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'''不飽和脂肪酸'''(ふほうわしぼうさん、{{lang-en|unsaturated fatty acid)acid}})とは、1つ以上の[[不飽和]]の炭素結合をもつ[[脂肪酸]]である。不飽和炭素結合とは炭素分子鎖における炭素同士の不飽和結合、すなわち炭素二重結合または三重結合のことである。天然に見られる不飽和脂肪酸は1つ以上の[[二重結合]]を有しており、脂肪中の[[飽和脂肪酸]]と置き換わることで、[[融点]]や流動性など脂肪の特性に変化を与えている。また、いくつかの不飽和脂肪酸は[[プロスタグランジン]]類に代表される[[オータコイド]]の生体内原料として特に重要である。
 
栄養素としては[[飽和脂肪酸]]と異なり、不飽和脂肪酸のグループには人体に必要な[[必須脂肪酸]]が含まれる。不飽和脂肪酸は大きく[[一価不飽和脂肪酸]]と[[多価不飽和脂肪酸]]に分かれる。このうち後者が必須脂肪酸となり、さらに[[ω-6脂肪酸]]、[[ω-3脂肪酸]]に分かれる。
 
== 性質 ==
不飽和脂肪酸は同じ炭素数の飽和脂肪酸に比べて、低い融点を示し不飽和結合の数が多いほど顕著である。とくに魚類など寒冷地に生息する変温動物にとって、不飽和脂肪酸の低い融点は生体構成脂質として有用と考えられる。さらにまた魚類は多種多様な不飽和脂肪酸を利用している。
 
また、不飽和脂肪酸に二重結合が複数あるとき[[自動酸化]]されやすく油脂の酸敗や自然発火などの原因となっている。[[リノール酸]]で言えば11番の炭素原子は2つの二重結合に挟まれていて活性を持つ。さらに、リノレン酸は11番のみならず14番も同様に活性を持つ。逆に[[オレイン酸]]は二重結合が1つなので酸化されにくい。酸化によって脂肪酸分子の重合が進むと、高分子化して固化するが、[[オリーブ・オイル|オリーブ油]]は70 - 80%がオレイン酸であるため、他の植物油に比べると固化しにくい。
 
またそして、不飽和脂肪酸が[[活性酸素]]と反応して生じる脂肪酸酸化物[[ラジカル (化学)|ラジカル]]は生体内で比較的長寿命であることから、[[デオキシリボ核酸|DNA]]が活性酸素で切断される発癌機構に対しての寄与も示唆されている。[[ファイル:Lipid peroxidation.svg|thumb|350px|right|[[脂質過酸化反応]]のメカニズム]]
[[脂質過酸化反応]]とは、[[脂質]]の[[酸化]]的[[化学分解|分解]]反応のことを言う{{要出典|date=2012年10月}}<ref>[http://www.agri.tohoku.ac.jp/kinoubun/outline-PCOOH-j.html 東北大学大学院農学研究科 機能分子解析学分野 研究概要 : 過酸化脂質の化学構造と分析法]</ref>{{信頼性要検証|date=2012年10月}}。[[フリーラジカル]]が[[細胞膜]]中の脂質から[[電子]]を奪い、結果として細胞に損傷を与える過程のことを言う。この過程は、フリーラジカルの[[連鎖反応 (化学反応)|連鎖反応]]のメカニズムによって進行する。生体機構は、フリーラジカルを捕獲することによって速やかにラジカル反応を停止させ、それゆえ脂質である[[細胞膜]]を保護し得る様々な[[抗酸化物質]]を生み出してきている。[[スーパーオキシドディスムターゼ]](SOD)、[[カタラーゼ]]、[[ペルオキシダーゼ]]を含んだその他の抗酸化物質が生体内で作られている。
 
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=== エライジン化 ===
オレイン酸などcis型不飽和脂肪酸を[[亜硝酸]]、[[セレン]]、[[亜硫酸]]などを作用させて(付加と引き続く脱離反応で)融点の高い[[トランス体]]へと変換することを[[エライジン化]] (''Elaidinization'') と呼ぶ。トランス体へと変換された脂肪酸を[[トランス脂肪酸]]と呼ぶ。特にオレイン酸は広く一般の油脂の成分として見出され、油脂をエライジン化すると融点が上昇して固化するが、リノール酸・リノレン酸あるいは高度不飽和脂肪酸グリセリドの場合は固化しないので、オレイン酸の存在の指標とされることがある。
 
== 命名法 ==
脂肪酸の命名法はIUPAC生化学命名法<ref name="IUPAC-IUB">[http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/lipid/ IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature (CBN) Nomenclature of Lipids(Recommendations, 1976)]</ref>に定義されている(なお、この項の符号Rule Lip-... は同命名法の節番号を示す)。
 
すなわち、脂肪酸とそのアシル基の命名はIUPAC有機化合物命名法 (Rule C-4) に従うまた許容慣用名や略号については下の表に示す。
* いままでは2つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪酸でギリシャ文字を使用して異性体を示していた(例''α''-ないしは''γ''-リノレン酸)、これは二重結合の位置番号を列挙する方法(例 (9,12,15)-リノレン酸ないしは(6,9,12)-リノレン酸)に変えるべきである。
* しかし、二重結合の位置を示すさいに接頭辞としてギリシャ文字を使う方法は位置を列挙する方法の省略形として使用してもよい (Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip-1.6)。あるいは二重結合の位置はIUPAC有機化合物命名法の省略形であるΔを使用してもよい(例 Δ<sup>9</sup>, Δ<sup>12</sup>, Δ<sup>15</sup>-リノレン酸)。
* また脂肪酸を炭素数と二重結合の数の組み合わせ(例 '''16:0'''= パルミチン酸, '''18:1''' =オレイン酸)で示してもよい。アシル基の場合は(stearyl-の代わりに)'''(18:0)acyl-'''と表してもよい (Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip-1.15)。
* 脂肪酸末端([[カルボキシル基]]から最も離れた位置)から同じ位置に二重結合を持つことを示す場合は(例、末端から9番目に二重結合を持つ脂肪酸グループの場合)は'''n-9'''と示す(nは具体的には当該脂肪酸の炭素数を意味する)。あるいは'''ω9'''とも示す('''ω'''は二重結合の位置を示すギリシャ文字省略形)。すなわちオレイン酸の二重結合'''18-9'''とネルボン酸の'''24-9'''とは'''ω9'''と総称する (Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip-1.16)。
 
