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 '''酵素栄養学'''(こうそえいようがく、{{Lang-en-short|enzyme nutrition)nutrition}})とは、[[酵素]]を生命の維持に不可欠が重要[[栄養素のひ]]だつとして考えた主張みなす理論である。[[エドワード・ハウエル]]博士[[1946年]]に専門書<ref>{{Cite book|author=Edward Howell ''|title=The status of food enzymes in digestion and metabolism'', |year=1946 |publisher=National Enzymeenzyme Co,company 1946.|location=Chicago |oclc=5639180 }}</ref> を、1980年と1985年に一般向けの著書を出版して知られるようになった。生の[[食品]]の摂取を推奨しており、[[ローフード|ローフーディズム]]の主要な根拠のひとつとなっている。[[栄養現代の生化]]に反する呼称されてう批判もあが、実験や研究を経て根拠が示されておらず、科学者や医師に広く受け入れられているものではない
 
==酵素栄養学 エドワード・ハウエルの主張 ==
 エドワード・ハウエルは、「潜在酵素」、「食物酵素」という言葉でこの理論を説明した<ref>{{Cite book |和書 |author=小池里予、小池英 |year=2004 |title=ホリスティック健康学・ホリスティック栄養学入門 |publisher=ホリスティック栄養学研究所 |page=268 |isbn=978-4990196400 }}</ref>
 
 「潜在酵素」とは、体内で[[消化]]のほか、様々な生体の活動に用いられる酵素を総合的にとらえた概念である。この潜在酵素は、生物の一生で使われる総量に上限があり、これが消耗されすぎると病気の原因となり、寿命縮むと考えられる。一方で食品に含まれる酵素を「食物酵素」と呼んだ。食物酵素の多い食事をすると、食物酵素が食品の消化を助け、また「生命エネルギー」を含人体自身の[[消化酵素]]の分泌が少なくてすことためより潜在酵素の消費を抑えることが出来できると考えられた。さらに、酵素には「生命エネルギー」が含まれているとし、酵素の多い食物を取ることは病気を予防し、寿命を延ばすエネルギーの補充の効果があるとした。
 
 自然の状態の食品には元となった生物由来の酵素が含まれている。多くの動物は複数の[[胃]]を持っているが、[[反芻胃]]などで食物や[[微生物]]の酵素を利用して事前消化を行い、最後の胃で自身が作り出した酵素を利用する。ハウエルは人間でも胃のはじめの方の部分はこうした役割を持っていると主張した。
 
 しかし、酵素の多くは加熱によって[[失活]]する。こうして酵素の活性を失った食品を食べた場合、はじめの胃で食物酵素による事前消化が行われず身体で作り出した酵素を使用することになり、消化酵素を作り出している[[膵臓]]などにより負担をかけることになる。これが病気の原因となるので食物の多くを生で食べることをすすめた。さらに、今の時代は食品の調理や加工によって酵素が活性を失った食品も多いので、酵素の[[サプリメント]]を摂取することも推奨した。この考え方は[[ペットフード]]にも応用され、ペット用のサプリメントも市販されている。
 
 また酵素を多く含んでるので[[発酵食品]]を薦めた。例えば、[[味噌]]では[[麹菌]]が作る[[アミラーゼ]]や[[リパーゼ]]をはじめとした各種の酵素が蓄積されている<ref>{{Cite book|和書 |author=今井誠一 『食品加工シリーズ6 |title=味噌- : 色・味にブレを出さない技術と販売 |year=2002 |publisher=[[農山漁村文化協会、2002年。ISBN]] 978|series=食品加工シリーズ |isbn=4-4540011511。540-01151-0 |pages=26-27頁。 }}</ref>。
 
 酵素を摂り込むために、食品は生で食べることを勧めているが、[[穀物]]や[[豆]]などの[[種子]]は例外としている。酵素の働きを抑制する「酵素抑制物質」を含み、そのまま食べると[[]]になるためだ。そこで、種子は[[発芽]]させて[[スプラウト]]の状態にする。発芽する過程で、酵素抑制物質は消滅し、しかも酵素活性が高まり、優れた酵素食材となる。
 
