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{{参照方法|date=2018年1月}}
'''誤り検出訂正'''(あやまりけんしゅつていせい)または'''エラー検出訂正''' (error detection and correction/error check and correct) とは、[[データ]]に'''符号誤り'''(エラー)が発生した場合にそれを検出、あるいは検出し訂正([[前方誤り訂正]])することである。検出だけをする'''誤り検出'''または'''エラー検出'''と、検出し訂正する'''誤り訂正'''または'''エラー訂正'''を区別することもある。また[[改竄検出]]を含める場合も含めない場合もある。誤り検出訂正により、[[記憶装置]]や[[デジタル]]通信・信号処理の信頼性が確保されている。
== 誤り検出と誤り訂正 ==
一般に誤り検出訂正では、k 単位長(k [[ビット]]、k [[バイト (情報)|バイト]] など)の符号を、n = m + k 単位長の符号語に変換する。これを (n, k) 符号、あるいは、符号形式を添えて (n, k) ××符号などと呼ぶ(誤り訂正符号"Error Correction Code"を特に'''ECC'''と略す)。符号語は、最小[[ハミング距離]]が d > 1、つまり、互いに少なくとも d 単位が異なっていて、この[[冗長性 (情報理論)|冗長性]]を利用して[[前方誤り訂正]]が可能となる。dを添えて、 (n, k, d) 符号ともいう。
 
適切な (n, k, d) 符号は、符号語あたり d - 1 単位の誤りを検出でき、[(d - 1) / 2] 単位([ ] は[[床関数]])の誤りを訂正できる。d ≦ 2 ならば、誤り訂正能力は [(d - 1) / 2] = 0 となり、単なる誤り検出となる。ただし、データの消失に対しては、つまり誤り位置がわかっているときは、d 単位の消失を訂正できる。これを特に[[消失訂正]]と呼ぶ。単なる誤り訂正も、最低 1 単位の消失訂正能力を持つ。
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* どちらか(どちらかはわからない)に誤りが起これば訂正できない。(誤り訂正能力0)
* どちらかが消失すれば訂正できるが、両方に起これば訂正できない。(消失訂正能力1)
となる。(3, 1, 3) 符号である[[一方向誤り検出訂正#動作原理誤り検出と誤り訂正|三重ミラーリング]]では、誤り検出能力と消失訂正能力が2となり、誤り訂正能力1も得る。
 
双方向の[[通信]]では、[[前方誤り訂正]]ができなくても誤り検出さえできれば、送信者に再送を要求することで実質的に誤りを訂正できる。これを自動的におこなう仕組みを、[[自動再送要求]] (ARQ, Automatic Repeat reQuest) と呼ぶ。
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多くの誤り検出・訂正は、全体の誤り率が許容範囲でも、バースト誤りに対しては、1つのブロックに多くの誤りが集中するため、対応できない。そこで、符号の順序を入れ替え、同じブロックのデータを分散させ、バースト誤りが1つのブロックに集中しないようにする。この技術を[[インターリーブ]]という。
 
=== バースト誤り ===
切り替え動作、[[フェージング]]などが原因。%SESを評価尺度に用いるのに適している。
 
=== ランダム誤り ===
[[熱雑音]]などが原因。[[符号誤り率|BER]]を評価尺度に用いるのに適している。
 
== 誤り補正 ==
特に音声や映像など、人間の感覚に訴える信号のディジタル化されたデータで真の値から多少の[[誤差]]が許容される場合、誤り検出は可能でも誤り訂正が不可能(訂正能力を超えている)かまたは誤り訂正が実装されていないとき、元のデータ自身に含まれる冗長性を利用して欠落データを予測して置き換えることがある。これを特に'''誤り補正''' (error compensation) と呼んで区別する。補正されたデータは真の値と一致するとは限らないが、真の値から許容される誤差内にあると期待される。[[コンパクトディスク|CD]]などでは、誤り補正がデータ読み取り誤りに対する「最後の手段」として使われている。
 
