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{{OtherusesOtheruseslist|歴史上の戦争|主な戦争の一覧|[[戦争一覧]]|[[トランプ]]を使ったゲームその他の「戦争」|戦争 (トランプゲーム曖昧さ回避)|じゃんけんから派生した遊び|軍艦じゃんけん|その他}}
{{multiple image|perrow = 2|total_width=400
| image1 = Tiepolo_Vercellae.jpg
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'''戦争'''(せんそう、{{lang-en-short|war}})とは、[[兵力]]による[[国家]]間の闘争である<ref name="国際法辞典217-219">「戦争」[[#国際法辞典|『国際法辞典』]]、217-219頁。</ref>。広義には[[内戦]]や[[反乱]]も含む([[戦争一覧]])。集団を形成するようになる有史以来、人類が繰り返してきたものである。戦争に対を為すのは[[国際紛争の平和的解決]]である<ref name="国際法辞典118-119">「国際紛争の平和的解決」[[#国際法辞典|『国際法辞典』]]、118-119頁。</ref>。[[銀行]]などが引受けた巨額の戦費は慢性的な[[租税]]負担となる。[[市民]]生活に対する制限と攻撃は[[個人の尊厳]]を蹂躙する。時代ごとの考え方によって、[[違法性]]が認定されてきた<ref>三石善吉 [http://www.tsukuba-g.ac.jp/library/kiyou/2004/03.MITSUISHI.pdf 戦争の違法化とその歴史] 東京家政学院筑波女子大学紀要第8集 2004年 pp.37-49.</ref>。
 
[[21世紀]]に入り、地球規模で敷設されたITインフラを通して膨大な情報が世界中で流通するようになると、物理的な攻撃を伴わない国家間の争いが増加した。そのような争いの比喩として、[[情報戦]]・[[経済戦争]]・[[貿易摩擦|貿易戦争]]・[[サイバー戦争]]・[[受験戦争]]などという言葉も用いられるようになった。
 
== 概説 ==
{{出典の明記| date = 2024年1月| section = 1}}
 
[[画像:Jaakarit_vaasan_torilla.jpg|thumb|200px|[[フィンランド内戦]], [[1918年]]。[[ヴァーサ]]の広場に集まったイェーガー大隊。マンネルハイムが視察している。]]
戦争とは軍事力を用いて様々な政治目的を達成しようとする行為(行為説)、または用いた結果生じる国家間の対立状態である(状態説)。一般に、国家もしくはそれに準ずる集団が、自衛や利益の確保を目的に武力を行使し、戦闘を起こす事。戦争は太古から続く[[人類]]の営みの側面であり、最も原始的かつ[[暴力]]的な紛争解決手段であると言える。
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[[猿人]]や[[原人]]の[[食人]]説が、オーストラリアの考古学者[[レイモンド・ダート]]によって1960年代まで繰り返し主張された。また、1930年代に[[北京原人]]食人説がドイツの人類学者[[フランツ・ワイデンライヒ]]によって疑われた。しかし、世間では北京原人食人説はいよいよ有名になってしまった。これらのことから、猿人・原人の食べ合いが人類の歴史とともにあったと解釈し、広めたのがアメリカの作家[[ロバート・アードリー]]であった。さらに動物行動学を興してノーベル賞を受けたオーストリアの[[コンラート・ローレンツ]]は『[[攻撃行動|攻撃]]』という、人類の攻撃的本能を説いた。この本能説がさらに広がった。という説を立てている。
 
ただし、猿人の殺人・食人の疑いを考古学者ボブ・ブレインが示している。また、北京原人の食人説については、その後の研究で世界の人類学者が疑いを示している<ref>佐原真「ヒトはいつ戦い始めたか」、金関恕・春成秀爾編『戦争の考古学』佐原真の仕事4 岩波書店</ref>。
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[[ファイル:Napoleons retreat from moscow.jpg|200px|thumb|right|[[ナポレオン戦争]]における[[1812年ロシア戦役]]]]
 
