「ジャガー・Eタイプ」の版間の差分

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[[1961年]]、[[サロン・アンテルナショナル・ド・ロト|ジュネーブショー]]にて華々しいデビューを飾ったEタイプは、美しいボディラインのみならず、当時としては夢のような最高速度240km/hを標榜し、人々の憧れの的となった。ボディーは[[オープンカー|オープン]]2シーターと[[クーペ]]の2つから選ぶことができた。前者はロードスターの名で呼ばれることが一般的である。
 
エンジンはボア内径φ87mm×ストローク行程107mmで3,781cc、圧縮比9.0、[[直列6気筒]][[DOHC]]の[[ジャガー・XKエンジン |XKエンジン]]に3連[[スキナーズ・ユニオン|SU]][[キャブレター]]を搭載しモス製の4速[[マニュアルトランスミッション|MT]]の組み合わせで265hp/5,500rpm、36.0kgm/4,000rpmと発表されたが、同様のエンジンを積む[[ジャガー・Mk1/Mk2|ジャガー・Mk-2]]がツインキャブではあるものの220hp/5,500rpmであるところから現在では疑問視されている。[[ブレーキ]]は[[ダンロップ]]製の[[ディスクブレーキ]]、[[サスペンション]]は4輪[[独立懸架]](フロントが[[ダブルウィッシュボーン式サスペンション|ダブルウイッシュボーン]]に[[トーションバー・スプリング|トーションバー]]、リアは2本ずつの[[ショックアブソーバー]]と[[スプリング|コイルスプリング]]を備えた変形ダブルウイッシュボーン)を採用していた。なおこの形式はXJシリーズにも踏襲され、少しずつ形を変えながら1990年代まで生き永らえた。[[ステアリング]]は[[ラック・アンド・ピニオン]]であった。[[車輪]]はワイヤーホイールが標準で用意されていた。
 
このモデルにおいては容量不足のブレーキと、古い設計で1速がノンシンクロであったモス製トランスミッションが不評を買った。また内装においては[[グランツーリスモ]]としては不充分な[[バケットシート]]、また[[センターコンソール]]の欠如が顧客の不満を招いたようである。ジャガーとしては新たな試みで美しくスポーティではあった内装の[[アルミニウム]]製パネルも高級感という点においては今ひとつであった。
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1964年10月<ref>『ワールドカーガイド12ジャガー』p.88。</ref>にシリーズ1はマイナーチェンジを受けた。主な変更点はエンジン、トランスミッション、内装、そしてブレーキである。しかし見た目にはほぼ何も変わっていなかった。
 
エンジンはボア内径φ92.1mm×ストローク行程106mmで4,235ccへと排気量を引き上げられた。圧縮比を8.0に下げたため最大出力こそ265hp/5,400rpmであったが最大トルクは39.1kgm/4,000rpmと大幅に向上し扱いやすくなった<ref>『ワールドカーガイド12ジャガー』p.175。</ref>。キャブレターにも若干の変更があり、[[エキゾーストマニホールド|排気マニフォールド]]も若干の変更を受けた。
 
