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{{軍隊資料
|名称 = GSG-9
|画像 = [[ファイル:David degelin.jpg|270px]]<br />[[File:GSG 9 badge.svg|200px]]
|画像説明 = [[エンブレム]]{{Efn2|ヘリコプターが傾いているがこれはデザイン上の問題で、上下にある「BUNDESGRENZSCHUTZ」「GSG9」の文字が水平になるのが正しい。}}と[[記章|徽章]]
|創設 = [[1972年]][[9月26日]]
|国籍 = {{DEU}}
|所属 = [[連邦国境警備隊]] (BGS)<br />→ [[連邦警察 (ドイツ)|連邦警察]] (BPOL)
|規模 =
|兵科 =
|兵種 = [[対テロ作戦|対テロ]][[特殊部隊]]
|人員 = 約400名
|所在地 = [[ノルトライン=ヴェストファーレン州]][[:en:Sankt Augustin|ザンクト・アウグスティン]]
|上級部隊 =[[連邦内務省 (ドイツ)|内務省(BMI)]]
|主な戦歴 =
}}
'''GSG-9'''(独語読み:ゲー・エス・ゲー・ノイン、英語読み:ジー・エス・ジー・ナイン)は、[[ドイツ]]の[[連邦警察 (ドイツ)|連邦警察]](BPOL)の[[対テロ作戦|対テロ]][[特殊部隊]]{{Sfn|ライアン|スティルウェル|マン|2004|pp=144-146}}{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。[[ヨーロッパ]]諸国の同種部隊のなかでも主導的な立場にある部隊の一つである{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=148-153}}。
1972年9月、同年同月に発生した[[ミュンヘンオリンピック事件]]を契機に、[[連邦国境警備隊]](BGS)の指揮下にある第9[[国境警備群]]({{Lang|de|Grenzschutzgruppe 9}})として発足し、GSG-9はその略称であった{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。その後、「国境警備群」という部隊編成単位は使われなくなったが、本部隊はあまりに有名になったことから、2005年にBGSがBPOLに改編されたあとも同じ略称を使い続けられるように、部隊の正式名は'''連邦警察GSG-9'''({{lang-de|GSG 9 der Bundespolizei}})となった<ref>{{Cite web|author=Bundespolizei|year=1999|title=Entstehung|url=https://www.bundespolizei.de/Web/DE/05Die-Bundespolizei/04Einsatzkraefte/GSG9-neu/01-Die-GSG9/Dreispaltig/Entstehung/entstehung_node.html|accessdate=2019/04/28}}</ref>。
本部はザンクト・アウグスティンの連邦警察ノルトライン=ヴェストファーレン州管理局に置かれている。
== 来歴 ==
本部隊の創設の直接的な契機となったのが、[[1972年]]
当初の計画では、犯人グループの要求を受け入れたように見せかけて逃亡用の航空機を用意し、警察官を[[ルフトハンザドイツ航空]]の乗務員に変装させて待ち伏せし、搭乗してきた犯人を制圧するとともに、機外に逃走する犯人は狙撃によって無力化することになっていた。しかし作戦の直前になって、乗務員に変装した警察官は作戦が危険すぎる{{Efn2|犯人グループが[[AK-47]]等の[[自動小銃]]や手榴弾で武装していたのに対し、警察官側に与えられたのは[[拳銃]]と少数の[[短機関銃|機関短銃]]だけだった。}}として任務を放棄してしまい、制圧任務は5人の射撃手に委ねられることになったものの、これらの警察官は射撃成績が優秀であるために選ばれただけで、特に[[狙撃手]]としての訓練を受けたわけではなく、与えられた武器も[[狙撃銃]]ではなく、[[照準器#アイアンサイト|アイアンサイト]]しかもたない通常の[[小銃]]であった。このため、犯人を速やかに無力化することができずに血みどろの銃撃戦になってしまい、最終的に、[[テロリスト]]8人のうち5人が射殺されたものの、人質は全員が死亡、更に警察官1人も死亡するという最悪の結末を迎えた。おまけにここで拘束したテロリスト3人も、翌月のハイジャック事件の際に釈放せざるをえなかった{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=12-21}}。
この事態を受けて、[[連邦内務省 (ドイツ)|内務省(BMI)]]は直ちに対策の策定に入った{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=12-21}}。[[ドイツ連邦共和国基本法]]には、対テロ作戦における[[ドイツ連邦軍|連邦軍]]の国内出動については規定がなく、議論が分かれるところであった{{Sfn|渡邉|2005}}。また仮に連邦軍にこのような精鋭部隊を設置した場合、[[ナチス・ドイツ]]時代の[[武装親衛隊]]のようなエリート部隊の復活と捉えられないかとも危惧されたことから、[[連邦政府 (ドイツ)|連邦政府]]の[[警備警察]]組織である連邦国境警備隊が設置母体となった。そして{{仮リンク|ウルリッヒ・ヴェーゲナー|de|Ulrich Wegener}}大佐を初代指揮官として、[[イギリス陸軍]]の特殊部隊[[特殊空挺部隊|SAS]]および[[イスラエル国防軍]]の[[サイェレット・マトカル]]からの支援のもと、9月26日に創設されたのが本部隊である{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。
== 編制 ==
