「罪刑法定主義」の版間の差分
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{{日本の刑法}}
{{読み仮名|'''罪刑法定主義'''
== 概要 ==
[[ラテン語]]による標語"''Nulla poena sine lege''"(法律なければ刑罰なし)により知られ、罪刑法定主義と
この原則の淵源は、[[1215年]]の[[マグナ・カルタ]]に遡 == 根拠 ==
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*何を罪とし、その罪に対しどのような刑を科すかについては、国民の代表者で組織される国会によって定め、国民の意思を反映させることが、民主主義の原理から要請される。
== 派生原
罪刑法定主義の派生原理として以下のような事項が要求される<ref>「国際刑法と罪刑法定主義」小寺初世子(広島平和科学1982)[
*[[慣習刑法]]の禁止([[慣習法]]を直接処罰の根拠にしてはならない)
*刑事法における[[法解釈|類推解釈]]の禁止
*[[法の不遡及]]([[法の不遡及#刑罰法規不遡及の原則|事後法]]の禁止)
*[[絶対的不定期刑]]の禁止
*明確性の理論▼
*{{仮リンク|実体的デュー・プロセス|en|Substantive due process}}の理論▼
*判例の不遡及的変更の原則
▲*{{仮リンク|実体的デュー・プロセス|en|Substantive due process}}の理論<ref>{{Cite book |和書
|author = [[平野龍一]]
|title = 刑法 総論 Ⅰ
|year = 1972
|publisher = [[有斐閣]]
|pages = 179-206 }}</ref>
**憲法が保障する基本的人権に反する刑罰法規の無効
**罪刑の均衡
"'''''Nulla poena sine lege'''''"の派生としてたとえば以下の標語がある<ref>{{cite book|last=Boot|first=M.|title=Genocide, Crimes Against Humanity, War Crimes: Nullum Crimen Sine Lege and the Subject Matter Jurisdiction of the International Criminal Court|year=2002|publisher=Intersentia|isbn=9789050952163|page=94|url=https://books.google.com/books?id=6QjrSHfoEiAC&pg=PA94}}</ref><ref>これはドイツ連邦共和国基本法103条2項およびドイツ刑法1条に関するドイツ憲法裁判所の意見による。Jescheck and Weigend, Lehrbuch Des Strafrechts: Allgemeiner Teilp. 128.</ref>。
:;''Nulla poena sine lege praevia''
::事前の法律なくして刑罰なし - [[事後法]]および刑法の遡及適用の禁止
:;''Nulla poena sine lege scripta''
::書かれた法律(成文法)なくして刑罰なし - [[慣習刑法]]の禁止
:;''Nulla poena sine lege certa''
::明確な法律なくして刑罰なし - 明確性の原則
:;''Nulla poena sine lege stricta''
::厳格な法律なくして刑罰なし - 拡張解釈・類推解釈の禁止
== 批判 ==
従来の法律が想定していた可能性を超えた態様の事件が発生した場合に、法律規定から処罰が
これに対し、罪刑法定主義という観念を有しない伝統的な[[英米法]]の法域では、後述のとおり行為時に[[成文法]]で禁止されておらず、判例上も犯罪として認知されていなかった行為が、裁判の結果として
犯行発生当時に、従来の法律が想定していなかったような態様の事件としては以下のものがある。
*[[電気窃盗]]事件「電気は、窃盗罪において窃盗の目的とされる『物([[財物]])』であるか」
*ニセ牛缶事件「表示と中身が似ているが異なる商品の販売」
*[[天下一家の会事件]]「ある[[無限連鎖講|ねずみ講]]構造が、何ら刑法上の違反に当たらず、処分され
*[[国利民福の会事件]]「国債によるねずみ講構造」
*[[新潟少女監禁事件]]「誘拐当時9歳の少女が、その後約9年間にわたり監禁された事件について、逮捕監禁致傷罪の最高刑が懲役10年であり、少女の被害に比して短いとの批判があり、誘拐期間中の窃盗事件との[[併合罪]]とし訴追、微罪をもって併合罪の適用を図っているとの批判の中、裁判においても二転して確定した。事件後に法改正が行われ逮捕監禁致傷罪の最高刑が懲役15年に延長された」
*[[ザ・ムービー事件]]「情報抜き取り表示がある携帯アプリをダウンロードした人物の全電話帳データを抜きとって、[[個人情報]]を悪用する行為」
*[[日本航空1402便客室乗務員スカート内盗撮事件]]「上空を都道府県間を越えて高速で移動する旅客飛行機内で、[[スカート]]内を[[盗撮]]する行為の
*[[逗子ストーカー殺人事件]]「元恋人に婚約解消の慰謝料を要求する[[電子メール]]を、短期間に連続で大量に送信する行為が、[[ストーカー規制法]]に違反するか」
*[[GPSストーカー事件]]「[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]を用いて好意対象者の所在位置を調べる行為についてストーカー規制法の禁じる「見張り」に該当するか」
== 日本における沿革 ==
[[律令]]をはじめとする日本も含めた近代以前の東アジア諸国の法体系においては、刑罰は法律の条文に基づいて行われることにはなっていたが、その一方で社会秩序の維持を名目として、法令に