{| class="wikitable" style="margin: auto"
|+ style="padding: 0.3em" | 脂肪酸のIUPAC命名例 (Rule<ref name="IUPAC-IUB" /> Lip. Appendix A)
|-
!数値表現<br /> (Numerical symbol)
!示性式<br / >CH{{sub|3}}-(R)-CO{{sub|2}}H
!組織名
!慣用名
!略号
|-
|16:0
| -(CH{{sub|2}}){{sub|14}}-
|ヘキサデカン酸
|パルミチン酸
|Pam
|-
|16:1
| -(CH{{sub|2}}){{sub|5}}CH=CH(CH{{sub|2}}){{sub|7}}-
|9-ヘキサデセン酸
|パルミトレイン酸
|ΔPam<!--参照文献のママ -->
|-
|18:0
| -(CH{{sub|2}}){{sub|16}}-
|オクタデカン酸
|ステアリン酸
|Ste
|-
|18:1 (9)
| -(CH{{sub|2}}){{sub|7}}CH=CH(CH{{sub|2}}){{sub|7}}-
|''cis''-9-オクタデセン酸
|オレイン酸
|Ole
|-
|18:1 (11)
| -(CH{{sub|2}}){{sub|5}}CH=CH(CH{{sub|2}}){{sub|9}}-
|11-オクタデセン酸
|バクセン酸
|Vac
|-
|18:2 (9,12)
| -(CH{{sub|2}}){{sub|3}}(CH{{sub|2}}CH=CH){{sub|2}}(CH{{sub|2}}){{sub|7}}-
| ''cis'',''cis''-9,12-オクタデカジエン酸
|リノール酸
|Lin
|-
|18:3 (9,12,15)
| -(CH{{sub|2}}CH=CH){{sub|3}}(CH{{sub|2}}){{sub|7}}-
|9,12,15-オクタデカトリエン酸
| (9,12,15)-リノレン酸
|αLnn
|-
|18:3 (6,9,12)
| -(CH{{sub|2}}){{sub|3}}(CH{{sub|2}}CH=CH){{sub|3}}(CH{{sub|2}}){{sub|4}}-
|6,9,12-オクタデカトリエン酸
| (6,9,12)-リノレン酸
|γLnn
|-
|18:3 (9,11,13)
| -(CH{{sub|2}}){{sub|3}}(CH=CH){{sub|3}}(CH{{sub|2}}){{sub|7}}-
|9,11,13-オクタデカトリエン酸
| エレオステアリン酸
|eSte
|-
|20:0
| -(CH{{sub|2}}){{sub|18}}-
|イコサン酸
|アラキジン酸
|Ach
|-
|20:2 (8,11)
| -(CH{{sub|2}}){{sub|6}}(CH{{sub|2}}CH=CH){{sub|2}}(CH{{sub|2}}){{sub|6}}-
| 8,11-イコサジエン酸
|
|Δ{{sub|2}}Arc
|-
|20:3 (5,8,11)
| -(CH{{sub|2}}){{sub|6}}(CH{{sub|2}}CH=CH){{sub|3}}(CH{{sub|2}}){{sub|3}}-
|5,8,11-イコサトリエン酸
|
|Δ{{sub|3}}Arc
|-
|20:4 (5,8,11,14)
| -(CH{{sub|2}}){{sub|3}}(CH{{sub|2}}CH=CH){{sub|4}}(CH{{sub|2}}){{sub|3}}-
|5,8,11,14-イコサテトラエン酸
|アラキドン酸
|Δ{{sub|4}}Arc
|-
|24:1
| -(CH{{sub|2}}){{sub|7}}CH{{sub|2}}CH=CH(CH{{sub|2}}){{sub|13}}-
|''cis''-15-テトラドコサン酸
|ネルボン酸
|Ner
|}
 
==食品中の不飽和脂肪酸==
ω3脂肪酸は[[魚介類]]・[[亜麻仁油]]・[[しそ油]]・[[えごま油]]・[[魚油]]に、ω6脂肪酸は、高[[リノール酸|リノール]][[サフラワー油|紅花油]]・高リノール[[ひまわり油]]・[[大豆油]]・[[菜種油]]・[[クルミ]]に多く含まれている。
 
[[植物油]]の[[脂肪酸]]組成は次のとおりである。
{{hidden begin|border = #aaa solid 1px|titlestyle=text-align: center; |title=植物油の脂肪酸組成|bg=#F0F2F5}}
{{Vegetable oils, composition}}
{{hidden end}}
 
== 生化学 ==
148 ⟶ 39行目:
またω3系統も同様にロイコトリエンなどに変換される。しかしながら、ω6系統を材料にしたものに比較して[[生理活性]]が低い、あるいはないという特徴がある。[[生理活性]]が低いということで、過去、食用油脂から不要として除去されたこともある。しかし、生理活性の強いω6系統と競合することで、[[免疫]]や[[凝血反応]]、[[炎症]]などにおいて過剰な反応を抑えるということが明らかになった。いわばω6系統のブレーキ役であるといえる。実際にω3系統の脂肪酸の1つである[[エイコサペンタエン酸|EPA]] (eicosapentaenoic acid, 20:5) で血小板凝集抑制作用があることが知られている。その裏返しとして、EPAの過剰な摂取により出血傾向が現れることが指摘されている。ω3系統もω6系統に遅れて[[必須栄養素]]となった。代表的なものに[[α-リノレン酸]] (18:3)、EPA、「頭が良くなる」ともてはやされた [[ドコサヘキサエン酸|DHA]] (docosahexaenoic acid, 22:6) がある。日本の食生活ではω3系統の脂肪酸摂取量は減りつつあり不足していると懸念される。
 
