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'''ポツダム命令'''(ポツダムめいれい)とは、いわゆる'''ポツダム緊急勅令'''に基づいて発せられた一群の[[命令 (法規)|命令]]の総称である。いわゆる'''ポツダム勅令'''や'''ポツダム政令'''は、ポツダム命令の一種である。
== ポツダム緊急勅令 ==
=== 概説 ===
ポツダム緊急勅令とは、[[大日本帝国憲法第8条]]第1項の「法律に代わる
「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件(昭和20年[[勅令]]第542号)において、日本国政府は[[ポツダム宣言]]の受諾に伴う[[連合国軍最高司令官総司令部|連合国軍最高司令官]]
== ポツダム命令 ==
=== 連合国軍最高司令官の要求 ===
連合国軍による日本占領は、日本の政府機関を温存・利用する[[間接統治]]によったが、連合国軍最高司令官の要求事項は指令・覚書
=== ポツダム命令の効力 ===
ポツダム命令の多くは、昭和27年([[1952年]])[[4月28日]]の[[日本国との平和条約]](いわゆるサンフランシスコ講和条約)の発効に伴い、ポツダム緊急勅令とともに、または暫定措置として発効の日から180日間限りで廃止されたが、新たに代替の法律が制定されたものや法律としての効力を有するとの存続措置がとられたものもある。
なお、大日本帝国憲法下においては、憲法第8条に基づく勅令(緊急勅令=法律に代わる勅令)と、第9条に基づく勅令(普通の勅令)があった。いずれも[[法令番号]]としては単に「勅令第何号」とされたため、通常、どちらであるのか見分けるには公布時の[[上諭]]まで参照
前述のようにポツダム命令の根拠となるポツダム緊急勅令は、法律としての効力を有するものとされ、従ってこれに基くポツダム命令も、日本国憲法の施行及び[[日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律]]により失効することはないとされた(昭和22年法律第72号)([[s:昭和二十三年政令第二百一号の効力について|昭和23年9月6日付け官報掲載の法務総裁説明(閣議決定)]]参照)。
また、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律については、昭和22年1月29日に公布された(同日施行)昭和二十二年法律第七十二号日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部を改正する法律(昭和22年法律第244号)により第1条の2が追加され、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の規定が、ポツダム命令の規定に影響を及ぼさない旨が確認された。
=== ポツダム命令による罰則 ===
ポツダム緊急勅令では、[[第二次世界大戦]]後、[[連合国 (第二次世界大戦)|連合国]]軍の占領下にあった日本で、[[連合国軍最高司令官総司令部|連合国軍最高司令官]]の発する要求事項の実施につき特に必要がある場合には、命令を以って、政府は所定の定めをし、必要な罰則
=== 最初のポツダム命令と最後のポツダム命令 ===
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* 航空機の出入国等に関する政令等の一部を改正する政令(昭和27年4月26日政令第113号)
であり、平和条約発効(昭和27年4月28日)に伴いポツダム緊急勅令が廃止される2日前であった。
=== ポツダム命令の方式 ===
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# さらに総理庁令は、総理府設置後は、総理府令と読み替える。総理府設置法(昭和24年法律第127号)附則第5項による読み替え。
また司法省廃止後、法務庁が設置され、さらに1949年(昭和24年)6月1日に法務府となった
閣令・省令については、昭和20年9月22日の閣議了解「昭和二十年勅令第五百四十二号(「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件)ニ基ク閣令及省令ノ件」により閣議了解を事前(緊急の場合は事後報告)に行う<ref>アジア歴史資料センター 公文類聚 昭和元年~20年 第69編・昭和20年 公文類聚・第六十九編・昭和二十年・第一巻・皇室・皇室令制・皇室財産・雑載、政綱一・詔勅・法例・公式令 レファレンスコードA03010218300</ref>とされた。
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更に一部改正の場合はこの文言を欠く事例がある。例えば死産の届出に関する規程は、昭和21年厚生省令第42号として制定された際は「昭和二十年勅令第五百四十二号(「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ命令ヲ発スル件)に基づき死産の届出に関する規程を次のように定める」とあったが、昭和22年2月1日厚生省令第4号による改正では「昭和二十一年九月厚生省令第四十二号(死産の届出に関する規程)の一部を次のように改正する」となっている。被改正法令がポツダム命令であるかないかを確認するしかない。
なお、公布の際にこの文言を欠いていた
