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{{複数の問題|出典の明記=2017年8月28日 (月) 07:48 (UTC)|独自研究=2017年8月28日 (月) 07:48 (UTC)}}
'''地鎮祭'''(じちんさい、とこしずめのまつり)とは、[[土木]]工事や[[建築]]などで[[工事]]を始める前に行う、その[[土地]]の[[神 (神道)|守護神]]([[鎮守神]])を祀り、土地を利用させてもらうことの許しを得る。これには[[神道|神式]]と[[仏教|仏式]]がある。一般には神を祀って工事の無事を祈る儀式と認識されており、'''安全祈願祭'''と呼ばれることもある。'''鎮地祭'''、'''土祭り'''、'''地祭り'''、'''地祝い'''とも言う。費用は施工業者(奉献酒や玉串料は施主を含めた関係者)が負担する{{要出典|date=2017年9月5日 (火) 08:29 (UTC)}}。
[[ファイル:Jinchinsai - Tokyo area - 2015 3 25.jpg|thumb|地鎮祭、東京にて]]
[[File:Jitinsai.JPG|thumb|right|180px|農家が中心となって行われる地鎮祭における[[]]の例]]
'''地鎮祭'''(じちんさい、とこしずめのまつり<ref name="setagaya" />)とは、[[土木]]工事や[[建築]]工事の起工にあたって、工事の無事を祈願するための儀式<ref name="setagaya" />。建築工事にあっては建築儀礼の一種である<ref name="setagaya">{{Cite web|url=https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/bunka/004/001/d00164372_d/fil/aruzidexe30.pdf|title=あるじでえ No.30|website=世田谷区教育委員会|date=|accessdate=2024-01-15}}</ref>。
 
形式としては[[神道|神式]]と[[仏教|仏式]]がある{{Refnest|group="注釈"|熊本県玉名市の蓮華院の南大門の落慶の式典では、神式地鎮式と仏式地鎮式が続けて行われた<ref>{{Cite web|url=https://www.rengein.jp/archive/nandaimon/nandaimon-jitinsai.pdf|title=南大門地鎮祭にご参加ください|website=蓮華院|date=|accessdate=2024-01-15}}</ref>。}}。現代では神式で執り行われることが多く、古来、地祭(じまつり)<ref name="setagaya" /><ref name="motegi">{{Cite web|author=茂木貞純|url=https://www.jcca.or.jp/kaishi/284/284_toku4.pdf|title=地鎮祭の歴史とその意義|website=一般社団法人 建設コンサルタンツ協会|date=|accessdate=2024-01-15}}</ref>、鎮祭(しずめまつり)<ref name="setagaya" />、宮地鎮謝(みやじかまむるまつり)<ref name="setagaya" />、地曳祭(じひきさい)<ref name="setagaya" />などとも称された儀式である。仏式では地鎮式や安全祈願祭と呼ばれることもある。
一般的には、土地の四隅に青竹を立て、その間を[[注連縄]]で囲って祭場となし、斎主たる[[神職]]のもと、建設業者・設計者・施主らの参列の上で執り行う。場合によっては、赤白の[[横断幕]]を張ったテントの中で行われる事もある。祭場の中には木の台(案という)を備え、その中央に[[神籬]](ひもろぎ、大榊に御幣・木綿を付けた物で、これに神を呼ぶ)を立てて祭壇(南向きまたは東向き)となし、米・酒・魚・野菜・塩・水等の[[供物|供え物]]を供える。また、関西などの特定の地方によっては[[伊勢神宮]]近隣の浜から砂または塩を取り寄せ、四隅に置く場合もある。祭壇の左右に、青・黄・赤・白・黒の五色絹の幟に榊をつけた「[[真榊]]」を立てる場合もある。この五色絹は[[五行説]]における天地万物を組成している5つの要素、つまり木・火・土・金・水を表している。昔は竜柱(祝い柱)を建て、丑寅(北東)と未申(西南)の方向にそれぞれ矢を立てて普請の安全を祈った<ref>『渋川市誌, 第 4 巻』渋川市, 1984, p106</ref>。
 