 日本では、[[鶴見隆史]]、[[新谷弘実]]らが類似した主張をしている。鶴見は[[スプラウト]]に絶大な健康効果があるとしている。新谷はすべての酵素の元となる物質が体内に蓄積されていると想定し、「ミラクル・エンザイム」と名づけ、その利用を節約することで長生きができると主張し[[シンヤビオジマ]]を提唱している<ref>{{Cite book|和書 |author=新谷弘実|authorlink=新谷弘実 |title=病気にならない生き方- : ミラクル・エンザイムが寿命を決める |year=2005 |publisher=[[サンマーク出版、2005年。ISBN]] 978|isbn=4-4763196194。7631-9619-7 |page= }}</ref>。新谷はまた、酵素を構成する[[アミノ酸]]には、「記憶」があり、食物中の酵素が分解され、消化吸収された後にも、体内で酵素に再構成されると主張している。そのため、酵素を多く含んだ食品を摂取することは消化の助けになるだけでなく、体内で[[代謝]]に使われる酵素を補充する意義もあるとしている
 
アメリカでは、テキサス州ヒューストンにてディッキー・フュラー博士が酵素を用いた診療を行っている<ref>{{Cite book |和書 |author=ディッキー・フュラー |translator=竹内 進一郎 |year=2011 |origyear= |title=病気を癒し、老化を防ぐ 酵素の治癒力 |publisher=現代書林 |isbn=978-4774513393 }}</ref>。
==一般的な生理学・分子生物学等との矛盾点==
 「酵素栄養学」は実際にはほとんど研究がなされていない。世界最大の医学・生命科学の研究論文データベースである[[Pubmed]]では、2009年10月現在「Enzyme Nutrition」というキーワードが含まれた論文は一報も存在しない。酵素栄養学の主張の核となる部分である、生の食品中の酵素活性の直接の測定や、それが人間の消化管内でどれほど酵素活性を維持するか、どの程度消化の助けとなるか、それにより消化管内への人体自身の酵素の分泌は変化するのか、といった部分はほとんど実験、実証されていない。
 
== 一般的な生理学・分子生物学等との矛盾点比較 ==
 現在まで、[[ローフード]]を摂取したことによる健康状態の改善を報告した文献はあるものの、食事の低カロリー化やビタミンの摂取の変化等と要素を切り分けることが出来ておらず、食事中の酵素の健康や寿命に与える影響を直接的に証明した報告は皆無である。
*[[{{Seealso|ローフード]]}}
一般には消化酵素剤は医薬品として、体内の消化酵素不足による消化器・皮膚、血流といった症状の改善を目的とする<ref>{{Cite web|和書|date= |url=https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82c0.html |title=消化酵素製剤解説 処方薬辞典 |publisher=日経メディカル |accessdate=2018-07-26}}</ref>。日本では、東京都老人総合研究所の柴田博らによって、老齢者が市販の消化酵素のサプリメントを利用することによって、血清[[アルブミン]]や[[HDLコレステロール]]が上昇したことが確認された<ref>柴田博、熊谷修ほか「市販の消化剤を用いて虚弱高齢者の栄養状態を改善する試み」『老年医学』37(9)、1999年、1355-9頁。[https://web.archive.org/web/20131204095003/https://www.amano-enzyme.co.jp/pdf/wave_e/vol7/vol7_topic.pdf 英文の文書]</ref>。
 
