「イサパ」の版間の差分

[[File:Formative Period southern Mesoamerica 2.svg|thumb|330px250px|right|イサパ及びメキシコ南部・グアテマラ太平洋岸斜面の先古典期の遺跡の位置]]

[[ファイル:Izapa stela2.JPG|framethumb|right|200px|イサパ石碑2号]]

[[ファイル:Izapa_stela25.JPG|thumbnail|330pxthumb|right|200px|イサパ石碑25号]]

'''イサパ'''（izapa）は、[[グアテマラ]]との国境に近い[[メキシコ]]、[[チアパス州|チャパス州]]タパチュラの東近郊、メキシコシティからは、南東約840kmに位置する丘陵にある<ref name="#1">古代マヤ文明・82P</ref>[[先古典期]]後期の遺跡でイサパ文化、イサパ様式の[[標式遺跡]]。チャパス高地の太平洋岸斜面に立地する。マヤ低地における文明の典型と考えられている特徴をいくつか備えている遺跡である<ref>古代マヤ文明・83P</ref>。

東西1km、南北2kmの間に、大小80の表面に川原石を張ったマウンドが、中庭や広場を囲んで配置されていて<ref name="#1"/>、マウンドの周囲に[[石碑]]、祭壇、その他の石彫が建てられている。イサパは、イサパ様式という曲線的な浮き彫りの表現で、木、鳥、動物、怪物、怪人を描いた「[[逸話]]的、[[寓話]]的」場面を刻んだ石碑と[[ガマ]]の形状をした祭壇などに組み合わせで知られる。なかには、後の[[キチェー族]]の[[神話]]である『[[ポポル＝・ヴフ]]』の場面を想起させるような物語的な図柄を特徴とするものも見られる。石彫の中には、長唇の神の姿を刻んだものがあり、これは研究者たちの図像研究によって[[オルメカ]]のジャガー神と[[マヤ]]の雨神[[チャク|チャック]]の中間の形ではないかと考えられている。また、[[エル＝・バウル]](El Baul)石碑1号や[[アバフ＝・タカリク]](Abaj Takalik)石碑5号に見られるように点と棒による[[長期暦]]の表記も早い時期から現れる。このような特徴から時期的、地理的にもオルメカとマヤの中間点に位置することからオルメカとマヤを結ぶ文化として注目されてきた。しかし、イサパ様式について統計的に把握しようとしたビルヒバージニア＝・スミスは、イサパ遺跡自体の石碑にはこういった明確な日付けを刻んだ銘文がみられないこと、また[[古典期]]直前を特徴づける服装をした人物が刻まれていないこと、イサパ様式とされてきた遺跡の石彫12本を比較した場合、イサパ様式の54の要素とされたもののうち、29しか見られないこと、イサパ様式とは異なる6つの要素がみられるなどから、イサパの年代は紀元前200年 - 同50年頃に限定されるだろうという研究成果を発表した。イサパ様式に代表されるイサパ文化の影響は、[[チアパス州|チャパス州]]、グアテマラ南部の高地や太平洋岸、さらにメキシコ湾岸の[[ベラクルス州]]南部に及んでいると考えられてきたが、イサパ遺跡自体の長期暦の日付けを刻んだ石碑の欠如から、イサパ文化の担い手は、ベラクルス州南部に住む[[ミヘー]]や[[ソケー]]の人々とは、直接関係はなく、その意義についても、一時期の地方的なものではないかと限定的にとらえる方向に傾きつつある。