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原理や機能としては、電子を放出する電極(陰極)を高温にして[[エジソン効果|熱電子放出効果]]により、陰極表面から比較的低い[[電圧]]により容易に電子を放出させ、この電子を[[電界]]や[[磁界]]により制御することにより、増幅、検波、整流、発振、変調などができる。
 
二極管が発明されたイギリスを中心とした[[ヨーロッパ|欧州]]で主に、その電極の数により、二極管のことを'''[[ダイオード]]'''<ref group="注釈">{{lang-en-short|diode}}</ref>、[[三極真空|三極管]]のことを'''トライオード'''<ref group="注釈">{{lang-en-short|triode}}</ref>、[[四極真空|四極管]]のことを'''テトロード'''<ref group="注釈">{{lang-en-short|tetroiodetetrode}}</ref>、[[五極真空管|五極管]]のことを'''ペントード'''<ref group="注釈">{{lang-en-short|pontoodepentode}}</ref>(以下同様)という。さらに二極管の中でも[[整流]]に用いるものを特に'''レクティファイア'''<ref group="注釈">{{lang-en-short|rectifier}}</ref>と呼ぶこともある。
 
=== 発明、多様化、小型管に対する代替用語の登場 ===
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=== 日本語の略呼法や助数詞 ===
日本語では[[専門用語]]で「球(たま)」、あるいは[[白熱電球]]と同様に「管球(かんきゅう)」<ref name="NKDJ_管球">{{Cite Kotobank|word=管球|authorencyclopedia=精選版 日本国語大辞典(小学館)|access-date=2021-05-22}}</ref>とも呼ばれる。例えば、トランジスタ使用の[[増幅回路|アンプ]]に対して真空管使用のものを「球(たま)のアンプ」と言う。また、セット(電気回路による装置)に使っている真空管の本数を称して「n球(きゅう)」という言い方をする。例えば[[ラジオ#中波放送(AM放送)#概要|AMラジオ]][[受信機]]の代表的な構成の一つである、真空管を5本使用した[[スーパーヘテロダイン受信機]]を「5球スーパー」と呼ぶ<ref name="CiNii_球スーパー">用例: {{Cite web|和書|url=https://cicir.nii.ac.jp/searchall?q=%22%E7%90%83%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%22+&range=0&count=30020&sortorder=2&type=01|title=論文検索 "球スーパー"|accessdate=2021-05-22|publisher=国立情報学研究所 (NII)|website=日本の論文をさがす|language=ja|archiveurl=https://archive.ph/6AFmE|archivedate=2021-05-22}}</ref>。なお、単に数えるとき(たとえば部品在庫数)の助数詞は「本<ref name="KikaiToukei1989">用例:{{Cite journal|和書|journal=平成元年 1989 機械統計年報|year=1990|title=1 生産動態統計|editor=通商産業大臣官房調査統計部|url=https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/archives/pdf/H1/kikai_H1.pdf|pages=286-288|chapter=37 電子管, 半導体素子及び集積回路|publisher=通商産業省|language=ja|accessdate=2021-05-22<!--|archive-url=https://web.archive.org/web/20130223161144/https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/archives/pdf/H1/kikai_H1.pdf|archive-date=2013-02-23-->}}</ref>(ほん)」。いっぽう、真空管の代替として発明された[[トランジスタ]]などの[[半導体素子]]はジャーゴン専門用語で「石(いし)」と呼ぶことがあり、回路での使用数をあらわす助数詞は「石(せき)」が用いられた<ref name="NKDJ_石">{{Cite Kotobank|word=石|authorencyclopedia=精選版 日本国語大辞典(小学館)|access-date=2021-05-22}}: 「せき【石】(2)〘接尾〙(2)」</ref>(単に数えるときには「個<ref name="KikaiToukei1989" />(こ)」)。
 
=== 利用の減少および現在も続く特殊目的での利用 ===
21世紀では、一般的な電気電子回路において汎用的(整流、変調、検波、増幅など)に用いる目的の素子としては、多くが[[半導体素子]]に置き換えられ、真空管はその役割をほぼ終えているが、半導体では実現が難しい高周波/大電力を扱う特殊な用途での増幅素子として現在でも使われており、日本でも[[送信所#機|放送局用]]、また[[レーダーサイト#日本のレーダーサイト|防衛省向け]]として製造されている。またオーディオアンプや楽器用アンプなどでは、現在も真空管による増幅回路がしばしば用いられるため、それらの用途のための真空管が現在も製造されている。
 
