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== 誘電関数 ==
電場の変動が速い場合には、分極の時間的なずれが大きくなって履歴効果が無視できず、誘電率が定数にはならない。空間的な局所性を仮定すれば、履歴効果は[[畳み込み]]の形で
電場がある程度以上の速さで変化する場合、誘電率は定数にはならず、電場の振動数 ω の関数である'''誘電関数''' ε(ω) として記述される。誘電関数には電気伝導や[[バンド理論|バンド間遷移]]による損失が発生するため、一般に以下のような複素関数となる。よって誘電関数のことを'''複素誘電率'''とも呼ぶ。
{{Indent|
: <math>\epsilon (\omega )=\epsilon_1 (\omega )+i\epsilon_2 (\omega )</math>
<math>\boldsymbol{D}(t) =\int_{-\infty}^t \epsilon(t-\tau)\,\boldsymbol{E}(\tau)\, d\tau</math>
このうち[[実数]]部 &epsilon;<sub>1</sub>(&omega;) は電場の振動との位相差および分極の大きさを与える。なお、&omega;=0 のときの実数部 &epsilon;<sub>1</sub> は上述した誘電率 &epsilon; にほかならない。また、[[虚数]]部 &epsilon;<sub>2</sub>(&omega;) は電気伝導やバンド間遷移による[[誘電正接|誘電損失]]を与えている。
}}
と表わされる。積分区間が {{math|''&tau;'' < ''t''}} となっているのは[[因果律]]によるもので、時間 {{mvar|t}} より過去の電場によって決まることを表している。このことは[[積分核]]が[[ヘヴィサイドの階段関数]] {{mvar|&theta;}} を用いて
{{Indent|
<math>\epsilon(t) =k(t)\,\theta(t)</math>
}}
の形をしていることを意味する。
 
周期的に変動する電場の下では[[フーリエ変換]]により周波数領域に移ることで畳み込みは
ある物質の誘電関数を調べることで、その物質の電子物性、光物性に関する多くの情報を得ることができる。光吸収スペクトルの測定から、虚数部 &epsilon;<sub>2</sub> を得ることができる。これに[[クラマース・クローニッヒの関係式]] (Kramers-Kronig relations) を用いることで、実数部 &epsilon;<sub>1</sub> を得ることができる。また、[[電子エネルギー損失分光]] (EELS) の測定結果は &epsilon;<sub>2</sub>/(&epsilon;<sub>1</sub><sup>2</sup> + &epsilon;<sub>2</sub><sup>2</sup>)(損失関数)を与える。
{{Indent|
: <math>\epsilon boldsymbol{D}(\omega) )=\epsilon_1 epsilon(\omega )+i\epsilon_2, \boldsymbol{E}(\omega )</math>
}}
で表わされる。誘電率は周波数 {{mvar|&omega;}} の関数である'''誘電関数'''として記述される。
なお、誘電関数が周波数に依存しない定数関数であるときは、フーリエ変換により時間領域に戻った時に[[積分核]] {{math|''&epsilon;''(''t'')}} が[[ディラックのデルタ関数|インパルス的]]であり、{{math|1=''&tau;'' = ''t''}} の部分が取り出されて前述の誘電率と一致する。
 
誘電関数は一般に複素関数となるため'''複素誘電率'''とも呼ばれる。誘電関数の[[実部]]は誘電分極の大きさと電場との位相差を与えており、[[虚部]]は[[電気伝導]]や[[バンド理論|バンド間遷移]]による[[誘電正接|誘電損失]]を与えている。因果律から[[クラマース・クローニッヒの関係式]]が成り立ち、実部と虚部が関係付けられる。
複素誘電率は、[[複素屈折率]]の二乗で求められる。
 
ある物質の誘電関数を調べることで、その物質の電子物性光物性に関する多くの情報を得ることができる。誘電関数は[[複素屈折率]]の二乗で求められ、これは光吸収スペクトルの測定から、虚数部 &epsilon;<sub>2</sub> を得ることができる。これに[[クラマース・クローニッヒの関係式]] (Kramers-Kronig relations) を用いることで、実数部 &epsilon;<sub>1</sub> を得ることができる。また[[電子エネルギー損失分光]] (EELS) (EELS)の測定結果 &epsilon;<sub>2</sub>/(&epsilon;<sub>1</sub><sup>2</sup> + &epsilon;<sub>2</sub><sup>2</sup>)(損失関数を与える。
 
== 関連項目 ==