モス製トランスミッションは自社製のフルシンクロ4速[[マニュアルトランスミッション|MT]]へと換装され、すばやいシフト操作が可能となった。ブレーキは[[ダンロップ]]製から[[ロッキード]]製へと変わり、パフォーマンスは若干向上した。
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[[ファイル:Jaguar_E-Type_vorne02.jpg|right|240px|thumb|シリーズ3 ロードスター]]
[[ファイル:Jaguar_E-Type_SIII.jpg|right|240px|thumb|シリーズ3 2+2]]
シリーズ2の生産が終わってしばらく後の1971年10月<ref name="worldcarguide12-94" />、シリーズ3は発売を開始した。アメリカの安全基準に適合させるために骨抜きになったEタイプはエンジンをウォルター・ハッサンとウォーリー・マンディにより設計されたボア内径φ90.0mm×ストローク行程70.0mmで5,343cc、圧縮比9.0の新開発V12気筒エンジンに置き換えることでそのパフォーマンスを回復した。キャブレターはゼニス・ストロンバーグ175CDSEを片バンク2機ずつ備え、272hp/5,850rpm、42.0kgm/3,600rpm。アルミブロックを採用したため6気筒と比べても重量増はわずかに留まり、最高速度は227km/h、0→60mph加速は6.9秒を記録した。このエンジンはまさにシルキー・スムーズなすばらしいエンジンであり、その後[[ジャガー・XJ|XJサルーン]]や後継モデルである[[ジャガー・XJS|XJ-S]]にも搭載されて、改良を受けながら20年以上も生産された。もちろんジャガーの伝統どおり、新型エンジンは最初に生産規模の少ないスポーツモデルに搭載し、市場へのテストベンチとする、という役割もシリーズ3は担っていた。当初ジャガーはレーシング・プロトタイプである[[ジャガー・XJ13|XJ13]]に搭載した[[ツインカム]]の5.0リットル[[V型12気筒]]エンジンを[[デチューン]]して、新たなEタイプに搭載しようと考えていたようだ。しかし量産するには機構が複雑すぎることもさることながら、何よりツインカムのヘッドがEタイプの狭いエンジンベイに納まらないことから採用は見送られ、代わりに[[SOHC|シングルカム]]の[[V型12気筒]]エンジンを搭載することとなった。
 
ボディタイプはクーペが廃止されロードスターと2+2の2タイプのみとなった。ロードスターも2+2の[[シャシ (自動車)|シャシ]]を使っていたため、ホイールベースはかなり延長された。その結果ロードスターのラゲッジスペースは拡大され、また従来は2+2でしか選べなかった[[ボルグワーナー]]製の3速ATがロードスターでも選べるようになった。従来どおりいずれのモデルにも自社製4速MTも用意された。
 
外装は大きく手直しを受け、シリーズ1のシンプルな美しさはなくなったが、代わりに迫力と豪華さを備えていた。フロントにはメッキの格子状グリルが付いた。その横のバンパーにはアメリカの基準に合わせるべくつけられた不恰好なオーバーライダーがつけられていた。重量増に対応するためタイヤは太くなったが、それを飲み込むためにホイールアーチには前後ともフレアがつけられた。
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その他の変更点としては、[[パワーステアリング]]が付いたこと、ブレーキのディスクが通風式になったこと、ノーマルの車輪がワイヤーからメッキカバーの付いた[[スチールホイール]]へと変更されたこと、などが挙げられる。サスペンションも若干の変更を受けた。
 
これらの変更を受け大きく姿を変えたEタイプであるがしかしこの時点ですでにかなり旧態化しており、すばらしい新型エンジンはむしろその旧態化した[[シャシ (自動車)|シャシ]]を目立たせてしまう結果となった。折りしも当時は[[オイルショック]]のまっただ中であり、時代がスポーツカーには全くの逆風だった。さらに悪いことにはこのときすでに[[ブリティッシュ・レイランド]]傘下に入っていたジャガーの自動車の品質はかなり落ちており、最大のマーケットであるアメリカにおいて「よく壊れる車」とのレッテルを貼られる羽目に陥ってしまった。これらのことからシリーズ3は失敗作だとするマニアの声は多いようであるが、何物とも比較せずシリーズ3だけを見れば、これは未だにすばらしいパフォーマンスを誇る美しい車であると言える。
 
2+2クーペは1973年末、ロードスターは1975年2月に製造中止となった<ref name="worldcarguide12-95">『ワールド・カー・ガイド12ジャガー』p.95。</ref>。なお最後の50台にはライオンズのサインが入った<ref name="worldcarguide12-95" />、ゴールドのプレートが助手席のパネルに張られている。50台のうち49台は特別色のブラックで塗られてラインオフした。最後の1台はジャガー・ヘリテッジ・トラストに展示されている。