[[ファイル:Essential fatty acid in oil.JPG|400px|thumb|[[食用油]]の[[必須脂肪酸]]<ref name=ndb>[https://data.nal.usda.gov/dataset/usda-national-nutrient-database-standard-reference-legacy-release USDA National Nutrient Database]</ref>]]
ω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の望ましい摂取比率は1:1から1:4であると言われている<ref>Tribole, Evelyn. "The Ultimate Omega-3 Diet" New York. McGraw-Hill. 2007 ISBN 978-0-07-146986-9</ref><ref>Lands, William E.M. "Fish, Omega-3 and Human Health" Champaign. AOCS Press. 2005 ISBN 1-893997-81-2</ref>。典型的な西洋での食事ではω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の比率は 1:10から1:30の間で、ω-6脂肪酸の摂取が極めて高い実態にある<ref>{{cite journal |author=Freeman MP, Hibbeln JR, Wisner KL, ''et al.'' |title=Omega-3 fatty acids: evidence basis for treatment and future research in psychiatry |journal=J Clin Psychiatry |volume=67 |issue=12 |pages=1954–67 |year=2006 |month=December |pmid=17194275}}</ref><ref>{{cite journal |author=Lewis MD, Hibbeln JR, Johnson JE, Lin YH, Hyun DY, Loewke JD |title=Suicide deaths of active-duty US military and omega-3 fatty-acid status: a case-control comparison |journal=J Clin Psychiatry |volume=72 |issue=12 |pages=1585–90 |year=2011 |month=December |pmid=21903029 |pmc=3259251 |doi=10.4088/JCP.11m06879}}</ref>。この原因は、代表的な[[食用油]]の多くが高い比率のω-6脂肪酸を含んでいてω-3脂肪酸をほとんど含んでいないからである。なお、ω-3脂肪酸とω-6脂肪酸の望ましい摂取量は[[必須脂肪酸]]を参照のこと。
 
[[ファイル:Essential fatty acid in oil.JPG|400px|thumb|[[食用油]]の[[必須脂肪酸]]<ref name=ndb>[http://ndb.nal.usda.gov/ USDA National Nutrient Database]</ref>]]
ω3系統とω6系統は前述の生理活性物質に変換される際、全く同一の[[酵素]]の作用により変換されていく。これら2系統の脂肪酸の競合は合成の段階から行われている。しかし、変換酵素の[[親和性]]は ω3 < ω6 であるとされ、適切な脂肪酸バランス(ω6系統由来の適切な生理活性と、ω3系統のブレーキ的役割)のためには、ω3系統をω6系統より多く摂取する必要があるとされる。また、脂質の過剰摂取によるカロリー過多などの弊害はω系統に関わらず発生するため、全体の脂質摂取量を減らしながら、ω6系統の摂取を減らし、ω3系統の割合を増やすのが良いとされる。ω6系統は、高リノール[[サフラワー油|紅花油]]、高リノール[[ひまわり油]]、[[大豆油]]、[[菜種油]]、[[月見草油]]などに高い割合で、ω3系統は[[紫蘇油]]、[[亜麻仁油]]、[[魚油]]などに高い割合で含まれる(注意すべきなのはω3系統とω6系統の含まれる比である。例えばある油1キログラムにω3系統が300グラム入っていたとしても、ω6系統が500グラム入っていたならそれはω6系統の豊富な油となる)。
 
摂取において注意する点として、2重結合が多ければ多いほど[[酸化]]に弱いことが挙げられる(二重結合は、炭素数が同じならば ω9系統 < ω6系統 < ω3系統 の順に多くなっている)。すなわち、揚げ物や炒め物など加熱調理すると、大気中の[[酸素]]と反応が促進され、[[酸敗]]した油となる。酸敗してできた揮発性物質は、眼粘膜への刺激を起こしたり、アレルギーの原因となる可能性があるため、摂取を避ける方が好ましい。また、異臭を起こすなど風味を損なうなどして、ω3系統を使用した料理を忌避するようになり、摂取量が低下してもよくない。このため、ω3系統の油での激しい加熱調理は避け、[[マヨネーズ]]や[[サラダドレッシング|ドレッシング]]として摂取するのがよいだろう。加熱をしたとしても煮るなどの緩徐な加熱に留めるべきである。揚げ物や炒め物などの加熱調理は二重結合の少ないω9系統やω9系統+ω6系統の混合油に頼るべきである。ω9系統が多い油脂は[[動物性脂肪]]、高[[オレイン酸|オレイン]][[サフラワー油|紅花油]]、高オレイン[[ひまわり油]]、[[菜種油]]、[[オリーブ油]]である(市販の[[サラダ油]]は菜種油、大豆油、菜種+大豆油のいずれかであることが多い。また、[[エコナ]]は菜種を原料とするためω9系統が多いと言える)。
 
[[植物油]]の[[脂肪酸]]組成は[[植物油の一覧#植物油の脂肪酸組成]]を参照。
前述の EPA や DHA は、[[SREBP]]-1a,1c (sterol-regulated element binding protein) という転写因子と結合することで[[脂肪酸合成系]]の酵素の発現を抑え、血中の中性脂質濃度を下げるといった働きを示す。また、ステロール合成系の酵素発現も低下させ、血中[[コレステロール]]値も下げる働きがある。これを受けて、EPAをエチルエステル化したものが血中脂質低下の薬剤として[[持田製薬]]からエパデールの名前で販売されている。
 
[[ファイル:Complete neuron cell diagram en.svg|thumb|400px|'''[[神経細胞]]の構造図'''
[[:en:Dendrites]]=[[樹状突起]]、[[:en:Axon]]=[[軸索]]、(以下略)]]
[[細胞膜]]は流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いている。この流動性は膜の構成物質で決まる。たとえば、[[リン脂質]]を構成する脂肪酸の不飽和度(二重結合の数)に影響され、二重結合を持つ炭化水素が多いほど(二重結合があるとその部分で炭化水素が折れ曲がるので)リン脂質の相互作用が低くなり流動性は増すことになる。例えばDHAは不飽和度が極めて高く細胞膜の流動性の保持に寄与している。例えば、赤血球について、[[動物性脂肪]]に多い[[飽和脂肪酸]]は赤血球膜を硬直化し<ref name="kuri2005maku">栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4-09-304581-0。54-55頁</ref>、逆に魚に多いω-3脂肪酸は赤血球膜を柔軟化する<ref>栗原毅 『血液サラサラ生活のすすめ-ドロドロにならない食事と過ごし方』 小学館、2005年1月。ISBN 978-4-09-304581-0。38頁68頁</ref>。神経細胞は、軸索や樹状突起などの凹凸の多い入り組んだ構造を有しているため、膜成分が極端に多くなっている<ref>浜崎智仁「[http://www.kinjo-u.ac.jp/orc/document/topic6.pdf 13:00 〜13:40脂質と精神]」金城学院大学/日本脂質栄養学会共催シンポジウムの抄録 6章p10『 [http://www.kinjo-u.ac.jp/orc/research/topic.html 脂質栄養学の新方向とトピックス]』</ref>{{信頼性要検証|date=2012年10月}}。DHAは、[[神経細胞]]の細胞膜を柔らかくし、[[樹状突起]]を増やしたり、[[軸索]]の成長を促して脳・神経系の健全性を保つ<ref>[http://info.fujifilm.co.jp/healthcare/dha/3-1.html 情報伝達をスムーズにして脳の老化を抑制!脳を元気にする DHA] (富士フイルムヘルスケア未来研究所)</ref>{{信頼性要検証|date=2012年10月}}。
 
