「エイズ否認主義」の版間の差分

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西方 (会話 | 投稿記録)
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{{独自研究|date=2012年2月}}
 
'''エイズ否認主義'''(エイズひにんしゅぎ、{{lang-en-short|AIDS denialism}})とは、[[後天性免疫不全症候群|エイズ]]の原因は、HIV以外にあると考える科学者とその主張を、人文系の人々が指していう言葉である{{誰|date=2012年2月}}。これは医学用語ではなく、医学書には、このような単語は存在しない。こうした主張を批判する場合でも、この語('''エイズ否認主義''')は、医学関係者の間では全く使われておらず、医学関係者がこの仮説に言及する際には、[[代替仮説]](alternative hypothesis)、もしくは、[[デュースバーグ説]]等の語が使用される事が多い。'''エイズ否認主義'''と言う語は、人文系の人々の間でのみ使用される特異な語である。1980年代から1990年代には、[[サイエンス]]、[[ランセット]]、他の一流医学誌にこうした主張を正面から述べた論文が掲載されていた時期があるが、2000年代には殆ど見られなくなっている。英文の医学教科書では、Merrit's Neurologyなどにこうした[[代替仮説]]を批判する比較的詳しい記述が見られ、医学界の少数意見として、なお議論されているが、'''エイズ否認主義'''と言った語は、これを批判する論者を含めて、医学関係者の間では全く使用されていない。
 
==概要==
'''エイズ否認主義'''と言う語は、{{要出典範囲|人文系の人々の間で|date=2012年2月}}のみ使用される特異な語である。1980年代から1990年代には、[[サイエンス]]、[[ランセット]]、他の一流医学誌にこうした主張を正面から述べた論文が掲載されていた時期があるが、2000年代には殆ど見られなくなっている。
 
英文の医学教科書では、Merrit's Neurologyなどにこうした[[代替仮説]]を批判する比較的詳しい記述が見られ、医学界の少数意見として、なお議論されているが、'''エイズ否認主義'''と言った語は、これを批判する論者を含めて、医学関係者の間では全く使用されていない。
 
==主張==
呼び名はともかく、こう呼ばれる科学者たちの主張の要旨は「エイズは[[ヒト免疫不全ウイルス]]によって引き起こされるものではなく、[[麻薬]]や[[血液製剤]]などの直接作用によって[[免疫]]機能が低下することで起きる」というものである。それによれば、まず、エイズは一つの病気ではないとされる。彼らに依れば、(1)麻薬常用者のエイズ、(2)血友病患者のエイズ、(3)男性同性愛者のエイズ、(4)アフリカのエイズ、は、それぞれが独自の原因によって引き起こされている別々の疾患であるとされる。要約すれば、彼らの主張では、(1)麻薬常用者のエイズは、HIVが原因ではなく、ヘロイン等の麻薬その物が持つ免疫障害が原因である。(2)[[血友病]]患者のエイズも、血液製剤中のHIVが原因なのではなく、投与された血液製剤中の他人の蛋白質の過剰投与が原因である。(3)男性同性愛者のエイズは、欧米の男性同性愛者が、肛門性交を容易にする為に使用する事の多い亜硝酸アミル及び彼等が高率に使用する麻薬が原因である。(4)アフリカのエイズは、病像も欧米のエイズと異なる全く別の疾患患者が、たまたま抗HIV抗体陽性であった場合に、欧米のエイズと混同されて来た物である、等と説明される。更に、麻薬常習者の場合は、自己抗体が出現しやすい事から、抗HIV抗体が陽性であっても、偽陽性である場合が多いと論じる論者もある。(Duesberg)論拠としては疫学的な物が多く、血友病患者のエイズでは、スコットランドで報告されたように、HIV陰性の血液製剤を投与された場合でも臨床的にエイズと見なされる症状を呈した症例が少なからず見られた事(Lancetに論文が掲載されている)、HIV陰性のエイズが存在する事、ヘロインはそれ自体がリンパ球破壊作用を持つ事が実験的に証明されている事、医療従事者の針刺し事故の追跡では、HIV陽性とされる血液を誤って刺した場合でも、エイズを発症する場合が余りにも稀である事、その他が挙げられている。(参考サイト:http://www.duesberg.com)
 
===ピーター・デュースバーグ===
こうした諸事実から、[[ピーター・デュースバーグ]]は[[ヒト免疫不全ウイルス]](HIV)は、[[コッホの原則]]を満たしていないと主張する。
 
