削除された内容 追加された内容
KLBot2 (会話 | 投稿記録)
m ボット: 言語間リンク 1 件をウィキデータ上の d:Q2305665 に転記
内容除去
タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集 改良版モバイル編集
 
(18人の利用者による、間の37版が非表示)
1行目:
[[File:Newtons cradle animation book.gif|thumb|right|250px|[[ニュートンのゆりかご]]。運動量保存則を利用した玩具。]]
{{出典の明記|date=2011年7月}}
'''運動量保存則'''(うんどうりょうほぞんそく、{{lang-en-short|law of momentum conservation}})とは、ある[[系 (自然科学)|系]]に[[外力]]が働かない限り([[系 (自然科学)#熱力学的な分類|閉鎖系]])、その[[系 (自然科学)|系]]の[[運動量]]の総和(全運動量)は不変であるという[[物理法則]]([[保存則]])である。'''運動量保存の法則'''ともいう。
[[File:Newtons cradle animation book.gif|thumb|right|250px|[[ニュートンのゆりかご]]。別名、カチカチボール。運動量保存の法則を利用した玩具。]]
'''運動量保存の法則'''(うんどうりょうほぞんのほうそく)とは、ある系に外部から[[力]]が加わらないかぎり、その系の[[運動量]]の総和は不変であるという[[物理法則]]。'''運動量保存則'''ともいう。[[ルネ・デカルト|デカルト]]によって発見された。
 
最初、[[ルネ・デカルト|デカルト]]が『哲学原理』の中で[[質量]]と[[速さ]]の積の総和を神から与えられた不変量として記述したが、[[空間ベクトル|ベクトル]]を用いて現在の形の運動量とその保存則を導いたのは[[クリスティアン・ホイヘンス|ホイヘンス]]である<ref>R.J.フォーブス, E.J.ディクステルホイス, (広重徹ほか訳), "科学と技術の歴史 (1)", みすず書房(1963), pp.175-176, 194-195.</ref>。
外部からの力が働かない問題の例としては、物体の衝突問題がある。二体の衝突問題は、[[エネルギー保存の法則]]と運動量保存の法則を考えることで解くことができる。[[完全弾性衝突]]のときのみ物体の[[運動エネルギー]]は保存される。
外力が働かない[[問題]]の例としては、[[物体]]の[[衝突]]問題がある。[[二体問題|二体]]の衝突問題は、[[エネルギー保存の法則]]と運動量保存則を考えることで解くことができる。[[完全弾性衝突]]のときのみ物体の[[運動エネルギー]]は保存される。一方、完全弾性衝突に限らず外力が働かない限り、運動量は保存される。
 
==二個の質点が衝突した場合の 運動量保存則と運動方程式 ==
[[質点]]の[[運動量]] <math>\boldsymbol{p}</math>(以下、ベクトル量は'''太字'''で表す)は
[[質量]]が <math>m_1</math>、<math>m_2</math> の二つの[[質点]]が、[[速度]] <math>v_1</math>、<math>v_2</math> で衝突し、衝突後の速度がそれぞれ <math>v_1^\prime</math>、<math>v_2^\prime</math> となった場合。
<math display="block">
\boldsymbol{p}=m\frac{d\boldsymbol{r}}{dt}=m\boldsymbol{v}
</math>
である。ここで、<math>m</math> は質点の[[質量]]、<math>\boldsymbol{r}</math> は質点の[[位置ベクトル]]、<math>\boldsymbol{v}</math> は質点の[[速度]]である。
 
[[ニュートンの運動方程式]]
{{Indent|<math>m_1v_1+m_2v_2=m_1v_1^\prime+m_2v_2^\prime</math>}}
<math display="block">
\boldsymbol{F} = m\frac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2}
</math>
より、この質点に働く[[力 (物理学)|力]] <math>\boldsymbol{F}</math> について以下が成り立つ:
<math display="block">
\boldsymbol{F} = \frac{d}{dt}\left ( m\frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \right )=\frac{d\boldsymbol{p}}{dt}.
</math>
すなわち質点に外部から働く力は、質点の運動量の[[時間変化]]に等しい。よって、質点に外力が働かない <math>\boldsymbol{F}=\boldsymbol{0}</math> では質点の運動量 <math>\boldsymbol{p}</math> は不変である(保存する)。
また、上式について時刻<math>t=t_0</math>から<math>t=t_1</math>までの積分は
<math display="block">
\boldsymbol{I}=\int^{t_1}_{t_0}\boldsymbol{F}dt =\int^{t_1}_{t_0}\left (\frac{d\boldsymbol{p}}{dt}\right)dt=\boldsymbol{p}_{t=t_1}-\boldsymbol{p}_{t=t_0}.
</math>
となり、この運動量の変化を表すベクトル<math>\boldsymbol{I}</math>は[[力積]] と呼ばれる。
 
