「グローバリゼーション」の版間の差分

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経済的グローバリゼーションとは、物資、サービス、技術、資本の国境を越えた移動が急激に増加することによって、世界中の国民経済が経済的に相互依存することである<ref name="Joshi, Rakesh Mohan 2009">Joshi, Rakesh Mohan, (2009) International Business, Oxford University Press, New Delhi and New York {{ISBN|0-19-568909-7}}.</ref>。経済的グローバリゼーションは、世界貿易を抑制する関税や税金、貿易規制などの障害を減少させる一方で、国家間の経済統合を増加させ、グローバル市場または単一の世界市場を出現させることとなる<ref>Riley, T: "Year 12 Economics", p. 9. Tim Riley Publications, 2005</ref>。論者の視点に応じて、経済のグローバリゼーションは肯定的にも否定的にも見ることができる。経済的グローバリゼーションにはさまざまな要素が含まれる。生産のグローバル化は、コストと品質の違いから利益を得るために、世界中のさまざまな場所にある供給元から商品やサービスを取得することを意味する。同様に、市場のグローバル化はさまざまな別々の市場を巨大なグローバル市場に統合することと定義される。
 
現在のグローバリゼーションは、外国[[直接投資]]を含む資本の国際的流動の増加、貿易障壁の低下、その他の経済改革、そして多くの場合は移民によって、先進国が発展途上国と統合しつつあることがおもな原因となっている。グローバリゼーションが深化する前は、アメリカ合衆国は世界の輸出において不可欠なまでの経済力を保持した覇権国家だった。しかし、グローバリゼーションの到来後、ドイツ、日本、韓国、中国はアメリカの立場に挑戦する重要な競争相手となった<ref>[https://web.archive.org/web/20130626053836/http://www.ijbssnet.com/journals/Vol_2_No_23_Special_Issue_December_2011/36.pdf ''Globalization and its Impacts on the World Economic Development ''.]</ref>。日本では[[2010年代]]に入る前後から、かつてコスト削減や利益を増やすために[[中華人民共和国|中国]]企業に積極的にノウハウを教えた日本の企業が、逆に中国企業に買収される動きも出ている<ref>「[[真相報道 バンキシャ!]]」2010-5-2放送分 [[日本テレビ放送網|日本テレビ]]</ref>。
 
グローバリゼーションの深化には、情報通信技術の発達が大きな役割を果たしている。すでに[[航空]]と[[海運]]、それに[[道路]]・[[鉄道]]の改良や[[海上コンテナ]]の導入によって物流の効率化が進み物流ネットワークの発達が始まっていたが、1980年代後半以降事務の電算化や[[通信衛星]]の利用が始まり<ref>「情報通信技術と情報化社会」p42 箸本健二(「グローバリゼーション 縮小する世界」所収 矢ヶ﨑典隆・山下清海・加賀美雅弘編 朝倉書店 2018年3月5日初版第1刷)</ref>、1990年代後半のインターネットの発達によって情報の迅速な交換が可能となり、遠隔地間の情報伝達コストが大幅に下落した<ref>「グローバル・イッシューと国際レジーム」p172 小倉明浩(「グローバル・エコノミー」所収 岩本武和・奥和義・小倉明浩・金早雪・星野郁著 有斐閣 2007年7月10日新版第1刷)</ref>。このため世界で最適な調達・販売を行う[[サプライチェーン・マネジメント]]が発達を遂げ、これと国際資金移動および国内金融市場の規制緩和によって資金移動が容易になったことが、[[多国籍企業]]の成長と世界経済の支配割合の高まりをもたらした。
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{{main | {{日本語版にない記事リンク | グローバリゼーションと疾病 | en | Globalization and disease}}}}
{{see also | 新興感染症 | パンデミック | 未伝播地流行 | {{日本語版にない記事リンク | 野生生物の密輸と動物源性感染症 | en | Wildlife smuggling and zoonoses}} }}
当世のグローバリゼーションでは、世界は他のいかなる時代よりも大きく互いに依存する。効率性と安価な輸送手段はわずかの土地しか近づけないようにさせ、地球規模の貿易の増大はますます人々に種の障壁を後に飛び越える'獣源性の病気'({{lang-en-short |animal disease}})との接触をもたらす([[人獣共通感染症 |人畜共通感染症 ]] を見よ)。<ref>{{cite news |title=The Coronavirus Could Finally Kill the Wild Animal Trade |url=https://foreignpolicy.com/2020/02/25/virus-bats-pangolins-wild-animals-coronavirus-zoonotic-diseases/ |work=Foreign Policy |date=25 February 2020 |access-date=6 April 2020 |archive-url=https://web.archive.org/web/20200317014208/https://foreignpolicy.com/2020/02/25/virus-bats-pangolins-wild-animals-coronavirus-zoonotic-diseases/ |archive-date=17 March 2020 |url-status=live }}</ref>
 
