「広域航法」の版間の差分
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[[ファイル:VORDME vs RNAV model.PNG|thumb|300px|right|
'''広域航法'''(こういきこうほう、{{lang-en-short|area navigation}})とは[[航空機]]の[[航法]]の1つであり、機上に自
==概要==
▲[[ファイル:VORDME vs RNAV model.PNG|thumb|300px|right|'''ボルデメ'''と'''RNAV'''の比較 1<br />図上:[[超短波全方向式無線標識|VOR]]/[[距離測定装置|DME]]を経由して飛行する航法<br />図下:RNAVルートを飛行する航法]]
従来の航法システムでは、航空機は地上の[[超短波全方向式無線標識|VOR]]や[[距離測定装置|DME]]といった航行援助無線標識([[航空保安施設]])によって規定される電波航空路内を飛行することが求められていた。VORDMEと呼ばれるこれらの施設が点在しており、遠回りのルートを強いられたり、時間や燃料消費の面で多くのデメリットがあった。
広域航法では、航路上の無線施設以外に、主に[[慣性航法装置|慣性航法装置 (INS)]]を使用し、無線施設からの情報を用いて誤差を補正する。そういった各種センサーを利用した装置を航空機に装備させる事で、無線施設に頼らなくても自らの位置を把握できるようにした。さらに近年では、[[グローバル・ポジショニング・システム|全地球測位システム (GPS)]]やGPSの誤差を静止衛星や機上・地上施設で補正・補強するシステムである[[衛星測位システム]](GNSS)も利用されている{{efn|ここでいうGNSSとは「一つ又はそれ以上の衛星群、航空機の受信機及びシステムの完全性監視機能を含み、必要に応じて要求される航法性能を提供するために補強された、全地球的位置及び時間決定システム」と定義されている(国土交通省航空局「RNAV航行の許可基準及び審査要領」)。定義上は開発中の衛星群([[ガリレオ (測位システム)|ガリレオ]]等)の実用化も睨んで「一つ又はそれ以上の衛星群」としているが、実際に運用されている衛星航法システムは現在米国のGPSだけである。したがって現実に利用可能なGNSSとは、GPSとその補強を含めたシステムと考えてよい。}}。
これにより無線施設の位置に関係なく飛行ルートの設定が可能になり、飛行の自由度が高まる。
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;航法精度が向上する。
:航法精度が向上すればルート間の横幅や前後間隔も狭めることが可能となり、交通量の増大に対応できる。精度の向上が進めば、航空路(エンルート)だけでなく出発経路・到着経路から進入や着陸まで使用することも可能になり、従来、地形などの理由から無線施設を設置できないため実施することが不可能だった空港の計器出発・計器進入まで期待できる。地上の無線施設からの電波は地形などに遮られて無感地帯が生じるが、広域航法では衛星航法や自蔵INSといった多様な手段を用いる{{Sfn|園山耕司|2011|p=109}}。
[[ファイル:VORDME vs RNAV approaching model.PNG|thumb|300px|right|
ただし、実際にはRNAVで規定されたルートが存在し、出発地から目的地まで最短経路を飛行することは実現していない{{Sfn|園山耕司|2011|pp=24-25}}出発地から目的地まで最短経路を飛行する[[フレーフライト]]は広域航法の究極の姿であるが、仮に無数にある滑走路・空港間同士を直線的に結べば、そのルートは幾何級数的に膨大な数となり、互いの交点を安全に通過できるような技術的・制度的な整備がまだ発展途上であるため、実現にはしばらく掛かるとされる{{Sfn|園山耕司|2011|p=108}}。
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フライトテストを重ねながら当初はVORやDMEで慣性航法装置を補正する方法で、さらにはGPSによる補正も取り入れられるようになった。この機位を特定するために補正するセンサー(VORやDME、衛星など)を指定して行う航法を'''SBN'''({{lang-en-short|sensor-based navigation}})という。SBNの段階では航法精度がまだどの程度なのか確定されていなかったため、精度を指定せずにRNAVを設定していた。
SBNによる運航を続ける中で航法精度の評価ができてきたことから、次の段階では航法精度を指定した'''PBN'''(Performance-Based Navigation) となる。その背景には、[[衛星航法補強システム]]/SBAS{{efn|衛星航法補助施設
こうした過程を経て、[[2007年]]4月にRNAVのシステムが全面的に見直され、[[国際民間航空機関|ICAO(国際民間航空機関)]]において国際基準が決定された。この国際基準はICAO PBN マニュアル (Doc 9613) として配布されている。
日本では、国際基準が設定されたことを受け、[[日本航空|JAL]]や[[全日本空輸|ANA]]が2007年[[9月]]に本格的に運用することを発表した<ref>{{
本格運用以前には、1992年6月より評価用の3本のルートから始まり、広域航法の運用評価が行われていた<ref>{{cite journal| author = 天井 治| coauthors = 長岡 栄| date = 1993-05-26| title = RNAV機の横方向経路逸脱量の解析| journal = 電子情報通信学会技術研究報告| volume = Vol.93| issue = No.66| pages = pp. 9-15| naid = 110003289291| accessdate = 2007年9月26日}}</ref>。
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'''RNP'''({{lang-en-short|required navigation performance}})とは、機上の性能監視機能と警報機能を必要とする特別なRNAVである。一般的なRNAVは監視・警報機能がないため、洋上を除きそのバックアップとして[[航空交通管制]]用レーダーの覆域下でなければ航行できないのに対し、RNPはレーダー覆域でなくても航行できるのが大きな違いである。
基準としてはエンルート用のRNP4(航法精度4マイル)、ターミナル用のBasic-RNP1(航法精度1マイル)、進入用のRNP APCH(航法精度1マイル)、進入用のRNP AR APCH(航法精度0.3マイルまたは0.3マイル未満)が設定されているが、日本において本格的なRNP航行は2020年7月からILSが地理的制約により設置が難しい[[松本空港]]
RNP AR APCH0.3が東京国際空港等で実験的に2012年より実施されている。
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== 日本 ==
=== 航空法での扱い ===
日本の広域航法は航空法上「[[距離測定装置|DME]]、SBASその他の無線施設からの電波の受信又は慣性航法装置の利用により任意の経路を飛行する方式」と定義され<ref>{{Cite web
本格的な運用に伴い、広域航法による飛行は「特別な方式による航行」の1つとされた。したがってRNAVを行うには、航空機が必要な性能及び装置を有していること、乗員、整備員、運航管理者が航行に必要な知識及び能力を有していること、実施要領が適切に定められていること、航行の安全を確保するために必要な措置が講じられていることなどについて運航者(つまり航空会社など)が国土交通大臣の許可を受けなければならない。
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:IFR(計器飛行方式)における標準計器到着方式(標準計器到着経路)のことであり、飛行場近くにおいて到着時に用いられる経路、高度、制限事項などから構成される航路であり、その方式全体を指す{{Sfn|園山耕司|2011|pp=235-241}}。
;RVSM({{lang-en-short|reduced vertical separation minimum}})
:短縮垂直間隔とは、安全のために航空路中の飛行高度は
;LNAV({{lang-en-short|lateral navigation}})
:FMS([[飛行管理装置]])を用いて水平移動を行う航法である。
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