== 2質点系の運動量保存則 ==
(数学的には、ニュートンの[[作用・反作用の法則]]から容易に証明できる。)
2質点系において各質点の運動量の和は、添字をそれぞれの質点に対応させれば、
<math display="block">
\boldsymbol{P}
:= \boldsymbol{p}_1+\boldsymbol{p}_2
</math>
と書き表すことができる。あるいは、各質点の質量と速度をあらわに書いて、
<math display="block">
\boldsymbol{P}
= m_1\boldsymbol{v}_1+m_2\boldsymbol{v}_2
</math>
と表すこともできる。
全質点の運動量の和 <math>\boldsymbol{P}</math> は、2質点系に限らず、その系の'''全運動量'''あるいは'''[[重心|重心(質量中心]])の運動量'''、'''並進運動の運動量'''などと呼ばれる<ref>
{{Cite book
|title=考える力学
|url=https://www.worldcat.org/oclc/676323408
|publisher=学術図書出版社
|date=2001
|isbn=4-87361-099-0
|oclc=676323408
|others=Toshio Hyōdō, 俊夫 兵頭}}
</ref>。
 
全運動量の時間微分は、各質点の運動量の時間微分の和に等しい。
==N質点系の運動量保存則==
<math display="block">
一般的にN個の質点があり、i番目の質点の運動量が<math>p_i</math>としたときの運動量保存則
\frac{d\boldsymbol{P}}{dt}
=\frac{d\boldsymbol{p}_1}{dt}+\frac{d\boldsymbol{p}_2}{dt}.
</math>
前節にしたがってニュートンの運動方程式から、それぞれの運動量の時間微分を質点に働く力に置き換えることができる。
<math display="block">
\frac{d\boldsymbol{P}}{dt}
=\boldsymbol{F}_1+\boldsymbol{F}_2.
</math>
したがって、全運動量の時間変化は各質点に働く力の和に等しいことが分かる。
 
各質点に外力が働かない場合、[[作用・反作用の法則]]より <math>\boldsymbol{F}_2=-\boldsymbol{F}_1</math> が成り立ち、全運動量<math>\boldsymbol{P}</math> が保存することが示される。
{{Indent|<math>\sum_{i=1}^N p_i = {const.}</math>}}
あるいは、
{{Indent|<math>\frac{d}{dt} \sum_{i=1}^N p_i = 0 </math>}}
 
2つの質点が衝突した際、衝突前後で系の全運動量は保存する。したがって、
はじめの式は、外力のない場合の[[ニュートンの運動方程式]]を時間で[[積分]]することで得られる。外力のある場合は右辺に[[力積]]を導入することで運動方程式とまったく同値となる。二つ目の式ははじめの式の微分で、運動方程式そのものである。
<math display="block">
\boldsymbol{P} = \boldsymbol{P'}
</math>
より
<math display="block">
m_1\boldsymbol{v}_1+m_2\boldsymbol{v}_2 = m_1\boldsymbol{v}^\prime_1+m_2\boldsymbol{v}^\prime_2
</math>
が成立する。
また適当な[[慣性系]]において全運動量はゼロであるため、例えば衝突前および衝突後の速度に対して以下が成り立つ:
<math display="block">
\begin{align}
\boldsymbol{v}_2 &= -{m_1 \over m_2}\boldsymbol{v}_1, \\
\boldsymbol{v}^\prime_2 &= -{m_1 \over m_2}\boldsymbol{v}^\prime_1.
\end{align}
</math>
この場合、衝突前後での速度の大きさの比は以下のようになる。
<math display="block">
\eta
= \sqrt{\boldsymbol{v}^\prime_1{}^2 \over
\boldsymbol{v}_1^2}
= \sqrt{\boldsymbol{v}^\prime_2{}^2 \over
\boldsymbol{v}_2^2}
</math>
またこの速度比 {{mvar|η}} を用いて衝突後の[[運動エネルギー]]を表すと、
<math display="block">
{1 \over 2}m_1\boldsymbol{v}^\prime_1{}^2
+ {1 \over 2}m_2\boldsymbol{v}^\prime_2{}^2
= {1 \over 2}m_1\eta^2\boldsymbol{v}_1^2
+ {1 \over 2}m_2\eta^2\boldsymbol{v}_2^2
</math>
となる。特に {{math|1=''η'' = 1}} とすればこれは衝突過程での[[エネルギー保存の法則]]を表している。
 