の政令を無効であるとする二一
=== ポツダム命令の役割 ===
ポツダム命令により定められた事項は多岐にわたる。占領初期には「非軍事化・民主化」政策の推進という役割を果たしたが、占領後期には占領政策の転換([[逆コース]])に伴い、[[労働運動]]や[[社会主義]]運動の取締りの役割を果たして行くようになる。「[[治安維持法]]廃止等ノ件(昭和20年勅令第575号)」、「政治犯人等ノ資格回復ニ関スル件(昭和20年勅令第730号)」や「[[公職に関する就職禁止、退職等に関する勅令]](昭和22年勅令第1号)」(いわゆる公職追放令)は前者とされるが、公職追放令は占領初期の旧軍人の追放が占領終期には解除がされる一方、共産党中央委員の追放に適用されるなどポツダム命令自体は変わらなくてもその適用対象が変化するものもあった。後者の例としては、「[[団体等規正令]](昭和24年政令第64号)」や「昭和二十三年七月二十二日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡に基く臨時措置に関する政令(昭和23年政令第201号)」(いわゆる[[政令201号]])や「[[占領目的阻害行為処罰令]](昭和25年政令325号)」などがあるが、やはり占領目的阻害行為処罰令のようにその処罰対象が、占領軍の指令に反する行為であり、その指令が転換するとともに実際の適用対象が変化していくこととなっていた。
=== ポツダム命令の数 ===
ポツダム命令の総数は、526件
== 制定における混乱 ==
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昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く軍用電気通信法等を廃止する勅令(昭和21年勅令第564号)
の両方で廃止とされていた(なお表記はいずれも明治三十七年勅令第十九号)。昭和22年3月13日付け官報第6047号80ページで官報の訂正がされ勅令第564号から削られた。勅令第564号の御署名原本では明治三十七年勅令第十九号が線で抹消されている
=== 日遅れ官報 公布の日は法的にいつになるのか ===
昭和二十三年七月二十二日附内閣総理大臣宛連合國最高司令官書簡に基く臨時措置に関する政令(昭和23年政令第201号)
この政令は、昭和23年7月31日付け官報で公布され、公布の日から施行されたことになっている。しかし、実際には8月2日に印刷発送されており、7月31日の行為を処罰できないとする最高裁判決
=== 件名の改正と反映しない処理 ===
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さらにこの省令は、昭和22年3月14日に昭和22年厚生省令、運輸省令、内務省令第2号で改正されたが、このときは「昭和二十一年厚生省、運輸省、内務省令第一号を改正する」として件名を引用しなかった。
そしてポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く労働省関係諸命令の廃止に関する法律(昭和27年法律第75号)では、労働に関する団体の主要役職員への就職禁止等に関する件(昭和二十一年厚生、運輸、内務省令第一号)を廃止すると規定し、件名の改正を無視した形になっている。
== 現在も効力を有する「ポツダム命令」 ==
現在もいくつかのポツダム命令が、法律としての効力を持って存続している。これらは、[[法令番号]]は制定時のものがそのまま付されることになっている(つまり法律としての効力をもっていても政令第○○号のように表記する)ので注意が必要となる{{efn|出入国管理及び難民認定法(旧題名 出入国管理令)のように題名が法律のように改正されても法令番号は昭和26年政令第319号のままである。}}。
ポツダム命令は、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律により別に法律で廃止又は存続に関する措置がされない場合、平和条約発効から180日間、法律としての効力があったものでありその後、政令や省令として効力を存続させたものはない。
平和条約発効から180日間を経過した時点で、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く大蔵省関係諸命令の措置に関する法律等により、法律としての効力を有するものとされたものは55件である。
更にその後に廃止等がされたもの、また実効性喪失若しくは罰則関係の経過措置のみのものを除き現行法令とされているのは次の22件である。
* ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く賠償庁関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年法律第16号)によるもの
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** 会社等臨時措置法等を廃止する政令(昭和23年政令第402号)附則第5条、第7条及び第9条
== 廃止又は存続に関する措置がされず失効した命令 ==
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律により別に法律で廃止又は存続に関する措置がされない場合、平和条約発効から180日間、法律としての効力を有し180日を経過した日を以て効力を失うものとされたが、この規定により失効したポツダム命令は以下の17件である{{sfn|法令普及会|1952|p=24}}。
