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{{出典の明記|date=2015年11月7日 (土) 13:29 (UTC)}}
'''三段論法'''(さんだんろんぽう、{{lang-el-short|συλλογισμός}}, シュロギスモス<ref group="注釈">原義は「[[推論]]術」といった程度の意味。</ref>、{{lang-la-short|syllogismus}}、{{lang-en-short|syllogism}})は、[[論理学]]における論理的[[推論]]の型式のひとつ。典型的には、大前提、小前提および結論という3個の命題を取り扱う。これを用いた結論が[[真]]であるためには、前提が真であること、および論理の法則([[同一律]]、[[無矛盾律]]、[[排中律]]、および[[充足理由律]])が守られることが必要とされる<ref>エス・エヌ・ヴィノグラードフ、ア・エフ・クジミン『論理学入門』西牟田久雄、野村良雄訳、青木書店(青木文庫)1973年、157頁
</ref>。
 
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== 語義 ==
ギリシャ語の原語はもともと言語依拠段階的推論法というような意味合いである。り、3段と限定されてはいない。そのように限定されるかのような誤解を招く邦訳語であるが、[[古代ギリシア]]が確立したものが3段構成だったために、欧米文明へ向けての開化という実際目的に即した訳語が作られた。インド固有の三段論法では5段構成である。「三段論法」が3段構成であるとは限らない
 
== 構成 ==
=== 3つの項(概念)と3つの命題 ===
古代ギリシアに由来する西洋の三段論法は、
*'''大概念'''(Major<ref term)group="注釈">{{lang-en-short|major term}}</ref> - '''結論'''において'''述語'''(P<ref group="注釈">{{lang- Predicate)en-short|predicate}}</ref>)となる概念(項)。
*'''小概念'''(Minor<ref term)group="注釈">{{lang-en-short|minor term}}</ref> - '''結論'''において'''主語'''(S<ref group="注釈">{{lang- Subject)en-short|subject}}</ref>)となる概念(項)。
*'''媒概念'''(Middle{{efn|name="#1"|{{lang-en-short|middle term)term}}}} - '''大前提・小前提'''で上2つの概念(項)との関係性が示される媒介的な概念(項)。'''中項'''(M - Middle term){{efn|name="#1"}})
という3つの項(概念)の内、2つの組み合わせ(関係性)をそれぞれ表現する、
*'''大前提'''(Major<ref premise)group="注釈">{{lang-en-short|major premise}}</ref> - 大概念/述語(P)と、媒概念/中項(M)の関係性を示す命題文
*'''小前提'''(Minor<ref premise)group="注釈">{{lang-en-short|minor premise}}</ref> - 小概念/主語(S)と、媒概念/中項(M)の関係性を示す命題文
*'''結論'''(Conclusion)<ref group="注釈">{{lang-en-short|conclusion}}</ref> - 小概念/主語(S)と、大概念/述語(P)の関係性を示す命題文
という3つの[[命題]]によって構成される、[[演繹]]的な推論規則である。
 
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このように、概念間の関係性を規定・整理する「概念の整理整頓術」としての論理学において、その推論形式の最小型となるのが三段論法である。
 
 
以下に「定言的三段論法」の例を示す。
 
*大前提:全ての人間は[[死すべき定め|死すべきもの]]である。
*小前提:ソクラテスは人間である。
*結論:ゆえにソクラテスは死すべきものである。
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=== 命題の4つの型 ===
三段論法を構成する各命題は、「全称 - 特称」「肯定 - 否定」の区別の組み合わせによって、'''A''','''E''','''I''','''O'''の4つの「型」に分類される。(括弧内は今日の[[一階述語論理]]における[[量化子]]を用いた表現。)
 
{|class=wikitable
* '''A''' = 全称肯定判断 ≪'''全ての'''人間'''は'''生物'''である'''≫(∀)
!記号!!意味!!量子化表現!!命題の例
* '''E''' = 全称否定判断 ≪'''全ての'''人間'''は'''不死'''ではない'''≫(¬∀)
|-
* '''I''' = 特称肯定判断 ≪'''ある'''人間'''は'''学生'''である'''≫(∃)
* '''O''' = 特|A||全定判断||<math>\forall</math>||'''ある全ての'''人間'''は''''''ではないある'''≫(¬∃)
|-
* '''|E''' = ||全称否定判断||<math>\forall\lnot=\lnot\exists</math>||'''全ての'''人間'''は'''不死'''ではない'''≫(¬∀)
|-
* '''A''' = 全|I||特称肯定判断||<math>\exists</math>||'''全てのある'''人間'''は''''''である'''≫(∀)
|-
* '''I''' = |O||特称定判断||<math>\exists\lnot=\lnot\forall</math>||'''ある'''人間'''は'''学生'''であるはない'''≫(∃)
|}
 