一方、特殊な真空管の一種である[[マグネトロン]]は、強力な[[マイクロ波]]の発生源として、[[電子レンジ]]や[[レーダー]]などに使われ、現在でも[[量産|大量生産]]されている。テレビ受像機などに用いる[[ブラウン管]]も広義の真空管であり世界で量産されているが、[[薄型テレビ]]への移行から減少傾向にあり日本国内での生産は[[オシロスコープ]]などの測定機などを除き終了している。
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== 歴史 ==
[[トーマス・エジソン|エジソン]]が[[白熱電球]]の実験中に発見した[[エジソン効果]]([[1884年]])が端緒となり、その後[[ジョン・アンブローズ・フレミング|フレミング]]が発明([[1904年]])した素子が2極真空管(二極管)で、3[[三極真空管]][[三極管]])は、[[リー・ド・フォレスト]]が発明([[1906年]])した。
 
既に白熱電球の製造技術があり、リー・ド・フォレストの真空管は[[ウェスタン・エレクトリック]]社でもリー・ド・フォレストの特許のもとに生産に移され、[[1914年]] には三極管は電話回線のリピーター回路に汎用されタイプM (101A) が製造された<ref>Bijl著「{{lang|en|The Thermionic Vacuum Tubes and It's Applications}}」、1920年</ref>。[[1915年]]のバージニア、アーリントン間の大陸横断電話回線の実験においては、550本の真空管が使われたとされている。使われた真空管はタイプL、タイプW、タイプSであった。アメリカ軍ではフレミングバルブを使っていたこともありフランス製の通信機を使っていたが、第一次世界大戦末期フランスからのRチューブの供給が滞るようになり、急遽、タイプJ (203A) から耐震構造化した[[受信]]用検波増幅管であるVT-1が、タイプL (101B) を元にタイプKの後継管として[[送信]]用5W型[[発振]][[変調]]管であるタイプE (VT-2) {{efn|どちらも直熱型三極管}}が製造された<ref>タイン著「{{lang|en|Saga of Vacuum Tube}}」、1977年</ref>。[[1929年]]には5極管 (UY-247{{efn|後のUZ-2A5。}}) が登場し、[[1935年]]に画期的なメタルビーム管 (([[6L6) ]])が登場、これにより基本となる真空管技術が完成した<ref>浅野勇著「魅惑の真空管アンプ 上巻」</ref>。初期の[[コンピュータ]]には大量の真空管が使用され、寿命の揃った真空管を大量に調達するのが製作上の難関のひとつだった。例として[[ENIAC]](1946年)には17468本が使われている。
 
しかし、
* 原理的に熱電子源([[{{仮リンク|フィラメント]]や[[ヒーター]]|en|Hot_cathode#Cathode_heater}})が必要なので消費電力が大きく、発熱する。
* フィラメントやヒータを有するため寿命が短い(数千時間程度)。
* 真空管そのものや、これを用いる機器の小型化や耐震性に問題がある。
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などの欠点があった。[[トランジスタ]]が発明され[[1960年代]]以降には生産[[歩留まり]]が高まって安価になると、放送、通信分野の機器においては、次第にトランジスタに取って代わられることとなった。その結果、主回路に真空管を使用した[[テレビ受像機]]や[[受信機|ラジオ受信機]]は、[[1970年代]]に入ると生産が中止された。なお直接的な欠点ではないが、トランジスタではコンプリメンタリの素子が得られるという特長があるが、真空管では原理上単一の極性のものしか得られないことも理由の一つであった。
 
電子回路に半導体が広く使われるようになった1970年代においても、高出力電波送信というような用途では真空管が主に使われていた。[[1976年]]に起きた「[[ベレンコ中尉亡命事件]]」[[MiG-25 (航空機)|MiG-25]]の機体検証で搭載電子機器類に真空管が使用されており話題となった。
 
== 形態 ==
[[ファイル:Tube-type.png|thumb|200px|真空管の形状(左からナス管、ST管、GT管、mT管)]]
 