誤り補正では、一般には、近傍の標本に重み付けをした和、すなわちフィルタを畳み込んだ値を予測値(補正値)とする。特に、直前・直後の標本を使うものを、以下のように呼ぶ。
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*** [[巡回冗長検査]] (CRC) - [[フロッピーディスク]]、[[ユニバーサル・シリアル・バス|USB]]
==== ハッシュ(参考) ====
* [[暗号学的ハッシュ関数]] - 誤り検出の代用にしたり、改竄防止と誤り検出を兼ねることがある。(改竄や盗聴ではなく)ノイズの影響のみを考慮する場合、[[脆弱性]]があっても問題ない。
* [[暗号学的ハッシュ関数]]
** MD [[MD4]] - [[MD5]]
** [[Secure Hash Algorithm]] - [[SHA-1]] - [[SHA-2]] (SHA-224, SHA-256, SHA-384, SHA-512) - [[SHA-3]]
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** [[:en:Hagelbarger code|Hagelbarger code]]
** [[最尤復号符号]]、[[ビタビアルゴリズム]]([[:en:Viterbi Algorithm|Viterbi Algorithm]])
 
== 参考図書 ==
* 宮川 洋、岩垂 好裕、今井 秀樹:「コンピュータ基礎講座 18 符号理論」、昭晃堂、ISBN 978-4785630065(1973年)。
* 嵩 忠雄:「符号理論」、コロナ社 (1975年)。
* 嵩 忠雄:「情報と符号の理論入門」、昭晃堂、ISBN 978-4785620264(1989年12月)。
* 今井 秀樹:「符号理論」、電子情報通信学会、ISBN 978-4885520907 (1990年3月)。
* 汐崎 陽:「情報・符号理論の基礎」、国民科学社、ISBN 978-4875535041 (1991年4月)。
* 藤原 良、神保 雅一:「符号と暗号の数理」、共立出版、ISBN 978-4320026612 (1993年10月)。
* 江藤 良純、金子 敏信 (監修):「誤り訂正符号とその応用」、オーム社、ISBN 978-4274034862(1996年12月)。
* 平沢 茂一、西島 利尚:「符号理論入門」、培風館、ISBN 978-4563014834 (1999年11月)。
* 福村晃夫、後藤宗弘:「算術符号理論」、 コロナ社、ISBN 978-4339003314 (2000年)。
* 内田 興二:「有限体と符号理論」 (臨時別冊・数理科学、SGCライブラリ-5)、サイエンス社 (2000年)。
* 情報理論とその応用学会 (編) :「符号理論とその応用」、培風館、ISBN 978-4563014537 (2003年7月)。
* J.ユステセン、T.ホーホルト:「誤り訂正符号入門」、森北出版、ISBN 978-4627817111 (2005年9月30日)。
* 濱田 昇:「情報理論と符号理論」、共立出版、ISBN 978-4320121645 (2006年10月)。
* 坂庭 好一、渋谷 智治:「代数系と符号理論入門」、コロナ社、ISBN 978-4339024463 (2010年4月)。
* 植松 友彦:「代数系と符号理論」、オーム社、ISBN 978-4274502743 (2010年4月9日)。
* 西村 芳一:「データの符号化技術と誤り訂正の基礎」、CQ出版; 改訂新版、ISBN 978-4789846400 (2010年7月1日)。
* 和田山 正:「誤り訂正技術の基礎」、森北出版、ISBN 978-4627817319 (2010年7月6日)。
* 汐崎 陽:「情報・符号理論の基礎」、オーム社、ISBN 978-4274210075(2011年3月1日)。
* 先名 健一:「例題で学ぶ符号理論入門」、森北出版、ISBN 978-4627817418 (2011年7月15日)。
* 神谷 幸宏、川島 幸之助: 「情報・符号理論 ―ディジタル通信の基礎を学ぶ―」、オーム社、ISBN 978-4274503870 (2012年3月24日)。
* 萩原学:「符号理論: デジタルコミュニケーションにおける数学」、日本評論社、ISBN 978-4535786646(2012年8月10日)。
* G.A.ジョーンズ、J.M.ジョーンズ: 「情報理論と符号理論」、丸善出版、ISBN 978-4621063422 (2012年7月17日)。
* Henning Stichtenoth、新妻 弘 (訳):「代数関数体と符号理論」、共立出版、ISBN 978-4320110458 (2013年8月24日)。
* 楫 勇一:「情報・符号理論」、オーム社、ISBN 978-4274213175 (2013年10月26日)。
* 萩原 学:「進化する符号理論」、日本評論社、ISBN 978-4535787971 (2016年9月9日)。
 
== 関連項目 ==
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* [[改竄]]
* [[改竄検出]]
* [[符号理論]]
* [[認証]]
* [[ガロア体]]
87 ⟶ 122行目:
* [[冗長性 (情報理論)|冗長化]]
<!--*[[シャノン限界]]([[:en:Shannon limit|Shannon limit]])--><!--赤リンク-->
* [[ECCメモリ]]
 
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