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[[画像:Shell Refueller.JPG|thumb|ケロシン系[[ジェット燃料]] Jet A-1 を輸送する[[貨物自動車|トラック]]]]
[[画像:Ksc-69pc-442.jpg|thumb|ケロシン系[[ロケット燃料]]RP-1を使う[[サターンV 型ロケット|サターンV]]の打ち上げ]]
'''ケロシン''' ('''kerosene''') とは、[[石油]]の[[分留]]成分の1つである。およそ[[沸点]]150~280150 - 280[[摂氏|℃]]、[[炭素]]数[[デカン|10]] - [[ペンタデカン|15]]、[[密度]]0.79~079 - 0.83のものである。[[ナフサ]]([[ガソリン]]の原料)より重く、[[軽油]]より軽い。
 
ケロシンを主成分として、[[灯油]]、[[ジェット燃料]]、ケロシン系[[ロケット燃料]]などの[[石油製品]]が作られる。灯油は成分的にはほぼケロシンだが、日本では灯油をケロシンと呼ぶことはまれで、ケロシンと言えばジェット燃料やロケット燃料のことが多い。
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[[英語]]では、keroseneのほか'''kerosine'''とも綴り、また、'''coal oil'''とも言う。[[日本]]の[[モービル石油]]の[[ガソリンスタンド|スタンド]]や灯油の貯蔵施設にある給油機には英語のKerosineが書かれている。また、[[イギリス|英国]]と[[南アフリカ]]では'''paraffin'''([[パラフィン]])とも呼ぶ。
 
== 概要 ==
ケロシンは無色で燃えやすい[[液体]]の[[炭化水素]]で、石油の[[分留]]で150~275150 - 275[[セルシウス度|℃]]の分留区画を占める(炭素数で12~1512 - 15に相当)。かつてはケロシンランプが広く使用されていたが、現在では主に燃料とジェット燃料として使用される。ケロシンの名称は[[ギリシア語]]の{{lang|el|κηρο’ς}} (keros) ([[蝋|ろう]]、ワックス) に由来する。
 
原油から直接[[蒸留]]された標準的なケロシンは[[硫黄]]の含有とそれに伴う[[腐食]]性を減少させるために、いくつかの処理を必要とする。今日ではケロシンの一部は[[接触分解|石油クラッキング]]によっても生産される。つまりクラッキングにより原油の燃料油にしかならない成分から価値のある成分へと改質している。
 
== 用途 ==
ケロシンに、[[水素添加]]や他留分、[[接触分解|クラッキング]]の剰余分などがブレンドされ、各種の燃料が作られる。
 
=== 灯油 ===
{{main|灯油}}
灯油は、家庭用の燃料などに使われる。日本では、灯油の品質は[[日本工業規格|JIS]] K 2203で[[標準化]]されている。
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日本では、家庭用の灯油ストーブで暖房燃料として広く使用されている。日本ではガソリンスタンドや宅配によって容易に入手が可能である。
 
=== ジェット燃料 ===
{{main|ジェット燃料}}
ジェット燃料は、ほぼケロシンからなる「ケロシン系」と、ナフサを混ぜる「ワイドカット系」に分けられる。
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民間用の規格としてはケロシン系のJet AとJet A-1、ワイドカット系としてJet Bがある。これらはアメリカの工業規格[[American society for testing materials|ASTM]] D-1655で標準化されており、日本ではJIS K 2209がそれに準拠している。軍用にも各種規格がある。
 
=== ロケット燃料 ===
ロケットエンジンでは燃料を[[大気圏]]外でも燃焼させるため、[[液体水素]]や[[ケロシン]]などの燃料のほかに[[酸化剤]]を搭載する必要がある。酸化剤として用いられる物質は、第二次世界大戦中のヴァルターロケットでは[[過酸化水素]]、同じく[[V2ロケット]]では[[液体酸素]]、戦後のミサイルでは[[赤煙硝酸]]や[[過塩素酸アンモニウム]]などである。ケロシンを燃料とするロケットの場合、酸化剤としては液体酸素が多く用いられる。
 
ロケット燃料としての性能([[比推力]])は噴射速度、言い換えると燃焼温度が高く燃焼ガスの分子量が軽いものほど、最終飛翔体と燃料の重量比である質量比を緩和する。したがって理想的には液体水素と液体酸素の組み合わせがロケット燃料に最適である。しかし液体水素は密度が低いためタンクが巨大になり、また液体酸素との[[沸点]]の違いからタンクの断熱構造が複雑になるなど、実際には燃料タンクなどロケットの構造材の重量も含めて考慮されるべきで、サイズが巨大になる多段式ロケットの1段目にはロケット構造材の装置が簡単になり軽量化が図れるケロシンがロケット燃料として採用されることが多い。
 
==== ケロシン系ロケット燃料 ====
*; RP-1: [[アメリカ合衆国]]で広く使われるロケットエンジン用燃料。
*; TM-114: [[ソビエト連邦|旧ソ連]]/[[ロシア]]で使用されるケロシン系ロケット燃料の一つ。
*; TM-185: 旧ソ連/ロシアで使用されるケロシン系ロケット燃料の一つ。
*; Syntin: かつて旧ソ連/ロシアで使用されたケロシン系ロケット燃料の一つ。
 