DHAは[[精液]]や[[脳]]、[[網膜]]の[[リン脂質]]に含まれる[[脂肪酸]]の主要な成分である。DHAの摂取は[[血]]中の[[中性脂肪]]([[トリグリセライド]])量を減少させ、[[心臓病]]の危険を低減する。また、DHAが不足すると脳内[[セロトニン]]の量が減少し、[[注意欠陥・多動性障害|多動性障害]]を引き起こすという報告がある<ref>{{cite journal |author=Richardson AJ |title=Omega-3 fatty acids in ADHD and related neurodevelopmental disorders |journal=Int Rev Psychiatry |volume=18 |issue=2 |pages=155-72 |year=2006 |month=April |pmid=16777670 |doi=10.1080/09540260600583031}}</ref>。[[アルツハイマー型痴呆]]<ref>{{cite journal|last1=Oksman|first1=M.|last2=Iivonen|first2=H.|last3=Hogyes|first3=E.|last4=Amtul|first4=Z.|last5=Penke|first5=B.|last6=Leenders|first6=I.|last7=Broersen|first7=L.|last8=Lütjohann|first8=D.|last9=Hartmann|first9=T.|last10=Tanila|first10=H.|title=Impact of different saturated fatty acid, polyunsaturated fatty acid and cholesterol containing diets on beta-amyloid accumulation in APP/PS1 transgenic mice|journal=Neurobiology of Disease|volume=23|issue=3|year=2006|pages=563–572|issn=09699961|doi=10.1016/j.nbd.2006.04.013}} </ref><ref>Uauy R, Dangour AD, "Nutrition in brain development and aging: role of essential fatty acids.", ''Nutr Rev.'' (2006) , 64(5 Pt 2), S24-33; discussion S72-91. {{PMID|16770950}}</ref>や[[うつ病]]などの[[疾病]]に対してもDHAの摂取は有効であるといわれている<ref>ドコサヘキサエン酸富化 ''Chlorella vulgaris'' CK22株の脂質特性、雪野 繼代ほか、日本栄養・食糧学会誌 Vol.55 (2002) No.6 P331-337 {{Doi|10.4327/jsnfs.55.331}}</ref><ref>Mischoulon D, Fava M (2000) Docosahexanoic acid and omega-3 fatty acids in depression. Psychiatr Clin North Am 23 : 785-94.</ref><ref>Horrocks LA, Yeo YK (1999) Health benefits of docosahexaenoic acid (DHA) . Pharmacol Res 40 : 211-25.</ref>。
 
ω-3脂肪酸のうつ病治療の日本でのエビデンスは希薄である<ref name="nutsu2012">[http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/120726.pdf 日本うつ病学会治療ガイドライン. II.大うつ病性障害 2012 Ver.1. 平成24年7月26日]</ref>。
 
うつ病が20世紀になって増加しているが[[ω-6脂肪酸]]を多く含む[[植物油]]の摂取が増加したことと軌を一にする<ref>栄養による脳機能の活性化:DHA、奥山治美、日本農芸化学会誌 Vol.69 (1995) No.5 P583-585 {{NAID|110002791086}}</ref>。
 
日本の患者数の年度ごとの増加傾向には、高齢化やうつ病についての啓発活動による受診率の増加が原因としてあげられる<ref>{{PDFlink|[http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/qa/pdf/qa1.pdf うつ病の患者さんは増加しているのでしょうか? 日本うつ病学会]}}</ref>。
 
うつ病患者においてはω-6脂肪酸から[[アラキドン酸]]を経て生成される炎症性の生理活性物質である[[エイコサノイド]]のレベルが高いということが示されている<ref>{{cite journal |author=Smith RS |title=The macrophage theory of depression |journal=Med. Hypotheses |volume=35 |issue=4 |pages=298–306 |year=1991 |month=August |pmid=1943879}}</ref><ref>{{cite journal |author=Hibbeln JR, Salem N |title=Dietary polyunsaturated fatty acids and depression: when cholesterol does not satisfy |journal=Am. J. Clin. Nutr. |volume=62 |issue=1 |pages=1–9 |year=1995 |month=July |pmid=7598049}}</ref>。[[シーフード]]をたくさん摂取するところほど[[母乳]]内のDHAは高く、産後うつ病の有病率は低かった。母体から胎児への転送により、妊娠・出産期には母親には無視できないω-3脂肪酸の枯渇の危険性が高まり、その結果として産後のうつ病の危険性に関与する可能性がある。健常者と比較してうつ病患者はω-3脂肪酸の蓄積量が有意に低くω-6とω-3の比率は有意に高かったことが指摘されている<ref name=saitama>岡田斉、萩谷久美子、石原俊一ほか「Omega-3多価不飽和脂肪酸の摂取とうつを中心とした精神的健康との関連性について探索的検討-最近の研究動向のレビューを中心に」『人間科学研究』(30),2008,pp87-96. {{NAID|120001859287}}</ref>。
 
{{main|うつ病}}
男性より女性のほうが2倍ほどうつ病になりやすいとされている<ref>[[厚生労働省]] [http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/dl/s0126-5a.doc うつ病対策推進方策マニュアル(doc)]</ref>。
 