容器にはおおむね6つの形態がある。
 
* ナス管(1930年代まで): 茄子([[ナス]])形<ref name="初級ラジオ工作1949" />のガラス管。S管とも呼ばれる<ref name="真空管の話1953" />。
* ナス管(1930年代まで)
* ST管(1930年代 - 1950年代): [[だるま]]形<ref name="初級ラジオ工作1949">{{Cite book|和書 |title=初級ラジオ工作 |date=1949-10-10 |publisher=誠文堂新光社 |last=甘田 |first=早苗 |language=ja |doi=10.11501/1169566 |url=https://dl.ndl.go.jp/pid/1169566/1/48 |location=東京 |page=86}}</ref>のガラス管で、「ダルマ管」とも呼ばれる<ref name="真空管の話1953">{{Cite book|和書 |title=真空管の話 |publisher=ラジオ科学社 |date=1953-01-20 |page=29 |editor=ラジオ科学社 |series=ラジオ・サイエンス・シリーズ ; 第1集 |language=ja |NCID=BA65558749 |location=東京 |url=https://dl.ndl.go.jp/pid/2461951/1/17 |url-access=registration |doi=10.11501/2461951 |id={{NDLJP|2461951}}}}{{要登録}}</ref>。
* ST管(1930年代 - 1950年代)
* GT管(1940年代 - 1950年代)
* mT(ミニチュアあるいはミニアチュア)管(1950年代 - 末期)
* サブミニチュア(サブミニアチュア)管(1960年代 - 末期): 1941年に[[RCA]]社で[[補聴器]]用に開発、1942年に試作・量産開始された[[近接信管]]に使用された事で有名
* ニュービスタ<ref group="注釈">{{lang-en-short|Nuvistor}}</ref>管(1960年代 - 末期)
 
ST管は上部のくびれ形状下部のテーパー形状から「ST管」と呼ばれるようになったとされている。また、形状に由来した呼び方としては他に「ダルマ管」もある。この他に外装を金属としたメタル管がある。メタル管は金属の筒で覆われているため、外から内部を見ることはできず、放熱効率を高めるため一般的に黒く塗装されている。メタル管は大文字を使いMT管と表記することがある<ref name="真空管の話1953" />。これはミニチュア管と区別するためである。さらに1本で2本分の働きを持たせた複合管(双三極管・三極五極管など)がある。
 
mT管以降の小型真空管は、機器単体に多くの真空管を利用するようになり、その小型化、多様化需要によって主力となったものである。
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ファイル:6L6 MT.jpg|メタル管 (RCA 6L6)
ファイル:NUVISTOR 2B-H5.jpg|ニュービスタ管
ファイル:TF 12AX7.jpg|複合ミニチュア 双三極複合管、2個のプレートが見える)
ファイル:CV4501.JPG|サブミニチュア管
</gallery>
 
=== 複合管 ===
1本の容器に複数本分の機能を封入した、複合管(双三極管・三極五極管など)と呼ばれる製品もある{{r|"初級ラジオ工作1949"|pages=91-92}}。
 
== 特徴 ==
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* 消費電力が大きい(特に内部のフィラメントやヒータ)。
* 寿命が短い(通常の製品で1000時間程度、特に内部のフィラメントやヒータ。寿命が尽きて従来の性能が出なくなることを俗に「ボケる」と呼ぶ)。
* コストが高い(素子単価が高い)。
* 機械的な振動や衝撃に弱い。
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{{main|三極真空管}}
[[ファイル:Triode vacuum tube.png|thumb|200px|三極真空管の模式図]]
二極管のフィラメント(陰極)とプレート(陽極)の間に粗い網状の電極(形状から'''[[制御グリッド|グリッド]]'''と呼ぶ)を配置する。この三極真空管におけるグリッドは、陰極に対するその電位を変化させることによって、陰極-陽極間の加速電界を増強または抑制させる役割を持っている。二極管と同様に、プレートに対して正電圧が加えられると、陰極から放出された熱電子がプレートに到達する。そのとき一部の熱電子はグリッドに引き込まれるが、それ以外の多くの電子はグリッドを通り抜け加速される。以上により、グリッドに与える電圧の変化(入力信号)を、プレートから電流の変化(出力信号)として取り出すことで、信号の増幅が可能になる。
 
==== 四極真空管、五極真空管 ====
三極真空管の増幅率を高めるには、グリッドを細かくして多くの電子を捕捉したり、グリッドをカソードに接近させて電子の軌道への影響を大きくしたりする方法が考えられる。いずれも高いプレート電圧が必要となるため、低いプレート電圧で用いるにはグリッドとプレートの間に第二グリッド(スクリーングリッド)を設け、正電圧を加える。これを'''[[四極真空管]]'''と呼ぶ。第二グリッドはプレートとグリッド間を静電遮蔽し、浮遊容量を小さくする作用もある。
 
