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[[File:Hasshinpo of Mt.Fuji 40-3.jpg|thumb|500px|[[剣ヶ峰 (富士山)|剣ヶ峰]]山頂より見た八神峰と[[大内院]](2012年9月撮影)]]
'''八神峰'''(はっしんぽう)は、[[富士山_(代表的なトピック)|富士山頂]]にある8つの峰の総称。八神峰の他にも'''富士八峰'''(ふじはっぽう)や、[[仏教]]でいう八葉蓮華から由来した'''八葉'''(はちよう)という名称で呼ばれることもある<ref name="fuji">[httphttps://www.cbr.mlit.go.jp/fujisabo/bosai/fuji_info/chisiki/c07/index.html 富士山頂富士「八葉」の歴史 - 国土交通省 中部地方整備局 富士砂防事務所]</ref>。8という数字は仏教に由来するが、富士山頂には数え方によっては9から13程度の峰(ピーク)があり、どれを含むかは厳密にははっきりしていない。

[[富士山-信仰の対象と芸術の源泉]]「富士山域」の一部である「山頂の信仰遺跡群」の一部として[[文化遺産 (世界遺産)|世界文化遺産]]の構成要素に含まれている。
 
== 概要 ==
噴火口(大内院)の縁を形成する峰のうち顕著に高い頂にそれぞれ命名されている。中でも剣ヶ峰は日本最高峰として代表的な存在である。富士山の絵画で見られる山頂部の突起の描写はこの八神峰である。本来はこれら八神峰すべて登拝することを[[お鉢巡り]]という。これら各峰は仏教関連の名称より由来しており、また中央の大内院に本尊の[[大日如来]]を当てはめ『八葉九尊』と呼ぶのが一般的であった。さらに山頂だけではなく、山内各所にも多くの神仏があてはめられており、各山小屋にも仏像が置かれていた。しかしながら、当時の資料でも複数の名称があり混乱していた。
 
[[延宝]]8年([[1680年]])の『八葉九尊図』は、江戸時代初期に書かれた吉田口・下浅間(現[[小室北口本宮冨士浅間神社 (下浅間)|北口本宮富士浅間神社]]から見た図であるが、中央に[[両界曼荼羅|両界]]の大日如来を配置し、駿河口表([[富士山大宮・村山口登山道|大宮・村山口]])頂上から右回りで[[阿弥陀如来|阿弥陀]]・[[文殊菩薩|文殊]]・[[釈迦如来|釈迦]]・[[普賢菩薩|普賢]]・[[薬師如来|薬師]]・[[観音菩薩|観音]]・[[勢至菩薩|勢至]]・[[地蔵菩薩|地蔵]]を配置しており、各峰の名称もこれに対応していたと考えられる。
 
しかし例えば、[[中谷顧山]]が大宮・村山口から登山し、須走口から下山して、[[享保]]18年([[1733年]])に記した『富嶽之記』では、地蔵嶽・阿弥陀嶽・観音嶽・薬師獄までの4峰は『八葉九尊図』と同じだが、他は大日岳・[[コノハナサクヤヒメ|浅間]]ヶ獄・剣之獄・雷之獄の4峰となっている。[[芙蓉亭蟻乗]]が[[文政]]6年([[1823年]])に記した『富士日記』では6峰が『八葉九尊図』と同じだが普賢獄や勢至獄は存在せず、代わりに[[弥勒菩薩|弥勒]]獄や[[如来]]獄が記載されている。また[[新庄道雄]]が[[文化 (元号)|文化]]13年([[1816年]])から[[天保]]5年([[1834年]])にかけて記した『駿河国新風土記』の[[須山浅間神社|須山村浅間社]]の項では釈迦獄と薬師獄の2峰は記載されているものの、他は浅間ヶ獄・剣峯・駒ヶ獄・鋸ヶ獄・中将獄の5峰の計7峰となっており、同時期でも全く異なる名称を使っていたことがわかる。日本橋から吉田口の案内である[[万延]]元年([[1860年]])の『富士山道しるべ』においては、八葉蓮華を一ノ嶽地蔵・二ノ嶽阿弥陀・三ノ嶽観音・四ノ嶽釈迦・五ノ嶽弥勒・六ノ嶽薬師・七ノ嶽文殊・八ノ嶽大日如来と説明しているが、一方で地名の案内は薬師ヶ獄・観音ヶ獄・駒ヶ獄・文殊ヶ獄・剣の峯・馬背山・雷ヶ嶽・釈迦ヶ嶽となっており、どの峰にどの仏が祀られているのか、峰の名前や仏像の説明で一部はわかるもののはっきりとはしていない。
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[[1874年]]([[明治]]7年)から[[1875年]](明治8年)にかけて、[[神仏分離]]令により仏教由来の名称である「八葉」から[[神道]]にふさわしい「八神峰」となり、それぞれの峰の名称が変更された<ref>「富士山中山名改称ノ儀伺書」『山梨県史』資料編十六近現代三に掲載</ref>。しかし、その後も混乱は続き、このため同じ峰でも複数の呼称が存在している状態が続いた。例えば、[[1900年]](明治33年)発行の『大日本地名辞書』 では古来とも現在とも異なる名称が記載されている。その後、[[深田久弥]]が[[1940年]]([[昭和]]15年)に記した『富士山』では現在とほぼ同じ名称になっており、それ以降、[[1971年]](昭和46年)の学術書『富士山 富士山総合学術調査報告書』など、学術系の文献ではほぼ統一されており大きな変更はなかった。これら従来の名称も当時の[[富士山本宮浅間大社]]が提供した資料によるものとされる。ただし、各登山地図など世間的には浅間岳を駒ヶ岳の別名とし、本来の浅間岳は名称不明とする資料も多かった。
 
