「スワジランドにおけるHIV/AIDS」の版間の差分

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== 流行状況 ==
[[スワジランド]]は世界で最も[[ヒト免疫不全ウイルス|HIV]]/[[後天性免疫不全症候群|AIDS]]の蔓延した国家の1つで、1986年に国内で初の患者が見つかって以来長らく流行し続けており、同国の経済発展の足枷となっている<ref name="usaid08" />。[[産科学|妊婦管理]]([[:en:Obstetrics#Antenatal_careAntenatal care|:en:Antenatal_careAntenatal care]])を目的とした定期健診からは、妊婦におけるHIV有病率は一貫して上昇し続けていることが明らかとなっており、1992年に4%であった<ref>{{citeCite web|和書|url=http://www.unicef.or.jp/children/children_now/swaziland/sek_swazi01.htm|title=HIV/AIDS対策に力を入れるスワジランド|publisher=[[日本ユニセフ協会]]]|accessdate=2010.2.-02-25}}</ref>妊婦のHIV有病率は、2004年の資料では実に42.6%となっている。また、15–19歳の女性のHIV有病率は28%、25–29歳の女性では驚くべきことに56%にまで達していたことが知られている<ref name="usaid">[http://www.usaid.gov/our_work/global_health/aids/Countries/africa/swaziland_05.pdf "Health Profile: Swaziland"]. [[アメリカ合衆国国際開発庁]] (June 2005). {{PD-notice}}</ref>。
 
[[国際連合開発計画]]の[[人間開発指数]]によれば、HIV/AIDSの著しい蔓延により、スワジランドの[[平均余命]]は2000年時点で61歳であったのが、2009年には32歳にまで急落したことが報告されている<ref name="unhcrAIDS">{{cite web|url=http://www.unhcr.org/refworld/docid/49e6ef2dc.html|title=Swaziland: A culture that encourages HIV/AIDS|date=15 April 2009|publisher=[[IRIN|統合地域情報ネットワーク]] (IRIN)|accessdate=2010.2.-02-25}}</ref>。また、[[世界保健機関]]による2002年の報告では、スワジランドにおける死因の実に'''61%'''が、HIV/AIDSに起因することが示されている<ref>{{Cite web|title=Swaziland, Mortality Country Fact Sheet 2006.|publisher= WHO.|url= http://www.who.int/whosis/mort/profiles/mort_afro_swz_swaziland.pdf.|format=PDF Accessed|accessdate= 2010.2.-02-25}}</ref>。1000人あたり30人が死亡するというこの記録的な[[死亡率#粗死亡率|粗死亡率]]はすなわち、一年間にスワジランド全国民の2%がHIVにより死亡していることを意味する。この国では、先進諸国において最も多くの死因を占める慢性疾患による死亡者はわずかな割合を占めるに過ぎない。例えば、[[アメリカ]]において全死因の55%を占める[[心臓病]]、[[脳梗塞]]、[[悪性腫瘍]]による死は、スワジランドにおいて全体の5%以下となっている<ref>{{Cite web|title=Causes of death in US, 2006.|publisher= CDC.|url= http://www.cdc.gov/nchs/data/nvsr/nvsr57/nvsr57_14.pdf. Accessed|format=PDF|accessdate= 2010.2.-02-25.}}</ref>。
 
このような蔓延状況について国際連合開発計画は、"仮に、スワジランドにおけるHIV/AIDSの蔓延状況がこのまま進行するのであれば、長期的には国家としてのスワジランドの存在に、深刻な脅威を与えるだろう"と記している<ref>{{Cite web|title=Country programme outline for Swaziland, 2006-2010.|publisher= United Nations Development Program.|url= http://www.undp.org.sz/index.php?option=com_docman&task=doc_download&gid=19&Itemid=67. Accessed|accessdate= 2010.2.-02-25.}}</ref>。
 