しかし、四極真空管は安定に動作しないことが多い。それはカソードからプレートに到達し、プレートから反射放出された二次電子が第二グリッドに吸収されて電位が変化し、全体の増幅特性に影響するためである。その問題を解決するため、第二グリッドとプレートの間に第三グリッド(サプレッサグリッド)を設け、カソードまたはアースに接続したものを'''[[五極真空管]]'''と呼ぶ。プレートから反射放出された電子は第三グリッドによって再度反発されるため、二次電子の影響が殆ど無い安定な動作が可能となる。
 
また、四極真空管の第一グリッドと第二グリッドの位置を、電子が一点に収束するよう調整することでも、二次電子の影響を減少させることができる。これを'''ビーム真空管'''と呼び、高効率の動作が可能なため電力増幅に多く用いられる(但し、動作時のプレート電流が少ない場合には二次電子の影響が少なからず存在し、特性の暴れが避けられない)。
 
=== ビーム四極管 ===
{{main|ビーム四極管}}ビーム四極管(または「ビームパワー管」)は、カソードからの電子流を複数の部分的な[[平行ビーム]]に形成し、アノードとスクリーングリッドの間に低電位の[[空間電荷]]領域を生成し、アノード電位がスクリーングリッドの電位より低い場合にアノードからの[[二次放出電子]]をアノードに戻す<ref>Donovan P. Geppert, (1951). [https://www.nvhrbiblio.nl/biblio/boek/Geppert%20-%20Basic%20electron%20tubes.pdf ''Basic Electron Tubes''], New York: McGraw-Hill, pp. 164 - 179. Retrieved 10 June 2021</ref><ref>Winfield G. Wagener, (May 1948). [https://worldradiohistory.com/Archive-IRE/40s/IRE-1948-05.pdf "500-Mc. Transmitting Tetrode Design Considerations"] ''Proceedings of the I.R.E.'', p. 612. Retrieved 10 June 2021</ref>。一部の円筒対称ビーム四極管では、カソードが、コントロールグリッドの開口部と一直線に並んだ狭いストリップ状の発光材料で形成されており、コントロールグリッド電流を低減している<ref>Staff, (2003). [https://www.cpii.com/docs/related/22/C&F2Web.pdf ''Care and Feeding of Power Grid Tubes''], San Carlos, CA: CPI, EIMAC Div., p. 28</ref>。この設計は、高出力・高効率パワー管の設計における実用上の障壁のいくつかを克服するのに役立っている。 メーカーのデータシートでは、ビーム四極管の代わりにビーム五極管やビームパワー五極管という用語がしばしば使用され、ビーム形成プレートを示すグラフィック・シンボルの代わりに五極管のグラフィック・シンボルが使用されている<ref>GE Electronic Tubes, (March 1955) [https://frank.pocnet.net/sheets/093/6/6V6GT.pdf ''6V6GT - 5V6GT Beam Pentode''], Schenectady, NY: Tube Division, General Electric Co.</ref>。ビーム・パワー管は、同等のパワー五極管よりも長い負荷線、より少ないスクリーン電流、より高いトランスコンダクタンス、より低い第3高調波歪みという利点を提供する<ref>J. F. Dreyer, Jr., (April 1936). [https://worldradiohistory.com/Archive-Electronics/30s/Electronics-1936-04.pdf "The Beam Power Output Tube"], ''Electronics'', Vol. 9, No. 4, pp. 18 - 21, 35</ref><ref>R. S. Burnap (July 1936). [https://worldradiohistory.com/ARCHIVE-RCA/RCA-Review/RCA-Review-1936-Jul.pdf "New Developments in Audio Power Tubes"], ''RCA Review'', New York: RCA Institutes Technical Press, pp. 101 - 108</ref>。ビーム四極管は、オーディオの音質を改善するために三極管として接続することができるが、三極管モードでは出力が大幅に低下する<ref>RCA, (1954). [https://frank.pocnet.net/sheets/049/6/6L6.pdf ''6L6, 6L6-G Beam Power Tube'']. Harrison, NJ: Tube Division, RCA. pp. 1,2,6</ref>。
 