[[帝国主義]]に基づく[[植民地]]支配は[[富の集積]]を実現し、[[イギリス|英国]]は[[産業革命]]を実現できた。それによって[[工業]]の発達が[[軍艦]]や[[銃器]]の性能を引き上げた。[[軍事技術]]の発達は戦争の形態を大きく変化させる。[[グスタフ2世アドルフ (スウェーデン王)]]は軍事改革の中で[[常備軍]]の制度を確立し、その後の戦争のあり方を基礎付けた。また計画的な兵站や規律を保つための[[軍事教育]]などもこのころに整備され、各国で同様の制度が採用されるようになる。特に[[歩兵]]の重要性が[[小銃]]の開発により高まったことは、完璧な陣形や規律正しさを軍隊の各兵員に求めることになる。また[[火砲]]の登場により[[砲兵]]という兵科が確立されたのもこの時代であり、戦略や戦術、軍事[[土木工学]]などの分野も大きな前進を見る。近代が、さらなる戦争の拡大につながると考える人が、非常に多数派である。
 
アメリカ大陸では19世紀前半には[[米英戦争]]、19世紀後半には[[米墨戦争]]、[[南北戦争]]、[[米西戦争]]、[[米比戦争]]があった。
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2つの世界大戦以後から冷戦期にかけて、領土の占有を最終目的とする形態の戦争は減少し、特に冷戦後は、政治体制や宗教体制を自陣の望むものとするための戦争や紛争が主体となっている<ref>石津朋之、ウィリアムソン・マーレー著 『21世紀のエア・パワー』 芙蓉書房出版 2006年10月25日第1刷発行 ISBN 482950384X</ref>。
 
2020年から2021年にかけて、[[インド]]と[[中華人民共和国]]の両国兵士がヒマラヤの国境付近で戦闘状態に陥ったが、核兵器を持ち合う両国は戦闘を戦争レベルに発展させないために、あえて[[火器]]を使用せずに[[クギ]]を打った棒や素手で攻撃をするものとなった。数十人単位の死者が出るという穏やかなものではなかったが、新たな戦争の形態や抑止の在り方を示唆するものとなった<ref>{{Cite web |和書|date=2020-06-26 |url=https://special.sankei.com/a/international/article/20200626/0001.html |title=クギを打った棒や素手で殴り合い 中印衝突で 奇妙な戦闘の舞台裏|publisher=産経新聞 |accessdate=2021-02-13}}</ref>。
 
[[2022年]]2月24日、[[ロシア]]による[[2022年ロシアのウクライナ侵攻|ウクライナ侵攻]]が行われ、ロシアの領土拡大を目的とした本格的な[[侵略戦争]]が勃発した。[[20世紀]]に起きた2度の[[世界大戦]]の反省を踏まえて、[[国際協調主義|国際協調]]が進められていた[[21世紀]]においては珍しい形態の戦争であり、国際社会の秩序を大きく揺るがす事態となった<ref>{{Cite web |和書|title=ロシア、ウクライナ複数都市を攻撃 首都空港巡り戦闘(写真=AP) |url=https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR246ZK0U2A220C2000000/ |website=日本経済新聞 |date=2022-02-24 |accessdate=2022-02-24 |language=ja}}</ref>。[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]時代の到来により、[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]でも[[リアルタイム]]に戦況が報じられるようになった<ref>{{Cite web |和書|title=ロシアのウクライナ侵攻、ネット上に情報続々 宣戦布告はYouTubeに、火の手の様子はTwitterに、航空機の状況はFlightradar24に |url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2202/24/news126.html |website=ITmedia NEWS |accessdate=2022-02-24 |language=ja}}</ref>。
 
