「インセスト・タブー」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
28行目:
サルの研究では、まず1950年代に[[徳田喜三郎]]が京都動物園のアカギザル・カニクイザルの間では母息子間の性行為が無い事を指摘。その後、サル学者の[[高畑由紀夫]]は、[[ニホンザル]]の群れの交尾2000例あまりのうち、一親等にあたる個体間の交尾例はゼロ、二親等で5例、三親等でもわずか7例に過ぎなかったことを報告している。ただし、サルの群れは若く立場が弱いオスが年長の権力的なオスに追い出されたりもする社会であるために父親が認知しにくく、この観察結果は母系の血縁のみを反映していることに注意が必要である。ゴリラは幼い頃から一緒に育ったゴリラとは決して交尾しないことは有名であり、その他多くの哺乳類は野生下では繁殖に際して近親交配を避ける行動をとる。[[ハダカデバネズミ]]、[[テッポウエビ]]のように近親交配を重ねる生物も知られているが、極めて少数であり、独特の生態を発達させている。
 
一方で遺伝学者[[パトリック・ベイトソン]]が[[鳥類]]で示したように、多くの動物は近親個体とあまりにかけ離れすぎていない個体をつがい相手として好む。ベイトソンは日本の[[ウズラ]]を用いた実験で、一緒に育てられたキョウダイだけではなく血縁が全くない個体も交配相手として避けられ、いとこが交配相手に選ばれる確率が高いことを発見した<ref>『タブーの謎を解く』(山内昶、1996年) 93ページ ISBN 4-480-05691-2</ref>。この場合の究極要因はかけ離れすぎた相手との配偶が異系交配のリスクを高めるためだと推測されている。また、生殖に関係ない範囲においては[[ボノボ]]やチンパンジーで性的に未熟な息子と母親の交尾が観察されることもある<ref>{{cite journal|url=http://www.tsukuba-g.ac.jp/library/kiyou/2003/12.HIRAYAMA.pdf|format=PDF|title=人間社会と精神の起源|author=[[平山朝治]]|journal=東京家政学院筑波女子大学紀要|volume=7|pages=159-177|year=2003年|publisher=[[筑波学院大学]]|accessdate=2011-09-06}}</ref>。動物がどのようにして近親者を認知しているかについて明らかになっていることは少ないが、幼年時に共に育った個体や親を近親者と認識する事をウェスターマーク効果と呼び、ヒトも含めたいくつかの[[ほ乳類]]で同様の効果が知られている。
 
どちらにせよヒト以外の生物には、言語がないことと、破った場合の制裁が観察されていないことから、制度としてのタブーを観察することができないこともあり、インセスト・タブーとしてではなくインセスト・アボイダンス(近交回避、インセスト・アヴォイダンス)と称される。