=== 陰極加熱方法 ===
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:* 傍熱管に比べ、電源投入から動作開始までの予熱時間が短い。
:* 陰極の直流電位はフィラメント電源の直流電位と同電位であり、[[回路設計]]上の制約となる。
:* フィラメント電源が交流電源の場合、出力に[[商用電源周波数]]の[[ノイズ]]が現れる。オーディオ回路では、この[[ハムノイズ]]を減少させるためフィラメント回路に並列に低抵抗値の[[可変抵抗器]]をつなぎ、摺動端子を[[接地#信号用グランド|グラウンド]]に落として陰極電位を調整するハム・バランサを用いることがある。
<!-- :[[ファイル:LUK HB100.JPG|thumb|150px|過去のハム・バランサの例 ※この写真の抵抗器はハムバランサに似ていますが、ハムバランサにはセンタータップが必須です。]] --><!--本文にぶち込まれた文章のとおり、可変抵抗器は三端子でなければならない。 -->
; 傍熱管
:* 筒状の金属管を陰極(カソード)とし、その内側にカソードと絶縁した加熱用の電線(ヒーター)を内蔵する電子管。
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== 代表的な真空管 ==
* 整流用二極管 : 12F(K)、81、35W4、25M-K15、5M-K9、19A3、5G-K3、80BK、80HK、36AM3、35Z5
* 整流用双二極管 : 80、5Z3、5AR4、5U4G(B)、6X4、[[5Y3]]、83、82、5G-K18、5G-K20、5G-K22
* 検波用双二極管 : 6AL5
* [[マジックアイ]] : 6E5、6M-E5、6M-E10、1629、1N3、1H3
* 電圧増幅用三極管 : 6C4、76、6J5、[[6C5]]、6J4、WE101D、102D、104D、3A/167M
* 検波用二極電圧増幅用三極管 : 75、6Z-DH3、6Z-DH3A
* 検波用双二極電圧増幅用三極管 : 6AT6、6AV6、6BF6、6SQ7、6SR7
* 電圧増幅用双三極管 : [[12AX7]][[12AU7]][[12AT7]][[12BH7A]]、[[6DJ8]]、[[6SN7]][[6SL7]]、6240G、12R-LL3、12R-HH14、5678、6350、6414、30MC、109C、3A5
* 電力増幅用三極管 : 10、12A、71A、45、VT-52、2A3、6B4G、WE300B、211、845、8045G、6(50)C-A10、VT-25(A)、VT-62、PX4、PX25(A)、WE275A、50、801A、R120、Ed、EbⅢ、AD1、6G-A4
* 電力増幅用双三極管 : 6336A、6080、5998(A)、6528、6AS7、[[6C33C-B|6C33CB]]、3C33、19、6BX7
* 電力増幅用ビーム管 : [[UY-807]]、KT66、KT88、6550(A)、[[6L6]][[6V6]][[6AQ5]]、1619、12A6
* 電圧増幅用五極管 : [[6C6]]、6D6、6SH7、[[6SJ7]]、6SK7、6AU6、[[6BA6]][[6BD6]]、6267、WE310A
* 電力増幅用五極管 : 6CA7、[[6BQ5]][[6AR5]]、42、30A5、50C5、6K6、[[6F6]]、7189(A)、35C5、35(50)EH5、30M-P23、32ET5、34GD5、45M-P21、35(50)L6、47
* 周波数変換用七極管 : 6SA7、[[6BE6]][[6WC5]]、6A7、1R5、18FX6
* 電圧増幅用三極五極管など : 6U8(LD611)、6BL8、6AN8、[[6GH8]](A)、6EA8、6R-HV1、6R-DHV1、6R-DHV2
* 電圧増幅用三極電力増幅用五極管 : [[6BM8]]、6(14)GW8、6R-HP2、8R-LP1、18GV8
* 送信用三極管 : 3-500Z、3-1000Z、T-307、800、808、830B
* 送信用四極管 : 4CX250B
* 送信用五極管 : [[6146B]]、S2001(A)、S2002、S2003、813
<gallery>
ファイル:5Y3GT.jpg|5Y3
ファイル:Philips 12AX7WA tube.jpg|12AX7 Philips製
ファイル:Sovtek 2A3 triode at HighEnd-2009 (3557007508).jpg|2A3 Sovtek製
ファイル:Coin Based RCA 6V6GTA.jpg|6V6 RCA製
ファイル:SVKT88 Светлана.jpg|KT88 Svetlana製
ファイル:221129 Toshiba Hi-Fi 6BM8.jpg|6BM8 東芝製
</gallery>
 