== 分類 ==
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=== 正規性による分類 ===
{{出典の明記|date=2019年8月|section=1}}
* '''正規戦'''とは国家間で遂行される伝統的な戦争の形態であり、近代に特に多く見られる形態の戦争である。堂々と部隊を戦闘展開し、[[攻撃 (戦術論軍事)|攻撃]]と[[防御 (戦術論軍事)|防御]]を行って勝敗を競うものであり、第一次世界大戦や第二次世界大戦がその代表例である。ただし、戦争の違法化や世界の複雑化などに伴い国家が正規戦を遂行するには莫大なコストと膨大な犠牲が伴うようになったため、現代においてこの形態の戦争は[[フォークランド紛争]]が挙げられる程度で、国家間が直接衝突する戦争は非常に少なくなっていたが、2022年には[[2022年ロシアのウクライナ侵攻|ロシアがウクライナに侵攻]]し、フォークランド紛争を遥かに上回る大規模な全面戦争が勃発している。
* '''不正規戦'''とは、伝統的な国家間の戦争ではなく、非国家の武装勢力と国家の[[軍隊]]という非対称的な構図の元に行われる争いのことであり、近年この形態の戦争が増加しつつある。主に[[テロ]]や[[ゲリラ戦]]が展開され、長期化する傾向にあることが特徴と言える。[[ベトナム戦争]]や[[チェチェン紛争]]、[[アフガニスタン紛争 (2001年-2021年)]]などが例として挙げられる。
* 双方による[[宣戦布告]]なしになし崩し的に大規模な戦闘に発展した[[満州事変]]、[[日中戦争]](当時は「支那事変」と呼ばれた)はいずれの範疇に入るか微妙である。
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=== 目的による分類 ===
{{出典の明記|date=2019年8月|section=1}}
* [[侵略戦争]]は敵の領土に侵攻し、積極的に敵を求めてこれを攻撃、獲得した都市、領域を占領する攻勢作戦の方式をとった戦争である。戦術的には機動[[攻撃 (軍事)|攻撃]]を行い、獲得した地域や拠点はこれを[[占領]]する。
* [[防衛戦争]]は侵略してくる敵に対してこれを破砕し、自らの領土や財産などを守るための防勢作戦の方式をとった戦争である。戦術的には各種[[防御]]を行い、進攻する敵を排除する。
 
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== 戦争の本性 ==
{{出典の明記|date=2019年8月|section=1}}
戦争にどのように勝利するのかではなく、戦争とは何なのかという問題を考察するためには戦争の内部の構造がどのようになっており、どのような原理が認められるのかを明らかにすることが必要である。古代の戦争学的な論考に、哲学者[[プラトン]]の『[[国家]]』があり、その中で哲学者[[ソクラテス]]はさまざまな領域の職人、専門家によって構成された自足的な国家を想定しているが、国家が成立したとしても人間の欲求は際限なく拡大し続けるために、自足する以上の資源を求めて他の共同体に対して戦争が発生すると論じている。これは戦争の根本を[[国家]]に求める見方であり、実際に軍事史においても国家は戦争の主要な行為主体であった。しかし、これは戦争の限定された本質を明らかにしているに過ぎない。戦争がランダムに起こったわけではないことは留意すべきだから、親社会的な行動などが戦争を防ぐのに役立つかどうかは、やはり興味があるところである<ref>{{Cite web |title=Relationship Between Conflict and Prosocial Behaviours |url=https://www.visionofhumanity.org/experience-of-conflict-and-prosocial-behaviours/ |website=Vision of Humanity |date=2023-04-04 |access-date=2023-04-08 |language=en-US |first=Puja |last=Pandit}}</ref>
 
=== 闘争 ===
{{出典の明記|date=2019年8月|section=1}}
そもそも戦争が成り立つ以前に、人間がなぜ[[対立]]するのかという問題がある。社会学者[[マックス・ヴェーバー|ヴェーバー]]の『社会学の根本概念』によれば、ある主体が相手の抵抗を排除してでも自分自身の意志を達成しようとする意図に方向付けられた社会的関係が[[闘争]]であると定義する。またこの闘争は物理的暴力に基づいた闘争や闘争手段を非暴力的なものに限定した平和的な闘争に分類できる。このような闘争が社会の中で発生する根本的な理由について政治思想家[[ホッブズ]]は『[[リヴァイアサン (ホッブズ)|リヴァイアサン]]』において国家や政治団体が存在しない[[自然状態]]を想定している。つまり各個人がそれぞれ等しく自己保存の法則に従って生活資源を獲得するため、また敵の攻撃を予防するために、結果として万人の万人に対する闘争が生じることになる。闘争において常に暴力が使用されるとは限らない。暴力によって相手を抹消しなくとも、交渉や協力によって争点を解決することは原理的に不可能ではない。しかし経済学者[[マルサス]]が『[[人口論]]』で述べているように、人口は生活手段の分量を超えて常に増大されるため、その過剰人口の出現は疫病、飢餓、戦争などの積極的制限によって調整されるために闘争は流血の事態にまで発展することになる。なぜなら生存が脅かされる事態は人間にとって常に極限状況であり、社会全体にとっても闘争を暴力化させる重大な動機でありうるものである。
 
