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|参照法条 = [[日本国憲法第21条|憲法21条]]、民法1条,民法709条,民法710条,民法723条,刑法230条の2
|url=https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55168}}
'''サンケイ新聞事件'''(さんけいしんぶんじけん)とは、[[1973年]](昭和48年)12月2日付サンケイ新聞(現・[[産経新聞]])朝刊に掲載された[[自由民主党 (日本)|自由民主党]]による[[日本共産党]]に対する[[意見広告]]をめぐって、共産党が無償で反論文掲載のための[[アクセス権 (知る権利)|アクセス権]]を求めて発行元の[[産業経済新聞社]]を訴えた[[裁判]]。[[言論の自由]]や[[新聞社]]の公的記事の掲載に[[萎縮効果]]を生じさせるなどの理由で日本共産党側が全面敗訴した。'''サンケイ新聞意見広告事件'''とも呼ばれる<ref>{{Cite web|和書|title=サンケイ新聞意見広告事件とは |url=https://kotobank.jp/word/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%82%A4%E6%96%B0%E8%81%9E%E6%84%8F%E8%A6%8B%E5%BA%83%E5%91%8A%E4%BA%8B%E4%BB%B6-1326440 |website=コトバンク |accessdate=2022-01-21 |language=ja |last=世界大百科事典内言及}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=安次富哲雄 |date=1993-03 |url=https://hdl.handle.net/20.500.12000/2155 |title=民法七二三条の名誉回復処分について(中) |journal=琉大法学 |ISSN=0485-7763 |publisher=琉球大学法文学部 |issue=50 |pages=95-129 |hdl=20.500.12000/2155 |CRID=1050292726795188352}}</ref>
 
== 概要 ==
[[19731968年]](昭和4843)10月、産業経済新聞社社長に就任した[[12月2日鹿内信隆]]70年6月、4項目からなる「サンケイ新聞は[[自由信条」{{Refnest|group="注"|一、民主党 (主義と自由のためにたたかう。一、豊かな国、住みやすい社会の建設につくす。一、世界的な視野で平和日本)を考える。一、明るい未来の創造をめざす{{Sfn|高山|1993|p=176}}。}}を制定し{{Sfn|高山|1993|p=176}}、73年6月に紙面に「正論」欄を設け、真の自由と[[民主主義]]から広告料もらっ守るうえでめの独自路線同党すなわち"正論路線"を打ち出した{{Sfn|高山|1993|p=203}}。こ正論欄の新設と同じ時期に、サンケイは「[[日本共産党]]に対する意見広告を紙面]]」(有料広告)の開放踏み切り、9月からその掲載を開始た。その内容は、12月2日付に「前略 日本共産党殿 はっきりさせてください。」という[[タイトル]]の自民党の意見広告を紙面の2分の1ページに当たる全7段掲載した{{Sfn|高山|1993|p=204}}。その内容は、当時の日本共産党が[[参議院選挙]]向けに掲げていた「民主連合政府綱領」が、[[自衛隊]]・[[日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約|安保条約]]・[[天皇]]・[[国会 (日本)|国会]]等の各点について「日本共産党綱領」と比較して矛盾していると批判するもので、目、鼻、口などがバラバラになった顔のイラストも添えられるなどしていた<ref>{{Cite news |和書 |title= |newspaper=朝日新聞 |issue=東京朝刊 |date=1987-04-25 |page=1}}</ref>。共産党は前年12月の[[総選挙]]で39議席([[革新]]共同を含む)を獲得、その躍進ぶりが注目されていた{{Sfn|高山|1993|p=205}}
 
自民党の意見広告は有力各紙に持ち込まれたが、掲載したのは、サンケイと[[日本経済新聞|日経]]の2紙だけで、[[朝日新聞|朝日]]、[[毎日新聞|毎日]]、[[読売新聞|読売]]、[[東京新聞|東京]]は断っている{{Sfn|高山|1993|p=205}}。なお、のちに日経は、共産党からの抗議に応え、「今後この種の広告の掲載は見合わせる措置」をとった{{Sfn|高山|1993|p=207}}。
日本共産党はこれを意見を求める挑戦的広告だとして、[[日本国憲法第21条|憲法21条]]からアクセス権が導かれるとして「同一スペースの反論文の無料掲載」をサンケイ新聞に求めたが、サンケイ新聞側は「自由民主党と同じく有料の意見広告であれば掲載するが、無料では応じられない」と回答した。これに対して日本共産党は、[[東京地方裁判所|東京地裁]]に仮処分を求めたが、申請を却下された。さらに、共産党は産業経済新聞社を相手取って「同一スペースの反論文の無料掲載」をさせるよう東京地方裁判所に[[訴訟]]を起こした。
 