== 電源 ==
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[[ファイル:B battery (Eveready -762-S).jpg|thumb|B電池]]
[[ファイル:C battery (Eveready -761).jpg|thumb|C電池]]
真空管はその原理上、プレート、カソード間にどうしても高い直流電圧を必要とする。この高い電圧の直流を供給する電源のことをB電源という{{Sfn |エレクトロニクス術語解説 |1983 |p=256}}。一方、ヒーターなどには低い電圧を必要とする。この低い電圧の直流を供給する電源のことをA電源という。また、特に電力増幅用の終段管のグリッド電圧をカソードに対して負に保つために共有する[[バイアス (電子工学)|バイアス]]用電源(カソードに抵抗器を入れた自己バイアス回路では不要)をC電源という。
 
A、Bと大別する電源の呼称は、回路上の直流電源系統分け、すなわち低圧をA系統、高圧をB系統とすることからきており、「ラジオ・ニュース」誌[[1926年]]11月号において、既にその統一が見られる。なお、初期の真空管は全て直流電源により動作させるものであったが、後にそのヒーターについては、低圧の交流でもそのまま用いることのできる傍熱型に改良された真空管が登場し、広く交流により動作させるようになったことから、ヒーターを動作させるための低圧の交流もしくは直流を供給する電源のことを、ヒーター電源と別呼するようになった。なお真空管の欠点の一つには、ヒーター(フィラメント)の寿命や、特に電力増幅用真空管ではヒーター電流を多く必要とすることがあり、[[1970年代]]頃までの真空管を用いた[[アマチュア無線]]用無線機等に、機器全体を動作させる「{{lang|en|POWER}}(電源)」とは別に「{{lang|en|HEATER}}(ヒーター)」表示のある電源スイッチが設けられていたものがあったのはこのためである。このスイッチを入れておかないと、真空管に通電されないので受信部分は動作しても送信が出来ない
 
ラジオ放送が開始され、その初期の家庭用真空管受信機は、電灯の普及が十分でなかったことから、B電源用に多くの蓄電池や乾電池を直列につないで用いていた。その後まもなく交流配電の普及に伴い、電灯線から得られる電力を[[変圧器]](トランス)により昇圧、機器内部で2極真空管により整流して用いることができるようになり、電灯線から電力を得る、固定して用いる機器でのB電源の問題は解決した。
 
しかしラジオ受信機などにおいては、その携帯可能なものが早くから望まれており、比較的低い電圧で動作する真空管が開発された。その後、携帯機器への使用のため、電池での使用を前提とした小型・省電力の「電池管」が開発され、これを用いた携帯機器が開発されると、そのB電源用として67.5[[ボルト (単位)|V]]や45Vの乾電池が使用されるようになった。これをB電池と呼んでいた。90年代まで[[FDK]]が製造していたが、衰退に伴い日本国内からは姿を消した。日本国外では[[エバレディ]]等では現在{{いつ|date=2013年1月}}も生産されているが、日本国内での入手は困難でかつ高価である。現在{{いつ|date=2013年1月}}アマチュアではトランジスタラジオ用の006P電池 (9V) や3Vのリチウム電池を複数個使用して代用しているのが散見される。[[Gakken|学研]]の大人の科学ではB電池に006P電池を5個使用し45Vにしていた。A電池、C電池は1.5Vから6Vが多く、一般の単1型や単2型が使用されていた。
 
なお、この67.5Vという電圧であるが、電池管の規格とは別に、1926年にクライド・フィッチにより発表された「{{lang|en|battery coupled audio amplifier}}(バッテリー付き音響増幅器)」において、プレート用電源として67.5Vの電池使用の記載がある。
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[[ファイル:RCA ’808’ Power Vacuum Tube.jpg|thumb|210px|アメリカRCA製808電力増幅3極管。送信用の球だが、21世紀になってオーディオアンプへ流用例が「MJ[[無線と実験]]」誌等に掲載されている]]
 
