社でも生産が始められ、現在でも販売されている。
 
冷戦期には、東西各国の秘密活動を担当する情報機関において制式拳銃として採用された。[[保安局 (イギリス)|MI5]]/[[秘密情報部|MI6]]([[イギリス]])、[[連邦情報局|BND]]([[西ドイツ]])、[[対外治安総局|SDECE]]([[フランス]])、[[イスラエル諜報特務庁|モサド]]([[イスラエル]])といった機関のほか、[[カナダ]]や[[アメリカ合衆国]]の諸機関でも使用された<ref name="SAR01"/>。
 
[[日本の警察]]でも[[セキュリティポリス|SP]]や[[皇宮警察]]などで[[要人警護]]用にワルサーPPKが使われていた。現在は[[SIG SAUER P230#バリエーション|SIG SAUER P230JP]]に更新されている。
 
== 特徴 ==
;[[安全装置]]
:安全装置をかけると撃鉄(ハンマー)が撃発寸前の位置まで自動的に落ちるデコッキング機能を持つ。安全装置を掛けた状態では、[[撃針|ファイアリングピン]]はセーフティーレバーで固定され、ハンマーもハンマーブロックで前進を阻止される。ハンマーダウンで安全装置のかかっている状態では撃鉄および[[トリガー (銃)|引き金]]が固定される。
:セーフティー解除後の初弾は[[ダブルアクション]]で撃つ事になるが、撃鉄を引き起こしておけば[[シングルアクション]]での[[射撃]]も可能。
;ロデッド・チャンバー・インジケーター
:[[薬室]]に[[実包|実弾]]が装填されると、[[薬莢]]の底部の縁にシグナルピンが当たり、撃鉄の上部に露出して、銃を握った時に親指、および目視で確認できるようになる。22[[口径]]用[[弾薬]]はリムファイア式(薬莢の底部の、外周を叩いて発火する方式)のため、初弾を装填する際にインジケーターが当たると[[暴発]]の危険があるので、省略されている。これらの機構は、[[軍]]用[[拳銃]]として採用された[[ワルサーP38]]でも採用されている。
;スライドストップ
:最終弾を撃ち終わると内蔵されたスライドストップによりスライドが後退状態で保持される。スライドストップを押し下げるスライドリリースレバーは無く、[[弾倉]]交換後にスライドを少し後ろに引いて離せば初弾が装填されて射撃可能となる。
;通常分解
:通常分解はトリガーガードを下に引き下げ、そのままスライドを最後端まで引き、上に持ち上げてから前に戻せば抜けるようになっている。
 
== 派生型 ==
; PPK/S
: [[1958年]]、[[ジェームズ・ボンド]]シリーズの小説6作目として『[[007 ドクター・ノオ]]』が発表された。主人公ジェームズ・ボンドは従来{{仮リンク|ベレッタ 418|en|Beretta 418}}を愛用していたのだが、『ドクター・ノオ』にてワルサーPPKに持ち替えることとなる。これがきっかけとなり、アメリカ合衆国の民生用拳銃市場でも一躍人気の製品となった<ref name="SAR01"/>。しかし、[[1963年]]に発生した[[ケネディ大統領暗殺事件]]をきっかけに、[[アメリカ合衆国|米国]]内で小型拳銃を規制する気運が高まり、[[1968年]]に起きた[[ロバート・ケネディ暗殺事件]]が決定打となり、小型拳銃の輸入規制が法制化される({{仮リンク|1968年銃規制法|en|Gun Control Act of 1968}})。
: 新制度の輸入基準に照らし合わせると、PPKは垂直幅(高さ)が1/10インチ、重量が1オンス不足していた。これに対応するべく開発されたのがPPK/Sである。基本的にはPPKよりやや大きいPPのフレームにPPKの銃身およびスライドを組み合わせたもので、これにより十分な垂直幅と重量が確保された。PPK/SのSはSportsの頭文字で1969年から販売が開始された。1978年からはアラバマ州のレンジャー・マニュファクチャリング社(Ranger Manufacturing)にてPPKおよびPPK/Sのライセンス生産が始まった。2007年からは[[スミス&ウェッソン]]社がPPKおよびPPK/Sのライセンス生産を担当していた<ref name="SAR01"/>。2012年以降、アメリカ合衆国におけるワルサー社製品の販売は{{仮リンク|ワルサー・アームズ|en|Walther Arms, Inc.}}社が担当している。
 