==解析力学における N質点系の運動量保存則 ==
N質点系の場合についても、2質点系の場合と全く同様の議論が成り立つ。
 
N質点系の全運動量 <math>\boldsymbol{P}</math> を
<math display="block">
\boldsymbol{P}=\sum^N_{i=1}\boldsymbol{p}_i</math>
と定義できる。ここで、<math>\boldsymbol{p}_i</math> は <math>i</math> 番目の質点の運動量である。
 
全運動量の時間微分は
<math display="block">
\frac{d\boldsymbol{p}_i}{dt}
=\boldsymbol{F}_i
</math>
より
<math display="block">
\frac{d\boldsymbol{P}}{dt}
=\sum_{i=1}^N \boldsymbol{F}_i
</math>
である。
<math>i</math> 番目の質点に働く力 <math>\boldsymbol{F}_i</math> は <math>j \neq i</math> 番目の質点から働く力 <math>\boldsymbol{F}^\mathrm{in}_{i,j} </math> の総和と外力 <math>\boldsymbol{F}^\mathrm{ex}_{i} </math> の和
<math display="block">
\boldsymbol{F}_i
=\boldsymbol{F}^\mathrm{ex}_i
+ \sum_{j \neq i} \boldsymbol{F}^\mathrm{in}_{i,j}
</math>
で表すことができる。よって、
<math display="block">
\frac{d\boldsymbol{P}}{dt}
=\sum_{i=1}^N\left\{
\boldsymbol{F}^\mathrm{ex}_i
+ \sum_{j \neq i} \boldsymbol{F}^\mathrm{in}_{i,j}
\right\}
</math>
となる。さらに、[[作用・反作用の法則]]から相異なる質点 {{math|1=''i'', ''j''}} の間で <math>\boldsymbol{F}^\mathrm{in}_{i,j}=-\boldsymbol{F}^\mathrm{in}_{j,i}</math> が成り立つ。したがって内力の和はゼロとなる。
<math display="block">
\sum_{i=1}^N \sum_{j \neq i} \boldsymbol{F}^\mathrm{in}_{i,j}
= \boldsymbol{0}.
</math>
結局、全運動量の時間微分は各質点に働く外力の和に等しくなる。
<math display="block">
\frac{d\boldsymbol{P}}{dt}
= \sum_{i=1}^N\boldsymbol{F}^\mathrm{ex}_i.
</math>
よって、系に外力が働かなければ、系の全運動量は不変である(保存する)。
 
== 解析力学における運動量保存則 ==
[[解析力学]]によれば、[[ネーターの定理]]により空間並進の無限小変換に対する[[作用積分]]の不変性に対応する[[保存量]]として[[運動量]]が導かれる。
 
== 流体力学における運動量保存則 ==
[[流体]]中の微小要素に運動量保存則を適用することができ、これによって得られる式を[[流体力学]]における運動量保存則とよぶ。また、特に[[非圧縮性流体]]の場合は[[ナビエ-ストークス方程式]]と呼ばれ、これは流体の挙動を記述する上で重要な式である。
 
== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
 
== 関連項目 ==
* [[保存則]]
** [[エネルギー保存の法則]]
** [[質量保存の法則]]
** [[角運動量保存の法則]]
** [[電荷保存則]]
* [[加速度]]
 
{{Physics-stub}}
==関連項目==
*[[保存則]]
*[[エネルギー保存の法則]]
*[[質量保存の法則]]
*[[角運動量保存の法則]]
*[[加速度]]
 
{{DEFAULTSORT:うんとうりようほそんのほうそく}}
[[Category:力学]]
[[Category:自然科学の法則]]
[[Category:保存則]]