数段の比較的簡単な構成の増幅回路でも、オーディオ用真空管を用いると、特に直線増幅範囲を超える入力(過大入力)に対し、個性的な歪出力を得られることから、特にギターアンプでは、セミプロプロ用の多くの機種が今{{いつ|date=2013年1月}}でも真空管方式を採用している。このため21世紀でも量産を続けているロシア(リフレクターJSCやスベトラーナJSC)、スロヴァキア(JJ-エレクトロニック社)、中国({{lang|zh-CN|曙光電子}}社)などの生産数は増加傾向にある。
 
これらのオーディオ用真空管の一部には、その型番は同じでもオリジナルのものよりも最大定格(特にプレート損失、プレート電圧など)が改良された製品が供給されている。しかし、例えば長期信頼性や残留ノイズなどの面ではほとんど改善されておらず、むしろオリジナルのものより劣っているものも散見される。オーディオ用真空管は、その全盛期には家庭用オーディオセットから、通信・放送機器用をはじめ軍事・医療用といった高い信頼性を求められる分野まで汎用されていたが、21世紀においては趣味、嗜好品としての用途が大半である。
 
工業製品である以上真空管は同じ型番であっても特性のばらつきがあるが、半導体製造ほど大きな製品偏差幅ではないため、トランジスタのように製造後に増幅特性によって区分けし出荷するようなランク付けはなされない。したがって使用機器側、すなわち機器設計の段階において、そのばらつきを考慮して回路に余裕を持たせ、必要な調整箇所を設けるのが普通である。全盛時代には、信頼性(寿命・耐震性など)や残留ノイズ・ヒータの立ち上がり時間の規定などによって、同じ型番の真空管でも枝番を付けたり用途記載して販売が行われていた(例えば「通信用」はロット管理やライン管理で信頼性を向上させたもの、「{{読み仮名|{{lang|en|Hi-Fi}}|ハイファイ}}」は主にローノイズ管であった)。また真空管は使用に伴って、ヒーターは白熱電球と同じく消耗、カソードのエミッション(電子放出量)特性は徐々に減少、管内の真空度は低下、電極封止部の絶縁は低下するというように特性が変化(劣化)するため、多くの真空管が実用に供されていた頃、業務用途ではチューブ・テスター(チューブ・チェッカー、真空管試験機)と呼ばれる専用の測定器を備え付けて、定期的にその特性(消耗度)を確認しながら用いていた。2013年現在でも同じ型番の真空管で、製造社の違いなどによってその良し悪しを言われることがあるが、これは製造社や供給社の選別基準(個体差をどこまで許すか)のほか、もともとの真空管の使用材料などに起因する特性変化の程度や寿命の長短を指しての評価も含まれている。
 
真空管の製造工場では、全数特性検査を行い合格品のみを出荷している。しかし21世紀以降のオーディオ用真空管は高級志向となり、その合格品を更にセットメーカーや商社が特性検査で選別したものを販売している場合も少なくない(特にギターアンプ用真空管で顕著)。これらの供給社はアメリカを中心に多数存在しており、代表的なのはグルーブ・チューブズ社やルビー社などである。これらの供給社独自の規格に基づき再検査(選別)がなされ、合格品はその供給社のブランドで主に楽器店で販売されている(インターネットなどでの通信販売も行われている)。一般に供給社の規格は非常に厳しく設定されており、選別漏れした製品についても十分実用となるため(もともと製造工場での合格品であるから当然である)、秋葉原の他の店などで販売されていることがある。しかし選別漏れしたオーディオ用真空管と合格品と比べると、微妙な音質の違いが聴感上でも感じられることもある。
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輸送中のみでなく、一般的にその通電使用中はさらに振動・衝撃に弱い。
 
また、一般的に小型のガラス製オーディオ用真空管は電球と同じく、鉛ガラスまたは石灰ガラスによって作られているものが多く、また概ね1950年代を境にしてガラス管のつくり(特にガラスの厚さ)の管理と検査が徹底されるようになったことから、今日{{いつ|date=2013年1月}}のオーディオ用真空管ではまず心配はないが、これ1950年代以前{{いつ|date=2015年1月}}に製造された古い真空管を使用する場合、ガラスの厚みにばらつきのあるものがあり、素手でガラス面を触るなどして油脂汚れを付着させた状態で使用すると、割れることがある(参考文献:{{Refnest|group="注釈"|油脂等の汚れがフィラメントからの熱を吸収し、その部分の温度を上げることでガラスを歪ませるため。製造管理の行き届いた現代の白熱電球においてもハロゲンランプなど、大きさの割には消費電力の大きい電球は、同じく油脂汚れ厳禁である<ref>{{Cite web|和書|format=PDF|url=https://www.jlma.or.jp/tisiki/pdf/guide_car.pdf |page=26|title=自動車用電球ハンドブック 第6版|publisher=日本照明工業会 |accessdate=2022-09-24}}</ref>。日本放送協会編 ラジオ技術教科書(1946~1947(1946〜1947年)、電気学会編 電気材料(1960年)))にも記述がある。}}
 