=== 暴力 ===
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== 侵略と防衛 ==
[[軍事学]]において戦争はその作戦戦略の差異を主体別に見て侵略と防衛の二つの作用が衝突して発生するものであると考えられる。
まず[[侵略]]には法的な定義も存在するが、軍事的な定義としては外敵または内敵によって軍事力が先制行使され、侵入(invasion)、[[攻撃 (軍事)|攻撃]](attack)などの攻勢の作戦行動が実行されることである{{efn|国際政治学において侵略と認定する条件として、第一に武力行使、第二に先制攻撃、第三に武力による目的達成の意思、が挙げられており、自衛や制裁などの免責理由がないこととして価値中立的な定義としている。ただし、侵略の条件に「意思」が挙げられていることはこの定義の法律的性質を現すものであり、ある特定の価値観が存在していると指摘できる。そのため、軍事上の事実的行為として侵略は武力の先制使用であると考えられている<ref>服部実『防衛学概論』(原書房、1980年)33-34頁</ref>。}}。一方で[[防衛]]は狭義には侵略に反応してこれを排除するために軍事力が使用され、[[防御]]や[[後退]]などの防勢の作戦行動が実行されることであり、広義には抑止活動をも含む。
 
=== 侵略 ===
{{出典の明記|date=2019年8月|section=1}}
[[侵略]]はその手段から[[直接侵略]]と[[間接侵略]]に分類される。直接侵略は外国が軍事力の行使を行う伝統的な侵略方式であり、間接侵略は防衛側の国家内の反政府勢力などを教唆、指導したうえで[[反乱]]、[[革命]]などによって軍事力を間接的に行使する侵略方式である。実際の侵略はこの二種類の手段を同時に使用する場合や、時間差で使用する場合などがある。
また敵が内敵であれば、これもまた区別して考えられる。内敵とは国内の勢力が主体とり、政府転覆や国体の破壊などを目的を持ち、武力を行使する敵である。内敵の侵略は外国に一時的に外国に逃れ、外部から侵略する外部侵略と、内部でゲリラ戦や反乱、[[クーデター]]などを行う内部侵略の方式がある。内敵と外敵は軍事目的が同じであるので、結託しやすい。
 
=== 防衛 ===
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* [[スパイ]]・同調者・協力者の獲得工作の展開。
* [[テロリスト]]、[[革命家]]、協力者、破壊工作員などによる工作活動(ほとんどは政府の判定のみに基づき、後日冤罪や政府特務機関の自演だったと判明する例もある)。
* 限定地域(海域)における軍事施設・艦艇などに対する[[攻撃 (軍事)|攻撃]]、[[占領]]。
* 限定地域以外における軍事施設・艦艇などに対する攻撃、占領。
* 軍事施設などに対する攻撃、占領。
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== 比喩的な用法 ==
{{出典の明記|date=2019年8月|section=1}}
物品・サービスのシェア・覇権争いなどを、現実の戦争になぞらえて「○○戦争」と呼ばれることがある([[ビデオ戦争]]、[[日本におけるゲーム機戦争|ゲーム機戦争]]、[[ブラウザ戦争]]、[[HY戦争]]、[[きのこたけのこ戦争]]など)。
 
== 脚注 ==
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** ダニガン、マーテル、『戦争回避のテクノロジー』 北詰洋一訳、河出書房新社、1990年
* De Tocqueville, A. 1944. Democracy in America. P. Bradley ed. 2 vols. New York: Knopf.
** [[トクヴィル]] 『[[アメリカの民主政治|アメリカのデモクラシー]]』、[[松本礼二]]訳、[[岩波文庫]]全4巻
* Douhet, G. 1942. The command of air. D. Ferrari. trans. New York: Coward-McCann.
* Dupuy, T. N. 1987. Understanding war. New York: Paragon House.
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** [[テロ|テロリズム]]、[[ジェノサイド]]
** [[戦争画]]、[[戦争映画]]、[[戦争漫画]]、[[反戦運動]]、[[戦争柄]]
 
* その他
** {{ill2|戦争ツーリズム|en|War tourism}}(観戦)
** {{ill2|ミリタリーアート|en|Military art}}
** {{ill2|中世の戦争|en|Medieval warfare}}
*** [[ヘラルド・オブ・アームズ]](紋章官) ‐ 紋章に関する知識から、敵味方の部隊の位置と出自、活躍について把握が行えたことから従軍した。
 
== 外部リンク ==