ライト州立大学医学部生化学科のプロチャスカらが医学文献の調査を行ったところ、食品中の酵素が食品の消化を助け栄養価を増加させる可能性を示す証拠が、穀物、乳製品、豆や種子、肉類の検索対象において得られた<ref name="pmid7935080">{{cite journal |vauthors=Prochaska LJ, Piekutowski WV |title=On the synergistic effects of enzymes in food with enzymes in the human body. A literature survey and analytical report |journal=Med. Hypotheses |volume=42 |issue=6 |pages=355–62 |date=June 1994 |pmid=7935080 |doi=10.1016/0306-9877(94)90152-X |url=}}</ref>。一例では乳糖を分解する酵素の[[乳糖不耐症|ラクターゼ欠乏者]]では、ヨーグルト中の乳糖は牛乳中の乳糖よりもよく吸収されており、乳酸菌が作るラクターゼが原因とみられている<ref name="pmid6417539">{{cite journal |vauthors=Kolars JC, Levitt MD, Aouji M, Savaiano DA |title=Yogurt--an autodigesting source of lactose |journal=N. Engl. J. Med. |volume=310 |issue=1 |pages=1–3 |date=January 1984 |pmid=6417539 |doi=10.1056/NEJM198401053100101 |url=}}</ref>。
 ハウエルの著書にはハウエル自身の研究は含まれておらず、他の研究報告の引用と考察から理論が構成されているが、これらは
<ul>
<li>複数のデータを混ぜ、比較対象が一定しない
<li>膵臓の切除など極端な条件下での実験を引用したり、必ずしも酵素の影響とは特定できない結果を酵素のためと結論付けるなど恣意的な解釈や論理破綻が見られる
<li>ほとんどが20世紀前半に行われており、その後追試が行われていない
</ul>といった問題点があり理論が成立していない<ref>http://www.beyondveg.com/tu-j-l/raw-cooked/raw-cooked-2b.shtml#enzymes</ref>。
 
「潜在酵素」に該当する事実は発見されていないということである。アメリカでは2003年に[[アメリカ食品医薬品局|FDA]]は、糖尿病や高血圧を治すと宣伝した、消化酵素のサプリメントの販売者に対し警告を行った<!--消化酵素欠乏症は難病などあるようなので不適切な出典--><ref>{{Cite web |author=Stephen Barrett |date=2003-03-11 |url=http://www.quackwatch.com/01QuackeryRelatedTopics/PhonyAds/mp.html |title="Enzyme Deficiency" |work=Quackwatch |accessdate=2013-10-02 }}</ref>。
 “潜在酵素”に該当する事実も発見されていない。一般的な[[分子生物学]]や[[生化学]]の知見では、多種類の酵素の遺伝子はそれぞれ個別に制御されているとされており、総合的な酵素生産に上限があるという事実は発見されていない。また酵素は[[触媒]]であるため[[化学反応]]後にも消耗されることはない<ref>ヴォート 生化学 東京化学同人、2005年。ISBN 978-4807906079。</ref>。
 
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 “食物酵素”が食品の“事前消化”に重要であるという考え方も一般には考えづらい。生物体にはその生物の生存のために多種類の酵素が含まれているが、それが食材となったときに消化に大きく寄与するという考え方は一般的ではない。酵素が活性を発揮するためにはpHや温度、反応溶液の塩濃度等の条件が厳密に定められており、強酸性の胃の中では食物自身の持つ酵素は大部分が速やかに変性してしまう<ref>http://www.beyondveg.com/tu-j-l/raw-cooked/raw-cooked-2b.shtml#enzymes</ref>。草食動物が“事前消化”を行う際には、消化管に共生する微生物の働きが重要であるが、餌中の酵素の影響が多大であるという報告はない<ref>反芻動物の栄養生理学 農山漁村文化協会、2004年。ISBN978-4540980497 。</ref>。草食動物と異なり、人間の胃にそのような微生物は共生しておらず、「事前消化を行う前半部分」があるということも[[解剖学]]的に報告されてはいない。一般的な[[生理学]]の知見からは、その後食物中の酵素は人体自身の分泌した消化酵素により変性、分解されてから吸収され、万一分解されずに吸収されても速やかに免疫系により異物として排除されるため酵素としての活性は保ち得ないと考えられる<ref>トートラ 人体の構造と機能 丸善、2004年。ISBN 978-4621073742。</ref>。
Beyond Vegというサイトの指摘では、1985年のハウエルの著書では、引用された科学文献のほとんどが20世紀前半の研究であるといった問題点があると指摘されている<ref name="BeyondVeg">{{Cite web |author= |date= |url=http://www.beyondveg.com/tu-j-l/raw-cooked/raw-cooked-2b.shtml#enzymes
|title=Do 'Food Enzymes' Enhance Digestive Efficiency, Longevity? |work=Beyond Vegetarianism |publisher= |accessdate=2013-10-02 }}</ref>。Beyond Vegというサイトでは、酵素が活性を発揮するためには、[[水素イオン指数|pH]]や温度、反応溶液の塩濃度等の条件が厳密に定められており、[[強酸性]]の胃の中では、食物自身の持つ酵素は大部分が速やかに[[変性]]してしまうと主張している<ref name="BeyondVeg" />。-->
 