真空管の特性が安定するまでには、ある程度の使用が必要なので、直流増幅器などの精密な調整の必要な回路に新品の真空管を使用する場合では、しばらく使用して特性が安定した後、使用者側で回路の再調整を行う必要がある。真空管の特性を安定させるために真空管を一定の条件で使用状態に置くことを「[[エージング]]」という。ほぼ全ての真空管はその工場出荷時に規定のエージングを完了させ、すぐにその性能がほぼ発揮できるようにしてあるが、精密、繊細な性能を要求するものについては、加えて使用者の機器に実装して短時間のエージングを行い、特性が安定した後、回路の微調整を行う。ただし通常の真空管アンプにおいてこれを要求するものは少ない。
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=== 出典 ===
{{Reflist}}
 
== 参考文献・資料・規格 ==
 
=== [http://home.catv.ne.jp/ss/taihoh/vacuumtubes/vac/vac23.htm 真空管に関するJIS規格(いずれも廃止されている)] ===
 
*C 7001 受信用真空管の形名
*C 7002 送信管の形名
*C 7003 ブラウン管の形名
*C 7004 撮像管の形名
*C 7005 受信用真空管のベース,キャップ及びゲージの種類と寸法
*C 7006 電子管ソケット
* C 7007 真空管口金用フェノールレジン成型品
* C 7008 真空管のベース及びキャップの形名
* C 7009 送信管のベース及びキャップの種類と寸法
* C 7010 真空管口金検査ゲージの型名
* C 7011 送信管のベース検査ゲージ
* C 7013 定電圧放電管及び電圧標準管の形名
* C 7014 光電管の形名
* C 7015 計数放電管の形名
* C 7017 表示管の形名
* C 7101 受信用真空管通則
* [https://kikakurui.com/c7/C7102-1973-01.html C 7102 電子管用語]
* [https://jis.eomec.com/abolished/jisc71031962?abolishedid=10371031962#gsc.tab=0 C 7103 受信用真空管文字記号]
* C 7104 受信用真空管外形の種類と寸法
* C 7111 受信用真空管試験方法
* C 7112 マイクロ波管の形名
 
=== 書籍 ===
 
*『電子管工学 第2版』 桜庭一郎、森北出版、1989年、ISBN 9784627710115
*『東北大学基礎電子工学入門講座〈第8巻〉真空管』 和田 正信、近代科学社、1960年
*『電子工学講座 超短波真空管』 三戸左内、オーム社、1956年
*『真空管70年の歩み 真空管の誕生から黄金期まで』 ジョン・W. ストークス  (著)/斎藤 一郎 (翻訳)、誠文堂新光社、2006年、ISBN 9784416106020
*『真空管半代記』 藤室 衛、東京文献センター、2014年、ISBN 9784925187145
* {{Citation|和書
| last = 泉
| first = 弘志
| title = エレクトロニクス術語解説
| publisher = [[誠文堂新光社]]
| date = 1983-5-20
| ref={{Sfnref |エレクトロニクス術語解説 |1983 }} }}
 
== 外部リンク ==
{{Commonscat|Vacuum tubes}}
* [https://web.archive.org/web/20160724154336/http://www.toshiba-tetd.co.jp/ 東芝電子管デバイス]{{リンク切れ|date=2020年6月}}
* [http://www.asahi-net.or.jp/~hp6y-isym/ 真空管ラジオのページ]
* [http://www.toshiba-tetd.co.jp/ 東芝電子管デバイス]{{リンク切れ|date=2020年6月}}
* [https://etd.canon/ja/index.html キヤノン電子管デバイス株式会社]
* [http://tubedata.jp/ 真空管データシートデータベース]
* [http://www.asahi-net.or.jp/~hp6yUP2J-isymKNST/tube.htm 真空管ラジオのページアンプ情報]
 
{{真空管}}