日本以外では[[大韓民国|韓国]]や[[台湾]]でも地鎮祭に似たお祓いをすることがある。
 
== 歴史 ==
== 農業における地鎮祭 ==
最も古い記録では『[[日本書紀]]』の持統天皇5年10月甲子条や持統天皇6年5月丁亥条に「鎮祭」の記述がある<ref name="見留">{{Cite journal |和書 |url= https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/DO/0036/DO00360R049.pdf|author=見留武士 |title=古代地鎮の執行者について |journal=佛教大学大学院紀要 |issue=36 |publisher=佛教大学大学院 |date=2008-03 |pages=49-64 }}</ref><ref name="koike">{{Cite web|author=小池寛|url=http://www.kyotofu-maibun.or.jp/data/mukashi/pdf/m-p86-87.pdf|title=地鎮の起源と都の地鎮|website=公益財団法人 京都府埋蔵文化財調査研究センター|date=|accessdate=2024-01-15}}</ref>。なお、『[[古語拾遺]]』([[807年]])では[[神武天皇]]が橿原に都を設けた際に坐摩神(いかすりのかみ)が祀られたとする記述があり、「坐摩」は大宮地(おおみやどころ)の霊であるとしていることから古くから宮殿の起工にあたって地鎮式が執り行われたとみられる<ref name="motegi" />。
[[File:Jitinsai.JPG|thumb|right|180px|農家が中心となって行われる地鎮祭における幟の例]]
一般的にその土地の神に対して豊作と農作業の際の事故防止を祈願する。春先は主に豊作と無事故祈願、秋口に行われるのは豊作への感謝(不作においては来年の豊作祈願)と無事故(事故が発生した年は来年の無事故祈願)の感謝を捧げている。一般的に農業関係者等が中心となり行われ、これに関しては宗教的行事というよりも地域の安全祈願も含まれている為に例え「仏教徒」だろうが「キリスト教徒」だろうが宗派関係なく参列するのが一般的であり、例え普段宗教行事に厳しい考えを持つ者もこの行事には関係なく出席している事が多い。会場には町内会館に隣接した社(管理は町内会)や岩にしめ縄を締めた場所等で行われ、その場所には幟が立てられる{{要出典|date=2017年9月5日 (火) 08:29 (UTC)}}。
 
儀式で五色幣を中央・東西南北の角に立てるのは中国の陰陽五行説の影響とされる<ref name="motegi" />。この陰陽思想の公的な請来は、推古10年([[602年]])に[[百済]]から[[観勒]]によってもたらされたとされる<ref name="見留" />。
== 仏教における地鎮祭 ==
仏教では、地鎮法、鎮宅法(じちん、ちんたく・ほう)、安鎮法(あんちんほう、安鎮国家不動法の略)、地天供(じてんく)、あるいは俗に地祭り、地堅めの法などともいう。[[密教]]の場合は[[不動明王]]を本尊として行う鎮宅不動法という儀式があり、堂宇や仏塔、墓碑を建立する前にその土地を[[結界]]して、[[地天]]を本尊・中心として諸天の天神や、[[横死]]した[[霊魂]]なども含めて、それらを供養し鎮霊して、永久に障難が及ばないように修する。
 
近代の[[神仏分離]]前には、神仏はより混在した状況にあり、祭主もより多様であった<ref name="見留" />。
堂宇などの場合、まだ板敷きを敷かずに土壇を鎮める修法を鎮壇法といい、地鎮と鎮壇を個別に修する。なお略式で同時に修する場合もある。壇の中央に五宝や七宝などを入れた賢瓶を埋めて、鎮石と呼ばれる平らな石を置き、再建する場合も決して動かさない。八方に輪や橛(くい)、五玉を埋める。
 
