「山城丸」の版間の差分

[[第一次世界大戦]]後の[[1920年]]（大正9年）、日本郵船は[[長崎市|長崎]]を発着する新たな上海航路を開設するに及んで<ref>山高, 182ページ</ref>、「山城丸」と「近江丸」は同航路から撤退。その頃、[[1917年]]（大正6年）に開設された[[南洋諸島]]方面への航路を拡充する事となり、「山城丸」は「近江丸」とともに投入される事となった。南洋諸島方面の航路は、南洋諸島の範囲内のほか[[スラウェシ島|セレベス島]][[マナド]]にも寄港し<ref name="『日本郵船戦時船史 上』366ページ">『日本郵船戦時船史 上』366ページ</ref>、諸島内の生活や開発に欠かせない航路となっていた<ref>『日本郵船戦時船史 上』105ページ</ref>。幾度かの航路の修正が行われたが、[[1941年]]（昭和16年）12月8日の[[太平洋戦争]]勃発後、航路は翌[[1942年]]（昭和17年）に設立された[[船舶運営会]]に「山城丸」や「近江丸」、「[[サイパン丸]]」（5,533トン）など使用船舶ともども移管され、運航は不定期になって<ref> name="『日本郵船戦時船史 上』366ページ<"/ref> 輸送船団を構成することが義務付けられたものの<ref>『日本郵船戦時船史 上』294ページ</ref>、航路は従前どおり維持された。しかし、1942年8月5日に「パラオ丸」（4,495トン）が、12月28日に姉妹船「近江丸」がそれぞれ戦渦により沈没していた。これより先1941年2月には海軍の要請でパラオ本島・コロール島間への海底ケーブル敷設を行う工事隊がケーブルと共に「山城丸」でパラオへ向かっている<ref>『海底線百年の歩み』343ページ</ref>。1941年7月10日から8月29日の間には、[[大日本帝国陸軍|日本陸軍]]に傭船された<ref name="c">『日本郵船戦時船史 上』354ページ</ref>。

[[1943年]]（昭和18年）9月16日、「山城丸」は横浜を出港して[[父島]]二見港に向かった<ref>『日本郵船戦時船史 上』349ページ</ref>。9月21日、「山城丸」は輸送船「両徳丸」（大家商事、3,483トン）とともに3916船団を構成し、特設掃海艇「第二文丸」（[[マルハ|西大洋漁業]]、297トン）<ref>『第四根拠地隊司令部 第二海上護衛隊司令部 戦時日誌』pp.18</ref> の護衛を得て二見港を出港して[[サイパン島]]に向かった。しかし、2日後の9月23日朝、{{coor dm|20|45|N|142|05|E|}}の地点にさしかかった3916船団は[[アメリカ海軍]][[潜水艦]]「[[トラウト (SS-202)|トラウト]] (''USS Trout, SS-202'') 」の攻撃を受ける。当時、「山城丸」の船内では攻撃を受けたときに備えて、朝に退船訓練を実施していた<ref name="b">『日本郵船戦時船史 上』351ページ</ref>。8時30分、「両徳丸」の船尾にトラウトからの魚雷が命中。151名の乗客は「両徳丸」被雷の光景を見て動揺したものの、すぐに訓練どおりの行動に移った<ref name="b">< /ref>。間もなく「山城丸」にも魚雷が向かってきたので回避行動に入ったものの、魚雷は「山城丸」の中央部に命中<ref name="b">< /ref>。魚雷が命中した「山城丸」、「両徳丸」ともに操舵が困難となって、一時は衝突しそうになった<ref name="b">< /ref>。「山城丸」は左に大きく傾いた後、8時48分に船尾から体が分断されて沈没していった。「山城丸」と「両徳丸」の乗員乗客は、山城丸で死亡した船客7名を除き「第二文丸」や別の哨戒艇に大部分が救助され、サイパン島行きを希望した遭難者は「第二文丸」でサイパン島に向かい、残りは父島に戻った<ref name="c">< /ref>。山城丸の乗員は、当直の機関士4名が殉職した以外は日本に全員生還した<ref name="c">< /ref>。