日本共産党はこれを意見を求める挑戦的広告だとして、[[日本国憲法第21条|憲法21条]]から[[アクセス権]]が導かれるとして「同一スペースの反論文の無料掲載」をサンケイ新聞に求めたが、サンケイ新聞側は「自由民主党と同じく有料の意見広告であれば掲載するが、無料では応じられない」と回答した。これに対して日本共産党は、[[東京地方裁判所|東京地裁]]に[[仮処分]]を求めたが、[[申請]][[却下]]された。さらに、共産党は産業経済新聞社を相手取って「同一スペースの反論文の無料掲載」をさせるよう東京地方裁判所に[[訴訟]]を起こした。
一審・二審とも憲法21条から直接にアクセス権は認められない、人格権の侵害を根拠としても[[新聞]]に反論文の無料掲載などという作為義務を負わせることは、法の解釈上も条理上もできないとされ、また当事件では[[名誉毀損]]も成立しないとして共産党の請求は[[棄却]]された。[[判決 (日本法)|判決]]を不服とした共産党は、ただちに[[上告]]したが[[最高裁判所 (日本)|最高裁]]は上告棄却し、日本共産党の全面敗訴が確定した。
 
一審・二審とも憲法21条から直接にアクセス権は認められない、[[人格権]]の侵害を根拠としても[[新聞]]に反論文の無料掲載などという作為義務を負わせることは、法の解釈上も条理上もできないとされ、また当事件では[[名誉毀損]]も成立しないとして共産党の請求は[[棄却]]された。[[判決 (日本法)|判決]]を不服とした共産党は、ただちに[[上告]]したが、[[1987年]](昭和62年)4月、[[最高裁判所 (日本)|最高裁]]は上告棄却し{{Sfn|高山|1993|p=207}}、日本共産党の全面敗訴が確定した。
 
== 意義 ==
[[アクセス権]]に関する訴訟の代表として知名度が高い事件である。政党批判など新聞の[[表現の自由]]に対して間接的危険([[萎縮効果]])をもたらすおそれがあるとして[[判例]]はアクセス権には否定的で、少なくとも[[日本国憲法21条|憲法21条]]から具体的権利としては認められず、具体的権利とするためには明文化された法制度の確立が必要とされた。しかし、明文化したところで[[マスメディア]]の消極的表現の自由を侵害するものとして違憲と判断される可能性も高い。 ただし判例も留保しているように[[不法行為]]が成立する場合([[名誉毀損]]などの場合)の[[反論権]]は[[民法 (日本)|民法]]723条による救済方法の一つとしては考えうる。
 
== 日本共産党による産経新聞接触禁止命令と拉致問題調査交流 ==
== その後 ==
元来サンケイ新聞は[[反共主義]]を掲げていたが、この事件によって両者の反目は決定的となった。その中で[[1988年]](昭和63年)、[[北朝鮮による日本人拉致問題]]のうち、[[アベック失踪事件]]を追っていた[[兵本達吉]](日本共産党、[[橋本敦]]議員秘書・[[兵本達吉]]は、情報源となる[[1980年]](昭和55年)1月の産経新聞の記事について、執筆者の[[阿部雅美]]に連絡を取った。日本共産党からは産経新聞との接触を禁じられていたが、兵本は構わずに阿部の元に電話をかけた。阿部も相手が共産党関係者と聞くと構えた口調になったが、兵本の熱意に押され、事件の内容をこと細かく話したという。しかし両組織の関係上、この2人が実際に会えたのは[[横田めぐみ]]の拉致が明らかになった後だったという<ref>{{Cite book Sfn|和書 |author=高世|authorlink=高世仁 |title=娘をかえせ息子をかえせ―北朝鮮拉致事件の真相 |publisher=旬報社 |date=1999-04 |isbnp=9784845105809}}</ref>
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references group="注" />
{{Reflist}}
 
== 関連項目参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=高山尚武|title=ドキュメント産経新聞私史 広告マンOBが綴る水野 ‐ 鹿内ファミリーの実像|publisher=[[青木書店]]|date=1993-3|isbn=978-4250930027|ref={{sfnref|高山|1993}}}}
* [[産経新聞]]
* {{Cite book |和書 |author=高世仁 |authorlink=高世仁 |title=娘をかえせ息子をかえせ―北朝鮮拉致事件の真相 |publisher=[[旬報社]] |date=1999-04 |isbn=9784845105809|ref={{sfnref|高世|1999}}}}
* [[日本共産党]]
* [[アクセス権 (知る権利)]]
 
== 外部リンク ==
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[[Category:日本共産党の事件]]
[[Category:1973年の日本の事件]]
[[Category:1978年の法]]
[[Category:1978年12月]]