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ブリジッドを警察に引き渡した翌日、スペードは秘書エフィが待つオフィスに再び姿を見せる。事件が解決し、探偵スペードの日常が回帰するという、物語の結末としての「大団円」あるいはシリーズものであれば「様式美」とも見なされるシーンだが、ここでスペードはエフィの拒絶に遭い、[[予定調和]]が崩される{{sfn|諏訪部|2012|pp=312-316}}。
 
エフィの拒絶理由について、ロバート・イーデンバウムは正しく分別のある行動よりも、間違っていてもロマンティックな行動をとるべきという一時的な激しい感情だと解釈している{{sfn|パーカー|1994|pp=89-90}}。しかし、ウィリアム・ルールマンは「エフィ・ペリンを失ったことは、スペードにとって最後の、そして最大の喪失である」と指摘する{{sfn|諏訪部|2014|pp-=99-100}}。
 
さらに、エピローグの最後にアイヴァを登場させることにより、作品冒頭のシーンの反復ないしは円環構造が示されることになる。スペードから「ヒーロー」的なイメージが剥ぎ取られ、主人公と読者は物語の冒頭に連れ戻される。こうして得られた荒涼たる光景に、読者は一種の解放感を得るが、それは「現実」から解き放たれるのではなく、「現実」へと解き放たれる{{sfn|諏訪部|2012|pp=322-325}}。
諏訪部によれば、この結末こそが本作を[[メロドラマ]]と決定的に分かつものであり、ハメットに芸術的勝利をもたらした。つまり、「ファム・ファタール」の誘惑に勝ったヒーローが「母」に拒絶されることで、この物語は傑作になったのである{{sfn|諏訪部|2014|pp-=99-100}}。
 
== 『マルタの鷹』の舞台 ==