なお、このAとIはラテン語の「'''{{lang|la|<strong>a'''</strong>ff'''<strong>i'''</strong>rmo}}」(肯定)、EとOはラテン語の「{{lang|la|n'''<strong>e'''</strong>g'''<strong>o'''</strong>}}」(否定)から採られた記号で、特に深い意味があるわけではない
 
=== 三段論法の4つの格(配列パターン) ===
三命題における '''S''', '''P''', '''M'''の配列パターンを{{読み仮名|'''」 ('''|かく、英 : |{{lang-en-short|figure) }}}}と呼び、これには4つの可能性がある。
 
{| class="wikitable" style="text-align:center;width:500px;"
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ちなみに、上記した命題の4つの「型」(A, E, I, O)と、この4つの「格」を組み合わせて表現すると、例えば、第一格の命題が全てAの場合は、(分かりやすくこれを小文字のaにして)
*MaP SaM SaP
といった具合に表現できる。
 
== 種類 ==
4つの型(A, E, I, O)を採り得る各命題が3つ(「大前提」「小前提」「結論」)組み合わされ、更にその組み合わせが命題3要素の配列パターンによって4つの「格」に分けられるので、全部で4<sup>3</sup>&times;4×4=256通りの三段論法がありえるが、実際にはそのうちの19通り(厳密には「弱勢式」<ref group="注釈">結論(S-P)を特称化(大小対当)したもの。</ref>の5通りを加えて24通り)のみから[[恒真]]な結論が得られる。このとき2つの前提はともに真でなければならない。(真でない前提からは、しばしば[[パラドックス]]が導かれる。)
 
その19式(24式)を示せば、
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「定言三段論法」における上記の19式を覚えるため、[[中世]]([[スコラ学]])ではsyllogismusと呼ばれる[[ラテン語]]の詩が作られた。
 
{{quotation|B'''<strong>a'''</strong>rb'''<strong>a'''</strong>r'''<strong>a'''</strong> c'''<strong>e'''</strong>l'''<strong>a'''</strong>r'''<strong>e'''</strong>nt d'''<strong>a'''</strong>r'''<strong>ii'''</strong> f'''<strong>e'''</strong>r'''<strong>io'''</strong>que prioris.
 
C<strong>e</strong>s<strong>a</strong>r<strong>e</strong> c<strong>a</strong>m<strong>e</strong>str<strong>e</strong>s f<strong>e</strong>st<strong>i</strong>n<strong>o</strong> b<strong>a</strong>r<strong>o</strong>c<strong>o</strong> secundoe.
C'''e'''s'''a'''r'''e''' c'''a'''m'''e'''str'''e'''s f'''e'''st'''i'''n'''o''' b'''a'''r'''o'''c'''o''' secundoe.
 
Tertia d<strong>a</strong>r<strong>a</strong>pt<strong>i</strong> d<strong>i</strong>s<strong>a</strong>m<strong>i</strong>s d<strong>a</strong>t<strong>i</strong>s<strong>i</strong> f<strong>e</strong>l<strong>a</strong>pt<strong>o</strong>n, b<strong>o</strong>c<strong>a</strong>rd<strong>o</strong> f<strong>e</strong>r<strong>i</strong>s<strong>o</strong>n habet.
Tertia d'''a'''r'''a'''pt'''i''' d'''i'''s'''a'''m'''i'''s d'''a'''t'''i'''s'''i''' f'''e'''l'''a'''pt'''o'''n, b'''o'''c'''a'''rd'''o''' f'''e'''r'''i'''s'''o'''n habet.
 