女性の発症率の高さについては、妊娠・出産期・閉経期・月経前([[月経前症候群|PMS]]、[[PMDD]]、[[セロトニン]]の減少)の女性ホルモン、[[セロトニン]]の激減がマタニティブルーや産後うつに関与している可能性がある。産後うつは乳児の育児時の[[睡眠]]不足もある<ref>[http://www.jcptd.jp/public/kind_utsu_2.html#ku07 女性のうつ病 JCPTD]</ref>。日本ではうつ病が増加傾向にあるが、女性の高齢化による自然増もある。
 
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 牛の脳(100g中)の<br />主な[[脂肪酸]]の種類<ref name=ndb/>
|-
! 項目 !! 分量 (g)
|-
| [[脂肪]] || 10.3
|-
| [[飽和脂肪酸]] || 2.3
|-
| 16:0([[パルミチン酸]])|| 0.919
|-
| 18:0([[ステアリン酸]]) || 1.273
|-
| 一価不飽和脂肪酸 || 1.89
|-
| 18:1([[オレイン酸]]) || 1.646
|-
| 20:1 || 0.222
|-
| [[多価不飽和脂肪酸]] || 1.586
|-
| 20:4(未同定) || 0.319
|-
| 22:5 (n-3)<br /><small>([[ドコサペンタエン酸]] (DPA))</small>|| 0.374
|-
| 22:6 (n-3)<br /><small>([[ドコサヘキサエン酸]] (DHA))</small>|| 0.851
|}
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 豚の脳(100g中)の<br />主な[[脂肪酸]]の種類<ref name=ndb/>
|-
! 項目 !! 分量 (g)
|-
| [[脂肪]] || 9.21
|-
| [[飽和脂肪酸]] || 2.079
|-
| 14:0([[ミリスチン酸]]) || 0.04
|-
| 16:0([[パルミチン酸]])|| 1.029
|-
| 18:0([[ステアリン酸]]) || 0.999
|-
| 一価不飽和脂肪酸 || 1.659
|-
| 16:1([[パルミトレイン酸]]) || 0.12
|-
| 18:1([[オレイン酸]]) || 1.069
|-
| [[多価不飽和脂肪酸]] || 1.429
|-
| 18:2([[リノール酸]]) || 0.09
|-
| 18:3([[α-リノレン酸]]) || 0.12
|-
| 20:4(未同定) || 0.47
|-
| 22:5 (n-3)<br /><small>([[ドコサペンタエン酸]] (DPA))</small> || 0.22
|-
| 22:6 (n-3)<br /><small>([[ドコサヘキサエン酸]] (DHA))</small> || 0.45
|}
 
===飽和脂肪酸との関連===
[[アメリカ心臓協会]]は、心臓病と闘うための健康的な食事と生活スタイルを勧告している([[心臓病#アメリカ心臓協会による2006年版の食と生活の勧告]]参照)<ref>[http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=851 Our 2006 Diet and Lifestyle Recommendations]{{リンク切れ|date=2016年3月}} '''(英語)''' (AHA - American Heart Association)</ref>。不飽和脂肪酸関連項目を以下に抜粋する。
*[[脂質]]は、全カロリーの25 - 35%までとし、大部分は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸とすべき。
*[[飽和脂肪酸]]と[[トランス脂肪酸]]を含む食物を、一価不飽和脂肪酸と[[多価不飽和脂肪酸]]を含む食物に替える。
*飽和脂肪酸の摂取を制限するために、肉は皮が取り除かれていて脂肪の少ないものを選ぶ。また、低脂肪の乳製品を選ぶ。
*少なくとも週2回は魚を食べる。魚の油は多価不飽和脂肪酸の[[ω-3脂肪酸]]を含み、心臓疾患のリスク低下と相関関係がある。
 
===望ましい摂取割合===
[[厚生労働省]]によると、[[脂質]]所要割合は、[[脂肪]]エネルギー比率で成人で20-25%の範囲が望ましい。[[飽和脂肪酸]]、[[一価不飽和脂肪酸]]、[[多価不飽和脂肪酸]]の望ましい摂取割合は、おおむね3:4:3であり、[[ω-6脂肪酸]]と[[ω-3脂肪酸]]の比は、健康人では4:1程度である<ref>[http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s9906/s0628-1_11.html 第6次改定日本人の栄養所要量について] (厚生労働省)</ref>。
 
== 脂肪酸分子種 ==
=== モノ不飽和脂肪酸 ===
単価不飽和脂肪酸([[w:Monounsaturated fatty acid|Monounsaturated fatty acid]])。不飽和結合を1つ持つ脂肪酸を次に示す。
 
==== クロトン酸 ====
'''[[クロトン酸]]'''(クロトンさん、crotonic acid)は、[[ハズ油]]に含まれる炭素数4の''trans''-2-モノ不飽和脂肪酸である。C{{sub|3}}H{{sub|5}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''E'')-but-2-enoic acid、''trans''-but-2-enoic acid、数値表現 4:1, n-1、分子量86.09、融点72-74℃、沸点180-181℃、比重1.027。[[CAS登録番号]] 107-93-7。
 
[[ファイル:Crotonic_acid1.svg|149px|クロトン酸の構造]]
 
==== ミリストレイン酸 ====
'''ミリストレイン酸'''(ミリストレインさん、myristoleic acid)は、[[バター]]、[[鯨油]]に含まれる炭素数14の''cis''-9-モノ不飽和脂肪酸である。C{{sub|13}}H{{sub|25}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''Z'')-tetradec-9-enoic acid、数値表現 14:1, n-5、分子量226.36、融点-4.5から-4℃。CAS登録番号 544-64-9。
 
[[ファイル:Myristoleic_acid.svg|375px|ミリストレイン酸の構造]]
 
==== パルミトレイン酸 ====
'''パルミトレイン酸'''(パルミトレインさん、palmitoleic acid)は、[[タラ肝油]]、[[魚油|イワシ油]]、[[ニシン油]]に含まれる炭素数16の''cis''-9-モノ不飽和脂肪酸である。C{{sub|15}}H{{sub|29}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''Z'')-hexadec-9-enoic acid, n-7、数値表現 16:1、分子量254.41、融点5℃、比重0.894。CAS登録番号 373-49-9。
 
[[ファイル:Palmitoleic_acid1.svg|396px|パルミトレイン酸の構造]]
 
