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=== 本体 ===
全長は約60cm。一般にボディ長で楽器の大小を見る。現代では355mmが平均。オールドは352mm前後が多い。
重量は楽器にもよるが、だいたい500g弱300-600g前後
 
木製で、部位によって使われる木は樹種が異なる。湿気による反りなどの不正な歪みを防ぐため、通常15年以上自然乾燥された木材が適当とされている。中には50年程度、最高級品では100100以上の近く自然乾燥がなされた材料を使用するもの職人もあるが年がたつにつれそういった素材は稀である。現在では需要供給の問題もあり、乾燥釜をつかった強制乾燥による5年から8年ものの[[KD材]]が目立つ。材料の選定はピアノ以上に重要である。これらは工房の倉庫に数代に渡って収集保存されていたり、古い廃材から取られる場合もある。表板はスプルース(ドイツトウヒ)、裏と側板・ヘッドなどにはメイプル(イタヤカエデ)がよく一般に用いられる。寒冷地の硬い木を使用する。
側板・裏板のカエデ材、通常柾面が表面に露出するカットを為されるため、材の模様「[[材木#板取り|杢]]」があるものが多い。主にトラ目が多。これは木目(年輪による木彫など)ではなく、高齢の樹木になるほど材への応力が増し、幹の放射方向に木繊維が波打ち、それを柾目にスライスするので現れてくる模様である。ごく稀に、バードアイという堅く美しいメイプルの杢を使った楽器もある。木目は楽器の音には直接関係は無い。一般的に木目の目立つ素材は技術力の高い職人が完成度や性能の高い楽器を作るときに見た目をよくするために用いられる。
一般的に木目の目立つ素材は、技術力の高い職人が完成度や性能の高い楽器を作るときに見た目をよくするために用いられる。
 
指板は通常[[黒檀]]が使われるが、ペグボックスとスクロールは形に適合した木の又やコブを利用する場合があった。
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表板の裏側には、力木(バスバー)と呼ばれるスプルース(表板と同じ材)の部品が、膠で張りつけられる。これは表板を補強するとともに、特に低音の響きを強め安定させる役割を果たす。表板を削る際にその形状にしないのは、バスバーの両端は板に密着させないためであり、音の本来の出所は、側板で緊張された硬く滑らかな表板に由来するからである
 
ヴァイオリン内部には、[[魂柱]](サウンドポスト)と呼ばれるスプルースの円柱が立てられている。立てる際に用いる魂柱立てによってできる刺し傷表板、魂柱の年輪方向裏板楽器形を保持内側に対、振動を伝え、音色・音量を決定てフィットする大切な役割を果よう削られ方向性を示す。
魂柱は表板と裏板の形をある程度支持すると同時に、コマから表板に乗った振幅を裏板に伝え、両板の振幅を適切に引き出して音色・音量を決定する、重要な役割を果たす。
 
これらのうち、駒・魂柱・ペグ・エンドピン以外の各部位は、[[ゼラチン|ニカワ]]によって接着される。ニカワの接着剤としての性質上、蒸気を当てることで分解できるため、分解修理や部品交換が可能である。
さらにニカワは乾燥接着した後も、楽器の振動を完全に吸収することなく、適度な柔軟性を発揮する。そのため楽器に最適で、現在でも他の接着剤は使われない。
この柔軟性は湿気によるダメージ阻止にもつながる。湿気の多い夏や乾燥した冬に表板や裏板が剥れるのは、湿気による歪みに対応した結果である。瞬間接着剤などの硬い物質を使った安価な楽器は歪みに対応できず、板のひび割れなどにつながるといったケースをよく見もあが、通常は用いられることはない
 
安価な楽器には、接着剤の他に、好ましくない材料が使われている場合がある。特に指板を黒く塗った[[ツゲ]]などで代用している場合は、使用するにつれて色が禿げてくることがある。ちなみに、黒檀の木(エボニー)は2層あり外側は茶色で芯だけが黒い。漆黒でしかも密度の高い部分はとても希少である。近年の材料枯渇状況もあり、普通最高級品とされない茶色の部分がある黒檀も受け入れられつつある。
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指板の先には弦の張力を調整する糸巻き(ペグ)がついている。先端の渦巻きは装飾で、この部分に別の彫刻(人、天使、ライオン等の顔)が施される場合もある。
 
ボディの周囲に、黒檀による[[パフリング]]という細い二重ラインを呈した埋め木が施される。本来これは装飾目的ではなく、板の振動をそこで止める・外部からの振動/衝撃をふせぐ、という役割をもつ。つまり、パフリング内において板が適切に振幅できるようにしている。総じて音響目的であり装飾ではない
 
ヴァイオリンの仕上げには[[ニス]]が塗られる。ニス塗りは職人によりさまざまな形態をとるが、基本的にはスピリット(アルコール)系とオイル系の二種類がある。ポリウレタンを使ったコーティングもあるが、これは安価な楽器に使われるのが大半である。ニス塗り肯定は亜麻仁油、アルコール溶媒やシンナーに油脂や色素を溶かし、塗布後乾燥により揮発溶媒を飛ばす。通常30回程度、職人によっては50回ほど、薄いものから徐々に濃くしたものを塗り、ニスを浸透させていく。最後は乾燥と研磨と重ね塗りを繰り返して、布や羽で磨いて仕上げる。これは木の変形を防ぐための湿気対策(外気の環境変化への耐力上昇)や、材料自体を硬くして音響効果を増幅する目的で、材料を削る段階から徐々に塗ることもある。一般的にオイル系ニスはアルコール系よりもやや柔らかいことが知られている。木材自体がの持つ音の違いもあるのでどちらが良いかは一概に言えないが、ニスの種類による音の違いは大きい。
 
木材の腐朽・食害などからの保護も兼ねているが、楽器の音を逃がさないよう引き締める役割が最も大きい。白木で組み立てたヴァイオリンは、音が発散して重厚なヴァイオリンの音にはならない。ニス塗りによる楽器の美化は楽器の性能そのものを装飾する目的であり長年の経験と高い技術を要するいわば画家的な仕事である。ニスの種類による音の違いを除き、ニス塗りの出来や見た目による音の違いというものは無い。普通完成度の高い楽器こそ良いニス塗りに値するというのがバイオリン製作者の常識であり、よって結果的に製作者が良いと思った楽器ほど見た目が良くなるという傾向がある。
ニスは、一般的に家具などで考えうる、木材の腐朽・食害などからの保護も兼ねているが、楽器の音を逃がさないよう引き締める、という役割が最も大きい。白木で組み立てたヴァイオリンは、音が発散して芯のあるヴァイオリンの響きにはならない。
オールド楽器のなかには、楽器自体は健康でもニスが剥げて木肌が露出しているものがあり、構造的な調整を行って音色を引き出せた段階で、最後の仕上げに透明ニスを薄くコートしてやることで、さらに敏感に反応して音が締まってくる。つまり、ニスの塗りすぎは楽器の動きを止める。
 
以上のように、見た目が整う、というのはあくまで最終的な結果であり、「制作段階で出来の良い楽器」に対して綺麗にニスを塗りこむことが良い、といった段階的な目的では本来ありえないはずである。
 
=== 弦 ===