Quarta insuper addit br'''<strong>a'''</strong>m'''<strong>a'''</strong>nt'''<strong>i'''</strong>p c'''<strong>a'''</strong>m'''<strong>e'''</strong>n'''<strong>e'''</strong>s d'''<strong>i'''</strong>m'''<strong>a'''</strong>r'''<strong>i'''</strong>s f'''<strong>e'''</strong>s'''<strong>a'''</strong>p'''<strong>o'''</strong> fr'''<strong>e'''</strong>s'''<strong>i'''</strong>s'''<strong>o'''</strong>n.}}
 
この詩から子音を取り除くことによって三段論法の式が得られ(上記の詩の強調文字の部分が式である)、それぞれの式を呼ぶのには詩のおのおのの単語を用いる。
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また、第一格以外の格は、第一格に還元され得るが、式の名称に含まれる子音のうちs, m, p および c は還元の際の手引きとなるもので、s および p はそれぞれ直前の母音で表される式を「単純換位」あるいは「限量換位」せよという意味であり、m は「前提の変換」を命じ、c は「三段論法の換位」すなわち[[帰謬法]]によって証明せよという意味である。
 
冒頭で示した三段論法の例は第一格の B'''<strong>a'''</strong>rb'''<strong>a'''</strong>r'''<strong>a'''</strong>」に対応している。
 
:大前提:全ての[[ヒト|人間]]は死すべきものである。('''A''', M-P:全てのMはPである)
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第三格のEAO、すなわち「MeP MaS SoP」の三段論法は、以下のようになる。
 
:大前提:「全てM」は、Pでは'''ない'''。(MeP)
 
:小前提:「全てのM」は、Sである。(MaS)
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:結論:ゆえに(∴)、「全てのヘビ」は、「有毛生物」では'''ない'''。(SeP)
 
====== EAO-1(Celaront) : 弱勢式 ======
[[File:eao1.png|thumb|right|250px|EAO-1]]
第一格のEAO、すなわち「MeP SaM SoP」の三段論法。
599 ⟶ 605行目:
:大前提:「全ての爬虫類」は、「有毛生物」では'''ない'''。(MeP)
 
:小前提:「全ての爬虫類ヘビ」は、「爬虫類」である。(SaM)
 
:結論:ゆえに(∴)、「あるヘビ」は、「有毛生物」では'''ない'''。(SoP)
621 ⟶ 627行目:
:結論:ゆえに(∴)、「全てのヘビ」は、「有毛生物」では'''ない'''。(SeP)
 
====== EAO-2(Cesaro) : 弱勢式 ======
[[File:eao2.png|thumb|right|250px|EAO-2]]
第二格のEAO、すなわち「PeM SaM SoP」の三段論法。
639 ⟶ 645行目:
:大前提:「全ての有毛生物」は、「爬虫類」では'''ない'''。(PeM)
 
:小前提:「全ての爬虫類ヘビ」は、「爬虫類」である。(SaM)
 
:結論:ゆえに(∴)、「あるヘビ」は、「有毛生物」では'''ない'''。(SoP)
699 ⟶ 705行目:
:小前提:「全ての爬虫類」は、「有毛生物」では'''ない'''。(MeS)
 
:結論:ゆえに(∴)、「全てのヘビ」は、「有毛生物」は、「ヘビ」では'''ない'''。(SeP)
 
====== AEO-4(Calemos) : 弱勢式 ======
[[File:aeo4.png|thumb|right|250px|AEO-4]]
第四格のAEO、すなわち「PaM MeS SoP」の三段論法。
730 ⟶ 736行目:
がある。
 
{{要出典範囲|また、[[ジョン・スチュアート・ミル]]は、如上のソクラテス云々の場合、結論を知っていないならば、大前提の全称判断は得られないのだから、三段論法は一種の循環論証であると批判した。|date=2023年11月}}
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references />
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist}}
 
==関連項目==
741 ⟶ 751行目:
**『[[分析論後書]]』
*[[論理学]]
*[[一階述語論理]]
*[[演繹]]
*[[詭弁]]
 
==外部リンク==
{{SEP|medieval-syllogism|Medieval Theories of the Syllogism|[[スタンフォード哲学百科事典]]にある「三段論法に関する中世の理論」についての項目。}}
* {{Kotobank}}
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:さんたんろんほう}}
[[Category:三段理学法|*]]
[[Category:論証]]
[[Category:名辞論理学]]
[[Category:アリストテレス]]
[[Category:方法論]]