==== サピエン酸 ====
'''[[サピエン酸]]'''(サピエンさん、sapienic acid)は、人の皮膚に含まれる炭素数16の''cis''-6-モノ不飽和脂肪酸である。C{{sub|15}}H{{sub|29}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''Z'')-6-Hexadecenoic acid, n-10、数値表現 16:1、分子量254.41。CAS登録番号 17004-51-2。
 
==== オレイン酸 ====
'''[[オレイン酸]]'''(オレインさん、oleic acid)は、ほとんどの動物性油脂に含まれ[[オリーブ・オイル|オリーブ油]]の主成分でもある炭素数18の''cis''-9-モノ不飽和脂肪酸である。C{{sub|17}}H{{sub|33}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''Z'')-octadec-9-enoic acid、数値表現 18:1 (9), n-9、分子量282.46、融点13.4℃、比重0.891。CAS登録番号 112-80-1。
 
[[ファイル:Oleic_acid.svg|437px|オレイン酸の構造]]
 
==== エライジン酸 ====
'''エライジン酸'''(エライジンさん、elaidic acid)は、炭素数18の''trans''-9-モノ不飽和脂肪酸である。オレイン酸の''trans''異性体でもある。C{{sub|17}}H{{sub|33}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''E'')-octadec-9-enoic acid、数値表現 18:1 (9), n-9、分子量282.46、融点43-45℃。CAS登録番号 112-79-8。
 
[[ファイル:Elaidic_acid.svg|531px|エライジン酸の構造]]
 
==== バクセン酸 ====
'''[[バクセン酸]]'''(バクセンさん、vaccenic acid)は、[[ヘット|牛脂]]、[[羊脂]]、[[バター]]に含まれる炭素数18の''cistrans''-11-モノ不飽和脂肪酸である。反芻動物の胃の内部で微生物による酵素反応(シストランスイソメラーゼ)を受けて生成する。C{{sub|17}}H{{sub|33}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''ZE'')-octadec-11-enoic acid、数値表現 18:1 (11). n-7、分子量282.46。CAS登録番号 506-17-2。
 
[[ファイル:Vaccenic_acid.svg|454px|バクセン酸の構造]]
 
==== ガドレイン酸 ====
'''ガドレイン酸'''(ガドレインさん、gadoleic acid)は、[[タラ[[肝油]]、海産動物油に含まれる炭素数20の''cis''-9-モノ不飽和脂肪酸である。C{{sub|19}}H{{sub|37}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''Z'')-icos-9-enoic acid、数値表現 20:1 (9), n-11、分子量310.51。CAS登録番号 29204-02-2。
 
[[ファイル:Gadoleic_acid.svg|456px|ガドレイン酸の構造]]
 
==== エイコセン酸 ====
'''エイコセン酸'''(エイコセンさん、eicosenoic acid)は、多種の植物中に含まれる炭素数20の''cis''-11-モノ不飽和脂肪酸である。C{{sub|19}}H{{sub|37}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''Z'')-icos-11-enoic acid、数値表現 20:1 (11), n-119、分子量310.51。CAS登録番号 5561-99-9。
 
[[ファイル:Eicosenoic_acid.svg|483px|エイコセン酸の構造]]
 
==== エルカ酸 ====
'''エルカ酸'''(エルカさん、erucic acid)は、[[菜種油|ナタネ油]]、[[カラシ油]]に含まれる炭素数22の''cis''-13-モノ不飽和脂肪酸である。C{{sub|21}}H{{sub|41}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''Z'')-docos-13-enoic acid、数値表現 22:1 (13), n-9、分子量338.57、融点33-35℃。CAS登録番号 112-86-7。
 
[[ファイル:Erucic_acid.svg|530px|エルカ酸の構造]]
 
==== ネルボン酸 ====
'''ネルボン酸'''(ネルボンさん、nervonic acid)は、[[脳糖脂質]] (Nervon)、[[スフィンゴミエリン]]、[[血球糖脂質]]に含まれる炭素数24の''cis''-15-モノ不飽和脂肪酸である。C{{sub|23}}H{{sub|45}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (''Z'')-tetracos-15-enoic acid、数値表現 24:1 (15), n-9、分子量366.62、融点42-43℃。CAS登録番号 506-37-6。
 
[[ファイル:Nervonic_acid.svg|585px|ネルボン酸の構造]]
308 ⟶ 105行目:
 
==== リノール酸 ====
'''[[リノール酸]]'''(リノールさん、linoleic acid)は、多くの植物油に含まれ、特に半乾性油に含まれる炭素数18の''cis''-9-''cis''-12-ジ不飽和脂肪酸である。C{{sub|17}}H{{sub|31}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (9''Z'',12''Z'')-octadeca-9,12-dienoic acid、数値表現 18:2 (9,12), n-6、分子量280.45、融点-5℃、比重0.902。CAS登録番号 60-33-3。異性体として二重結合が共役した[[共役リノール酸]]がある。
 
[[ファイル:Linoleic_acid.svg|540px|リノール酸の構造]]
 
==== エイコサジエン酸 ====
'''エイコサジエン酸'''(エイコサジエンさん、eicosadienoic acid)は、炭素数20の''cis''-11-''cis''-14-ジ不飽和脂肪酸である。C{{sub|19}}H{{sub|35}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (11''Z'',14''Z'')-icosa-11,14-dienoic acid、数値表現 20:2 (11,14), n-6、分子量308.50。
 
[[ファイル:Eicosadienoic_acid.svg|596px|エイコサジエン酸の構造]]
 
==== ドコサジエン酸 ====
'''ドコサジエン酸'''(ドコサジエンさん、docosadienoic acid)は、炭素数22の''cis''-13-''cis''-16-ジ不飽和脂肪酸である。C{{sub|21}}H{{sub|39}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (13''Z'',16''Z'')-docosa-13,16-dienoic acid、数値表現 22:2 (13,16), n-6、分子量336.55。
 
[[ファイル:Docosadienoic_acid.svg|647px|ドコサジエン酸の構造]]
326 ⟶ 123行目:
 