ただし、ヨーロッパで罪刑法定主義思想が主張される以前の徳川期の刑法でも、類推や拡張解釈については厳重な拘束があり、裁判官の自由に委ねられていたのではないことが指摘されている<ref>[[鵜飼信成]]・[[福島正夫]]・[[川島武宜]]・辻󠄀清明編『講座 日本近代法発達史11』(勁草書房、1958年)288頁、[[佐伯千仭]]「刑事法より見たる日本的伝統」(論叢第50巻5・6号)</ref>。
罪刑法定主義が日本で制度的に確立されるのは明治時代の[[刑法 (日本)|旧刑法]]施行以後のことであり、大陸法の影響を受けた[[明治憲法]](第23条
== 英米法 ==
英米法は、伝統的に罪刑法定主義の観念を有さず、裁判所は、成文法で禁止されていない行為であっても、[[コモン・ロー]]上の犯罪として、適当な刑罰を科すことができる。この法理は、現在でも、イギリスやアメリカの多くの法域において維持されている(他方で、現在では、法域によって、議会制定法が罪刑法定主義に相当する規定を定め、この法理を制限している場合もある。)<ref
[[コモン・ロー]]上で「犯罪」とされる行為の多くは、「[[先例]]」によって古くから「犯罪」とされてきた行為であるが、「'''先例のない行為'''」であっても、新たに「[[コモン・ロー]]上の犯罪行為」として認知され、刑罰を科されることがある。例として、イギリスのShaw対公訴長官事件(1961年)<ref>Shaw v. Director of Public Prosecutions [1962] A.C. 220.</ref>やアメリカのペンシルバニア州対Mochan事件(1955年)<ref>C. v. Mochan, 110 A.2d. 788 (Pa.Super.Ct.1955).</ref>などがある<ref>田中英夫『英米法総論』(下),東京大学出版会,1980,580頁,Loewy, Arnold H. "Criminal Law". 4th Ed., West Groop, 2003, 300.</ref>。
英米法においても、「[[遡及処罰の禁止|事後法の禁止]]」という考え方は一応存在する(アメリカ合衆国憲法第1編9節3項、10編1節など)。しかし、
|author = 萩原滋
|authorlink = 萩原滋
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|ref = }}
など</ref>。
== 国際法 ==
国際法は[[成文法|成文化]]された条約だけでなく、成文化されていない[[慣習]]によって成り立つ[[慣習法#国際法における慣習法|慣習法]]を法源として認めている。現代の[[国際法]]の原則の多くは元々中世[[ヨーロッパ]]における慣行に由来したものが多く、近代以降から[[国際連合|国連]]の成立まで慣習国際法は長く不文の法として国際関係を規律してきた<ref name="山本53-57">{{Harvnb|山本|2003|pages=53-57}}。</ref>。国連の成立以後は[[条約]]によって規律される分野が増えて慣習国際法の適用範囲は狭まったといえるが、しかし条約には基本的に当事国間に限り有効という制限があり、条約が規律しない国際関係については今なお慣習国際法が適用される<ref name="山本53-57" />。1950年の[[欧州人権条約]]や、1966年の[[市民的及び政治的権利に関する国際規約]]の様に、国際法における法の不遡及を規定した国際条約でも罪刑法定主義や[[法の不遡及]]の原則の例外を認めている<ref>「国際刑法と罪刑法定主義」小寺初世子(広島平和科学1982)[https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/1/15128/20141016122800297595/hps_05_83.pdf][http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/00015128]PDF-P.12</ref>。
== 参考 ==
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;[[日本国憲法]][[日本国憲法第31条|第31条]]
:何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
;[[欧州人権条約]] '''第七条'''(法律なくして処罰なし)
:一項 何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を警戒しなかった作為又は不作為を理由として有罪とされることはない。何人も、犯罪が行われた時に刑罰よりも重い刑罰を科されない。
:二項 この条は、文明諸国の認める法の一般原則より実行の時に犯罪とされていた作為又は不作為を理由として裁判しかつ処罰することを妨げるものではない。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist2}}
=== 出典 ===
{{reflist}}
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*[[憲法]]
*[[刑法]]
**[[構成要件]]
*[[刑事訴訟法]]
*[[租税法律主義]]
*[[ハンムラビ法典]]・[[ウル・ナンム法典]]
*[[極東国際軍事裁判]]
{{DEFAULTSORT:さいけいほうていしゆき}}▼
{{Law-stub}}
▲{{DEFAULTSORT:さいけいほうていしゆき}}
[[Category:憲法]]
[[Category:刑法]]
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