; PPK-L
: 1960年代に入り、ワルサー社はアルミ製レシーバーを採用した軽量モデルとしてPPK-Lを発表した<ref name="AR_01"/>。銃本体の軽量化に伴い、発砲時の体感反動が増加して銃の保持が難しくなるため、ラインナップは[[.22ロングライフル弾|.22LR弾]]仕様と[[.32ACP弾]]仕様のみに限定されており、装弾数は7+1発となっている。
 
; PPK/E
: 2000年にニュルンベルクで開催されたIWA(International Weapons Exhibition)でワルサー社が発表したもので、ハンガリーのFEG社がワルサーPPの設計を元に開発・製造した{{仮リンク|FEG PA-63|en|FEG PA-63}}の製造権を購入、PPKに倣って短縮化し自社製品としたモデルである。基本的にPP/PPKと同一の設計だが、弾倉を始め一部の部品はPP/PPKとの互換性がない。
: 使用弾薬は[[.22ロングライフル弾|.22LR弾]]、[[.32ACP弾]]および[[.380ACP弾]]仕様が用意されている。
 
; 52式拳銃
: [[中華人民共和国]]では、52式拳銃({{lang|zh|52式手枪}})あるいは765公安拳銃({{lang|zh|765公安手枪}})なる名称でPPKのコピーモデルが製造された。建国から間もない1950年代初頭、[[中国人民解放軍|人民解放軍]]および[[中華人民共和国の警察|公安警察]]組織では、[[第二次世界大戦]]および[[国共内戦]]を通じて調達・鹵獲された世界各国の雑多な銃器が配備されており、その有様は「万国武器博覧会」({{lang|zh|万国武器博览会}})と例えられるほどだった。部品や銃弾の調達もままならない中、諸勢力によるサボタージュに対抗しなければならない警察当局は速やかに拳銃の標準化を図る必要に駆られていた。1951年には51式拳銃([[トカレフTT-33]])が採用されるが、私服警官向けとしては大きく嵩張るとして不評で、また[[朝鮮戦争]]最中の朝鮮半島に派遣される[[中国人民志願軍]]への供給が優先されていた。より小型かつ調達が容易な警察拳銃を模索した結果、大戦中に使用されていたPPKのコピーモデルを設計することとなった。こうして1952年に採用された52式拳銃は、基本設計こそPPKと同一だったが、加工技術や材料品質の問題のため強度や信頼性が劣ったと言われている。また、[[.32ACP弾]]は国産化されておらず、大戦中の在庫と東欧の友好国からの輸入に頼るほかなかった。1964年には52式の設計に改良を加えた{{仮リンク|64式拳銃 (中国)|label=64式拳銃|en|Type 64 pistol}}が採用されている<ref>{{Cite web |author= |date= |url=http://firearmsworld.net/china/handgun/1964/64.htm |title= {{lang|zh|1964年式手枪}} |website= firearmsworld.net|publisher= |accessdate=2018-05-17}}</ref>。
 
<gallery widths="200px" heights="180px">
File:Ranger_PPK_-Interarms.jpg|レンジャー・マニュファクチャリング社の製造したライセンス生産版PPK([[ステンレス]]モデル)
File:Walther_PPK-L.jpg|PPK-L
File:WaltherPPK-E.png|PPK/E
</gallery>
 
== 登場作品 ==
{{mainMain|ワルサーPPKに関連する作品の一覧}}
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注"}}
=== 出典 ===
{{Reflist}}
 
== 関連項目 ==
{{Commons|Category:Walther PPK}}
*[[拳銃#自動式拳銃|自動拳銃]]
*[[ワルサー]]
55 ⟶ 90行目:
*[[ワルサーP38]]
*[[ワルサーP99]]
*[[ザウエル&ゾーン 38H]]
*[[マカロフ PM]]
 
{{デフォルトソート:わるさPPK}}
== 脚注 ==
<references />
 
{{デフォルトソート:わるさPPK}}
{{Commonscat-inline|Walther PPK}}
 
[[Category:自動式拳銃]]
[[Category:ドイツ国防軍の小火器]]
[[Category:7.65mm銃]]
[[Category:9mmパラベラム弾使用銃]]
 
[[ko:발터 PPK]]