[[File:Gsg9 fast rope 2005 05 22 file 02.jpg|thumb|right|一般公開日に[[ファストロープ器材|ファストロープ降下]]を展示するGSG-9]]
本部隊は[[州警察 (ドイツ)|州警察]]の[[ドイツ地方警察特別出動コマンド|特別出動コマンド(SEK)]]や[[刑事警察 (ドイツ)|刑事警察]]の[[機動出動コマンド]]([[:de:Mobiles_Einsatzkommando|MEK]])と連携し、国家レベルの特殊部隊として、[[ドイツの警察]]に対テロ作戦能力を提供する{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。
=== 組織 ===
ヴェーゲナー大佐は、GSG-9を3つの戦闘中隊に分割した{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。隊員は、10ヶ月の基礎訓練課程を経て、これらの戦闘中隊に配属される{{Sfn|ネヴィル|2019|p=65}}。
; 第一中隊(GSG-9/1)
: [[ハイジャック]]などに対する[[人質救出作戦]]を主任務とし、狙撃手も擁している{{Sfn|ライアン|スティルウェル|マン|2004|pp=144-146}}{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。
; 第二中隊(GSG-9/2)
: 戦闘潜水や潜水艇・小型舟艇などを用いた海洋対テロ作戦能力を備えている{{Sfn|ライアン|スティルウェル|マン|2004|pp=144-146}}{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。[[ドイツ海軍 (ドイツ連邦軍)|海軍]]の[[戦闘水泳中隊]](KSM)による訓練を受けている{{Sfn|ライアン|スティルウェル|マン|2004|pp=199-200}}。
; 第三中隊(GSG-9/3)
: [[高高度降下低高度開傘]](HALO)や高高度降下高高度開傘(HAHO)を用いた[[空中機動作戦]]や[[ゲリラコマンド|挺進行動]]能力を備えている{{Sfn|ライアン|スティルウェル|マン|2004|pp=144-146}}{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。
これらの戦闘中隊は、更に5名ずつの特殊作戦部隊(SET)に分かれている{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。
=== 装備 ===
ミュンヘンオリンピック事件直後にヨーロッパ各国で創設された対テロ部隊は、動作の確実性を評価して、[[回転式拳銃]]を個人武装として採用していた。これは本部隊も同様で、[[1977年]]の[[ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件]]の際には、ヴェーゲナー大佐は4インチ銃身の[[S&W M19]]、部下はS&W M66または自動式の[[H&K P9S]]、そして[[H&K MP5]]短機関銃を携行していた{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=156-192}}。この作戦の際には、拳銃では瞬間制圧力が低くテロリストを無力化するのに手間がかかったのに対し、MP5の短連射を受けたテロリストは即座に行動不能になり、MP5の威力が強く印象付けられた。このため、GSG-9は、その後の作戦でMP5を愛用するようになっていった{{Sfn|トンプソン|2019|pp=90-119}}。またこの時期には、[[H&K HK69]][[擲弾発射器]]や[[:en:Heckler & Koch HK512|H&K HK512]][[散弾銃]]も装備されており、[[1980年代]]には[[H&K P7]](PSP)拳銃も使われるようになっていた{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=12-21}}。
[[1990年代]]に入ると、犯罪者・テロリストの間でも[[ボディアーマー|防弾チョッキ]]の普及が進んだこともあって、様々なバリエーションの[[H&K G36]]C[[カービン]]が用いられるようになり、多くの場合[[サプレッサー]]を装着して使用していた。その後、同社の[[H&K HK416]]へと移行した{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=156-192}}。また拳銃も[[グロック17]]に更新された{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。
[[狙撃銃]]としてはミュンヘンオリンピック事件の教訓をもとに開発されたセミオートマチック式の[[H&K PSG-1]]を用いた他、2000年代からは新たに開発された[[ブルパップ方式]]の[[ボルトアクション方式|ボルトアクション]]狙撃銃[[DSR-1]]も用いられた。その後、[[.338ラプア・マグナム]]弾を使用する[[:en:PGM 338|PGM ミニヘカート.338]]を採用した{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=156-192}}。
== 活動史 ==
[[1977年]]にパレスチナゲリラによる「[[ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件]]」が発生。この事件において、GSG-9 は[[ソマリア]]の[[モガディシュ]]に着陸した航空機に強行突入を行い、わずか5分で犯人を制圧、人質全員を無事[[人質救出作戦|救出]]した。この事件は人質全員を無事救出したことから「モガディシュの奇蹟」とも呼ばれている。この活躍により、GSG-9は一躍有名になった{{Efn2|この事件では、MP5や、SASから提供を受けた[[手榴弾#スタングレネード|特殊閃光弾]]を活用したといわれ、いずれも一躍有名になった。しかしヴェーゲナー大佐は、2012年のインタビューで、実際には、機内での火災を懸念して特殊閃光弾は使わなかったことを公表した{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。}}{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。