[[平安時代]]になると[[陰陽師]]に代わって密教僧による地鎮が盛行したとされるが、そうではなく密教の安鎮法と陰陽道の土公祭の双方が[[鎌倉時代]]までみられるとする研究もある<ref name="見留" />。
[[日蓮正宗]]でも「起工式」という形で行われ、本尊の力で土地を清め、工事の安全を祈願する意味合いがある。敷地中央に祭壇を組み、寺院の常住本尊を掲げて住職の導師により読経・唱題の上、[[鍬入れ]]の儀式が行われる。
 
== 神式 ==
=== 地鎮祭の流れ ===
[[File:Altar of JICHINSAI or SHINTO ceremony of sanctifying ground 地鎮祭の祭壇.jpg|thumb|地鎮祭の祭壇。右上の看板には「地鎮祭次第/一 神事/修祓(一同起立)/降神之儀(一同起立)/献饌/祝詞奏上(一同起立)/切麻散米/鍬入之儀/玉串奉奠/撤饌/昇神之儀(一同起立)/一 神酒拝戴/神官退下」とある。手前右下には盛り砂がある。東京都[[中野区]]にて撮影。]]
祭場は南面した場所に設け、四方に斎竹(いみたけ)を立てる注連縄を張る<ref name="motegi" />。
 
昔は竜柱(祝い柱)を建て、丑寅(北東)と未申(西南)の方向にそれぞれ矢を立てて普請の安全を祈ったという<ref>『渋川市誌, 第 4 巻』渋川市, 1984, p106</ref>。
 
神式の一般的な地鎮祭の流れは次の通りである。
; [[手水]](てみず、ちょうず)
: 神事の会場に入る前に手水桶から掬った水で両手を洗い、口を漱ぎ、心身を浄める(その後に着席)<ref name="motegi" />
; [[修祓]](しゅばつ)
: 開式の神職が祓詞を奏上した後、祭典の本儀に先立ち神饌、玉串、斎主、祭員、建主、工事関係者、その他参列者・お供え物を祓い清める儀式<ref name="motegi" />
; 降神(こうしん)の儀
: 祭壇に立てた籬に、その土地の神・地域の氏職が降る儀式。神職がてから「オオ~」と声を発して(「警蹕(けいひつ)」と言う)を行い、低頭した参列者に降臨を告げる<ref name="motegi" />
; 献饌(けんせん)の儀
: 神職が神饌(米、酒、餅、海魚、川魚、海菜、野菜、果物、菓子、塩、水など)を供える<ref name="motegi" />。神前に神酒を供えておき、その[[瓶子]]の蓋を取って献饌の儀とすることもある<ref name="motegi" />。
: 神に祭壇のお供え物を食していただく儀式。
; 祝詞奏上(のりとそうじょう)
: その神職が土地建物を建てることを神に告げの長久以後の工事の安全、建主の発展などを祈る旨の祝詞を奏上する<ref name="motegi" />
; 清祓・散供(きよはらい・さんく)の儀
: 東北、東南、南西、西北の順に土地の四隅を祓い清め、合わせて幣そして清酒撒く。切麻(きりぬさ)・散米(さんまい)とも言う大地に直接供える<ref name="motegi" />
; 草刈初(くさかりそめ)の儀
; 地鎮(じちん)
: 忌鎌(いみかま)を使っ初(くさかりそめ)、忌鍬(いみくわ)を使った穿初(うがちぞめ)、鎮物(しずめもの)の埋納等る儀式で主に建主が行われるう<ref name="motegi" />
; 穿初(うがちぞめ)の儀
: 忌鍬(いみくわ)を使って鍬を入れる儀式で主に工事関係者が行う<ref name="motegi" />。
; 鎮物(しずめもの)埋納
: 敷地中央に鎮物を行うが、通常は地鎮祭では所作のみで工事のときに埋納する<ref name="motegi" />。
; [[玉串]]拝礼(たまぐしはいれい)
: 神前斎主、祭員に建主、工事関係者、参列員等の順に玉串を奉り拝礼する。玉串とは、榊等に紙垂と木綿を付けたもの<ref name="motegi" />
; 撤饌(てっせん)の儀
: 神職が神饌を下げる(瓶子に蓋をして撤饌の儀とすることもある)<ref name="motegi" />。
: お供え物を下げる。
; 昇神(しょうしん)
: 斎主が昇神詞を唱えるとともに、警蹕(けいひつ)を行い神を送る<ref name="motegi" />。
: 神籬に降りていた神をもとの御座所に送る儀式。この後に閉式が行われる。
; 直会(なおらい)
: 席を改めて直会を行う<ref name="motegi" />。
 