==== リノレン酸 ====
'''[[α-リノレン酸]]'''(アルファ-リノレンさん、alpha-linolenic acid)は、[[アマニ油]]など[[乾性油]]に含まれる炭素数18の9,12,15-トリ不飽和脂肪酸である。C{{sub|17}}H{{sub|29}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (9''Z'',12''Z'',15''Z'')-octadeca-9,12,15-trienoic acid、数値表現 18:3 (9,12,15), n-3、分子量278.43、融点-11℃、比重0.914。CAS登録番号 463-40-1。
 
[[ファイル:Alpha-linolenic_acid.svg|554px|α-リノレン酸の構造]]
 
'''[[γ-リノレン酸]]'''(ガンマ-リノレンさん、gamma-linolenic acid)は、α-リノレン酸の構造異性体。IUPAC組織名 (6''Z'',9''Z'',12''Z'')-octadeca-6,9,12-trienoic acid、数値表現 18:3 (6,9,12), n-6。CAS登録番号 506-26-3。
 
[[ファイル:Gamma-linolenic_acid.svg|551px|γ-リノレン酸の構造]]
 
==== ピノレン酸 ====
'''ピノレン酸'''(ピノレンさん、pinolenic acid)は、[[松の実]]などに含まれる炭素数18の5,9,12-トリ不飽和脂肪酸である。C{{sub|17}}H{{sub|29}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (5''Z'',9''Z'',12''Z'')-octadeca-5,9,12-trienoic acid、数値表現 18:3 (5,9,12), n-6、分子量278.43。CAS登録番号 16833-54-8。
 
[[ファイル:Pinolenic_acid.svg|547px|ピノレン酸の構造]]
 
==== エレオステアリン酸 ====
'''α-エレオステアリン酸'''(アルファ-エレオステアリンさん、alpha-eleostearic acid)は、[[キリ桐油]]など乾性油に含まれる炭素数18の9,11,13-トリ不飽和脂肪酸である。C{{sub|17}}H{{sub|29}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (9''E'',11''E'',13''Z'')-octadeca-9,11,13-trienoic acid、数値表現 18:3 (9,11,13), n-5、分子量278.43。
 
[[ファイル:Alpha-eleostearic_acid1.svg|547px|α-エレオステアリン酸の構造]]
 
'''β-エレオステアリン酸'''(ベータ-エレオステアリンさん、beta-eleostearic acid)はα-エレオステアリン酸の幾何異性体である。IUPAC組織名 (9''E'',11''E'',13''E'')-octadeca-9,11,13-trienoic acid、数値表現 18:3 (9,11,13), n-5。
 
[[ファイル:Beta-eleostearic_acid.svg|536px|β-エレオステアリン酸の構造]]
 
==== ミード酸 ====
'''ミード酸'''(ミードさん、Mead acid)は、炭素数20の5,8,11-トリ不飽和脂肪酸である。C{{sub|19}}H{{sub|33}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (5''Z'',8''Z'',11''Z'')-icosa-5,8,11-trienoic acid、数値表現 20:3 (5,8,11), n-9、分子量306.48。CAS登録番号 20590-32-3。
 
[[ファイル:Mead_acid1.svg|607px|ミード酸の構造]]
 
==== ジホモ-γ-リノレン酸 ====
'''[[ジホモ-γ-リノレン酸]]'''(ジホモ-ガンマ-リノレンさん、dihomo-gamma-linolenic acid, '''DGLA''')は、炭素数20の8,11,14-トリ不飽和脂肪酸である。C{{sub|19}}H{{sub|33}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (8''Z'',11''Z'',14''Z'')-icosa-8,11,14-trienoic acid、数値表現 20:3 (8,11,14), n-6、分子量306.48。CAS登録番号 1783-84-2。
 
[[ファイル:Dihomo-gamma-linolenic_acid.svg|607px|ジホモ-γ-リノレン酸の構造]]
 
==== エイコサトリエン酸 ====
'''エイコサトリエン酸'''(エイコサトリエンさん、eicosatrienoic acid)は、炭素数20の11,14,17-トリ不飽和脂肪酸である。C{{sub|19}}H{{sub|33}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (11''Z'',14''Z'',17''Z'')-icosa-11,14,17-trienoic acid、数値表現 20:3 (11,14,17), n-3、分子量306.48。
 
[[ファイル:Eicosatrienoic_acid.svg|602px|エイコサトリエン酸の構造]]
367 ⟶ 164行目:
 
==== ステアリドン酸 ====
'''ステアリドン酸'''(ステアリドンさん、stearidonic acid)は、イワシ油、ニシン油などに含まれる、炭素数18の6,9,12,15-テトラ不飽和脂肪酸である。C{{sub|17}}H{{sub|27}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (6''Z'',9''Z'',12''Z'',15''Z'')-octadeca-6,9,12,15-tetraenoic acid、数値表現 18:4 (6,9,12,15), n-3、分子量276.41。CAS登録番号 20290-75-9。
 
[[ファイル:Stearidonic_acid.svg|563px|ステアリドン酸の構造]]
 
==== アラキドン酸 ====
'''[[アラキドン酸]]'''(アラキドンさん、arachidonic acid)は、動物内臓脂肪(脳、肝、腎、肺、脾)に存在する、炭素数20の5,8,11,14-テトラ不飽和脂肪酸である。[[細胞膜]]にある[[リン脂質]]の分解により生じる。[[プロスタグランジン]]、[[トロンボキサン]]、[[ロイコトリエン]]などの[[エイコサノイド]]を与える一連の代謝経路として知られる、[[アラキドン酸カスケード]]の出発物質として重要な化合物である。
 
C{{sub|19}}H{{sub|31}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (5''Z'',8''Z'',11''Z'',14''Z'')-icosa-5,8,11,14-tetraenoic acid、数値表現 20:4 (5,8,11,14), n-6、分子量304.47、沸点169-171℃。CAS登録番号 506-32-1。
379 ⟶ 176行目:
 
==== エイコサテトラエン酸 ====
'''エイコサテトラエン酸'''(エイコサテトラエンさん、eicosatetraenoic acid)は、炭素数20の8,11,14,17-テトラ不飽和脂肪酸である。C{{sub|19}}H{{sub|31}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (8''Z'',11''Z'',14''Z'',17''Z'')-icosa-8,11,14,17-tetraenoic acid、数値表現 20:4 (8,11,14,17), n-3、分子量304.47。
 