1973年から2013年の40年間で、GSG-9は1,700件以上もの作戦を実施していた。しかし一般的なイメージと異なり、このうち銃器を使用したのは7回に過ぎず、多くの場合は、緻密に作戦を立案・実施して容疑者の選択肢を奪うことにより、発砲せずに事態を収束させていた。一方で、この期間に、作戦中に3人の殉職者が出た。このうち2人は、2004年にイラクで独大使館員を護衛中に車両が[[RPG-7]]の直撃を受け、戦死したものである{{Sfn|ネヴィル|2019|pp=100-109}}。
2009年海賊事件が多発する東アフリカ・ソマリア沖でドイツ船籍が海賊に乗っ取られた事件でも、独政府は拘束されていたドイツ船員らを救うためにGSG-9第2中隊を派遣したが、作戦実行の2日前に中止された。海賊の見張りが6人から35人に増え急襲への備えが行われていたことや、共同して作戦立案や演習を行った米国側から「危険な作戦だ」との助言を受けたことが理由とされる<ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/select/world/news/20090601ddm012030053000c.html|title=ソマリア海賊:独が警察特殊部隊突入断念 「軍が救出を」改憲論浮上|date=2009-06-01|newspaper=[[毎日新聞]]}}</ref>。
[[パリ同時多発テロ事件]]を受けてドイツも対テロ部隊の強化に動き、2015年12月にGSG-9を補完する新組織「{{仮リンク|BFE+|de|BFE+|en|BFE+}}」(証拠収集と逮捕チーム)を設立。2016年中に250人規模へ拡充することを計画している<ref>{{Cite news|url=https://web.archive.org/web/20151228020426/http://www.yomiuri.co.jp/world/20151228-OYT1T50056.html|title=独警察に新部隊発足|newspaper=[[読売新聞]]|date=2015-12-28}}</ref>。
== 登場作品 ==
;
: 2007年3月から2008年5月までドイツの衛星ペイテレビ局Sat.1で放送されていた、同部隊を主軸にしたドラマ。
;『[[こちら葛飾区亀有公園前派出所 (アニメ)|こちら葛飾区亀有公園前派出所]]』
: TVスペシャルにケペル大佐が率いるGSG-9部隊が登場する。
;『[[パイナップルARMY]]』
: 漫画作品。「ブレークスルー:突入」でハイジャック事件に出動する。
;『[[レインボーシックス]]』シリーズ
: 部隊を構成する隊員にはGSG-9出身者が含まれる。
== 脚注 ==
{{
=== 注釈 ===
{{notelist2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|first=リーロイ|last=トンプソン|year=2019|title=MP5サブマシンガン|others=床井雅美 (監修), 加藤喬 (翻訳)|series=[[:en:Osprey_Publishing#Series|Osprey Weapon Series]]|publisher=[[並木書房]]|isbn=978-4890633821|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|first=リー|last=ネヴィル|year=2019|title=欧州対テロ部隊|others=床井雅美 (監修), 茂木作太郎 (翻訳)|publisher=並木書房|isbn=978-4890633852|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|first1=マイク|last1=ライアン|first2=アレグザンダー|last2=スティルウェル|first3=クリス|last3=マン|year=2004|title=ヴィジュアル版 世界の特殊部隊―戦術・歴史・戦略・武器|others=小林朋則 (翻訳)|publisher=[[原書房]]|isbn=978-4562037278|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=渡邉|first=斉志|year=2005|month=2|title=ドイツにおけるテロ対策への軍の関与|journal=外国の立法|issue=223|pages=38-50|publisher=[[国立国会図書館]]|url=http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/223/022302.pdf|naid=40006678343|ref=harv}}
== 関連項目 ==
{{Commons category|GSG 9}}
* [[KSK (ドイツ陸軍)|KSK]] - [[ドイツ連邦軍]]の特殊部隊
* [[人民警察第9中隊]]- [[ドイツ人民警察]]([[ドイツ民主共和国|東ドイツ]]警察)の特殊部隊
* [[特殊急襲部隊]](SAT) - [[日本の警察]]の特殊部隊。創設に際しては、当部隊に留学生を送ったと言われている。
{{アトラスネットワーク}}
{{authority control}}
{{DEFAULTSORT:けええすけえのいん}}
[[Category:ドイツの警察系特殊部隊]]
[[Category:ハイジャック]]
[[Category:カウンターテロリズム]]
[[Category:非軍事テロ対策組織]]
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