=== 直会出雲屋敷地鎮祭 ===
出雲大社では、土地の最高神である[[大国主大神]]を仰ぎ、土地の平安堅固を祈る地鎮祭を「出雲屋敷地鎮祭{{Sfn|小池|2015|p=187}}として、特別な神事を行う。出雲大社の御土である「御神土」「鎮め物」を屋敷に埋め{{Sfn|小池|2015|p=187}}、中央、四方の柱に御札を貼、それを五柱御札{{Sfn|小池|2015|p=187}}いう。それにより大国主大神の御支配される屋敷となる。そして、鬼門、たたり、方位、障りはすべて無くなり{{Sfn|小池|2015|p=187}}、いよいよ繁栄するようになるという。神事は[[出雲大社]]伝統の儀式法にて行う。※神語三唱や御神土埋納、四拍手など特殊性がある。出雲屋敷後、年々多少の初穂を献納する'''出雲年貢'''を行う地域がある<ref>『出雲大社教布教師養成講習会』発行出雲大社教教務本庁平成元年9月1日全218頁中230頁</ref>。本来は出雲の氏子のみを対象に行っていた祭礼{{Sfn|小池|2015|p=187}}。現在では、他県から訪れるものも対象としている{{Sfn|小池|2015|p=187}}
地鎮祭の式次第が終了したら直会(なおらい)を行う。
当地でお神酒で乾杯し、お供え物の御下がりを食する。
神事とは別に直会の場を設け、業者が用意したビール等の飲み物、仕出しの弁当等を出したり、料理店の宴会場を借り切って祝宴が催行される場合もある。
 
== 出雲屋敷仏式 ==
{{要出典|範囲=仏教では、地鎮法、鎮宅法(じちん、ちんたく・ほう)、安鎮法(あんちんほう、安鎮国家不動法の略)、地天供(じてんく)、あるいは俗に地祭り、地堅めの法などともいう。|date=2024年1月}}
出雲大社では、土地の最高神である[[大国主大神]]を仰ぎ、土地の平安堅固を祈る地鎮祭を「出雲屋敷」として、特別な神事を行う。出雲大社の御土である「御神土」を屋敷に埋めることにより、大国主大神の御支配される屋敷となる。そして、鬼門、たたり、方位、障りは無くなり、いよいよ繁栄するようになるという。神事は[[出雲大社]]伝統の儀式法にて行う。※神語三唱や御神土埋納、四拍手など特殊性がある。出雲屋敷後、年々多少の初穂を献納する'''出雲年貢'''を行う地域がある<ref>『出雲大社教布教師養成講習会』発行出雲大社教教務本庁平成元年9月1日全218頁中230頁</ref>。
 
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
{{Reflist}}
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=小池康寿|title=日本人なら知っておきたい正しい家相の本|publisher=プレジデント社|date=2015-11|isbn=9784833421492}}
 
== 関連項目 ==
* [[津地鎮祭訴訟]]
* [[上棟式]]
* [[起工式]]
60 ⟶ 74行目:
* [[産土神]]
* [[地主神]]
* [[鍬入れ]]
* [[:en:Groundbreaking|Groundbreaking]](英語)
* [[津地鎮祭訴訟]]
* [[出雲大社]]
 
{{DEFAULTSORT:しちんさい}}
[[Category:神道]]
[[Category:儀式]]
[[Category:土地神]]
[[Category:神道行事]]
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