[[ファイル:Eicosatetraenoic_acid.svg|592px|エイコサテトラエン酸の構造]]
 
==== アドレン酸 ====
'''アドレン酸'''(アドレンさん、adrenic acid)は、炭素数22の7,10,13,16-テトラ不飽和脂肪酸である。C{{sub|21}}H{{sub|35}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (7''Z'',10''Z'',13''Z'',16''Z'')-docosa-7,10,13,16-tetraenoic acid、数値表現 22:4 (7,10,13,16), n-6、分子量332.52。
 
[[ファイル:Adrenic_acid.svg|646px|アドレン酸の構造]]
392 ⟶ 189行目:
 
==== ボセオペンタエン酸 ====
'''ボセオペンタエン酸'''(ボセオペンタエンさん、bosseopentaenoic acid)は炭素数18の5,8,10,12,14-ペンタ不飽和脂肪酸である。C{{sub|17}}H{{sub|25}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (5''Z'',8''Z'',10''E'',12''E'',14''Z'')-octadeca-5,8,10,12,14-pentaenoic acid、数値表現 18:5 (5,8,10,12,14), n-4、分子量274.40。
 
[[ファイル:Bosseopentaenoic_acid.svg|564px|ボセオペンタエン酸の構造]]
 
==== エイコサペンタエン酸 ====
'''[[エイコサペンタエン酸]]'''(エイコサペンタエンさん、eicosapentaenoic acid、'''EPA''')は、魚油に含まれる炭素数20のペンタ不飽和脂肪酸。[[必須脂肪酸]]の一つである。{{要出典範囲|妊娠中の魚摂取で6ヶ月時の認知能力が増すので、頭のよくなる[[サプリメント]]ともいわれているが、水産製品中の[[水銀]]濃度が作用を相殺する|date=2016-6}}。[[中性脂肪]]低下作用と抗[[血小板]]作用があり、[[脂質降下薬]]や[[抗血小板剤]]として[[高脂血症]]と[[閉塞性動脈硬化症]]の保険適用を有しており、[[JELIS試験]]で[[虚血性心疾患]]の2次予防効果が確認された。
 
C{{sub|19}}H{{sub|29}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (5''Z'',8''Z'',11''Z'',14''Z'',17''Z'')-icosa-5,8,11,14,17-pentaenoic acid、数値表現 20:5 (5,8,11,14,17), n-3、分子量302.45、融点-54から-53℃、比重0.943。CAS登録番号10417-94-4。
404 ⟶ 201行目:
 
==== オズボンド酸 ====
'''オズボンド酸'''(オズボンドさん、Osbond acid)は炭素数22の4,7,10,13,16-ペンタ不飽和脂肪酸である。C{{sub|21}}H{{sub|33}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (4''Z'',7''Z'',10''Z'',13''Z'',16''Z'')-docosa-4,7,10,13,16-pentaenoic acid、数値表現 22:5 (4,7,10,13,16), n-6、分子量330.50。
 
[[ファイル:Osbond_acid.svg|672px|オズボンド酸の構造]]
 
==== イワシ酸 ====
'''イワシ酸'''(イワシさん、clupanodonic acid)は、イワシ油、ニシン油などに含まれる炭素数22の7,10,13,16,19-ペンタ不飽和脂肪酸である。C{{sub|21}}H{{sub|33}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (7''Z'',10''Z'',13''Z'',16''Z'',19''Z'')-docosa-7,10,13,16,19-pentaenoic acid、数値表現 22:5 (7,10,13,16,19), n-3、分子量330.50。
 
[[ファイル:Clupanodonic_acid.svg|657px|イワシ酸の構造]]
 
==== テトラコサペンタエン酸 ====
'''テトラコサペンタエン酸'''(テトラコサペンタエンさん、tetracosapentaenoic acid)は炭素数24の9,12,15,18,21-ペンタ不飽和脂肪酸である。C{{sub|23}}H{{sub|37}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (9''Z'',12''Z'',15''Z'',18''Z'',21''Z'')-tetracosa-9,12,15,18,21-pentaenoic acid、数値表現 24:5 (9,12,15,18,21), n-3、分子量358.56。
 
[[ファイル:Tetracosapentaenoic_acid.svg|720px|テトラコサペンタエン酸の構造]]
422 ⟶ 219行目:
 
==== ドコサヘキサエン酸 ====
'''[[ドコサヘキサエン酸]]'''(ドコサヘキサエンさん、docosahexaenoic acid, '''DHA''')は、魚油に含まれる炭素数22の4,7,10,13,16,19-ヘキサ不飽和脂肪酸である。人体内ではα-リノレン酸から生成される。C{{sub|21}}H{{sub|31}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (4''Z'',7''Z'',10''Z'',13''Z'',16''Z'',19''Z'')-docosa-4,7,10,13,16,19-hexaenoic acid、数値表現 22:6 (4,7,10,13,16,19), n-3、分子量328.49、融点-44℃、比重0.950。CAS登録番号 6217-64-5。
 
[[ファイル:Docosahexaenoic_acid.svg|680px|ドコサヘキサエン酸の構造]]
 
==== ニシン酸 ====
'''ニシン酸'''(ニシンさん、Nisinic acid)は炭素数24の6,9,12,15,18,21-ヘキサ不飽和脂肪酸である。C{{sub|23}}H{{sub|35}}CO{{sub|2}}H、IUPAC組織名 (6''Z'',9''Z'',12''Z'',15''Z'',18''Z'',21''Z'')-tetracosa-6,9,12,15,18,21-hexaenoic acid、数値表現 24:5 (6,9,12,15,18,21), n-3、分子量356.54。
 
[[ファイル:Nisinic_acid.svg|726px|ニシン酸の構造]]
 
== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|2}}
 
==関連項目==
* [[魚油]]
* [[飽和脂肪酸]]
** [[必須脂肪酸]]
* [[飽和脂肪]]
* [[不飽和脂肪]]
** [[単価不飽和脂肪]]
** [[多価不飽和脂肪]]
* [[リポタンパク質|高密度リポタンパク質]]
* [[脂肪酸の合成]]
 
{{脂肪酸}}
{{デフォルトソート:ふほうわしほうさん}}
[[Category:脂肪酸|*+ふほうわしほうさん]]
[[Category:栄養素]]