[[ファイル:Peter Duesberg.jpg|200px|thumb|否認論者の一人、ピーター・デュースバーグ]]
主な論者としては、[[カリフォルニア大学バークレー校]]の[[分子生物学]]・[[細胞生物学]]教授、[[ピーター・デュースバーグ]] ([[:en:Peter Duesberg]])、[[PCR法]]の発明者として知られる[[ノーベル化学賞]]受賞者の[[キャリー・マリス]]、同じく[[ノーベル化学賞]]受賞者の[[ライナス・ポーリング]]、他が知られている。マリス、ポーリング等の複数のノーベル賞受賞者がこの主張を支持している事から、欧米では1980年代から1990年代にかけて関心を集め、マスコミでもしばしば取り上げられた時期がある。日本では、山口大学医学部の教授であった[[柴田二郎]]が、マスコミでこれに近い主張を述べた事がある。日本のマスコミでは、DAYS JAPAN(講談社)に医学ジャーナリストの[[永井明]]による[[デュースバーグ]]へのインタビューが取り上げられた事が有った他、[[SAPIO]]、[[週刊ポスト]]、[[FOCUS]]、[[ニューズウィーク日本版]]が、1990年代に、どちらかと言えば、[[ピーター・デュースバーグ]]教授の個人的見解として取り上げる形で、この主張を報じた事があった。[[ピーター・デュースバーグ]]は、特に、エイズの治療薬として使用されていたAZTその物がエイズの原因の一つだと主張したが、他の論者は、必ずしもこの点には同意していない。又、Root-Bernsteinのような、エイズ発症における麻薬の役割を強調する中間的な論者も存在する。(いずれにしても、こうした主張を指す言葉として、「エイズ否認主義」という言葉は医学関係者の間では全く使用されておらず、Wikipediaの項目としてこの題名は不適切である。「エイズ代替仮説」などの語がふさわしいと思われる。)
 
マリス、ポーリング等の複数のノーベル賞受賞者がこの主張を支持している事から、欧米では1980年代から1990年代にかけて関心を集め、マスコミでもしばしば取り上げられた時期がある。
1993年にベルリンで[[国際エイズ会議]]が開かれた際には、こうした代替仮説を支持する患者団体が会場付近でデモを行ない、これを批判するグループと衝突した事もある。(月刊BARTによれば、この衝突の背景には、AZTの毒性を訴える患者団体とこれに反発した勢力の対立があったとされる。)
 
===日本===
日本では、山口大学医学部の教授であった[[柴田二郎]]が、マスコミでこれに近い主張を述べた事がある。日本のマスコミでは、DAYS JAPAN(講談社)に医学ジャーナリストの[[永井明]]による[[デュースバーグ]]へのインタビューが取り上げられた事が有った他、[[SAPIO]]、[[週刊ポスト]]、[[FOCUS]]、[[ニューズウィーク日本版]]が、1990年代に、[[ピーター・デュースバーグ]]教授の個人的見解として取り上げる形で、この主張を報じた事があった。
 
[[ピーター・デュースバーグ]]は、特に、エイズの治療薬として使用されていたAZTその物がエイズの原因の一つだと主張したが、他の論者は、必ずしもこの点には同意していない。又、Root-Bernsteinのような、エイズ発症における麻薬の役割を強調する中間的な論者も存在する。
 
1993年にベルリンで[[国際エイズ会議]]が開かれた際には、こうした代替仮説を支持する患者団体が会場付近でデモを行ない、これを批判するグループと衝突した事もある。<ref>月刊BARTによれば、この衝突の背景には、AZTの毒性を訴える患者団体とこれに反発した勢力の対立があったとされる。</ref>
 
この問題について書かれた日本語の文献としては、[[ミルコ・D・グルメク]]著 [[中島ひかる]]・[[中山建夫]]訳『エイズの歴史』(藤原書店・1993年)に訳者の[[中山建夫]]([[公衆衛生学]]・[[疫学]]([[東京医科歯科大学]]))が寄稿した「エイズ解題」(同書425頁)がある。
 
欧米では、患者の一部が、現行の医療への不満、批判とともにこうした「代替仮説」支持する傾向がある。他方、[[南アフリカ共和国]]などのアフリカ諸国においては、こうした主張が[[陰謀論]]して批判された事がある。
 
== 参考 ==
この問題について書かれた日本語の文献としては、[[ミルコ・D・グルメク]]著 [[中島ひかる]]・[[中山建夫]]訳『エイズの歴史』(藤原書店・1993年)に訳者の[[中山建夫]]([[公衆衛生学]]・[[疫学]]([[東京医科歯科大学]]))が寄稿した「エイズ解題」(同書425頁)がある。
{{参照方法|date=2012年2月}}
===これらの論者たちが引用し、根拠に挙げる論文(一部)===
 
===これらの論者たちが引用し、根拠に挙げる論文(一部)===
{{参照方法|date=2012年2月}}
(麻薬患者の免疫不全に関して、これらの論者から、麻薬自体の免疫障害作用を報告しているとして引用されている論文)
*Gabriel G.Nahas, Nicole Souciu-Foca, Jean-Pierre Armand, Akira Morishima. Inhibition of Cellular Midiated Immunity in Marisuana Smokers.(1974)(Science. Vol.183: 419-420)