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→‎法源: 神法と自然法の関係についてはいつか記述したい
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キリスト教会のうちでもカトリック教会は、最も長い歴史を有していることから、あたかも国家による[[法 (法学)|法]]に比するほどの法体系を有しており、単に教会法という場合、カノン法を指すことも多い。「カノン」の語源は古代ギリシア語の「棒」とか「物差し」であり、そこから「規準」、「規定」という意味合いを有していた<ref>『教会法とは何だろうか』4頁</ref>。
 
カトリック教会は、カノン法の制定・執行を、一般世俗の権力から独立して、教会内部で行っており、その点でプロテスタントを含めた他の教派と異なる特徴があり、この点が[[政教分離]]の概念とも密接に結びついている。
 
== 歴史 ==
1~3世紀にかけては、初代教会の時代であるが、当時ローマ帝国内では、教会は、社会的には認知されておらず、むしろ迫害の対象であった。
 
4~7世紀は、教会法はローマ法から多大な影響を受けた時代といえる。[[ミラノ勅令]]によってキリスト教への迫害が終わり、教会が公に承認されただけでなく、[[テオドシウス1世]]は、キリスト教をローマ帝国の国教にした。そのため、ローマ皇帝と教皇との関係が問題になったが、世俗的な事項については教皇に皇帝が優位するという皇帝至上主義がとられた。
 
8~12世紀は、ゲルマン法から多大な影響を受けた時代といえる。ゲルマン諸王は独自に[[ゲルマン法|法典]]を公布した。多くの事案で、かなり長い間、ゲルマン諸部族には彼ら独自の法が適用される一方で、ローマ市民の末裔にはローマ法が適用され続けた。[[ピピン3世]]は、754年から755年にかけて[[ランゴバルド王国]]の[[アイストゥルフス]]と戦い、[[ラヴェンナ]]を奪ってローマ教皇[[ステファヌス3世]]に献上した。これはピピンの寄進と呼ばれ、後の[[教皇領]]の元となった。また[[759年]]には[[ナルボンヌ]]を奪還して[[サラセン人]](イスラム帝国)をフランスから駆逐することに成功し、さらに[[アキテーヌ]]も王国に組み入れた。このような時代背景の下、教会法は、ローマ法だけでなく、ゲルマンの慣習だけでなく、特にレーン法と呼ばれる封建法の要素と混交された結果、ある法制度が出現した。この法制度は、大陸ヨーロッパの全域(及び[[スコットランド]])に共通のものであり、ユス・コムーネと呼ばれた。このユス・コムーネやこれに基礎をおく法制度は、通常、[[大陸法]](英語圏の国では ''civil law'' )として言及される。中世[[ヨーロッパ]]の[[秩序]]においては、神聖ローマ皇帝や諸侯は、ローマ・カトリック教会の宗教的権威に従属し(参照:[[カノッサの屈辱]])、世俗的支配関係は、[[土地]]を媒介として重層的に支配服従関係が織り成される[[封建制]]により規律されていた。例えば、[[神聖ローマ帝国]]においては、[[領邦君主]]は[[帝国等族]]として皇帝に従属し、[[領邦]]においては、[[領邦等族]]が領邦君主に従属していたのである。
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16~19世紀は、教会法が近代化した時代である。フランス、ドイツでも反カトリック思想が影響力を増した。[[コペルニクス]]、[[ガリレオ]]、[[ニュートン]]に始まる近代[[科学]]が発展した時代背景の下、[[ロック]]、[[ルソー]]の[[個人]]を基礎にした[[社会契約説]]が流布した時代である。フランスでは、ルソーの影響下、[[フランス革命]]が起こり、その後、[[ナポレオン]]が一時支配権を握ったが、時の教皇[[ピオ7世]]はナポレオンと[[コンコルダート]]を締結する。ピオ7世は、教皇領を一時失うが、ナポレオンの失脚により回復する。政治的には混乱を極めた時代であったが、[[スペイン]]では、カトリックが国教とされるなど信者の数自体でいえばむしろ増大し、その理論や内容には大きな変化はないにしろ、多数の書籍が発行され発展した時代であったという。
 
20世紀は、教会法の法典化された時代である。[[1917年]]に制定された旧「教会法典」と[[1983年]]に制定された新「教会法典」がある。
 
== カトリック教会 ==
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=== 法源 ===
カノン法の主たる法源は、「法」と「慣習法」である。法には、神の啓示ないし聖伝による「神法」(ius divinum)と教会の立法機関によって制定された「人定法」(ius humanum)がある。人定法のうちで最も権威があるのが教会法典で、それは、[[1917年]]に制定された旧「教会法典」と[[1983年]]に制定された新「教会法典」がある。「慣習法」は、単なる慣習であればよいというわけではなく、信者の共同体によって導入され、立法者の同意を得たものなければならない。そのほかに「一般的決定」、「個別的行政行為」、「個別的決定」、「個別的命令」も広い意味の法原とされる<ref>以上につき『教会法とは何だろうか』43頁</ref>。
 
現行の法原は、新「教会法典」をメインとするほか、省令、[[回勅]]、[[公会議]]など権威のある会議の決定、判例などであるが、そのほかに[[聖書]]の記述や神学的な条理の解釈も重要視されることが、世俗法との大きな違いである。