== 文化的背景 ==
[[File:King of SwazilandEswatini.jpg|thumb|200px|right|スワジランドの王、[[ムスワティ3世]]は14人の妻と23人の子を持つ。]]
[[File:Princess Swaziland 013.jpg|thumb|200px|right|2006年の[[リード・ダンス]]に参加した王女の[[シカニソ・ドラミニ]]([[:en:Princess Sikhanyiso Dlamini]])]]
[[コンドーム]]の使用や[[一夫一婦制]]の確立といった[[セーファーセックス]]の試みは、スワジランドの伝統的な文化と反するために、普及が妨げられている。同国では、人口の増大それ自体が[[生殖]]における文化的信条であるほか、[[スワジ人]]は女性は最低でも5人の子を出産すべきであり、男性の役割は性的パートナーである複数の女性を[[妊娠]]させることであると信じている。[[複婚]]はスワジランドの社会において一般的であり、また、結婚していない男性が複数のパートナーとの間に多くの子供を持つのも珍しくない<ref name="unhcrAIDS" />。さらにスワジランドでは、暴力的性行為や性的嫌がらせ、露出行為といった性的な攻撃(Sexual aggression)<ref>[http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/images/pdf/2_cambodia.pdf 内閣府男女共同参画局 "Sexual aggression(性的な攻撃)の定義"]</ref>も一般的に行われており、性交経験のある[[高校生]]の18%が、[[初体験]]時の性的関係は強要されたものであったと述べている<ref name="usaid08">{{cite web|url=http://www.usaid.gov/our_work/global_health/aids/Countries/africa/swaziland_profile.pdf|title=Swaziland HIV/AIDS health profile|date=September 2008|publisher [[アメリカ合衆国国際開発庁]]|accessdate=2010.2.25}}</ref>。
 
現在、10万人以上の子供たちが[[エイズ孤児]]となっており<ref>{{citeCite web|和書|url=http://www.unicef.or.jp/library/report/sek_rep14.html|title=スワジランドにおけるユニセフの取り組み|publisher=[[日本ユニセフ協会]]]|accessdate=2010.2.25}}</ref>、両親が共に健在な家庭に育つ子供は、全体のうちのわずか22%に過ぎないという<ref name="actionplan">{{cite web|url=http://www.gov.sz/home.asp?pid=5629&ItemID=5667&ToolID=6|title=GOVERNMENT'S PROGRAMME OF ACTION 2008-2013|date=27 March 2009|publisher=The Government of the Kingdom of Swaziland|pages=4-5|accessdate=2010.2.25|archiveurl=https://web.archive.org/web/20100117202602/http://www.gov.sz/home.asp?pid=5629&ItemID=5667&ToolID=6|archivedate=2010年1月17日|deadlinkdate=2017年9月}}</ref>。
 
なお、スワジランドの王[[ムスワティ3世]]は、同国の伝統的な祭で[[処女]]のみが参加を許されることで有名な[[リード・ダンス]]にて、HIVの予防や未成年の性の乱れに関する演説を行っているが、その一方でかつては祭に参加した10代の学生を含む若い女性を毎年のように娶っていことが知られており、その行動の矛盾には非難の声もある<ref>{{citeCite web|和書|url=http://news.jams.tv/jlog/view/id-114|title=エイズ感染率1位スワジランド-13人目の王の花嫁|date=2005.9.26|publisher=JAMS NEWS|accessdate=2010.2.25}}</ref>。
 
== 国際的対応 ==
2003年には、それまでHIV/AIDSの中心であった保健社会福祉省(Ministry of Health and Social Welfare:MOHSW)のほかに、スワジランドHIV/AIDS緊急対策委員会(National Emergency Response Committee on HIV/AIDS:NERCHA)が、行政機関の間でHIV/AIDSへの対策を容易かつ連携的にする目的で設立された。スワジランド国家における以前のHIV/AIDS戦略計画の期間は2000年から2005年までであり、2006年から2008年には新たなHIV/AIDS戦略計画とHIV/AIDS行動計画が、様々なスワジランドの関係者らにより立案されて展開された。現在の計画にはHIV/AIDS防止のための6個の主要分野、すなわち、ケアとサポート、影響の緩和、情報伝達、監視と評価、管理、調整が存在し、対策が行われている<ref name="usaid"/>。
 