人的移動の増大はそれまで小さな地域にのみ存在していた[[感染症]]の拡大リスクをも増大させる。特に1980年代の[[後天性免疫不全症候群]](AIDS)は[[ブラックアフリカ]]を中心に全世界的な流行を見せたが、先進国に拡散した際はまず海外との交流の多い大都市に患者が現われ、そこから国内へと拡散していくパターンが広く見られた。これはそのまま人間の移動パターンを示しており、グローバリゼーションにおける感染症の拡大状況と危険性を示すこととなった<ref>「人の移動と病気のグローバル化」p120 加賀美雅弘(「グローバリゼーション 縮小する世界」所収 矢ヶ﨑典隆・山下清海・加賀美雅弘編 朝倉書店 2018年3月5日初版第1刷)</ref>。
 
[[新型コロナウイルス感染症]]、略してCOVID-19は、2019年11月の中国の、[[武漢]]で最初に現れた。180以上の国はその時以来症例を報告した。<ref>{{cite news |title=Coronavirus: Which countries have confirmed cases? |url=https://www.aljazeera.com/news/2020/01/countries-confirmed-cases-coronavirus-200125070959786.html |work=Al Jazeera |date=6 April 2020 |access-date=6 April 2020 |archive-url=https://web.archive.org/web/20200331073742/https://www.aljazeera.com/news/2020/01/countries-confirmed-cases-coronavirus-200125070959786.html |archive-date=31 March 2020 |url-status=live }}</ref>{{As of | 2020 | 04 | 06 | df = US }}、アメリカ合衆国は世界の中で最も蔓延の活発な事例となった。<ref>{{cite web|url=https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6|title=Coronavirus COVID-19 Global Cases by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins|access-date=March 25, 2020|archive-url=https://web.archive.org/web/20190905173559/https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6|archive-date=5 September 2019|url-status=live}}</ref>最悪に冒された国々からの340万人は、[[新型コロナウイルス感染症の世界的流行 (2019年-) | 新型コロナウイルスのパンデミック]]の発端からの最初の三ヶ月以内でアメリカ合衆国を入れた。これはグローバルな経済において有害な衝撃を与えた。とりわけ参入規制が強くなるのと同じ様にうまく寡占市場での市場占有率が増大している、金融上の困難に弱い立場の、(経営上)際限のない義務のあるまたは自営業の、[[中小企業]]と{{ 日本語版にない記事リンク | 零細企業 | en | micro-enterprise }}において。
 
== 議論 ==
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=== 考察 ===
*経済学者の[[トマ・ピケティ]]は「グローバル化そのものはいいことであり、経済が開放され一段の成長をもたらした。格差拡大を放置する最大のリスクは、多くの人々がグローバル化が自身のためにならないとして、極端な[[ナショナリズム]]に向かってしまうことである」と指摘している<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF19H05_Z11C14A2SHA000/ グローバル化に透明性を パリ経済学校教授・ピケティ氏] 日本経済新聞 2014年12月22日</ref>。
*[[経営学者]]・経済学者の[[高巖]]は「グローバリゼーションに関して、『グローバリゼーションそのものが貧困問題を解決する』『グローバリゼーションによって貧困問題はより深刻化する』という2つの見解がある」と指摘している<ref name="csr2008213">[http://www.nikkei.co.jp/csr/think/think_2008_2.html CSRを考える 新春特別対談 2008年のCSR新展開を占う 後半] 日経CRSプロジェクト 2008年2月13日</ref>。
 
*[[経営学者]]・経済学者の[[高巖]]は「グローバリゼーションに関して、『グローバリゼーションそのものが貧困問題を解決する』『グローバリゼーションによって貧困問題はより深刻化する』という2つの見解がある」と指摘している<ref name="csr2008213">[http://www.nikkei.co.jp/csr/think/think_2008_2.html CSRを考える 新春特別対談 2008年のCSR新展開を占う 後半]日経CRSプロジェクト 2008年2月13日</ref>。
 
*経済学者の[[ジョセフ・E・スティグリッツ]]は、グローバリゼーションそれ自体は評価しつつ、そのプロセスは正しい政策の組み合わせ・順序を踏まえるべきとしている<ref>田中秀臣・野口旭・若田部昌澄編 『エコノミスト・ミシュラン』 太田出版、2003年、201頁。</ref>。
 
*[[経済学者]]の[[ダニ・ロドリック]]は著書『グローバリゼーション・パラドクス』で、グローバル化の今後の選択肢として、「民主主義を犠牲にしてでもグローバル化を進める」「グローバル化を進めるとともに政治統合を推進させ、グローバル民主主義を実現させる」「各国の政策的自律性を保証し、国家レベルでも民主主義を維持する代わりに、グローバル化に一定の制限を加える」という3つの道があると指摘している<ref>日本経済新聞社編 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、81-82頁。</ref>。
 