* 退職手当金、年金其他此等に準すべき利益の給付の制限に関する件(昭和21年勅令第116号)
* 町内会、部落会又はその連合会等に関する解散、就職禁止その他の行為の制限に関する政令(昭和22年政令第15号)
* 特殊用途機械の破壊に関する政令(昭和22年政令第244号)
* 賠償充当設備等撤去令(昭和22年政令第318号)
* [[政令201号|昭和二十三年七月二十二日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡に基く臨時措置に関する政令]](昭和23年政令第201号)
* 電話加入権の取扱及び電話の譲渡禁止等に関する政令(昭和24年政令第48号)
* 船舶運航令(昭和25年政令第48号)
* [[電気事業再編成令]](昭和25年政令第342号)
* 公益事業令(昭和25年政令第343号)
* [[鹿児島県大島郡十島村の区域に適用されるべき法令の暫定措置に関する政令]](昭和26年政令第360号)
* 兵器、航空機等ノ生産制限ニ関スル件(昭和20年商工省文部省農林省運輸省令第1号)
* 財団法人大日本武徳会の解散等に関する件(昭和21年内務省令第45号)
* 財団法人武蔵住宅協会等の解散に関する件(昭和21年内務省令第52号)
* 工場、事業場等の管理に関する件(昭和21年商工省文部省令第1号)
* 造船関係の工場、事業場等の管理に関する件(昭和21年運輸省令第32号)
* 指定施設等の使用制限に関する件(昭和22年商工省文部省農林省運輸省厚生省令第1号)
* 財団法人協助会の解散等に関する件(昭和23年総理府厚生省令第1号)
== 関係法文 ==
=== 「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件 ===
{{Wikisource|「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ發スル命令ニ關スル件}}
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=== 日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(抄) ===
{{Wikisource|日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律}}
(昭和22年法律第72号)
*第一条 日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定で、法律を以て規定すべき事項を規定するものは、昭和二十二年十二月三十一日まで、法律と同一の効力を有するものとする。
*第一条の二 前条の規定は、昭和二十年勅令第五百四十二号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件)に基き発せられた命令の効力に影響を及ぼすものではない。
=== ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律 ===
{{Wikisource|ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律}}
(昭和27年法律第81号)
# ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和二十年勅令第五百四十二号。以下「勅令第五百四十二号」という。)は、廃止する。
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: この政令は、公布の日から施行する。
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書
|title=旬刊時の法令解説
|issue=79
|publisher=大蔵省印刷局
|editor=法令普及会
|date=1952-11
|year=1952
|doi=10.11501/1403151
|ref=harv
}}
*{{Cite journal|和書|author=司法法制課|date=1995|title=ポツダム命令について|url=|journal=J & R : 法務大臣官房司法法制調査部季報|volume=|number=80|pages=5-60|publisher=法務大臣官房司法法制調査部|oclc=|ref=司法法制課(1995)}}
*{{Cite journal|和書|author=佐藤達夫|date=1953|title=ポツダム命令についての私録|url=|journal=自治研究|volume=28|number=|pages=|publisher=良書刊行会|oclc=|ref=佐藤(1953)}}
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** [[日本の降伏]]
* [[法令]] - [[法律]]、[[命令 (法規)|命令]]
* [[政令201号事件]] - ポツダム命令の有効性が争われた。
{{DEFAULTSORT:ほつたむめいれい}}
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