なお、スワジランドではHIV/AIDSの著しい大流行が見られるにもかかわらず、同病気への感染は現在でも非常に不名誉なものであるとされている。HIV/AIDSの感染者、特に宗教的指導者や伝統的指導者、あるいはメディアやスポーツの著名人といった人々は、自身の感染を公言したり明らかにすることがほとんど無い。この、HIV/AIDS感染が不名誉であるという認識は地域社会における情報の共有を妨げ、予防への取り組みを阻害し、社会サービスの利用率を低下させている<ref name="usaid"/>。2009年には国会議員により"HIV問題の解決には、HIV検査を義務化し、感染者の臀部には焼印を入れれば良い"との主張が行われ、国内外に物議を醸した<ref>{{citeCite web|和書|url=httphttps://www.afpbb.com/articlearticles/life-culture/health/2606163/?pid=4194407|title=HIV感染者は尻に焼き印を」スワジランド議員が発言、大騒動に|publisher=APF通信|accessdate=2010.2.25}}</ref>。
 
2009年6月4日、アメリカとスワジランドは"2009年から2013年におけるHIVおよびエイズに関するスワジランドパートナーシップ枠組み"の署名を行った。これに基づき、[[アメリカ大統領エイズ救済緊急計画]]([[:en:President's Emergency Plan for AIDS Relief]]:EPFAR):PEPFAR)は、スワジランドにおける"HIV/AIDSへの国家戦略的枠組み"の多面的な取り組みの実施に関して協力を行う見通しである<ref name="pepfar">{{cite web|url=http://www.pepfar.gov/countries/swaziland/|title=Partnership to Fight HIV/AIDS in Swaziland|publisher=Office of U.S. Global AIDS Coordinator and the Bureau of Public Affairs, U.S. State Department.|accessdate=2010.2.25}}</ref>。
 
なお、スワジランドにおけるHIV/AIDS対策費用のうち、予防に費やす予算は全体のわずか17%に過ぎないことが知られており、予防対策への政策のシフトが不十分であるとの指摘が[[国際連合エイズ合同計画|UNAIDS]]によりなされている<ref>{{cite web|url=http://data.unaids.org/pub/PressRelease/2009/20091124_PR_EpiUpdate_en.pdf|date=2009.11.24|title=Eight-year trend shows new HIV infections down by 17%—most progress seen in sub-Saharan Africa|publisher=[[国際連合エイズ合同計画|UNAIDS]]|accessdate=2010.2.25}}</ref>。
 
== エイズと結核の同時感染 ==
スワジランドでは[[結核]]の蔓延も社会的に大きな問題となっており、同国内における結核感染者の死亡率は18%である。結核患者の多くは[[薬剤耐性#多剤耐性|多剤耐性]]型の[[結核菌]]に感染していることが知られているほか、83%はHIVにも感染していることが明らかとなっている<ref name="msf">{{cite web|url=http://www.doctorswithoutborders.org/news/article.cfm?id=4034&cat=field-news|title=Swaziland: An MSF Doctors Explains HIV-TB Co-Infection|date=October 28, 2009|publisher=[[国境なき医師団]]|accessdate=2010.2.25|location=USA|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110725170922/http://www.doctorswithoutborders.org/news/article.cfm?id=4034&cat=field-news|archivedate=2011年7月25日|deadlinkdate=2017年9月}}</ref>。なお、結核の新規発症者数は年間でおよそ1万4000人である<ref name="hivtb">{{cite web|url=http://www.doctorswithoutborders.org/publications/article.cfm?id=4033&cat=special-report|title=HIV-TB in Swaziland: A Deadly Co-Infection Epidemic|date=October 28, 2009|publisher=[[国境なき医師団]]|accessdate=2010.2.25|location=USA}}</ref>。AIDS発症による[[免疫]]機能の不全化により結核の蔓延が一層悪化していることから、早急な対策が望まれている。
 
== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
*[http://www.nercha.org.sz/ National Emergency Response Council on HIV/AIDS (NERCHA)]
*[http://www.gov.sz/home.asp?pid=61 Ministry of Health]
*[httphttps://www.mofa.go.jp/mofaj/area/af_data/pdfs/hiv_aids.pdf 日本国外務省 HIV/エイズ感染率・感染者数(2007-2008のアフリカ)]
 
{{アフリカの題材|HIV/AIDS|[[ヒト免疫不全ウイルス|HIV]]/[[後天性免疫不全症候群|AIDS]]|part=1}}
 
{{アフリカの題材|HIV/AIDS}}
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[[en:HIV/AIDS in Swaziland]]