近年になると、富士山本宮浅間大社が遅くとも[[2005年]]([[平成]]17年)ごろに山頂の[[久須志神社 (富士山)|久須志神社]]前へ設置した案内図(後述する問い合わせを受けた時期にホームページにも掲載されている)では「大日岳(朝日岳)と成就岳の位置が逆」「大日岳ではなく別名の朝日岳が正式名称になっている」「伊豆岳がない」という従来との違いがあった。世界遺産登録に向けて標識の統一のため名称の整理の動きがあり、[[2009年]](平成21年)3月に[[環境省]]および静岡県と山梨県・地元自治体の土木部などで結成された「富士山標識関係者連絡協議会」(後の「富士山における適正利用推進協議会」)が浅間大社に問い合わせた結果、浅間大社では以前からこの名称を使っていたという回答を受けたことから、[[2010年]](平成22年)3月に制定されたガイドラインを基に頂上など各所へ設置した標識・案内地図も「大日岳(朝日岳)→成就岳」「成就岳→朝日岳」に変更された。さらに[[昭文社]]も浅間大社に問い合わせ、各登山地図の表記も[[2014年]](平成26年)より同じく変更された。今後はこちらで定着するとみられるが、[[2016年]](平成28年)6月22日に開館した[[山梨県富士山世界遺産センター]]や、[[2017年]](平成29年)12月23日に開館した[[静岡県富士山世界遺産センター]]では旧来の名称を使っており、いまだに混乱が見られる。
 
名称について、古い資料では「嶽」と書かれているものも多いが、現代では一般的に「岳」と記載されている。また、資料によって「ヶ」の有無はまちまちであるが、現代では一般的に剣ヶ峰と駒ヶ岳のみで使われている。以下「歴史的な八神峰」の節を除き、旧称においても基本的には「嶽」ではなく「岳」と記載する。
 
== 八神峰一覧 ==
以下は国土交通省 中部地方整備局 富士砂防事務所の調査<ref name="fuji" />を基に、富士登山オフィシャルサイト<ref>[httphttps://www.fujisan-climb.jp/trails/course1.html お鉢巡り - 富士登山オフィシャルサイト]</ref>などの情報で補完した。登山上級者であれば浅間岳のような禁足地(足を踏み入れてはいけない神域)や外浜道(外輪道)の一部危険区域など立入禁止区間を除けば登頂可能であるが、落石などで周りに迷惑をかけないよう厳重に注意する必要がある。なお、お鉢巡りは仏教の礼法である右繞に基づき、[[時計回り・反時計回り|右回り]]を正式とするため、[[富士山本宮浅間大社#奥宮|浅間大社奥宮]](旧大日堂)から右回りで記載する。
 
{| class="wikitable"
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=== 歴史的な八神峰 ===
* [[延宝]]8年([[1680年]])『八葉九尊図』 - [[阿弥陀如来|阿弥陀]]・[[文殊菩薩|文殊]]・[[釈迦如来|釈迦]]・[[普賢菩薩|普賢]]・[[薬師如来|薬師]]・[[観音菩薩|観音]]・[[勢至菩薩|勢至]]・[[地蔵菩薩|地蔵]]([[富士山大宮・村山口登山道|駿河口]]頂上から右回り、中央[[両界曼荼羅|両界]][[大日如来]])、
* 江戸時代([[宝永大噴火]]([[宝永]]4年([[1707年]]))以降) 富士山別当表口村山興法寺三坊『冨士山禅定図』 - 一嶽地蔵・二嶽阿弥陀・三観音・四釈迦・(内院両界曼荼羅・中央胎蔵界大日如来)・五嶽弥勒・六嶽薬師・七嶽文殊・八嶽宝生如来
* [[享保]]18年([[1733年]]) [[中谷顧山]]『富嶽之記』 - 浅間岳・薬師岳・観音岳・地蔵岳・阿弥陀岳・大日岳・雷之岳・剣之岳
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: 三島岳など周囲の雪解け水が地下を流れており、その一部が窪地に現れたもの。'''鮗ヶ池'''(このしろがいけ)とも。江戸時代には橋が架かっていた時期もあった。
; 村山大宮拝所(むらやまおおみやはいしょ)
: 奥宮から鮗池を超えて、三島岳の北、虎岩の南に位置する、[[富士山大宮・村山口登山道|大宮・村山口]]からの登山者が内院散銭を行っていた場所。
; 虎岩(とらいわ)
: 三島岳の下、大内院につきだしている、うずくまる虎の形に見える岩。'''獅子岩'''(ししいわ)、'''虎石'''(とらいし)とも。
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== 外部リンク ==
{{Commonscat|Hasshinpo}}
* [http://yamao.lolipop.jp/fuji/2015/sancho/fuji-peak3.htm 富士山頂 お鉢のピーク名称の混乱 増補版] - [[田代博]]のホームページ
* [http://fujisan60679.web.fc2.com/santyou01.html 山頂・御鉢廻り解説] - 富士登山情報サイト ROUTE5
* [http://www.fujisanpo.com/route/summit.html 富士山剣ヶ峰とお鉢巡り] - 富士さんぽ
* [httphttps://www.fujisan-climb.jp/trails/course1.html お鉢巡り] - 富士登山オフィシャルサイト
* [http://www.fujisan-net.jp/data/article/1661.html 金明水と銀明水] - 富士山NET
 
{{Commonscat|Hasshinpo}}
{{富士山の地理}}
{{Mountain-stub}}
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{{DEFAULTSORT:はつしんほう}}
[[Category:富士山]]
[[Category:日本の名数8|しんほう]]
[[Category:富士山-信仰の対象と芸術の源泉]]