*経済学者の[[竹中平蔵]]は「グローバル化の進展で起きることは、財政制度・金融制度などの制度の競争である。制度の均一化が起きてくることが、グローバリゼーションである」と指摘している<ref>竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、218頁。</ref>。また竹中は「グローバリゼーションという流れの中で、人の移動は活発となっているが、実際問題として普通の人が国境を越えて移動することは容易ではない。重要なのは、普通の人が国内でも所得価値を生み出せる仕組みをつくることである」と指摘している<ref>竹中平蔵 『竹中教授のみんなの経済学』 幻冬舎、2000年、87頁。</ref>。
 
*[[国際政治学者]]の[[サミュエル・P・ハンティントン]]は著書『[[文明の衝突]]』で、「世界がグローバル化していくと最終的にイデオロギーの対立はなくなるが、東西の対立(東洋の文明と西洋の文明の対立)が浮き彫りになってくる」と指摘していた<ref>佐藤雅彦・竹中平蔵 『経済ってそういうことだったのか会議』 日本経済新聞社学〈日経ビジネス人文庫〉、2002年、214-2155頁。</ref>。
 
*評論家の[[森永卓郎]]は「日本人が"グローバル化"と言う場合、それは誤いなく"[[アメリカニゼーション|アメリカ化]]"という意味である。アメリカが[[世界標準]]であると言う根拠はどこにもなく、当のアメリカだけが、自分たちのことを世界であると思い込んでいる」と指摘している<ref>森永卓郎 『「騙されない!」ための経済学 モリタク流・経済ニュースのウラ読み術』 PHP研究所〈PHPビジネス新書〉、2008年、169-170頁。</ref>。また森永は「日本にとって本当のグローバル化とは、アメリカを相対化することであり、アメリカを追従せず、アメリカ化を拒絶することが本当の意味でのグローバル化である」と指摘している<ref>森永卓郎 『「騙されない!」ための経済学 モリタク流・経済ニュースのウラ読み術』 PHP研究所〈PHPビジネス新書〉、2008年、171頁。</ref>。
 
=== 肯定的見解 ===
* 国際的[[分業]](特化)が進展し、最適の国・場所において生産活動が行われるため、より効率的な、低コストでの生産が可能となり、物の価格が低下して社会が豊かになる([[比較優位]]){{要出典|date=2015年2月}}。[[ジャーナリスト]]の[[トーマス・フリードマン]]は著書『フラット化する世界』で、地球上に分散した人々が共同作業を始めインド・中国へ業務が委託され、個人・各地域が地球相手の競争力を得ている、あるいは貢献しているとしており、紛争回避にもつながっているとしている<ref name="asahi200693csr2008213" />。
* [[BRICs]]と呼ばれる[[ブラジル]]、[[ロシア]]、[[インド]]、[[中国]]の4か国のように、グローバリゼーションの波に乗って工業や資源輸出などによって経済的に富を蓄えることで、長らく低開発状態だった国家が高い経済成長を示す例がある<ref>「現代政治学 第3版」p88 加茂利男・大西仁・石田徹・伊東恭彦著 有斐閣 2007年9月30日第3版第1刷</ref>。[[ジェフリー・サックス]]は「グローバリゼーションは、貧困問題の解決に役立ってきた」と指摘している<ref name="csr2008213" />。サックスは、富は[[ゼロサムゲーム]]のように誰かが大きな富を得たからといって貧しい者がより貧しくなるわけではなく、むしろグローバリゼーションが貧困解消の一助となっているとしている<ref>[http://www.hitachi-hri.com/research/recommend/b39.html 貧困の終焉:2025年までに世界を変える] 日立総合計画研究所 2007年</ref>。サックスは著書『貧困の終焉』で「グローバリゼーションが、インドの極貧人口を2億人、中国では3億人減らした。多国籍企業に搾取されるどころか、急速な経済成長を遂げた」と指摘している<ref name="asahi200693csr2008213">[http://book.asahi.com/reviews/column/2011072802027.html 前田浩次 話題の本棚 新しい世界 グローバル化の新局面に期待も] BOOK.asahi.com 2006年9月3日</ref>。
* 投資活動においても、多くの選択肢からもっともよいものを選択することができ、各企業・個人のニーズに応じた効率的かつ高収益な投資が可能となる<ref name="#1">「グローバリゼーションと開発の主要課題」p15 大坪滋(「グローバリゼーションと開発」所収)大坪滋編 勁草書房 2009年2月25日第1刷第1版発行</ref>。
* 全世界のさまざまな物資、人材、知識、技術が交換・流通されるため、科学や技術、文化などがより発展する可能性がある。また、各個人がそれを享受する可能性がある{{要出典|date=2015年2月}}。
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[[Category:1990年代]]