== 脚注 ==
アメリカ合衆国では、酵素栄養学に則った主張をしていた消化酵素のサプリメントの販売者に対し、科学的根拠がないとして[[FDA]]が警告を行った。<ref>http://www.quackwatch.com/01QuackeryRelatedTopics/PhonyAds/mp.html</ref>
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==脚注 参考文献 ==
{{観点|date=2021年3月|section=1}}
<div class="references-small"><references /></div>
* {{Cite book|和書 |author=エドワード・ハウエル |translator=川喜田昭雄監訳・瀬野川知子 |title=キラーフード- : あなたの寿命は「酵素」で決まる』川喜田昭雄監訳、瀬野川知子訳、 |origyear=1985 |yea =1999 |publisher=現代書林1999年。ISBN 978|isbn=4-4774500973。7745-0097-6 }}(原著 ''ENZYME NUTRITION'', 1985)
* {{Cite book|和書 |author=エドワード・ハウエル |translator=今村光一 |title=食物酵素のBakabaka-病気を防ぎ・治す。健康・長寿も思いのまま』 今村光一訳、|origyear=1994 |year=2002 |publisher=ヘルス・ビジネス・マガジン社、2002年。 |isbn= }}(原著 ''FOOD ENZYMES FOR HEALTH & LONGEVITY'', 1994)
* {{Cite book|和書 |author=エドワード・ハウエル |translator=今村光一 |title=医者も知らない酵素の力 |origyear=1994 |edition=改版 |year=2009
|publisher=中央アート出版社 |isbn=978-4-8136-0535-5 }}(原著 ''FOOD ENZYMES FOR HEALTH & LONGEVITY'', 1994)
 
オメガ脂肪酸
==関連==
*[[疑似科学]]
*[[酵素]]
*[[ローフード]]
*[[発酵食品]]
*[[新谷弘実]]
*[[鶴見隆史]]
 
==参考文献==
*エドワード・ハウエル『キラーフード-あなたの寿命は「酵素」で決まる』川喜田昭雄監訳、瀬野川知子訳、現代書林1999年。ISBN 978-4774500973。(原著''ENZYME NUTRITION'', 1985)
*エドワード・ハウエル『医者も知らない酵素の力 食物酵素理論の実践で、人は20~30年長生きできる!』 今村光一訳、中央アート出版社、2009年。ISBN 978-4813605355。(同上)
*エドワード・ハウエル『食物酵素のBaka力-病気を防ぎ・治す。健康・長寿も思いのまま』 今村光一訳、ヘルス・ビジネス・マガジン社、2002年。(原著 ''FOOD ENZYMES FOR HEALTH & LONGEVITY'', 1994)
 
==外部リンク==
*[http://www.livingfood.jp/ 日本リビングフード協会]
 
 
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[[Category:栄養学]]
[[Category:酵素]]
[[Category:疑似科学]]
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