==== ケロシンを燃料とするロケットエンジンの例 ====
*; [[F-1 (ロケットエンジン)|F-1]]: [[アポロ計画]]で用いられた[[サターンV 型ロケット|サターンV]]の一段目用の巨大エンジン。
*; [[RD-170]]/RD-171: ロシアの大型ロケット[[アンガラ・ロケット|アンガラ]]、[[ウクライナ]]の[[ゼニット_(ロケット)|ゼニト]]用のエンジンでF-1に匹敵する。
*; [[RD-107]]/RD-108: ロシアの[[ソユーズ]]の一段目用のエンジン(RD-107にRD-108を4本束ねて使うのが特徴)。液体酸素とケロシン系のT-1またはRG-1燃料を使用する。
*; RS-27/RS-27A/RS-27C: [[デルタロケット|デルタII]]の一段目用エンジン。
*; MB-3-1(1(制式名LR-79-7)7): [[PGM-17 (ミサイル)|ソー]]・[[デルタロケット|デルタ]]の一段目用エンジン。
*; MB-3-3: [[デルタロケット|デルタ]]や[[N-Iロケット]]・[[N-IIロケット]]・[[H-Iロケット]]などデルタシリーズの一段目用エンジン。
 
== 各国語での呼称 ==
ケロシンと厳密に同義語とは限らない<ref>英語版ウィキペディア [[:en:Kerosene#Common name]]</ref>
 
* ケロシン系:[[ギリシア語]] "keros" (<span lang="el" xml:lang="el">κηρός</span>[[蝋|ろう]])に由来
** '''<span lang="en-US">Kerosene</span>'''または'''<span lang="en-US">kerosine</span>''' ([[アメリカ合衆国|米国]])
** '''<span lang="en-AU">Kerosene</span>'''または'''<span lang="en-AU">kero</span>''' ([[オーストラリア]])
** '''<span lang="es">Queroseno</span>''' ([[スペイン語|スペイン]])
** '''<span lang="pt">Querosene</span>''' ([[ポルトガル語|ポルトガル]])
** '''<span lang="it">Cherosene</span>''' ([[イタリア語|イタリア]])
** '''<span lang="fr">Kérosène</span>''' ([[フランス語|フランス]])
** '''<span lang="ru">Керосин</span>''' ([[ロシア語|ロシア]])
** '''<span lang="en">Kerozin</span> (<span lang="sr">Керозин</span>)''' ([[:en:Serbian language|シベリア]])
** '''<span lang="el">Κηροζίνη</span>''' ([[ギリシア語|ギリシア]])
** '''<span lang="he">קרוסין</span>''' ([[ヘブライ語|イスラエル]])
* ペトロリアム系:
** '''<span lang="de">Petroleum</span>''' ([[ドイツ語|ドイツ]] - ドイツでジェット燃料は''<span lang="de">Kerosin</span>''。英語での''<span lang="en">petroleum</span>''つまり[[原油]]はドイツ語で''<span lang="de">Erdöl</span>''または''<span lang="de">Mineralöl</span>''または''<span lang="de">Rohöl</span>''。[[ガソリン]]は''<span lang="de">Benzin</span>''という)
** '''<span lang="fl">Petroli</span>'''または'''<span lang="fl">Valopetroli</span>'''または'''<span lang="fl">Lamppuöljy</span>''' ([[フィンランド語|フィンランド]])
* [[パラフィン]]系:英国、南アフリカ、ノルウェー: - 食用のパラフィン(パラフィン)とは異なる。
** '''<span lang="en">Paraffin</span>'''または'''<span lang="en">paraffin oil</span>''' ([[イギリス|英国]] および [[南アフリカ]])
** '''<span lang="no">Parafin</span>'''または'''<span lang="no">lampeolje</span>''' ([[ノルウェー語|ノルウェー]])
* その他
** '''<span lang="pl">Nafta</span>'''(ナフタ) ()([[ポーランド語|ポーランド]])
** '''<span lang="sv">Fotogen</span>''' ([[スウェーデン語|スウェーデン]])
** '''<span lang="tr">Gazyaģı</span>''' ([[トルコ語|トルコ]])
** '''<span lang="id">Minyak Tanah</span>''' ([[マレー語|マレーシア/インドネシア]])
** '''<span lang="ja">灯油</span> ([[日本語|日本]])
** '''<span lang="en">Turbosina</span>''' ([[スペイン語|スペイン]])での別の言い方
** '''<span lang="zh">煤油</span>''' ([[中国語]])
 
英語でのその他の呼称
* '''<span lang="en">Coal oil</span>'''
* '''<span lang="en">Range oil</span>'''
* '''<span lang="en-CA">Stove oil</span>''' ([[カナダ]])
 
== 出典 ==
<references />
 
== 関連項目 ==
* [[軍用機]]
* [[ロケットエンジンの推進剤]]
 
{{DEFAULTSORT:けろしん}}